前回の続き
東條空……高校二年、どこか空虚、周りの顔色伺いがち。
桃坂奏……高校一年、あざとい系小悪魔。
白浜海……高校二年、絶世の美少女、上から目線。
北嶋俊彰……高校二年、バスケ部の副キャプテン。
安田聖……空のクラスメイト。クラスの上位カースト。
阿久津将英……空のクラスメイト。クラスの上位カースト。
前回までのあらすじ
バスケ部をクビにされた事をクラスメイトに知られてしまった東條。そこに東條を読んだのはバスケ部のマネージャーじゃであるふとでんだった。
バスケ部のメンバーと分かり合える事はできず皆去って行った。そこにサブローだけは一人残っていた。
「どした? お前も俺になんか言いたい事あんのか?」
「少し、昔の事思い出してた。覚えてるか? 俺が前に部活を辞めようとした事」
その言葉を聞き少し昔の事を思い出した。
あれは一年の冬頃の事だ。サブローが家庭の事情がありバイト三昧になり、部活に来れない日が続いていた。
サブロー自身このままではチームの迷惑になると思い退部を決意していたそこで俺に相談してきたのだ。
「このままだとチームに迷惑をかける事になるから、俺、部活辞めようと思う」
「は? なんでそうなんだよ。いいじゃんか迷惑かけて、お前の事を誰も迷惑だなんておもってねーぞ? 知らんけど」
「知らんって……お前適当すぎ」
実際それは人の顔色を窺ってるうちに身に付いた、言わば俺の得意技ともなる人の思考を仮定的だが見抜く事だ。
その俺が見る限りサブローにとって迷惑をかける事それはチームに居ない事を指す。あいつが練習に出れないから迷惑などではなく、あいつが仮定はどうあれチームに復帰するのが皆にとっての最善なのだ。
「サブロー、お前が困ってるのは金か?」
「あぁ。うち母さんが一人で家計を支えてくれててさ、その母さんもこの前体悪くしちゃってな。自分の分くらいどうにかしないとダメだと思ってさ」
要約すると、サブローの母が仕事できていないせいで入院期間の間サブローが代わりにバイトして家計を支えようと思ったらしい。
こいつは本当に責任感の強いすごいやつだと思った事は今でもハッキリ覚えている。
「一つ聞きたい、それはバイトさえできていれば問題ないのか? もっと細かく言うといくらあればいいとか、そういう目標があるのか?」
「いや、特にない少なからず貯金はまだあるみたいだ、だから俺がバイトして稼いだ金を出して足りない分は貯金で賄うつもりだ」
「なら一つだけいい方法がある」
俺はサブローにとある提案をした。
「お前、うちでバイトすれば?」
「え!? それはどうゆう事だ?」
「だから簡単な話お前がうちでバイトすればいいだろ?うちは居酒屋をやっていてな、開始が大体七時からなんだよ」
俺の提案にサブローはまだあまり理解をしていない様子だった。
「いや、俺の家まで帰る距離を考えると全然働けないし、それなら休んで稼いでた方が全然稼げる」
「なら、お前の親御さんが退院するまでうちで泊まり込みでバイトすればどうだ?」
「そんな事までしてもらう謂れが無い」
いきなり相談しただけなのにまさかこんなにも話が飛躍するとはサブローも思ってもなかっただろう。
「大体俺が自主練して家に帰るのが七時くらいだそれならお前も充分に部活をしながらバイトもできる、それなりにハードではあるがな。だけどそれならお前のいう迷惑もバイトして稼がなきゃいけない問題も回避できる。どうだ? やってみないか?」
サブローは少しの間思案していたが、覚悟が決まったのか真っ直ぐ俺を見て頭を下げてきた。ほんとこういう所は真面目なんだよなこいつ。
「少しの間だけど世話になります」
こうしてサブローは部活を辞める事なく家庭の問題も処理できた。
あの時の俺もよくこの提案がすんなり出たものだと感心していた。
「あぁ、覚えてるよ。お前、あの時すごい頑張ってたよな」
俺が昔の懐かしむかの様に言うとサブローは太陽の光が照らしてる窓を見て徐にこう伝えてきた。
「俺さ、あの時ほんとにお前に助けてもらったよな。お前が居なかったら正直俺は今ここに居ないと思ってる」
