冒険者と美少女
カルマブレン城の城塞都市について一日目でなぜか俺は怪我をしてしまったため冒険者登録は二日目からすることになったんだが、どうにもシスの機嫌が直らない。ミオナは昨日のうちにやりすぎたって謝ってくれたんだけどな。うーむ。どうしたもんか。
「シス、昨日は悪かったよ。機嫌直してくれよ」
「ふん。好色変態バカお兄なんて大嫌い。どうせシスと冒険したかったんじゃなくて、女の子と遊びたかっただけ」
だめだ。取り付く島もない。
「そんなことないって」
「シスわかる。攻撃されて服がはだけたミオナとかの姿を見たいだけ」
はだけた服からミオナのあふれんばかりのお胸が・・・。やばい想像してしまった。
「ほら」
「ち、ちがう! 今のは不可抗力だ!」
「ちょっと! 変なこと想像しないでよ」
腕で谷間を隠すミオナ。そして、俺の方をジト目で見るシス。やめてくれ。そんな目で俺を見ないでくれ。しょうがないんだ。そういうラッキースケベは全男子の夢なんだ。
どうしたもんかと街を眺めてみたところ、クレープの出店を発見した。これだ。
「わかった。シス。あのクレープと交換で機嫌を直してくれないか?」
「う・・・。は、話だけは聞く」
よし食いついた!
「OK。お姉さん。クレープ二つください」
「はい。クレープ二つですね。お買い上げありがとうございます!」
店員さんは巨乳だったが、何とか視線をやらずに耐えきったぞ! えらい! 俺はミオナとシスにクレープを渡した。
「はむ。・・・! おいしい!」
シスは目をキラキラと輝かせた。シスはあっという間にクレープをすべて平らげた。
「気に入ったみたいだな」
「そうみたいね。それじゃ、私も…本当においしいわね! こんな甘いもの食べたことないわ!」
二人とも気に入ってくれたみたいで何よりだ。
「シス。冒険者になったら毎日これ食べる」
「シャラ! これ本当においしいわよ。食べなさい!」
むが。口の中にクレープをねじ込まれた。間接キスだがこの際気にするまい。
「確かにうまい。いいセンスだ」
「クレープくれたからお兄許す」
「ありがたき幸せ。これからもクレープを献上いたしまする」
「くるしゅうない」
シスも満足そうだ。機嫌がよくなったミオナとシスを連れて、俺たちは商店街へと赴き、シスには俊敏になる魔法がかかった、シルフの風マントと短剣。ミオナには、武器に短剣と弓。防具に革の胸当てと鉄の籠手を買った。
「防具もそろったことだし、冒険者ギルドに行くぞ!」
「「おー!」」
対魔族の前線都市ということもあり、冒険者ギルドは人でにぎわっていた。建物もレンガでできていて丈夫で大きく、この街で一番立派な施設だ。俺たちは木でできた大きな扉を開け、中に入った。
「生冒険者ギルドだ!」
まさに異世界もので見る冒険者ギルドそのままだ。昼間から酒をかっくらう野郎の冒険者。冒険から帰ったのであろう、獣の耳を山ほどもった冒険者。依頼ボードには紙で書かれた手書きの依頼書が所せましと貼られている。ただ、エルフのお姉さんやドワーフの戦士、ビキニアーマーの女の子は誰もいない。いるのはむさ苦しい、ライオンのような野郎の獣人だけ。まあ、そんなとこだろうと思っていましたとも。はい。
「お兄。少し怖い」
シスは俺の背中に隠れ、ミオナは無言で俺の服の裾を握った。
「びくびくしなくても大丈夫だ。なんかあったら俺がなんとかしてやる」
俺たちは冒険者たちを避けてずんずこ進んでいき、受付嬢のお姉さんのところに行った。少しくらい他の冒険者に絡まれるかなとも思ったが、そういうお約束はないようだ。
「すいません。冒険者登録を3人分したいんですけど」
「はい。こちらの紙に記入をお願いします」
美人さんだ! かいだことのないような、甘いような香ばしいようなにおいがする。黒髪ショートで右側だけ少し長い三つ編み。そばかすと目の下の泣きボクロがセクシーだ。シーナと書かれたネームプレートを見るふりをして、お胸を拝見いたしましょう。どれどれ・・・Cくらいか。素晴らしい。非常にポイントが高い美人さんなのだが、目に隈ができてるし、目が死んでいらっしゃる。受付嬢の仕事は大変なんだろうか? これは俺が一肌脱ぐところだな。
「なんですか?」
俺が見つめていたことに気が付いたのか? 何にせよいってみるしかないな。
「今夜僕とディナーでもどうですか?」
