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最終話:突然のお別れ――またいつの日か。

颯:「……悪い。時間とらせたり、変なとこ見せて」



木乃華:「ううん。誰だって泣くんだもん、全然気にしないよ?」



颯:「……そう言ってもらうと、その、助かるよ」




今ではもう颯くんは泣き止み、一緒に帰路についている。隣の颯くんを見てみると、さっきまで泣いていたため瞼が少し腫れて赤くなってるし、目も真っ赤になってる。




木乃華:「目、大丈夫?」



颯:「…少し、痛い」



木乃華:「帰ったらよく冷やしたほうがいいよ?」




私も昔はよく泣いていたから分かるんだけど、いっぱい泣くと、目は必ずと言っていいほど腫れてしまう。冷やしたほうが治りもよくなるし、冷たくて気持ちいいもんね?


だからよくお母さんに助けられてた。助けられてたって言っても、冷凍庫から手の平サイズのアイスノンを取ってもらっただけなんだけどね…。




颯:「はは。木乃華、どっかの母親みたいな言葉だ」



木乃華:「………私はお母さんじゃなくて、颯くんの……」



颯:「……ん?なんか言った?」




……え!?そ、そんな……私のこ、告白が、聞こえなかったなんて……うぅ、泣きたいよぅ。


颯くんの彼女さんがいいって言ったのに……そりゃ私の声も小さかったけどさ、聞き逃さないでほしかったよ……。はぁ〜、やっぱ颯くんだよね〜……。




木乃華:「はぁ〜」



颯:「……?どうかした?」



木乃華:「な、なんでもないよ……ちょっと学校で疲れたのかな?」




なんでもなくないよ。だって人生初めての告白だったんだよ?……それが、聞こえなかったで済まされちゃったなんて、ショックだよ。




颯:「………木乃華」



木乃華:「……うん?」




私が周りから見ても分かるようにうなだれて歩いていると、颯くんが真面目そうな感じで私の名前を呼んだ。それにしても颯くん、私の状態気付いてるのかな…?




颯:「高校生活が始まって一週間が経った。……楽しみ、見つけたか?」



木乃華:「え……うん!玲奈ちゃん達とお話するの楽しいし、勉強は……少し苦手だけど先生がちゃんと教えてくれるし、今のところ、つまらないことはないかな」



颯:「そうか……よかったな」




……?なんだろう、今の質問。私のことを心配して言ったって言うより、颯くん自身が安心するために聞いたって感じだった。…………「安心」する、ため?




颯:「じゃあ木乃華、家こっちだから」



木乃華:「え?……あ、うん。ばいばい、また明日ね」



颯:「………ああ。またな」




呟いたあと行ってしまった颯くん。曲がり角で見えなくなるまで、彼の後ろ姿を見ていた。いなくなったのを確認したあと、私も帰路に着いた。




少し歩いていると何かが頭に引っ掛かる。なんだろう?颯くんと別れてから違和感を感じる。


………………そうだよ!颯くんのお家はあっちの方向じゃない。あの方向は確か……商店街と駅通り?………あっ!一人暮らしだから食材とか買いに行ったのかな?高校生なのに颯くんは大変だな〜。





* * *





その時の私は深く考えなかった。



明日になればまた颯くんに会えると思っていた。




………だけど颯くんはその日を境に姿を消した。







* * *








あれから、颯くんがいなくなってから、どのくらいの時が過ぎたんだろう。




キミがいなくなってからの私は、なんにも手が着かず、ずっとぼーっとしていた。授業の方は、先生の話は聞こえてるものの、耳から耳へ通り抜けるだけ、友達や家族との会話もまともに出来なかった。





* * *





富永先生に颯くんのことを聞いてみたら、いなくなってから数日後、退学届けを提出しようとしたらしいが、先生がなんとか止めて休学扱いにしてくれたらしい。



そのことを先生から聞いた私は、何故か知らないけど春野先輩と一緒に、颯くんのお家に行った。だけど前と違って、インターホンを鳴らしても物音一つせず、玄関のドアも鍵が閉まっていた。






* * *






颯くんがいなくなってからは、よく同じ質問をされる。



勿論颯くんのことだ。"何かあったの?"とか"連絡は?"などの質問。



前者は颯くんとの関係があまり親しくない人の質問。後者は春野先輩や玲奈ちゃんみたいな少しは繋がりを持つ人の質問だ。




そういえば、後者の質問を通じて仲良くなった子がいる。名前は、斉藤 真希ちゃん。一組の子で、会うときは毎日颯くんのことを聞いてきた。



どんな関係なんだろうとかは思ったけど、今はそんなこと聞いてる常態じゃなかったから。






これが、颯くんがいなくなってからの私の出来事だ。






* * *






キミは今どこで何をしてるの?



無事ならそれでいいの





でも



キミのことを心配している人は



キミが思ってるより多いんだよ?




だから忘れないで



キミを待っている人が沢山いることを






それと



またキミは私の前からいなくなってしまった。



昔の私はキミがいなくなってからいっぱい泣いた。



けど



今度は私泣かないよ?



またいつの日か、悲しみの涙じゃなくて、嬉し涙にするため



キミに会える日までとっておくから……。


これで完結になります。読んでくださった皆さんありがとうございました。

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