感謝なのかはたまたこれから伝えてくるであろう懺悔の前触れなのか、俺はそのどちらも受け取れないと思っている。
「やめてくれ、昔の話だ」
「だけど俺はお前に何もしてやれなかったそれが堪らなく……悔しいよ」
「さっきも言った筈だ。今更遅い」
それがきっとサブローの本心であれなんであれ、俺は信じる事ができない。人を信用せず、人に気を許さず、だけどそれを言ってくれた人の事を考えたら何が正解で何が間違いなのかわからない。
だから俺はせめて自分で選んだ自分が正解だと思うルートを進む。
俺はサブローの前から去って行った。
教室に付けばまたあの空気、皆俺を見るが誰も関わろうとはしない。
逆に今はそれが心地よく感じている。
そのまま俺はずっと机に突っ伏したまま時間を過ごしていた、さっきは怒りで気が紛れていたがそれも今は収まり、ただただ気まずい。結局トイレに行く時だけ立ち上がり、それ以外はずっと寝たふりをし続けてる。
今も絶賛寝たふり中の俺の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あれ、奏ちゃん? どうしたの? なんか俺らに用?」
どうやら桃坂がうちのクラスに来たらしく、クラスの男子陣がざわついていた。
クラスの上位カーストに位置する、阿久津将英、村瀬大和、竹内啓太、安田聖が桃坂の所に行き話しかけていた。
「あぁ、先輩方には用は無いんですよね〜」
ほぅ? まさかうちの学内でも指折りの人気者達ましてやその頂点に君臨する安田が振られるとは、さすが桃坂やるなーと寝たふりをしたまま感じていた俺の机の前でガタガタと椅子を引っ張る音が聞こえた、その後からふんわりと柑橘系の香水の匂いが漂ってきた。
「先輩ー起きてるんでしょ? もぅ、気まずいからってすぐそうやって丸くなっちゃってー、可愛い所あるじゃないですか」
桃坂は俺の寝たふりを完全に見抜き、肩をゆすらながら起こしてきた。
ももっち近すぎ! 恥ずかしさと柑橘系の香水の香りが俺の鼻腔を刺激する。
「……なんでバラしちゃうんだよ、余計気まずいだろうが」
俺がそう告げるとさぞ楽しそうに、ニヘヘーと笑っていた。
その笑顔があまりにも可愛らしくいつもより距離感が近く動揺して顔を逸らしながら、何故今俺のところにこいつが居るのか聞いてみた。
「俺になんか用か?」
「あ、そうでした。むぅーていうか先輩なんでLINE無視するんですか! 送ってるのに既読にもならないし、だからこうして直接来たんですよ!」
あ〜そういえば昨日とかなんか携帯めっちゃ鳴ってたな。
「あー、うん、ごめんね? 携帯調子悪くてさ」
俺が苦し紛れに誤魔化していると桃坂は携帯を取り出し何やら操作しているようだ。
「よし。送信っと」
桃坂は俺宛にLINEをしたらしいのだが俺の携帯はうんともすんとも着信音が鳴る事は無かった。
それもそのはず昨日やたらうるさくてつい、通知OFFにしていたからだ。
……これはまずい。なんて言って誤魔化そうか……。
俺の頭は未だかつて無い程フル回転していた。もう少し違うところで頭使えよ。
「あ、えっと桃坂さん? これにはとてもとても深ーい訳がありましてね?」
俺のその言葉を聞いた桃坂は周りの目があるからなのかニコッと笑顔で俺の耳元でそっと囁いた。
「へぇ〜、どんな訳があったのかすごくすごーく知りたいですね。で、どんな訳です? まさか通知OFFにしてたとか言わないですよね?」
え、待って待って。ももっち怖すぎ。なに? エスパー? めっちゃ笑顔なのに声めっちゃ怒ってるじゃん。
こんな女子が耳元で囁いてきたら普通心臓バクバクしてめっちゃ顔赤くなるシーンじゃん。なのに俺は逆の意味で心臓バクバクだし、なんなら顔面蒼白。
「落ち着いて聞いてくれ」
……あ、これダメだ。
俺は何一つとして言い訳が思い付かず素直に桃坂からのお叱りを受ける事にした。
「ほんとすいませんでしたぁー!」
土下座とはいかないが机に頭を擦りつけて謝罪した。
桃坂もそこまで鬼じゃないはず、俺は微かな期待をして桃坂をチラリと見やると桃坂はニッコリでプリティーな笑顔で俺を見ていた。
「許しません。先輩には罰を与えます」