俺は、俺至上最高のイケメン顔とイケボで言った。これで墜ちなかった女はいない。まあ、試行回数0回だけど。
「結構です。彼氏がいますし、タイプじゃないので」
眉一つ動かさない、素晴らしいほどの無表情。攻撃力高いぜ。やっぱり、彼氏持ちか。そりゃそうだ。こんな美人を男がほおっておくわけがない。これ以上、何か思われる前に記入用紙を書いておこう。もう遅いかもしれないけど。
こういう時、両隣から女の子の視線を感じてしまうところが俺の罪なところだね。
「お兄極刑」
「軽率ね。昨日のこともう忘れたのかしら」
「じょ・・・冗談じゃないっすか。打ち解けるための軽いジョークですよ。ははは」
「ふーん。まあ、今回は許してあげるわ」
「執行猶予」
何とか助かった・・・。これからは気を付けてナンパしないとな。
気を取り直して、記入用紙を見てみると名前、年齢、性別、住所、など役所で書く住民票のようだった。一つだけ違うところは記入欄に信仰する神様の名前を書く欄があるところだ。魔法や加護なんかがあるから記入が必要なんだろう。
記入するところもそこまで多くないし、さらっと書き上げて提出した。
記入用紙を盗み見てみたところ、シスは再生の女神、ミオナは狩猟の女神を信仰しているらしい。
「創造神様という神を信仰しているようですが、創造神様というのは?」
「創造を司る神様で人や神、世界の創造をやってるらしいです」
なんか仕事でやってるみたいなノリで言っちゃったな。
「名前はないのですか?」
名前。そういえば聞いていなかったな。
「創造神様に名前はないぞ!」
突然、後ろから少女が声をかけた。基本は青色だが、毛先にいくにつれて白色にメッシュがかかっているポニーテール。シスと同じくらいの低身長だが、シスと違って胸が大きい。シスはAカップ確定なのだが、この子は・・・Dくらいだな。俺のカップセンサーがそういっている。ちなみにだが、ミオナはたぶんGカップだ。
あまりにも堂々と会話に入ってきたから一瞬スルー仕掛けたがなんだこの子! シスが明らかに敵意を向けている。
「わかりました。ではこれで受理します。あなたも冒険者志望なら、これを書いてください」
「わかった! おい、そこの人間! 我の代わりにこれを書け!」
何だこのメスガキは・・・。まあ、可愛いしおっぱい大きいし、しょうがないから書いてやるか。俺はメスガキの言う通りに記入した。進行する神様の欄は俺と同じ創造神様だった。創造神様はあまり認知されていないようだし、偶然というには出来すぎているような・・・。
メスガキの分も書き終わった俺は、シスとミオナと一緒に初めての依頼を受けようと掲示板を見に行った。当たり前のようにメスガキもついてくる。
「えーっと。君、どうしたの? 俺たちについてこなくていいんだよ」
俺が大人の余裕を見せて丁寧に相手をしてあげると、メスガキは当たり前のような顔をして言った。
「我はお前の補佐として遣わされたから、お前についていってやるのだ」
「補佐? 遣わされた?」
何言ってんだこいつ。シスがそろそろ噛みつきそうなほど威嚇しているからそろそろ離れてほしいのだが・・・。
「あ! 言うのを忘れておった! 我はゲート! 創造神様からお前を補佐する任務で下界に遣わされたのだ! 創造神様じきじきに仕事をもらった超エリートなのだ!」
ただの使いっ走りでは? という真実は飲み込むとして、それなら確かに合点がいく。あのタイミングで現れて、信仰している神様は創造神様というのはたしかに都合がよすぎだ。わざわざ俺のために手を回してくれるとは創造神様々だ。
「ってことは、これから俺たちの冒険についてきてくれるのか?」
「うむ! 我がいれば百人力だ! 感謝するがよい人間よ!」
ゲートは腕を組んで、ハーッハッハッハッハッハと笑って盛大にむせた。
「シス、こいつ嫌い」
「ごめん私、事態を飲み込めていないのだけれど」
「とりあえず、ちょっと外出ようか」
変に視線を集めてしまった俺たちは、いったん外に出て転生のことなどを省いて、創造神様のことや天界のことを説明し、どうにか分かってもらった。シスはゲートのことを嫌そうにしていたが、そのうち慣れるだろ・・・たぶん。
とりあえずみんなの理解が得られたところで、俺たちは冒険者となって初めての依頼を探すことにした!