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第十五話:信用と面倒と恐怖

皆が五時間目を行ってる最中、俺は生徒指導室に体育会系のゴツい教師と対面して座っていた。



理由は先程、昼休みの終わり頃に生徒二人を保健室送りにしたあと、連れてこられた。



最初は肩に触れた奴の顔を殴り、相手は鼻血を出して倒れ込んだ。すぐにその場を去ろうと教室に行こうとしたんだが、もう一人が俺に殴りかかってきて、咄嗟に避け、脇腹を蹴り飛ばしたら相手は一撃で沈んだ。



そして誰かが呼んできたのか、数人の教師に何があったのか説明すると、生徒指導室に連行されて、ゴツい体育会系教師を目の前に、今にあたる。



教師:「……早退二回、欠席三回。んで今日はこれか?」



颯:「…………」



教師:「入試ではほぼトップか……入学式から一週間しか経っていないのに、暴力沙汰か?俺がこの学校に赴任してから四年経つが、初めてだぞ?」




うるせぇ。このクソ教師、声でかいんだよ…。じゃあどうすればいいんだ?アイツ等に謝ればいいんだろ?そんな気ねぇけど、それなのにどうしてこんなに時間掛かるんだよ?………怠いなぁ。




教師:「おい!ちゃんと聞いてるのか!?」



颯:「聞いてましたよ。先生が四年前にこの学校に来たこととか……それに、これだけ近いんですから、そんな大声出してたら嫌でも耳に入りますよ」



教師:「……お前、喧嘩売ってんのか?あんまり教師を嘗めんなよ?」




途端にドスの利いた低し声になる体育会系教師。


別に嘗めたつもりは無い。だけど、尊敬も出来ない教師に従うのも嫌だ。つまり、目の前の教師は尊敬出来ないってこと。まぁ普通にムカつくしね?




颯:「……別にな「コンコン」



誰だよ?俺が言おうとした途端に、指導室の扉がノックされ、見知った顔の人物が入ってきた。



指導室に入ってきたのは一年二組の担任、富永教員だった。まぁ俺の担任ね?




富永:「すいません川田先生。私の注意力不足で川田先生の手を煩わせてしまって、あとは私が話を聞きますので」



川田:「と、富永先生!そ、そうですか!?じゃあ、あとはお願いします。あ、天宮君、富永先生の話をよく聞くんだぞ?」




富永が来るなり態度や口調を変え、そんなことを言うなり急いで出て行ってしまった。


何なんだあの変わりようは?ってか俺のこと、君付け……したよな?もしかして、富永って結構凄い人……なのか?




富永:「ふぅ〜、やっぱ固っ苦しいのは疲れるな〜」



先程の雰囲気とは打って変わって、川田が座っていた椅子の隣の方に座り、そんなことを言う富永。




富永:「さてと、天宮くん?理由を聞いていいかしら?」



颯:「……理由?」



富永:「暴力を振るった理由よ」



颯:「………別にないです」



理由なんてない。ただ苛ついていただけで、その時偶然にもアイツ等が関わってきたから、余計に腹が立ち、事をおこした。それだけだ。




富永:「別にって……なにか理由はあるんでしょう?………理由もなしに暴力って謹慎になるし、酷くて退学よ?」




脅しのつもりかよ?別に謹慎だろうが退学だろうが、俺にはどうでもいいことなんだよ。この学校にだって、家が近いって理由から来てるし、ホントだったら高校になんて行ってない。………ただ、あいつとの、恭介との約束だから行っているだけだ。自分自身の希望な訳じゃない。


だから、富永、俺にとってはホントにどうでもいいんだよ……学校なんて。


俺がさっきの富永の言葉を、窓の外を見ながら考えていると、富永が口を開いた。




富永:「天宮くん。私はキミが心配なの」



颯:「っ……」




こいつもか………、いや、こいつは教師としてだろう。どうせ本心ではどうでもいいって思っているくせに、どうして偽善的な言葉を言うんだよ?苛つく。今の言葉やこの教師も。…………ああ、そうか、春野先輩もそういうことなのか。確か生徒会長だったよな?だったら納得する。心配だとか、警察の厄介とかそう言う意味だったのか……。


俺の頭の中はぐちゃぐちゃだ。富永の言葉でこんなになるとは思わなかった。言葉そのままの意味で捉えず、その人間の性格や立場上で言葉の意味を捕らえてしまう。自分でもやめた方がいいのは分かっている。でも……分からないんだ。人と関わることが少なすぎて、その言葉をどう受け取っていいか分からないんだよ……。




