依頼と美少女
再び冒険者ギルドに戻った俺たちは、受付嬢のシーナさんのところに戻り、以来の受注をすることにした。
「すいません。依頼受けたいんですけど、何かおすすめとかありますか?」
「ヒポポス草の10本の収穫、イノシシの狩猟、水色スライムの狩猟とかですね」
シーナさん無表情すぎてそっけない気がするんだよな。美人なのにもったいないぜ。
「水色スライムの狩猟とかでいいんじゃないかしら? 動物は練習で散々狩猟してきたし、魔物の討伐でもいい気がするわ」
スライムっていうとファンタジー系チュートリアルモンスターの定番だし、ちょうどいい気がする。初めての依頼は水色スライム退治で決まりだ!
「じゃあ、水色スライムの狩猟で!」
「かしこまりました。では、掲示板の依頼書を回収して私のところに提出してください」
俺たちは依頼書を回収し、シーナさんのところに提出した。
「はい。受理いたしました。健闘をお祈りいたします。証拠品が必要になるので、そちらの回収もお願いします」
うん。全然検討を祈ってる感じはしないけどヨシ!
「よっしゃ! 初狩猟、行きますか!」
「「「おー!」」」
俺たちはギルドを出て、水色スライムがいるというモズイ平原に向かった。
「待て! 人間ども!」
「なんだよ?」
「我のとっておきを見せてやる! 我の偉業に感謝し、ひれ伏すがよいぞ! ハーハッハッハッハッハッ・・・ゲホゲホッ!」
うーんこの完全なメスガキムーブよ。この子をわざわざ遣わせるとは創造神様も、良い性格してるぜ。
「と、とにかく! これを通るのじゃ! これを通ればすぐにモズイ平原につけるぞ!」
ゲートが手をかざすと、天界からの帰還でつかった青白いゲートが出現した。なるほど、いろいろなところへワープできるゲートを作れるから、ゲートって名前なのか。そのまんまじゃねえか!
「すごい怪しげ」
「さすがにこれに入るのは度胸がいるわね・・・」
そうか。俺は異世界転生で舞い上がってたから当たり前のように入ってたけど、普通こんな怪しげなもの入らないよな。
「我は歩くのは面倒だから先に行くぞ! ついてまいれ!」
ゲートはそう言って入っていった。俺が入らないと二人も入らないか。
「じゃ、俺たちも行くぞ」
「本当に入って大丈夫なの?」
「危険を感知」
「大丈夫だって。俺も何回か入ってるから」
「腹をくくるしかないわね」
シスは無言で俺の手を握った。犯罪的可愛さだ。
「行くぞ」
俺たちはゲートをくぐった。目の前には青々と広がる芝生と空。遠くに森や俺たちがいたカルマブレン城が見える。地理の資料集で見るような、広大な平原だ。いろいろな場所で青いスライムがぴょんこぴょんこと跳ね回っている。俺、本当に異世界に来たんだなという実感がみるみるとわいてくる。
「では行くぞ人間ども!」
「よっしゃあ! 行くぜ!」
俺とシスはスライムに向けて突進し、勢いよく剣を振り下ろした。剣はするりとスライムを貫通し、地面にぶち当たった。
「いて!」
「二人とも! 大丈夫?」
後ろでミオナが声をかけてきた。少し手がしびれたがこれくらいどうってことない。
「大丈夫だ!」
「大丈夫」
剣を引き抜くと、一瞬切断されたスライムはすぐに元に戻ってしまった。ミオナの放った矢も、スライムを貫通して地面に笹てしまった。え? これ倒せなくないか?
「これでどうだ!」
ミオナは矢を番えると、矢尻が赤くなり始め、矢尻を囲むように炎の円ができ始めた。指を離し、矢はまっすぐにスライムに向かって飛んでいき、命中した。スライムは身を悶えさせて火を消そうとしていたが、身体がどんどん蒸発していき、ついには動かなくなった。
「やったな!」
俺たちは駆け寄り、パンとハイタッチをする。さすがミオナだ! だが、このままだと俺とシスは何も貢献できないぞ。どうしたものか・・・。
「人間! 火や水、雷と言った簡単な三大元素の魔法なら、信仰心が少なくても使えるのだぞ!」
「え! そうなの!?」
「教えてほしい」
俺とシスは食い入るように前のめりになった。
「その属性の魔法を強くイメージすればいいだけ! 簡単なのだ!」
剣に先ほどのミオナが矢にエンチャントしていた、炎をイメージしてみた。すると、剣を中心に赤い円がいくつか発生し、剣がオレンジ色に光った。持っているだけでもほのかに熱を感じる。
「おお! すげー!」
「できた・・・!」
シスの方を見てみると、短剣から炎がわきだしてめらめらと燃えていた。
「シスは炎の神に気に入られているみたいなのだ!」
「気に入られるとかが関係あるのか?」
「もちろんだ! 神にも好き嫌いはある。気に入った人間にはたくさん力を貸すし、気に入らない人間には力は貸さないのだ! あいつ(アラマンサダス)はロリコンだから、シスも気に入られたみたいなのだ!」
「なんか納得いかない」
思ったより神様って人間っぽい感性してるんだな。
「フハハハハ! 力を持つからこそ、神は好きに振舞うのだ! 我の力添えを期待したくば、懸命に努力するのだ! ハーハッハッハッハッハ!」
「あ、ゲートも神様だったんだ」
「もちろんだ! 我も神! ゆえに! 人間ども我を養うのだ!」
人間に養われる神なんて聞いた事ねーよ! という突っ込みは置いておいて、俺たちは教えてもらった魔法を使ってスライムを狩りまくり、日が暮れるころには20体ものスライムを討伐していた。
「よし! みんなスライムの体は持ったか!」
「全部回収したわ!」
「ばっちり」
「よーし! ではゲート。頼む!」
「うむ!」
イニジオブレンにワープし、受付嬢のところに戻った。
「依頼書と証拠品をお願いします」
「はい。お願いします」
俺たちは依頼書と、スライムの死体をカウンターに置いた。途中でスライムの死体は融合してしまったのだが大丈夫だろうか?
「全部で、20kgですね。となると、6万タールになります」
「10万タールももらえるんですか?」
今朝買ったクレープが300タールだったことを考えると6万タールは相当な金額だ。1体あたり3000タールで買い取ってくれたことになる。魔法さえ使えれば誰でも倒せる水色スライムに3000タールは高すぎる気がする。
「次から依頼書を持ってくるときは読んだ方がいいですよ。スライムの体を使った兵器の研究のため、今はスライムの買い取りの値段が高いんです。ここにも、書いてありますよね」
本当だ。スライムを使った兵器って言っても、物理攻撃はすり抜けるし対魔法は弱々だし兵器としての価値なんてなさそうだけどな。
「こちら、報酬になります」
キラキラと輝く金貨を20枚もらった。美しい輝きだぜ。
「じゃ、今日は戦勝祝いとしてうまいもんでも食べて、ぐっすりと寝ようか!」
異世界生活初の依頼は、大勝利に終わった!