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冒険と美少女

 冒険者。ああ。なんと夢に満ち溢れた響きだろうか。異世界転生をする前から憧れていたその職業。男なら、心が躍らないものはいないだろう。だがそんな、なめた考えで入っていい世界ではなかった。なぜなら、肉体的にとてもきついのだ。今は、冒険者の前準備として動物を狩猟したりして練習しているのだが、これがとてもきつい。俺の筋肉は連日、筋肉痛で悲鳴を上げている。まあ、それもミオナの胸を揉めば解決はするのだが。


「・・・ミオナ。この特訓はいつまで続くんだ?」


「言ったじゃない。米の収穫が終わってからよ」


「それっていつ?」


「あと3か月くらいかしら」


「3か月か・・・」


「あら、これくらいで音を上げるようなら冒険者はやめた方がいいわよ。冒険者はああやって稼いでいくんだから」


「うう・・・。俺は大丈夫なんだけど、このままいくとあの全身やわらかかったシスちゃんがゴリマッチョになっちゃう・・・」


 実際、シスの筋肉量は目に見えて増えている。腹筋は6つに割れているし、足や腕もスラっと引き締まっている。


「筋肉増えるのはいいこと。筋肉あれば、もしもの時お兄を助けられる」


「ありがとうシス。いいことなんだけど、なんだかお兄は悲しいよ・・・」


「まったく、こんなんで大丈夫なのかしら。しっかりしてよ。私の人生もかかってるんだから」


「? どういことだ」


「どうも何も、この収穫が終わったら家も田んぼも畑も、全部売りに出すからよ」


「え! なんでだよ。ミオナは行かないんじゃないのか? あんなに反対してたし」


「あんたたちに任せてたら頼りなさ過ぎて、どこで野垂れ死ぬかわかったものじゃないもの。それに、装備を買う資金だってないじゃない」


「だからって、流石に家財全部売りに出すのは・・・」


「死んだら元も子もないじゃない.冒険者じたい博打ばくちなんだから、たくさん懸けないとリターンは返ってこないわ。それに私、あんたたちに死んでほしくないもの」


 ミオナはさも当然といった表情で言った。


「ミオナ、お前いい女だな」


「な! 何言ってんのよこのバカ! 家族を大事にするのは当たり前じゃない!」


 ミオナは顔を赤くして、わたわたしている。


「俺は感動したよ。ミオナがそこまで俺たちのことを考えてくれているとは思ってなかった」


「ミオナ優しい。私たちのお母さん」


「ほ、褒めたってなにも出ないわよ! そんな軽口叩く余裕あるのなら、剣を振りなさい!」


「手厳しいなぁ。でも。畑とか家まで売る必要はないんじゃないか?」


「人間、余裕や安全圏があるとどうしてもそれに頼ってしまって、全力を出しにくくなるのよ。冒険者もそれは同じ。だから、本気にならざるをえないよう、こうやって自分たちに渇をかけるのよ」


「なるほどな」


「まあ、シャラもシスもそんなこと気にしなくていいのよ。あんたたちはまっすぐ前を見て、自分のやりたいことを全力でやればいいの。横や後ろは私が見るから」


 そう言ってミオナは笑った。あまりにもいい女すぎる。ミオナは、俺が絶対に幸せにしてあげなければならない気がする。


「俺、シスのこともミオナのことも絶対に傷つけさせない。絶対に二人を幸せにしてみせる」


「シスも、みんなで笑っていられるように頑張る」


「ええ。期待してるわよ。そのためにも、ちゃんと筋肉点けてもらわないとね」


「よっしゃあ! やってやるぜ!」


 俺はその後も全力で鍛錬に励み、三か月後には全身が筋肉の鎧でコーティングされ黒光りするようになっていた! 太陽に反射してキラキラと輝く黒の鎧はまるで俺の・・・


「こら! 今さら泥遊びなんてしてないで収穫手伝いなさいよね!」


「お兄もミオナも、ふぁいとー!」


 ああ、せっかくの俺の虚勢の筋肉アピールが・・・。そうです。実際は少し筋肉が増えた程度で三か月前の俺とほとんど変わってないです。でも、この収穫を終えれば念願の冒険者。がんばるぞ!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺たちはあっという間に収穫を終え、全ての米を農業ギルドに売り払った。田んぼや畑も村の有力者に買い取ってもらったため、俺たちは今無職だ。


「シャラ。これあげるわ」


 もらったものは冒険者の装備一式だった。胸と背に鉄板の入った皮の上着に、動きやすい皮のズボン。そして、日上見正宗ひかみまさむねという銘の入った一本の剣。使い古された跡があったが、今すぐにでも使えるように丁寧に手入れしてあった。


「ありがとう。でも、こんな良いものをどこで手に入れたんだ?」


「ああ。これは父さんの形見なの」


「いいのか?」


「ええ。むしろ、シャラに使ってもらえて父さんも喜ぶと思う」


「そういうことなら使わせてもらうぜ」


「じゃあ、護衛はまかせたわよ」


「ああ! 任せろ!」


 家も土地も全て売り払った俺たちは、カルマブレン城の城下町へと旅立った。俺たちの冒険者生活はここから始まった! のだが・・・


「なんで俺が毎晩、見張りしないといけないんだよー!」


「だって、あんたしか戦える人いないじゃない。ここら辺は魔族も魔物も動物も少ないから何とかなるわ! 頑張って!」


「私もお兄と頑張る」


「シスは寝てていいの! こういうのはシャラの仕事なんだから!」


「そうなの? それなら、お兄に任せる。後は頼んだ」


「はい・・・任せてください」


 俺の初めての冒険者生活は、見張りから始まった!

 9時に予約投稿するの忘れてましたわ! ごめんあそばせ!

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