王都へ③
昼食会では私は公爵様より上座へ座らされ、戸惑ってしまったけど、公爵様が目配せしたので戸惑いながらも案内された通り黙って座ることにした。
女神の化身は国王様よりも偉いと公爵様が仰ってたけど…普通の人である私がこんな扱いを受けるとなんだか変な感じ。
テーブルには両陛下、王太子様、王太后様、王子様お2人と王女様お2人が座っておられていて、両陛下はおそらく40代後半くらいで、王太子様は私と同じくらい。と思っていたら、王太子様のすぐ下の第1王女様が21歳で王太子様が私と同い年と国王様から聞かされちゃった。
「菜那様はセドリックと同い年なんだそうですな」
この世界は中世に近いから結婚は早いと思ってたので全員既婚かと思っていたけど、王子・王女様は全員未婚。これには本当に驚いちゃった。
中世は中世なんだけど、どうやらこの世界全体が裕福ではない為に成熟が遅くて、その為に婚期も遅いらしいのね。ホントびっくりしちゃったわ。
王室の方々ってツンツンした感じなのかと思ってたけど、ティーンの第2・第3王子様はふざけ合って王妃様から叱られてるし、つやつや綺麗な栗色の髪で瞳は水色の第1王女のアン様は穏やかでとても素敵な女性で。活版印刷のことをニコニコして聞いておられて、挿絵も入れてみては?とアイデアまで出していただいて盛り上がっちゃった。多分同じクラスにいたら友達になれることは間違いないわ。
すごく意気投合して、今度お茶会へご招待いただけることになったの!あ。ドレス用意しなくちゃ!と思ったら「普段着で」ですって!顔に出ちゃってたのね、私。アン様はさすがの気配りで思わず惚れちゃいそう(笑)
しかし気になるのは両陛下。王太子はどうか?と遠回しながらも勧めて来る来る。女神の化身といっても生身の人間だから結婚は出来るし、これまでもそうだったみたい。この王室も3代前の女神の化身だった女性の血が入っているって第3王子様が教えてくださったの。
王室の皆様がフレンドリーに接してくださると余計に感じるのは私の無力感。
経済学部卒だし、入った会社でもまだ殆ど仕事しないままこの世界へ飛ばされたし、一体何が出来るんだろうって。
医師のように診察出来る訳でもない。
科学者のように何かが出来る訳でもない。
職人等のように手に職なんかない…。
暫く本の印刷の話と、アン様ご提案の挿絵の話で盛り上がった後で収支と今後展開の話になったら…国王様が不思議なことを仰ったの。
「菜那様のお店では変わった帳簿の付け方をされているということですが?」
帳簿?帳簿ってあの帳簿?
「え?」
「1枚の紙にプラスとマイナスを順に書いていくのでは無く、区分けした項目ごとに分けて書いておられるとか?」
帳簿の付け方を事務全般を任せているマージに説明した時になかなか理解して貰えなくて、かなり苦労したっけ。それはマージがそうしたことをしたことなかったからだと思ってたけど…。
「すごく不思議なことをされていると聞いたのですよ」
「…複式簿記のことでしょうか?」
「複式簿記?」
何故国王様に複式簿記という超実務的なことをお話ししなければならないのか…と不思議な感覚がしたけれども、国王様のご質問ということで頑張って説明したわ。
「菜那様の世界ではそうした帳簿の付け方は一般的なのですか?」
と王太子セドリック様。
「はい、会社…えっとお店などではそうですね。家では出納帳…陛下が仰ったようにつけます」
「菜那様、一度その帳簿の付け方の講義を受けてみたいのですが」
え?国王様に超実務的な帳簿の付け方をお教えするの ?!
それはもうびっくりしたけど、国王陛下のご希望だし、確かに国という"企業"のトップなら実務はやらなくても会計知識は持っておくに越したことはないから、二つ返事したの。
国王様は大喜び。
早速…ということで明後日また王宮へ来ることになっちゃった。