鬼だった……いや、並大抵の鬼ではない。こいつの鬼としてのレベルはもはや上弦並み。
「罰ってそれはあんまりじゃ……」
満面の笑みから感じる恐ろしいまでの殺気。こいつの術はまさか笑顔から放たれるこの殺気か……。
「はい……なんなりとお申し付けください」
こいつには勝てる気がしないのでここは素直に従うべきと判断した。
くそっ俺にも刀が有れば、うん、あったとしてもやられてるね。
「よろしい。じゃあ今日の夜LINEするので必ず返信してくださいね? ちなみに私が送ってから五分以内ですからね?」
「善処します……」
後輩の言いなりになるとはもはや俺は威厳のいの字もありはしない。
「じゃあ先輩また後で来ますねー」
「ちょっと! 奏ちゃん今、良いかな?」
俺との話が一区切りついたのを見計らって、安田が桃坂に話しかけていた。
「はい? なんですか?」
「今度の休みさ、もしよかったら」
「あーごめんなさい。今度の休み私予定合ってーほんとごめんなさい」
安田が言葉を最後まで伝える前に桃坂はもうお断りの言葉を返していた。
「なら空いてる日教えてよ! 俺もその日空けるからさ」
安田が尚も桃坂を誘う。ほぅ?なかなか根性あるな安田のやつ、ああいうタイプは普段から断られる事に慣れてないから、今の一撃で引き下がらないとは。だが桃坂の反応を見る限り桃坂が安田への好意がないのが見てとれる。
「空いてる日ほとんど無いんですよね〜、皆私の事誘ってくれてほんとに感謝してます」
更に桃坂はお断りを入れている。あーももっちちょっとイライラしてきてるな、まぁ他の奴らにはわからんか。
「なら、来月ならどう? それなら流石に無いでしょ?」
あそこまで言われたのにも関わらず全く引く気の無い安田、根性は認める。だがそこまでくるとただただ哀れにしか思えなくなる。
桃坂も諦めたのか、はぁーと溜息を吐いて俺の方をチラリと見る。
「ごめんなさい。私、好きな人居るんですよね」
「もしかしてその好きな人ってこいつの事?」
安田が俺を指刺しながら睨みつけ桃坂に問いかけた。
えー、なんで俺まで巻き込まれてんのよ、ちょっと、ももっちどうにかしてー。
「さぁ? どうですかね? ご想像にお任せします」
桃坂答えた後安田は俺を更に睨みつけ尚も桃坂に話しかけた。
「こんなどこにでもいそうな奴のどこが良いんだよ。こいつのステータス全部に俺は勝ってる、なのになんで」
こいつ好き勝手にペラペラと言いやがって。俺は心の中で安田をボコボコにしてやった。
心の中で済ませてやったんだからな? 感謝しろ!
まぁ実際にやったら俺がボコられるのがオチである。
「これ以上先輩の事を悪く言うこ事は私が許しません! あなたと話す事はもうありません。失礼します」
そう告げて桃坂は教室を出て行った。
俺は桃坂があの周りからチヤホヤされたい桃坂が周りの目を気にせず俺も守る為に怒ってくれた姿が目から離れず桃坂が教室を出て行く間彼女を目で追っていた。
そのままチャイムが鳴り、次の授業が始まっていた、その最中俺が考えていた事とは。
(え? 桃坂のやつ、もしかして俺の事好きなの!? やーでも特別とか言ってたし、でも俺の事もしかして好きなの? なんて聞けないよな)
それで違ってたらまた中学の時の繰り返しだしな。
あれは、少し肌寒い季節だった。
中学時代俺は一人の女の子からやたら話しかけられていて、授業中ふと目が合うと優しく微笑んでくれて、廊下ですれ違えば手を振ってくれた。
俺は確信を持っていた、彼女は俺の事が好きなのだと。そして、俺は彼女にこう聞いてみたのだ。
「あのさ、もしかしてだけど俺の事好き?」
その言葉を聞いた瞬間彼女は制服のブレザーから携帯電話を取り出した、その画面を見ると録音中の画面が映し出されていた。
そしてその彼女は腹を抱えて大爆笑しながら。
「は? あんたの事なんて好きな訳ないじゃん。バカなの? これはね、うちらの中でじゃん負けであんたに愛想良くして何日で告白されるか賭けてたの」
その出来事は次の日には学校中に知れ渡っていた。そこで付けられたあだ名は『彼氏面』だった。
