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第十四話:彼女の素と自分の困惑

教室から出た後、二組の前で待っていた真希と一緒に、お昼を食べる場所を探して色んな場所を歩いていた。




真希:「どこで食べるの?」



颯:「人がいないとこがいいな」



真希:「ふふ、私何されちゃうんだろう?」




笑いながらそんなことを言う真希。真希って……こんなキャラだったか?まぁ、面倒くさいから無視したけど…。




颯:「真希、この学校ってさ、立ち入り禁止の場所ってある?」



真希:「うぅ、そのままスルーって酷いよぅ」




だって面倒だろ。ってか俺が話しているのは誰だ?少なくとも前の真希はこんな性格じゃないはずだ。


それでも俺は嘘泣きをしている真希に構わず話を続けた。




颯:「…それで、場所は?」



真希:「連れないな〜。えっとね、体育館の隣にある建物は来月壊すからダメで、来賓室は生徒立ち入り禁止だし、あとはね〜、あっ!当然男子は女子更衣室ダメだよね?」



ろくな所ねぇ〜、体育館の隣の建物って何だよ?使わないならとっと壊せっての、あとなんだ来賓室って?偉い人呼ぶなら校長室でいいんじゃねーのかよ?……最後の更衣室って、普通に考えれば分かるだろうよ……。もし入れたとしても、なんで更衣室で食べなきゃいけないんだよ?………真希って、バカなのか?




颯:「……他は?」



真希:「う〜んとね…あっ!屋上なんかもダメだって」




……屋上なんて凄くいい場所じゃないか。何でそれを先に言わないんだろう。……でも鍵かかってるよな?………壊すか。


真希にも色々話があるし、こんな事で時間を潰してる暇はない。



それに、もう決めたんだ。折角仲良くなった真希には悪いけど、俺から突き放すしか真希は離れない。無視して離そうとしても真希の性格だ、気にせず話しかけてくるし、何より俺が駄目なんだ。俺が弱いからその方法は無意味なんだ。



