第八話:二人の関係?
同じ名前だけで、そこまで狼狽えるとは……思ってもいなかった。
玲奈:「木乃華、何か関係あるの?」
木乃華:「……私が言うような事じゃないんだけどね、颯くんの亡くなった妹も…「桜」ちゃんて言うの」
春野:「でも、それだけで?」
…それ、だけ?実の妹がもういないんだよ!?颯くんが……ずっと大事だった人がいなくなったのに、それだけって言う言葉は酷いよ……。
私はこのもやもやした気持ちを吐き出せずに溜め込んだ。
木乃華:「ええ。それほど大事な人だったんです」
春野:「そうか………木乃華、今日暇か?」
初対面なのにいきなり下の名前を呼び捨てで、少し驚きました。
なんだろう?私に用でもあるのかな?
木乃華:「はい…大丈夫ですけど」
春野:「よし、じゃあ玲奈は?」
今度は、玲奈ちゃんの方を向き同じ質問だろうか、名前だけで聞いていた。それよりなんで私たちの名前知ってるんだろう?
玲奈:「いや、今日はちょっと………あの、一ついいですか?」
春野:「ん?」
玲奈:「木乃華ならともかく、なんで私の名前知ってるんですか?」
それは私も気になったけど、私はともかくってどう言う事?………あ、もしかして入学式かな〜?
春野:「ふふっ、キミたちも有名人なんだよ」
玲奈:「どういう、意味ですか?」
春野:「こっちの話だよ……あ〜それと、木乃華、授業が終わったら昇降口で待っていてくれ」
木乃華:「あ、はい……」
何の用事だろ?あの人とは初対面だし、何かしたかな私?
春野:「じゃあ失礼するよ。時間をとらせてすまなかったね」
先輩はそれだけを言い、教室から出て行った。
* * *
春野先輩が帰った後、私達はまだ食べ途中だったお昼を食べながら、お話をしていた。
木乃華:「玲奈ちゃん。私達有名人だって〜」
玲奈:「……はぁ〜、流石はコノちゃんね」
木乃華:「どういう意味?」
私は喜んでいた。理由は生徒会長さんに言われた「有名人」って言葉、どういう意味かはわからないけど、何故か嬉しかった。
でも玲奈ちゃんは機嫌が悪い。どうしてだろ?
玲奈:「噂、知らないの?」
木乃華:「なんの噂?」
玲奈:「………私達が、百合趣味って言う噂」
ゆりしゅみ?……百合ってお花だよね?お花が趣味ってこと?勿論私にそういう趣味は無いけど、そんなに百合趣味が珍しいのかな?
木乃華:「私、お花やったことないよ?」
玲奈:「……ごめん、木乃華に言った私がバカだったよ」
木乃華:「え?生け花じゃないの?……あ!梓ちゃん」
梓:「は、はい!」
梓ちゃん。本名稲生 梓 高校で初めてできた友達です。背が低くて、小学生って言っても通用するくらいかわいいの!簡単に言うと妹みたいな感じです。
梓ちゃんが教室に入ってくるのを見た私は、透かさず声を掛けた。
木乃華:「梓ちゃん。百合趣味ってな〜に?」
梓:「えっ?あ、あの玲奈さん?」
玲奈:「梓、変わりに教えてあげて」
その反応と言うことは、梓ちゃんも知ってるの?私だけ仲間外れの気分だよ……。
木乃華:「お願い梓ちゃん。教えて?」
梓:「わ、わかりましたから、離してくださいっ!」
私は頼むと同時に、梓ちゃんに抱きついていた。だって凄く可愛いんだもん。
木乃華:「む〜、仕方ないな〜、それで百合って何なの?」
梓:「えっと〜……その、簡単に言うと、女性の同性愛者、のことです」
木乃華:「???」
女性の同性愛者って、……女の子が女の子のことを好きって事……だよね?
木乃華:「えーー!!」
玲奈:「木乃華うるさい」
梓:「み、皆さん見てますよ!?」
私は結構慌てた。だ、だってそれってつまり……。
木乃華:「玲奈ちゃん私のこと好きなの!?」
玲奈:「違う!そういう噂が流れてるの!」
木乃華:「は、はい……でも何でそんな噂があるの?」
私達はそういう素振りを、学校ではおろか学校の外でもしたことないのに、どうして噂が流れてるんだろ?
梓:「多分、入学式の事だと思います。とても目立っていましたし」
玲奈:「でもあれはさ……、ねぇ〜?」
玲奈ちゃんは共感を求めるように私に聞いてきた。でも私、入学式のことあんまり覚えてないんだよね……。
木乃華:「ごめん。ちょっと覚えてないや」
* * *
今日の授業も終わり、先輩に会うため昇降口に向かう間ずっと考えていた。
あの人は初対面の私に何の用があるんだろう?
悩んでいるうちに昇降口に着くと、先輩が……いた。上級生が一年生の昇降口にいるから結構目立っている。
木乃華:「すいません。遅れました」
春野:「来たか、じゃあ行こうか」
先輩は遅れた私を注意することもせずに、先に昇降口から出た。私も靴を履き替え、少し急いで後に続いた。
歩いて正門を過ぎたくらいになると、さっきの疑問を聞いてみた。
木乃華:「あの、私に何の用なんですか?」
春野:「ん?用って、天宮くんの家に行くんだが?」
木乃華:「え?」
私は立ち止まり、今の言葉を頭の中で繰り返していた。
今、先輩は颯くんの家に行くって言ったんだよね?どうして?それは心配だけど………あれ?でも、先輩って……。
木乃華:「颯くんの家、知ってるんですか?」
この質問に先輩も立ち止まり、答えた。
春野:「これでも生徒会なんでな」
木乃華:「……それ、犯罪に近くないですか?」
春野:「………さぁ、急ごう」
早歩きで行って(逃げて)しまう先輩。生徒会って人の家を調べられるの?私の学校って……危険?
* * *
その後、先輩とお話をしながら歩いていると、見覚えのある家が見えてきた。
春野:「ここ……だったな?」
木乃華:「はい」
懐かしい。まだ颯くんがいなくなる前にはよく通ったが、あれからずっと来ていなかった。
行くと涙が出そうになって辛かったから……。
私達は、颯くんの家の前に立っていた。
込み上げてくるいろんな想いを胸に、その家にあったことを知らなければ、これといって何もない普通の一軒家をただ見上げていた。
少し経つと先輩が口を開いた。
春野:「さ、行こうか」
木乃華:「え?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
心の準備がまだ出来てないのに……。私の制止を聞かずに先輩はインターホンを押した。