しかもその彼女には「もう話しかけないでくんない? ていうかこっち見んな。あ、あと携帯持ってきてるのチクったら承知しないから」それだけ告げて彼女は俺の前から去って行った。
あれは流石の俺も堪えきれず一人保健室のベッドで大泣きした。
そのトラウマがあり、桃坂に聞く事は出来なさそうだ。
何も知らなければ何も起きない、下手に何かを知ってしまうとその先の問題に巻き込まれる危険があるからだ。
なら、俺が取るべき行動は何もしないことだ。
その後、桃坂が教室に来る事はなく、俺もずっと寝たふりをして過ごしていた。
帰りのホームルームも終わり俺は特に中身の入ってない鞄を取りそそくさと帰宅した。
家に着き俺はまず自分の部屋に入りとある準備をしていた。それは、日課をする為だ。いくらクビになったとはいえここまで毎日続けてきたものをやめてしまうのは勿体無いと思い、俺はバスケットゴールがある公園にここ最近毎日自主練をしに行っている。
家で晩御飯を食べ、その後親に土下座して購入させて頂いた俺の愛車である、KAWASAKI ZRX400に乗りその公園に向かい練習をするのがルーティーンである。
このバイクはほんとにカッコよくてこんなの乗ってたら絶対モテると思って両親に買ってもらった。昔から俺は欲しいものは自分でバイトして買っていたから両親が特別にとこの愛車を俺にくれたのだ。
でもね、誰にも見せた事ないんだ。
ピエン。
今日もいつも通りのルーティーンに従い公園に着き練習をしていた。
俺が練習をする時間は大体八時位でその時間だともう日は沈んで月明かりと公園の街灯の明るさしかなく、バスケをしている人も居なかった。
いつも通りのメニューをこなしていると、ボールがアスファルトから跳ねる音が一つから二つに変わった。
音のする方に目を向けると、そこには一人の少女が居た。
彼女は月明かりがスポットライトのように照らされていて、白く美しい髪はまるで星々の輝きのように反射していた、肌は雪のように白く、彼女の周りだけ、この夏の暑さを忘れさせるほど涼やかな空気が流れていた。
俺は外見的にだが彼女を雪女だと思ってしまった。
しかしこういうのを画になるというのだろうか。いつも見慣れていたこの公園が、まるで今まで見たことのない様な景色へと変わっていた。
暫く、彼女に釘付けになっていた俺は、ボールの音が一つになったのを不思議に思ったのか彼女も俺の方を見る、自然と目が合った。
俺は驚き急いで目を逸らす、そして自分への練習に戻った。すると、今度はまたボールの音が一つになり、彼女の方をチラリと見ると彼女はこちらに歩み寄っていた。
(え、なんでこっちきてんのー? やばいさっきガン見してたの言われるのかな? やばいやばい)
そうして彼女は俺の目の前までやってきた。
彼女をさっきよりも近くで見る事ができ容姿の詳細がハッキリとわかった。
まず目は透き通る様な青みがかった瞳、身長は165センチくらいだ、体型はモデル顔負けのスタイル、胸部は俺推定によるとCカップ。俺の一番好きなサイズだ。どこからどうみても絶世の美女である。
「こんばんわ。少し、いいかしら」
彼女の声音はその雰囲気にも似てどこか涼しげな声だった。
「こんばんわ。えぇ、ど、どうしましたか?」
やべっ最後の最後で噛んじゃったよ……。こんな美女と話すのなんて無理無理。
「あなたここ最近毎日ここで練習してるわよね? それで私結構あなたの事見てたのよ。あなたのバスケをしている姿はとても興味深かったから」
「はぁ。さいですか、え? 見てた? 俺を?」
唐突に告げられた彼女からの言葉に俺は驚きを露わにしてしまった。
こんなどこにでも居そうな俺みたいな奴の事見てたって、これってまさかモテ期到来!? などとココロオドル様な事を思っていた俺だが、すぐさま理性を取り戻し彼女との会話に戻る。
「えぇ、そうよ。私、あなたのプレースタイルにとても興味があるの、知ってた? プレースタイルはその人自身の性格を出すって」
「それは、聞いた事ありますけど、俺のプレースタイルそんな特徴的でしたか?」
「そうね、では一つあなたの性格をプレースタイルから読み取り、当ててあげましょう。まずあなたは人の顔色や、動作、仕草、目線の動きなど観察したりするのが得意じゃないかしら」
