探索と美少女
早速村に出て周囲の状況を見て来よう! ということで、俺は二人に案内をしてもらうことにした。まず結果から話そう。外にあるのは山山山。それと田んぼに畑、川。以上。うん。わかってたけどね。
当然だけど目を引くようなものは何もなかった。自然に囲まれた土地ってだけで新鮮ではあるけど。
「シャラ―、もうこの辺でいい? 私、田植えをしておきたいし」
「俺も手伝うよ」
「あら珍しい。いつもなら修行するとか言って、どっかに言っちゃうのに」
こんな美少女をほおっておいてどこかに行ってしまうとはなんて奴だ。シャラは玉無しだったのか?
「ミオナを置いて別の場所に行くなんて考えられないよ」
「な・・・。ちょ、調子いいこと言ってないでとっとと行くわよ! バカ!」
ミオナは顔を赤らめてぶっきらぼうに言った。素直じゃなくて可愛いじゃない。
「はいはいっと」
俺はミオナのズボンでは隠しきれない美しい尻と、ゆさゆさと揺れるツインテールをジーっと眺めながらついていった。その俺の後ろに隠れるように、シスはちょこちょと後ついてくる。村を案内してくれた時からそうだが、シスは常に俺の半歩後ろをちょこちょこと歩いている。挨拶をされてもお辞儀するだけだし、きっと人見知りなんだろう。
「さ、ついたわよ。畑仕事をしてくれるっていうなら、きっちり働いてもらうから覚悟しなさい!」
鍬を片手に、ミオナはにやりと笑った。
「お疲れ様。おかげで今日で全部植えることが出来た。明日はゆっくりできそう。ありがとう! シャラ」
「いいってことよ!」
朝から夕方までかかるきつい作業だったが、意外と楽に終わることが出来た。この体が鍛えてあるというのもそうだが、鍬を振るたびに揺れるミオナを胸を見れば、疲れなど一瞬で吹き飛んだ。そして、あのシスの応援。「フレーフレー、お・に・い!」あの応援を聞くと耳が浄化され、元気3000倍に達すした。やっぱり、女というのは男を癒す神秘、魔法そのものだ。帰り道、俺はミオナの尻を見ながらそんなことを考えた。
「晩御飯できた」
肉じゃが、みそ汁、ご飯に茄子の味噌煮。品目は少ないけど非常においしそうな料理だ。肉もあるし、このあたりではとても豪華そうな料理だ。シスのお手並み拝見といこう。
「いただきまーす」
絶品だった。あまりにもうますぎて、少し泣きそうになってしまった。特に肉じゃが。家庭の味って感じでほっこりした。母さんの味だ。母さんも、あっちで元気にしてるかな? 俺は異世界で元気にやってます。
「ねえ。シャラ、お肉は言ってるの気が付いた?」
「肉じゃがね。めっっっっっっちゃ、美味しかったよ」
シスはんー! んー! と言って耳に人差し指を当てた。
「恥ずかしがらないの。あれね、実はシスがお隣さんから譲ってもらったものなんだよ。”お兄今日頑張ってたからシスも頑張る”って言って一生懸命交渉してたのよ」
「シス・・・そうなのか?」
「ん。お兄、珍しく畑仕事頑張ってたから」
顔を赤らめて、上目遣いでシスは俺のことを見た。シスが俺のためにそんなことを・・・。
「お兄は嬉しいぞー!」
俺はシスの髪をわしゃわしゃと撫でた。
「やめろー!」
シスは俺の腕をぽかぽかと叩いた。
深夜三時頃だろうか。俺は突如、目が覚めた。まあ、いっつも朝に寝て夜中に起きてって生活をしてたし、当然と言えば当然なのかもしれないけど。少なくとも、陽が落ちたら寝るという生活は夜型の俺が合わせるのは至難の業だ。俺は夜風にでもあたろうかと、布団をゆっくりとシスとミオナにかけ、起こさないように布団を出た。
「お兄。どこ行く?」
「悪い。起こしちゃったか。すぐ戻るからゆっくり寝てていいぞ」
「ダメ。今日は新月。今出たらアラヌスに攫われる」
「アラヌス?」
「夜の女神アラヌス。夜と闇をつかさどる悪神」
子供を寝かしつけるための伝承か何かか?
「ちょっと夜風にあたったらすぐ出てくるから大丈夫だよ」
「行っちゃダメ」
シスは涙目でギュッと抱きついてきた。体は微かに震えている。この反応は異常だ。もしかしたら、この世界での神様は現世に影響できるほどに絶大な力を持つのかもしれない。
「今日のお兄、やっぱり変。冒険者として家をでるなら私も連れて行って。一人は嫌」
シスは胸のあたりで頭を振った。髪の毛が当たってむず痒い。シスを安心させるため、頭を優しくなでた。
「大丈夫。俺はどこにも行かないよ」
「本当? パパやママみたいにシスを置いて死んじゃったりしない?」
「しないよ。俺がずっとシスを守るよ」
異世界転生で舞い上がっていたけど、両親が死んだのも何かわけがありそうだな。それに、俺が来たことで、シスにとっては唯一の家族がいなくなったってことだし、そう考えると可哀そうだ。
「私も、お兄を守る。もう隠れてばっかりは嫌。みんなの屍の上でシスだけ生きながらえたくなんかない」
「・・・そうか」
「決めた。シスはお兄と一緒に冒険者になる。それで、魔族を全員やっつけたら、お兄とミオナでこの村で静かに暮らすの。どう?」
シスは顔をあげて、上目遣いで言った。
「いいね。全部終わったら一緒に畑でも耕して生活するか」
「うん!」
シスははじけるような笑顔でニコリと笑った。この可愛らしい妹を守るため、俺は冒険者としてこの世界を旅することに決めた。