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始動③

トマスじぃの活字と枠は素晴らしかった!

ちゃんと文字間用のスペースまで作ってくれていて、本当にびっくりしたわ!


図書室の聖書から修道女の皆お勧めの章を書写しておいたから、それを元に文字を並べ替えて…インクを塗って…版画を印刷するみたいにしてみたの。


最初は加減がわからなくてまだらになったけど、2枚目からはちゃんと綺麗に印刷出来てホッとしたわ!


紙はA4サイズの半分のA5サイズを使用。1枚は少し分厚めのものを表紙にして(勿体無いから勿論裏面にも印刷しちゃう)、普通の紙を5枚の計6枚…つまりA4サイズ3枚分を本にする。


A5サイズを半分に折って、真ん中を糸で縫えば…本の出来上がり!


「聖書だわ!すごい!すごすぎます、菜那様!まるで魔法使いのようです!」


用意して貰った紙100枚で33冊(1枚は試し刷り用ね)出来上がったんだけど、果たしてこれをどこで売るかよね。売れるのかどうかということもあるんだけど。


正直これは悩んでた。

印刷をお願いするところはもう考えてあったけど。


トマスじぃには追加の活字と枠の製作をお願いしておいたわ。今は最小限の活字しかないから毎頁版を作ってるんだけど、すごく面倒くさいんだもの。


で、問題は販路よね。


「菜那様、公爵様にご相談されてみてはいかがでしょう?公爵様は何事もよくご存知ですので」

「え?公爵様?こんな些末なことをお聞きしても大丈夫なの?」

「些末なことではございませんよ!画期的なことでございますから!」


女神の化身と言われる私が印刷業なんてしたら、ガッカリされるんじゃないかしら。ううん、ダメ!私は私であって、女神の化身なんかじゃないんだから!


お忙しいはずの公爵様はローズが申し入れてすぐ会ってくださった。ごめんなさい、お忙しいのに。


「ローズからお聞き致しました。これをあっという間に33冊もお作りになられたとか!」


麗しいお顔で女子高生のようにキラキラした目で見られるともう破壊力抜群!


「この公爵領では教育に力を入れていますので、識字率は他の地域と比べてかなり高いんです。でも問題は日々読む本なのです。本が手に入らないので困っていたんですよ」


キラキラした目で見られたけれど、さすが公爵、この領地のいわば社長なだけあって、生産を何処で行うか、生産数、原価と販売価格等いっぱい聞かれちゃった。なんだか教養科目の原価会計の試験みたい。


「なる程、印刷は修道院で、か…」

「はい、訪問してみてわかったんですが、皆さんとても丁寧な作業をされるんです。心を込めて丁寧にすることで神様に真心を捧げる…ということらしく…」

「修道院への見返りは?」

「販売価格は5ナラ、原価は紙とインクと糸のお値段が…粗いですが約1ナラ60チームとすると粗利は3ナラ40チーム、そこから修道院へは1ナラお渡しします」

「残り2ナラ40チームは?」

「トマスじぃへの報酬や販売の為のコスト、利益も確保して次の事業へ活かします」


そこで公爵は満足そうに微笑んだ。


「ええ、そうですね。これで終わりという訳じゃない。次へ活かす投資費用も残すというところが流石菜那様だ。…失礼ながら菜那様はこうしたご経験を?」

「私は本で勉強しただけです」


だってただの新入社員なんだもの。

でも公爵様はじっとこちらを見て暫く黙っておられたわ。なんか変なこと言っちゃったかしら?


「…このお値段だ。領民の9割が中産階級でその内の7割は買うだろう。となると…」

「63%…約6割強が買ってくださる…」


公爵様は私がサッと九九で計算したことに目を見開いてたわ。そっか…ヨーロッパには九九は無かったっけ?


「…領民は約1万5千人、平均的な家庭は5人家族です」


と言って公爵様はちらりとこちらを見る…えっ…計算しろと?えっ…暗算?!えっと…15,000÷5で3,000世帯。3,000×60%は…1,800。


「3,000世帯の約6割で約1,800世帯…つまり1,800部ですか」


販売価格の5ナラは日本円で約600円。ぺらっぺらのショボイ本というか冊子だけど、聖書という内容だけあって領民は争って買うだろうという算段のよう。


1ナラは日本円で約120円。修道院へは1,800ナラを渡すことになるからえっと…20万円ちょいの収入になるということ。


「菜那様、今後紙の値上がりが考えられますので、販売価格を上げませんか?」

「え?」

「我々がそれなりの量の紙を買うと、需要と供給のバランスが崩れるので」

「あ、なるほど。では5ナラではなく6ナラとか…?えっと…5ナラの1.2倍を想定してみたんですが…」

「いや、紙の供給はそこまで潤沢ではないので、倍にしましょう」

「え!?」


…こんなショボイ冊子で1,200円…。ちょっとぼったくりっぽいけど…公爵様が仰るならその方がいいのかもしれない。

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