すごい。この人は俺の練習してる姿を見ただけで俺の擬態を見破った、否。擬態するまでもなく彼女には筒抜けだったのだ。
だが釈然としない。俺のプレースタイルのどこにそんな要素があったのか知りたくて俺は口を開いた。
「……正解です。でも、一体何を見てそう思ったんです?」
俺のその言葉を聞き彼女は少し誇らしげな顔をしながら得意げに答えた。
「まずあなたはのドリブルの仕方ね、あれは完全に相手の裏を取るドリブルの仕方よ、そしてシュートモーションに入る前必ずあなたはフェイクをいれ、同時に目線のフェイクもいれて、ミスディレクションを誘導しているわ
これらを元に推測すると、あなたは普段から人の行動などに注視している事がわかる」
完璧な推測であった。完璧ではあるんだが、一つ彼女に言う事があるのなら。
どんだけ俺の事見てるんですかね! いや、嬉しいんだけどさ、ほらちょっと知らない人にそんな事細かく見られてたなんて知らなかったからさ。
だが、彼女もまた俺の動作一つ一つを見て推測できるのはもしかしたら、俺と彼女は同じなのかも知れないと、そう微かに思っていた。
「お見事です。でもわかっているのならもう興味が無いのではないですか?」
「そう。当たっていたなら良かったわ。いえ、まだ興味はあるわ」
更に正解を導き出したことに喜びを感じていたのか、彼女は少し微笑んでいた。その微笑みはより一層当たりを涼やかにしてくれた。
「それはなにか、聞いてもいいですか?」
「そうね、それはあなたがどうしてこのプレースタイルをする様になったのかそれが気になるの」
「それは俺の性格がって話ではなくてですか?」
「だから、あなたがそうなった理由を知りたいの、だから、そうね、あなたに興味があるのよ」
きっと俺はその時とても情け無い顔をしていた事だろう。
彼女の様な俺からすれば縁も無さそうな美少女に興味を持っていただくなんて、バスケ部クビになってから俺の人生薔薇色になってしまったのか!? などと一人で愉快な事を考えていると。
「そういえばまだ名乗っていなかったわね。私の名前は白浜海。よろしくね」
「よ、よろしくです。俺は東條空です」
「ちなみに、私達は同学年だから敬語は不要よ」
ん? 俺達今日初めて会話したよね? 同学年ってなんで知ってるのん?
「これからあなたの事もっとよく教えてくれるかしら。東條君?」
「なら、俺も白浜さんの事教えてくれるのか?」
「等価交換ね、知らない? 何かを得るにはそれと同等の対価を支払わなければならないと」
どっかの錬金術師が言いそうな事を言ってきた、……錬成陣の手袋とかしてないよね?
「なら、俺の情報と引き換えに教えてもらうとするよ」
白浜が俺に興味を抱いたのはきっと白浜もまた人間関係に何かしらの問題があるのだろうか、はたまた単に俺と白浜は同じ物を同じ事を欲しているのかもしれない。
そんな夢物語を語ろうとしている俺がいた。
「じゃあ今日はもう遅いし、ここら辺で引き上げるか」
「えぇ、そうね、また明日ね」
そう言葉を交わし俺も帰宅の準備をしていると、白浜はまた俺のところに更に近くに来てこう告げた。
「私、狙った獲物は逃した事ないの。それをよく理解しておく事ね」
白浜の白く細い指が俺の顎をくいっと持ち上げ囁かれた。
今までの気品のある話し方よりやや悪戯心が見られる陽気な話し方なのに、そこには凍てつくほどの迫力があり、雪女なんて生ぬるい、俺は白浜を『氷の女王』だと思っていた。
俺はそのまま夜空を見上げ、夏の大三角形を見ながら、彼女との出会いを新たな青春の一ページとして刻むのであった。
……女子にやられる顎クイも悪くありませんね!
次回奏と海が初の顔合わせ、お互いが感じた印象は…
東條を巡り女同士の駆け引きが始まる。
お疲れ様です。
橋真和高です!
読んでいただき本当にありがとうございます!!
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです!
どんな感想でも構いません!
面白いと思ってくれた方は評価、ブクマ、コメントお願い致します。