プロローグ:僕と自分の記憶
どうも作者の四季です。今回は前回の物とは全く別のお話です。では、本編へどうぞ
懐かしい部屋で二人の子供が遊んでいる。
一人は男の子、名前は颯、昔の俺だ。記憶が正しければ確か小学五年生の十歳ぐらいだったと思う。
もう一人は女の子、名前は桜、俺の妹だった。まだ五歳の幼稚園児だ。桜のことは絶対に忘れない。
確か二人は、桜の提案でおままごとをすることになった。颯は嫌がらず、一緒に遊んだ。今思えば結構いいお兄さんだったと思う。
確か遊んでる最中に…
桜:「ねえお兄ちゃん」
颯:「ん?」
桜:「こんな風に桜達も結婚するのかな?」
颯:「う〜ん、分かんないけど兄弟じゃ結婚できないよ?」
桜:「そうなの?じゃあお兄ちゃんは、―――ちゃんと結婚するの?」
(ん?今誰って言った?)
颯:「どうだろうね、そうなると桜は嬉しいの?」
桜:「やだ、お兄ちゃん取られたくないもん!」
そう言って桜は泣き出したんだ。
桜が泣くと、親が来て僕を叱る。理由も聞かず一方的に僕を叱る。
母:「どうして桜を虐めたりするの?」
颯:「………」
母:「そうやっていっつも黙って」
僕は何も言わない、言ったって僕のことなんか信じようともしない。
桜:「おか…ひっく…さん、ちが…ひっく」
母:「いいのよ桜、それより颯に近付いちゃダメ、また虐められるから」
(それが自分の子に言う言葉か?昔ことなのにムカつくな)
母:「ねぇ桜、颯なんてほっといてママとパパ三人でどっか行こうよ」
桜:「お兄…っ…ちゃんは?」
母:「颯は悪い子だから駄目、行こっ」
桜:「で、でも!」
母親が桜を連れて部屋を出る。僕は(俺も)母親が大嫌いだ。
(確かこの後に、桜達は……くっ!行かせちゃいけないのに!)
扉が閉まると同時にフラッシュバックする。
* * *
気がつくと、俺と女の子が制服姿で一緒に歩いている。
(くっ…次はこれかよ?)
これは多分、俺が中学二年生の時だ。
そして彼女は、今厄介になってる立原さんの娘の琴美ちゃんだ。彼女は俺の一つ下の一年生、居候の身の俺をちゃんと人間として扱ってくれる大切だった人だ。それとどことなく桜似ていてる。
(彼女も俺のせいで)
琴美:「颯さん、さっきお父さんが言ったこと、気にしないでくださいね?」
颯:「大丈夫。慣れてるから」
(慣れてるから、か、どうだろうな?)
彼女が言ってることは、今朝に俺が叔父さん言われたことだ
『居候の身で出しゃばるな!この疫病神が!』
琴美:「嘘、ですね」
颯:「え?」
琴美:「顔に出てますよ?」
颯:「………」
琴美:「だから、相談してください。少しは颯さんの力になりますよ?」
確か、この言葉聞いて、俺泣いたんだよな。誰にも何も言えなかったのに、彼女の言葉がすごく嬉しかったんだ。
琴美:「ちょ、ちょっと颯さん!?どうしたんですか!?」
颯:「ありがとう、琴美ちゃん」
(ありがとう……)
琴美:「……はい!いつでも待ってますからね?」
彼女の笑顔が涙で見えなくなった。それから視界が変わり、移り行く視界に入ったのは3月17日の日付のカレンダー、この日も絶対に忘れちゃいけない事だ。
(やめろ)
場所は、叔父さんの家から少し離れた、人気の無い公園。
(今更、何を見せるっていうんだよ!)
中学二年生の颯が、ベンチでうなだれている。
(頼むから……)
理由は、今の時間より少し前、叔父に罵倒され、逃げるように家から出て来て、今に当たる。
颯:「はぁ〜」
もうかれこれ三十分くらいこうしている。
颯:「そろそろ、帰るか」
(やめてくれ……)
公園を出て、数分歩いていると、前方に人影がある。
琴美:「颯さーん!」
手を振り、駆け足で近付いてくる琴美ちゃん。
(来させるな!)
颯:「琴美…ちゃん…」
来させるな、ふと嫌な予感が、脳に駆け巡った。この感覚は、前に一度だけあった。
桜達が車に乗り、エンジンをかけた、その瞬間に「行かせちゃいけない」と言う声が聞こえた。
颯:「っ!駄目だ!来るな!」
キキィーー、ドンッ!
颯の声と同時に聞こえる、ブレーキ音と衝突音
(クソッ!!)
跳ねられた琴美に、急いで近付き、上半身を抱き上げ声を掛けた。
颯:「琴美ちゃん!……琴美、しっかりしろ琴美!!」
返事は無かった、代わりに頭から大量の血が出て来た。
颯:「あぁ……う、ぅわーーー!!」
颯の叫びが路地にこだました。
* * *
次に目が覚めると、ある中学校の3-1と書かれた教室。
あれから、琴美ちゃんが死んでから約半年たったんだ。
琴美ちゃんが死に、俺は立原家に追い出される様に、次の親戚の所へ行った。
そしてこの頃から(いや、桜達が死んでからだな)俺の心も変わってきた。
友達や大切な人を作っても失うのが怖くて、人との関わりを持ちたくなくて、逃げていたんだ。
(恭介……すまない)
「恭介」、本名相坂 恭介。
転入してきた俺は、話しかけられても無視する状態で、皆から嫌われクラスの輪から孤立していた。
だが恭介だけが、そんなことを気にもせず喋りかけてきたんだったよな……。
恭介:「ねぇ、天宮くん?」
俺が自分の席から退屈そうに窓の外を見ていると、喋りかけてきたんだ。
颯:「……………」
一目ちらりと見ると、また視線を、窓の外に戻す。
恭介:「あ!俺相坂、相坂恭介って言うんだ、よろしく」
颯:「……どうでもいい」
恭介:「え、え〜と、下の名前、そうって言うんだよね?」
友A:「恭介、そんな奴ほっといて遊びに行こうぜ」
恭介:「あ〜俺今日はいいや」
友A:「ちっ、じゃあ今度な」
恭介:「おう、悪いな」
颯:「……なぁ」
少し気になり俺からあいつに声をかけたんだ。
颯:「…なんで俺に構う?」
恭介:「え?そりゃあ、クラスメイトだし?」
颯:「ふ〜ん、クラスメイトねぇ〜」
恭介:「一年間一緒なんだしさ仲良くしたいじゃん?」
颯:「…え〜っと、相坂、だっけ?」
恭介:「お、おお!恭介でいいぜ」
颯:「俺に関わるな」
恭介:「え?」
颯:「聞こえなかったか?俺に近付くな」
恭介:「う〜ん、そりゃ無理だな、だってお前さ、泣きそうだぞ?」
颯:「は?俺が?」
恭介:「うん、そういう悩んでる人をほっとけないだろ?」
颯:「………くっ!はははははっ」
恭介:「なっ、なんだよ!」
颯:「お前よくそんな恥ずかしいこと言えるな?」
恭介:「う、うるせー!…ぷっ、はははははっ!」
今でも、笑いあったことを鮮明に覚えてる。
そして気付かなかったんだ、お前の闇がどれだけ大きかったのを。(違う!持っているのさえ気付けなかったんだ)
それがあんなことになるなんて、思いもしなかったんだ。