6.執務室にて
僕の家族はクロリーチェ公爵家のお屋敷の待合室に案内されていた。
お母さんが公爵家とわかると、色々と疑問が湧いてくる。お父さんの素性についてだ。僕の家族は色々と知らないことが多すぎる。
この世界に転生してから5年も経っているのに僕はまだまだ子供。貴族であるなら、自身の責務とかないのかな?とか思ってしまう。
◇
●待合室に辿り着いた後
「本日の予定は、ステラ様の誕生会が3刻後に行われます。その間に身なりを整え直しといてくださいませ。アルロはこの後、エラ様のお父様とお母様がお呼びです」
「すまない、私は挨拶と報告に行ってくるから、テオはお母さんと一緒に待っててな。エラはテオを頼む」
「貴方、その間にテオちゃんの身なりを整えておくわね」
お父さんは、頷いた後にメイドと一緒に退出していった。
「テオちゃん!まずは化粧台の椅子に座って、ブラッシングしましょうね」
「うん、わかった」
僕はマントとフードを脱いで、椅子に座った。鏡を見ると、やっぱり女の子にしか見えない。自分じゃないんじゃないかと思ってしまう。前世の自分を重ねてしまうから。
お母さんは僕にブラッシングをするのであった。
「お母さん、くすぐったいよ…耳はもうちょっと優しくして…」
「テオちゃんもう少しで頭は終わるわ!次は尻尾のブラッシングをしましょうね!」
僕はブラッシングに耐えていた。僕の耳と尻尾は凄く敏感だ。特に尻尾が弱い。足の先から頭まで指をなぞられるような感覚になるのだ。
更には、鏡で見る僕の姿、幼女が恥ずかしそうに写っており、前世にいたケモナーが歓喜しそうなシーンそのものだ。いいぞ!もっとやれ!って思い浮かぶ…
お母さんに耳と尻尾を隅々まで手入れされた。いつもお風呂上がりにブラッシングしてくれるけど、回数を重ねるごとに、お母さんのテクニックがすごくなっていく…
もうお嫁に行けなくなりそうだ。だが、僕はまだ子供だから大丈夫だと、現実逃避するのであった。
お母さんは凄く満足そうだ。僕の耳と尻尾は更にフワフワになっていた。自分で触るとモフモフすぎて手触りがいい。最後にリボンのカチューシャを付けられた。
鏡に映る自分は、女の子だなと思った。だがしかし男だ…果たして僕は耐えられるだろうか?
少し経った後、トントントンと3回ノックされた。お母さんは扉に寄ると、執事の声が聞こえてきた。
「執務室にて、エラ様のお父様とお母様がお呼びです。アルロ様もそちらにいらっしゃいますので、準備をお願い致します」
「私もテオも準備は出来ているわ、今から出ますわね」
お母さんは僕にマントとフードを被せてから、手を繋いで扉を出た。
「こちらへどうぞ」と言って僕とお母さんは執事に案内された。
◇
「エラ様テオ様、こちらが執務室です。私が離れた後に入室してください。私はここで失礼致します」と離れていった。
そして、お母さんは執務室の扉を開けた。
「貴方待たせたわね。お父様お母様お久しぶりですわ!テオちゃん連れてきたわよ!」
「エラとテオ来たか!待っておったぞ!」「その子がテオちゃんね。初めまして!」
僕は驚いてお母さんの後ろに隠れたが顔だけ見せた。自分でも驚く程に警戒心が高くなってしまう。猫人族だからだろうか?精神的にも子供だからだろうか…
「お父様、お母様、テオがビックリしてます。まずは座りましょう」とお父さんは苦笑いしていた。
柔らかいソファに全員座った。僕はお父さんとお母さんに挟まれながら座っている。
「紹介が遅れたなテオ。私はクロリーチェ公爵家の前当主のエイダン・クロリーチェだ。お祖父ちゃんだよ」
「#私__わたくし__#はソフィー・クロリーチェ。テオのお祖母ちゃんよ」
見る限り、40歳だろうか?お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは若い。僕は挨拶をした。
「はじめまして、私はテオと言います!」
「エラの顔譲りでアルロの黒髪だな」「ええそうね」
凄くほっこりした笑顔をしていたが、お母さんは口を開いた。
「お父様、本題に入るのですが、テオちゃんのこのフードとマントの下には秘密があります」
「うむ、何となく不思議に思っていた。フードを外してもらえるだろうか?」
「他の貴族には他言無用でお願いします」
「わかった。誓おう」
お母さんは僕のフードとマントを外すと、ピョコピョコ動く猫耳とフワフワな尻尾が現れた。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは雷が落ちたような衝撃を受けていた。凄く動揺していたのだ。
「この通り、テオはヒトではありません。猫人族なのです」
「「…」」
少しの間、沈黙が訪れたのであった。




