第二話:いつの日かの夢
SIDE 木乃華
待ちに待った高校生!今日はその入学式です。
あっ!自己紹介が遅れました。私、秋川 木乃華と申します。
お母さん情報によると、なんと、幼馴染みの天宮 颯くんが帰ってくるそうです。しかも同じ学校ですよ。元気にしてたかな〜?
今現在は早く起きすぎて、ベッドの上でぼ〜っとしてます。
携帯電話のディスプレイを見ると、現在時刻6時12分、入学式開式時刻8時30分、まだ二時間以上もあります。
木乃華:「暇だな〜」
欠伸をして独り言を呟いていると、視線が机の上にいく。
無邪気に笑う、一人の少年と一人の少女の写真、撮ってくれたのは私のお母さんだ。
あの時が懐かしい。なにせ五年以上も前のことだから。
昔のことを思い出していると、眠気が襲ってくる。
ダメだ。眠い、少しくらいなら平気だよね?まだ二時間以上あるし……おやすみなさいっ!
私はベッドの上で横になり意識を手放した。
* * *
昔の私と颯くんが、まだ模様替えをしてない頃の私の部屋にいる。
木乃華:「颯くん。ここわかんない」
颯:「ん?ああ、ここはね、先にこっちを解いてから、次にこっちを解くの」
二人は宿題をしてる。私はあんまり頭がよくなかった。だから頭のいい颯くんに色々教えてもらっていたんだ。
解らないところがあれば教えてくれたから、嫌な顔の一つも見せないで教えてくれたから、勉強ができなくても、好きでいられたんだよ?
木乃華:「そっかぁ!ありがとう」
颯:「うん……」
でもそれだけじゃない。勉強を教えてもらうだけなら、他の人達だっているんだから
颯:「木乃華……まだあるの?」
木乃華:「えっ!いや、大丈夫!」
彼を知らずに見つめていると、少し怒られることもあった。
だけど私はね、キミと一緒にいたかった。ただ一緒にいるだけでよかったんだよ?
だから、キミがいなくなってすごく泣いたんだ。ショックで学校も休んだんだよ?
それくらい私は……
キミのことが……
* * *
?:「コノカ!」
誰かの声で夢から現実へ連れ戻される。せっかくいい夢みてたのに〜。
木乃華:「ん〜?」
?:「木乃華!いい加減起きなさい!もう八時よ」
木乃華:「……八時!?うそっ!お母さん何で起こしてくれないの!?」
声の主はお母さんだ。いつまでも起きない私を起こしに来たんだと思う。
母:「高校生にもなって、親に起こしてもらうの?」
うぅ、悔しいけど一理あるから反論できない。
母:「さっさと着替えて、顔洗ってきなさい」
木乃華:「は〜い」
返事をして、母が部屋から出てった後、私も言われたとおりに行動してリビングに降りた。
リビングでは、母が鏡の前で化粧をしている。
私はその間、キッチンに行き、テーブルの上に置いてある朝食を食べた。
それからお母さんの化粧も終わり、家を出て、車に乗った。
車が走り出して少しの時間が経つと、お母さんが口を開いた。
母:「そうそう、木乃華あなた、颯くんに失礼なこと言わないようにね…」
木乃華:「えっ?失礼なこと?」
母:「……親御さんや桜ちゃんのことよ」
木乃華:「……う、うん」
言われるまで忘れていた。颯くんに会えると言うことで、頭がいっぱいだった。
* * *
間もなく学校に着き、お母さんと別れてから昇降口でクラス表を見た後、教室へ入った。
あ!ちなみに、私は二組でした。あとね、後で紹介するけど、玲奈ちゃんて言う子とね、颯くんも一緒なの。席順も颯くんが窓際の一番前で、私がその隣、玲奈ちゃんが私の後ろだったよ〜。男女一列ずつの名前の順なんだね。
まぁそれで、席について、先に着いていた玲奈ちゃんと喋ってたらもう8時27分、そろそろ入学式の始まる時間なのに隣の席が空いたまま、どうしたんだろう颯くん。
あ!玲奈ちゃんの紹介が遅れました。
玲奈ちゃんというのはですね〜、本名は一ノ瀬 玲菜。一言で言えば親友です。中学生から友達になって、高校にも一緒に入るほど仲がいいんだ〜。あとね、笑うとすごく可愛いの、私が男の子だったら惚れちゃうくらい可愛いんだよ。
話を戻しますね。
待ってたら式が遅れると言うことで、颯くんが来ないまま体育館へ移動することになった。
玲奈:「ねぇコノちゃん。その幼馴染みの子、どうしたのかな?」
木乃華:「うん……」
少し心配だった。来ないにせよ、他にも私のこと覚えてるだろうか、こっちのほうが心配だった。
そう思っているうちに、体育館に着き、玲奈ちゃんと隣同士で座った。あ!なんで隣同士かと言うと、担任の先生が来たとき端っこの方が座りやすいってことでそうなったの。だから当然左隣は空いたまま……。