だから……俺が……。






* * *






今は二人きりで屋上にいる。真希は地べたに座り、持ってきた弁当を広げている。俺はというと、屋上のフェンス越しからこの街を見ていた。




真希:「天宮くん。ご飯食べないの?」



颯:「持ってきてない」




持ってきてないと言うよりは作ってないって言った方が適切だが…。別に料理が出来ない訳ではなく、朝に色々やってたから飯のことに頭が回らなかっただけ。




真希:「少し食べる?」



颯:「いや、腹空いてないし」



真希:「そっか。じゃあ…いただきます」




手を合わせて、行儀よく食べ始めた真希。



真希がご飯を食べている間に、屋上にどうやって入ったか言っとこう。



最初は壊す気で行こうとしたんだが、途中で富永に会い、真希がその事を話してしまった。バカだと思ったよ?これで壊して見つかったら確実に俺のせいになるから。


でも富永は何故か屋上の鍵を持っており、それを俺に渡した。「キミが持ってた方がいいからね」って言葉を残してどっかに行ってしまった。




まぁこんな感じで屋上にいるわけ。あと色々疑問は残っているけど、あの教師だからって事で片付けた。




颯:「真希、食い終わったらでいいんだけど、話がある」



真希:「ひゃ?……っ、待ってて、もうちょっとで食べ終わるから」



颯:「別に急がなくてもいいから」




そう。急がなくてもいいんだ。この時間が永遠になればいい。真希が昼飯を食べ終わり、俺が彼女に話をすればこの時間も終わってしまう。



自分でも嫌だ。久し振りに会って喋り、折角真希とまた友達になったのに、でもそれは俺には許されないこと……。


だから今日で断ち切るんだ。真希とも、秋川や他の人も……。


やらなければいけない事ってのは分かってる。でも出来るのだろうか?今の弱い俺に……。



真希:「ご馳走様でした。」



颯:「…………」




俺がフェンス越しから街を観ている間に聞こえた真希の言葉。耳には入っていた。だけどその言葉は俺と真希の仲が終わる言葉だから、少し逃げていたんだ。




真希:「ふぅ〜、それで?私に話があるんじゃなかったっけ?」



颯:「……ああ」




背中越しに聞こえた声に反応し、フェンス越しから街を観るのを止め、座っている真希に体制と視線を移した。




真希:「な、なに?顔になんか付いてる?」



颯:「………真希、最初に言っとく、ごめんな」



真希:「え?別に何もされてないけど」




いや、したんだよ俺は……真希が気付いてないだけなんだ…。今からお前は俺に傷つけられるんだ。


お前と再会して関わりさえ持たなければ、今こんなに苦労していないはずなのに、何で今更になって後悔してるんだよ…。




颯:「回りくどいのは嫌いだからはっきり言うな?………俺に、関わらないで欲しいんだ」



真希:「……どういう、こと?」



颯:「そのままの意味だよ」



真希:「分かんないよ!ちゃんと説明してっ!」




大きな声を出しながら、立ち上がって俺の制服を掴んでくる真希。


この言葉でもう後戻りは出来ない。でもこれは、俺が望んだこと。だから……真希に傷をつけてでも俺から遠ざける。それが今の俺がやることなんだ。




颯:「……ウザいんだよ。お前が」



真希:「……嘘、だよね?………それとも、私もなの?」



颯:「え?」



真希:「やっぱり変わらないんだね。天宮くんは……」




なんで、なんで真希は俺に拒絶されてるのに、なんでそんなに冷静でいられるんだよ?


誰なんだよ、俺の目の前にいる奴は……。




颯:「どういう、意味だよ?」



真希:「私はキミの前から絶対にいなくならない」



颯:「だからどういう意味なんだよ!?」




屋上に響く俺の大声。俺は真希がなにを言ってるか分からない。それより真希が怖かった。さっき真希と明らかに違う雰囲気、それが怖かった。




真希:「怖いんでしょ?皆がいなくなるのが……でも大丈夫。私はキミの側にいる」



颯:「お前は、誰だ?」



真希:「これが素の私。初めてみた?」




途端に笑顔になる真希。何なんだよ、それじゃあ俺が見ていた真希は素じゃなくて偽りの真希ってことかよ?




颯:「なんで、今になって見せたんだよ?」



真希:「信じて欲しいんだ。私はいなくならないってことを」



颯:「真希のことは信じれる。だけど……」




人間って言うのは何時死ぬか分からないってことは頭では分かっている。それでも俺に関わっていた人がいなくなるのは、やっぱり嫌で、凄く怖いんだよ……。




真希:「怖いんでしょ?」



颯:「……ああ。そうだよ」



真希:「大丈夫。これから時間はいくらでもある。だから……キミには変わって欲しいの。キミが私を変えてくれたように、私がキミを変える」




……俺が真希を変えた?いつだ?いや、あの時以外に考えられない。でもどうして?


俺には真希がどう変わったのかなんて分からなかった。




颯:「……変えるとか簡単に言うけど、口で言うほど人は変われないんだよ。………じゃあな、真希」



俺はそう言うと、真希を残して先に屋上を出た。




* * *





屋上から教室までの廊下を歩きながら、先程真希に言われた言葉を頭の中で繰り返していた。



……真希は俺のことを変えると言っていた。


なんで?


アイツは何がしたい?


どうして俺に関わろうとする?


俺は真希のなにを変えたんだ?



俺の頭の中では疑問だらけで渦巻いていた。



学校が始まってから大体一週間、なのにもう嫌気がさしている。理由は色々あるけど、大半は人間関係だ。こっちから関わりを絶とうとしても、あっちから踏み込んできて、俺が弱いせいかその対処が出来ない。情けない……。




生徒A:「ねぇ君さ〜、斉藤さんと付き合ってるの?」




考え事をして廊下を歩いていると、前から顔も見たこと無い馬鹿面野郎二人組が俺に声を掛けてきた。




生徒B:「だから付き合ってねーって、ね?そうでしょ?」




ウザい。ただでさえ苛ついてるのに、こういう馬鹿と関わってると余計に苛ついてくる。



大体、なんで男女が一緒にいる=付き合ってるになるんだ?……下らない。



目の前にいる馬鹿共を殺してやったら、どのくらいスッキリするんだろう?…………なに考えてんだよ俺は。ここは適当にあしらった方がいいな…。




颯:「…ただの知り合い。じゃあ」



生徒A:「ちょ、ちょっと待てって!」




すぐにこの場を立ち去ろうとしたが、制止の声と共に俺の肩を掴んできた。


肩を掴まれたと同時に襲う嫌悪感。こいつもだ、こいつも俺が拒んでるのに関わってくる。ムカつく。出来るものなら、今すぐにコイツ等、特に俺の肩を掴んできたコイツを殺してやりたい。




颯:「………るな」



生徒A:「あ?なんか言ったか?」



颯:「俺に触るなって言ったんだよクソ野郎!!」


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