表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

第三話:ごめんなさい…。

颯くんが来ないままの入学式は始まっていった。


最初に、一組みから三組みまで[私の学校は一学年三組まで]生徒一人ずつの名前を呼んだ。二組が始まる前に若い先生が、初老の先生に耳打ちしていたから多分、颯くんことだろう。



それから、新入生挨拶、生徒会長さんによる在校生挨拶、各学級の担任と各授業の先生の紹介。


残るは来賓祝辞の読み上げと、校長先生の話だけになった。





時間は9時を大分過ぎた頃、体育館の入り口が軋む音と共に開いてみんなの視線がそちらに向いた。




視線の先には一人の男子生徒、周りの視線を気にもせずにこちらに近付いてくる。その生徒が近づくにつれ、私の心臓の音が高まっていくのが分かった。




玲奈:「コノちゃん、あの人」



木乃華:「う、うん……」




玲奈ちゃんと小声で喋っていると、男子生徒は私の隣へ座り込み、足と腕を組み俯いて目を瞑っている。


はっきり言って………カッコいい!凄く男前になってて、昔の可愛かった頃の面影が全然感じられない。……でもそこはちょっとショックだったりするけど……。



いつの間にか校長先生の話が始まっていて、周りもステージの上にいる校長先生の方を見ていた。



私はというと、校長先生の話を聞かずにどうやって声を掛けようか悩んでいた。



木乃華:(どうしよぅ〜〜〜、やっぱり……昔の話の方がいいかな?)




考えた末に、覚えてる?みたいな感じで話すことに決めた。



木乃華:「あの……天宮 颯さん、ですよね?」




意を決して話しかけてみた。隣では玲奈ちゃんが小声で、「頑張れ」と応援してくれてる。


だけど結果は……。



体制を変えず、視線を少しだけ私に向け一言



颯:「………誰?」



木乃華:「あ!あの私、秋川 木乃華って言うんだけど、覚えて、ないかな?」



最初は忘れちゃっただけかな〜って思っていたけど




颯:「……知らない」




ショックです。周りに人がいるから出来ないけど、ずっと想っていた人に忘れられるとと泣きたくなるよ……。




木乃華:「そっか〜、昔近所でよく遊んだんだけど、覚えてないかぁ」



木乃華:(あれ?口が勝手に…。)



颯:「昔のこと…あまり覚えてないんだ」



木乃華:「そ〜だよね、あんな事があったんだもんね〜、あ!私のこと木乃華でいいよ、昔みたいにさ」



木乃華:(ダメ!やめて、黙ってよ私!)



何故か解らないけど、私の口は止まらなかった。



颯:「……あんな、こと?」



木乃華:(それ以上は、言っちゃダメ!)



木乃華:「え?あの…桜、ちゃん達……残念です」




颯:「……っ!」


木乃華:「……っ!」




言ってはいけないことを口走ってしまった。



彼は立ち上がり、私の胸ぐらを掴み、言った。




颯:「お前にっ!何がわかるんだよっ!!」




校長先生の話が中断し、周りの人達の視線が集中した。だけど彼は、周りをみようともせずに言葉を続けた。




颯:「お前はあの日、何があったか全部知って言ってるのかよ!」



木乃華:「ごめんなさい、ごめんなさい…」




私は謝るしかできなかった。しかも泣くという逃げ道で。


そしたら彼が……



颯:「っ……すまない。それと、もう俺に関わるな」




……なんで?彼は何も悪くない。お母さんにも言われていたのに、桜ちゃん達のことを口走ったから、全部私が悪いのにどうしてキミが謝るの?




その後彼は、椅子の隣にある鞄を持ち、その場から立ち去って行った。





木乃華:「うっ……うぅ……っく」



玲奈:「コノちゃん……」




颯くんに言われた後の私は泣いていた。玲奈ちゃんに背中をさすってもらいながら、ただ泣いていた。



相手の気持ちが分からなかった自分の愚かさと、忘れられたという一方的なショックで、入学式というみんなの晴れ舞台を汚したんだ。



最低だよ私、泣いて逃げるなんて……。







それからはあまり覚えていない。



いつの間にか校長先生の話も、入学式の閉会の挨拶も終わっていて覚えているのは、玲奈ちゃんがずっと一緒にいたってことと、気付くと教室にいたってことだけ。




玲奈:「木乃華、なにがたの?」




玲奈ちゃんが私の机の前で仁王立ち?をしてる。正直ちょっと怖いです。




木乃華:「……颯くんの、昔のこと…」



玲奈:「颯くんて……前に話してた、天宮君だよね?」




私達が中学生の頃に、颯くんのことを玲菜ちゃんには何回か話したことがあった。




木乃華:「うん…」



玲奈:「それで、昔のことって?」



木乃華:「えっと……その……」



これだけは言えないよ。私のことじゃなくて、颯くんのことだもん。



玲奈:「……じゃあそれはいいわ。でも木乃華が人を怒らすって珍しいよね?」



木乃華:「そう、かな?」



玲奈:「そうなの!…じゃなくて、怒らせる程のこと言ったの?」



木乃華:「……言った」




今更悔やんでも遅いけど、ホントに何で言っちゃったんだろう?お母さんにも言うなってさっき言われたばっかなのに……。




玲奈:「じゃあすることは?わかってるんでしょうね?」



木乃華:「……はぃ」



玲奈:「声が小さい」



木乃華:「はいっ!」




このやり取りを見られて恥ずかしかったのは言うまでもない。悪いことした後の罰って思えば軽いものだもんね。




あと訂正です。玲奈ちゃんは怒るととっても怖いです。身を持って知りました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