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都会と美少女

「でっけぇ・・・!」


 カルマブレン城。異世界で初めての城は俺の男の子心を大いにくすぐった。でけえ。かっこいい。町全体を覆うでかい城壁に、それに見合う大きさのでかい城門! そして城門にはつり橋とお決まりのように配置されている門番! これだよこれ! あの田舎生活も悪くはなかったけど、せっかく異世界に来たんならこういう中世ファンタジーって感じじゃないと!


 俺がはしゃいでいるとミオナがこっそりと耳打ちしてきた。


「ちょっと、そんなきょろきょろしないでよ。田舎者だって思われるじゃない」


 やっぱり異世界人でもそういうこと思うもんなんだな。でも、あれを見て興奮しないのは男の子としてありえない!


「実際に田舎者だろ。それに、あんなすげえもん見ちゃったら興奮もするって」


「都会に来てワクワクするのはわかるけど、それが田舎臭いからダメなの! あんたは知らないだろうけど、都会って怖いんだから! 一度田舎者だと思われたら何をされるか・・・」


「心配性だな。そんなの気にせずどんどん行けばいいんだよ」


「ちょっと、待ちなさいよ!」


 俺は自分の中の男の子を満たすためにずんずん進んだ。


「お兄、お兄。待って」


 その俺の後ろをシスがちょこちょこと走ってついてくる。


「もー、どうなっても知らないんだから」


 俺たちは城門に近づき、とうとう門番と相対した。二人とも筋骨隆々の屈強な男だ。俺たちは左の門番に声をかけられた。


「止まってくれ。シャラ君。君には質問に答えてもらう」


 なんでこの門番は俺の名前を知ってるんだ? 古い知り合いか何かか? 俺はシスとミオナを見た。しかし、二人とも知らないと首を振った。


「えっと。すいません。なんで僕の名前を知っているんですか?」


「私はホルティ神様の加護持ちだ。ゆえに、君のことがわかるのだ。ホルティ神様は真実と司法、正義をつかさどる神だからな」


 チュートリアルのお兄さんのように懇切丁寧に教えてくれるな。俺がホルティ神を知らないということもわかるのか?


「そう身構えなくともいい。君の信仰する創造神様というのが知らない神だったものでな。もし、魔族だったりしたなら入れるわけにはいかないのだ。はるばる遠くからやってきたのだ。軽いデモンストレーションだとでも思ってくれ。ただ、嘘をついてもすぐわかるからな。真実を答えてくれ」


「わかりました」


「君はなぜこの村に来た」


「冒険者になってシスやミオナと平和に毎日を過ごせる未来が欲しいからです!」


 シスとミオナは照れ臭そうに笑った。きっと二人は今、さすがシャラと心の中で俺をほめたたえていることだろう。俺の株が上がっていくのを感じる。


「それだけではないのだろう。全部話してくれ」


 意外とがっつり聞いてくるんだな。それに、まだ話してないことあるってことまで見抜けるのか・・・。スゲーな。


「え・・・。あー、やっぱり男なら冒険者として血沸き肉躍る死闘を繰り広げてこの街で大金持ちになりたいからです」


 やれやれとでも言いたげに、シスとミオナに鼻で笑われた。


「うん。まだ本命を話してないよね。聞かせてくれ」


 おいおい嘘だろ。そこまで見抜けるのかよ。まずい。折角さっき株をあげたのに・・・。だけど、これ言わないと終わらないよな・・・。


「・・・。都会なら可愛い女の子いっぱいいるし、ハーレムを作れるかなと思ったからです」


 シスとミオナの顔が固まった。怖い怖い怖い怖い。なんか後ろからズゴゴゴゴゴゴとでも音が出そうなほどのオーラが出てる。助けて門番さん!


「あ、ありがとう! もう十分だ。行ってよし!」


「待ってください門番さん! 助けて! 見捨てないで!」


 先ほどまで不動を貫いていた門番は突如近づき、俺の肩をポンと叩いた。助けがきた・・・!


「そういうことならここは良い街だ! ロナスって名前の娼館がお勧めだぜ!」


 そういって門番は名刺を渡した。むしろ悪化させやがった! もうだめだ! 笑うしかねえ!


「ははは。ありがとう」


「門番さん。この場合、私の行いは正義になるのでしょうか?」


 ミオナは笑顔で拳を振り上げながら言った。


「えーっと、やりすぎないように」


「はーい♡」


 シスとミオナは笑顔で近づいてくる。俺はあまりの恐ろしさに尻もちをついてしまい、じりじりと後ろに下がる。


「ひいい! ま、待って! 落ち着こう! 話せばわかる! い、一回おっぱい揉んで落ち着こう! あ、俺のおっぱい揉む?」


「お前と違って私はそんな単純じゃねえんじゃコラー!」


「お兄! 信じてたのに! バカー!」


 ああ・・・。意識が遠のく・・・。俺はシスとミオナの怒りを一身に受け力尽きた。力尽きる前、微かに、私は正義を貫いたんだ。貫いたんだと呪文のような音が聞こえた。


 倒れこみ、今にも意識を失いそうな俺の前に黒い景色が広がる。薄れていく視界の中、俺は思った。ああ。ミオナのパンツの趣味って、結構大人っぽいんだな・・・と。

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