創作落語 スズキ
創作落語「スズキ」
世の中には、出世すると名前が変わるものがあるらしい。ややこしい…
おーい、三太、
何ですか〜鈴右衛門さん、
この間もらった魚、美味かったよ、
えっ〜と、何でしたっけ?
昨日くれたじゃないか、あの魚だよ、
魚?
ああ、あの魚、何の魚か解らなかったんですけど、いっぱい釣れたから売ったんですぜ〜
何だい、何の魚か解らないで売ったのかい?
へい〜
困った奴だなぁ、
へへへ〜
あれはな、スズキって言うんだよ。小さいころはヒカリゴ、そしてコッパ、セイゴ、ハネ、最後はスズキと名前が変わる魚だよ。出世魚って言うんだ。
へえ〜、魚も出世するんですか〜
そしたら、鈴右衛門さんも出世する前は、ヒカリゴ右衛門って名前だったんだ〜
こらこら、違うぞ、
解った!鈴右衛門の前だからハネ右衛門…ハネモン!ポケモンにいそうな名前だなぁ〜
この前、店の前でぴょんぴょん跳ねてたのは、まだ、ハネ右衛門だったからなんだ〜納得、納得。
おいおい、私は生まれた時からハネ右衛門…いや、鈴右衛門だよ。勘違いするなよ、
ふぅ〜ん、ややこしいな、
人間と魚は違うんだよ、解ったか、
まったく、学がない奴は困ったもんだ。
へ〜い、
スズキでハネでセイゴ、コッパだったかな、まぁいいや、
三太が道を歩いていると、ススキの穂を持った清五郎が歩いて来た。
お〜い、清五郎〜
何だい、三太、
お前さん、何を持っているんだい?
ススキだよ、ほら、綺麗だろう、飾ろうと思ってな、
お前な〜学がないなぁ〜
へっ?
ススキってのは、出世するんだよ、このススキはまだ青いだろ、青いからハネって言うんだよ、
へえ〜、三太は物知りだなぁ、
あたぼうよ、
お前さんの名前の清五郎も、もう少し大きくなったらハネ五郎って変わるんだよ!
へぇ〜知らなかった。
オイラ、清五郎からハネ五郎に変わるんだ。
そうそう、
まったく、学がない奴は困ったもんだ〜
また、三太が道を歩いていると、
「大変だー、大変だー」と光助が走って来た。
どうしたんだい、光助。
ハアハア、大変なんだよ、
町外れの川にカッパがいたんだ!
カッパ?
カッパだよ、カッパ!ビックリしたよ、
ふふん〜、三太はニヤッと笑い、
光助、そのカッパ大きかったかい?
大きかったよ、大人ぐらいだったよ。
光助〜そいつはカッパじゃねぇな、
カッパじゃねぇ?じゃ何なんだよ、
カッパはな、大きくなるとセイゴロウと名前が変わるんだよ、
セイゴロウ?
そのカッパは大人だったから、セイゴロウからハネゴロウになって、たぶん今は、スズエゴロウだ!
スズエゴロウ?
そうだ、大人のカッパはスズエゴロウって言うんだよ。
へぇ〜、三太は物知りだな〜
ふふん、学がない奴は困ったもんだ〜
すると、前から鈴右衛門さんが歩いて来た。
今日は〜スズエゴロウさん、
スズエゴロウ?
さっき、光助が川でスズエゴロウに会ったんですよ〜
スズエゴロウ会った?
そこに清五郎がやって来た。
おーい、ハネゴロウ、
よっ、三太、
ハネゴロウ?あいつは確か、清五郎じゃなかったかな?
スズエゴロウさん〜ハネゴロウがハネを持って歩いて来たら、ヒカリゴロウが川でスズエゴロウに会って〜
何だって?もう一度、ゆっくり話しくれ、
だから、セイゴロウがハネゴロウになって、持っていたススキがハネゴロウだったんでスズエゴロウになったら、ヒカスケがヒカリゴロウになって、川で会ったカッパがセイゴロウかと思ったら、大きかったんでハネゴロウになって、スズエゴロウだったんで、スズエゴロウさんは、ハネゴロウだったんですぜ〜
何んなんだ??
スズエゴロウさんも学がないなぁ〜
スズエゴロウがスズエゴロウになったんですぜ〜
???
解った!
最後は、み〜んなスズエゴロウになるんだ。
そりゃ、めでたい。みんな出世してスズエゴロウだ!
アイツもコイツもスズエゴロウ!
ドイツもココノツもスズエゴロウ!
世に中、み〜んな、スズエゴロウ!
オイラもスズエゴロウになるのかな?
三太は、サンタゴロウだよ、
サンタクロース?
こりゃまた、めでたい!
メリークリスマス!
おしまい。