富永:「だからね、私に話して欲しいの」



颯:「…………苛ついてた時に、アイツ等が関わってきて余計に腹が立った。それと触れられたという事に嫌悪感が走り、気付いたら……やっていました」



富永:「……ふふ。予想通りだけど予想外だわ」




これ以上時間をとるのが無駄だと思い、先程やった事実を話した。けど富永は話を聞くと、少し笑い、意味の分からないことを言った。




颯:「……どういう意味です?」



富永:「あの二人に何かされたんだと思ったんだけど、喋り掛けられたのと触られたのでやるとは思わなかったわ」



颯:「………」




思ってたならそう聞けばいいのに、面倒なことしやがって、心配してるとかいらない嘘まで付いて、なに考えてるかわからないし、ホントに面倒な教員だよ。




富永:「でも一つ進歩ね?」



颯:「なにがです?」



富永:「ちゃんと話してくれたって事は、私のこと少しは信用してくれたんでしょ?」




笑顔で言う富永。……この人年幾つだよ?教師に見えないし、この学校の生徒って言っても通用するだろうな……。


それと信用した訳じゃなくて、時間が無駄なだけってことは言わないでおこう。ホントに嬉しそうだし。





* * *





富永に解放されて教室に戻ると五時間目は終わっていて、今は休憩時間。教室の中はクラスの人の喋り声で、俺が廊下にいるにもかかわらず騒々しかった。



教室に入り自分の席に着き、六時間目の用意をしていると、一ノ瀬に話掛けられた。




一ノ瀬:「天宮くん。大丈夫なの?」



颯:「大丈夫って、なにが?」



一ノ瀬:「え?喧嘩して保健室にいたんでしょ?」




喧嘩っていうか……まぁ似たような事はしたけど、俺は保健室に行ってない。五時間目はずっと生徒指導室にいたし、どっからそんな話が出てきたんだ?




颯:「いや。保健室には行ってないよ」



一ノ瀬:「あれ?じゃあコノちゃんに会わなかった?」



颯:「このちゃん?……って誰?」




会わなかった?って言われても、俺の知り合いって………真希ぐらいしかいないし、一ノ瀬の友人なんか俺が知るわけがない。なんで俺に聞くんだ?




一ノ瀬:「え?……あ!木乃華のことだよ」



颯:「秋川?体調でも崩したのか?」



一ノ瀬:「ううん。天宮くんが保健室に行ったって聞いて、五時間目が終わってからすぐに行っちゃったの」




え?なんで?保健室には行ってないけど、秋川は俺に会いに来るような程なんか用事でもあるのか?


俺は正直、秋川にはあまり関わりを持ちたくない。あいつに関わってもろくな事がないし……なんて言うか、あいつに関わると俺が俺じゃないって言うか、分からないけど、そんな感じがして………別にあいつが嫌いとかそんなんじゃないんだけど、俺はあいつが怖いんだと思う。俺の存在、この生き方が否定されてるようで、だから嫌なんだよ、あいつに関わるのは……。




一ノ瀬との話が終わり、自分の席で外を見ながらぼーっとしてるいると、六時間目の授業開始時間まであと少しになった。


だけど隣の席は空いたまま、何故か知らないけど俺のことを探しに行ったきり帰ってこない秋川。何か俺に用でもあったのかな?




一ノ瀬:「天宮くん。探した方がいいかな?」



颯:「秋川が自分でやったことだ。ほっといていいだろ」




右後ろから一ノ瀬に呼ばれたが、面倒だからそう対応した。それに……俺がわざわざ探しに行く義理がない。



そのあとに次の授業の歴史の教科書を暇つぶしに読んでいると、教室に二カ所ある出入り口の前の方が勢いよく開けられ、先程まで騒々しかった教室も一瞬で静かになり、全員がそちらの方を見ている。




木乃華:「颯くんっ!!」




入ってきたのは、俺のことを捜しに行ったまま帰って来なかった秋川。自分の席から見ても分かるように肩で息をしていて、呼吸が荒い。


ってか入っていきなり怒鳴られた、のか?俺秋川になんか悪いことしたか?見に覚えはないんだか………。だけど怒鳴ったのは確かだが、表情は怒ってるというより……なんか、今にも泣きそうな、そんな表情をしている。




颯:「あ、秋川……?」




そんな秋川を見てやっと出した言葉。だって実際怖いというか、なんというか、関わりたくない感じが三割り増しでヤバいと思ったから……。




颯:「その…なんか俺に、用でもあったのか?」




俺言葉を発するやいなや、教室の出入り口からダッシュでこっちに突っ込んでくる秋川。



やっぱ俺何かしたのか!?ど突かれんのか?殴られる?それとも張り手か?………って秋川女子だし、ど突くと殴るはないか……。だとしたら、張り手、だよな……。



秋川が突っ込んでくる刹那の間、そんなことを思い込んで覚悟を決めていたが、秋川がとった行動は俺の予想を反して想像もつかないことだった。




颯:「………えっ?」


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