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8.友人にも話せないことはある


ロード視点



結局今回の会議では、上下水道整備事業は議題に挙がっただけで何の進展もなかった。予想内ではあるが少々拍子抜けだ。




「ルーテル宰相!! この“魔石”についてお伺いしたいのですが」


会議室から執務室に帰る途中、レンメイがルーテル宰相に話しかけているのを見掛けた。

あいつなら“魔石”に食い付くとは思っていたが、面倒くせぇことになりそうだと溜息が出る。


「“魔石”についてはジャスパー公爵が研究されている。そちらに聞いてくれたまえ」


ルーテル宰相はレンメイを冷たくあしらい、足早に去っていった。

その場に残されたレンメイがすぐにジャスパー公爵を探して動き出した所を見ると、宰相の態度を気にしてはいないようだ。


と、レンメイと目が合った。


「ロード!」


あー……面倒ごとの匂いしかしねぇ。


そそくさとその場から立ち去ろうとしたが、肩を掴まれ動きを封じられる。


「私と目が合って逃げようとするとは、何か疚しいことでもあるのですか」


嫌な予感しかしねぇから逃げようとしたんだろうが!!




◇◇◇




「━━…それで、君は私に言ってないことがあるのではないですか?」

「何もねぇよ」


レンメイの執務室に引きずり込まれてから椅子に座らされ、尋問されるように対面に座られ辟易する。

執拗に問い質してくるもんだから余計にだ。


「嘘おっしゃい! 未知の技術に“魔石”という物体、これらは今まで人間には知られていなかったものです。それをルーテル宰相が知り得たこと、フォルプローム国やバイリン国……今までの神々に関連する事件の数々。全てを紐解くと、貴方のつがいであるミヤビ殿に辿り着く。ミヤビ殿は“精霊”だと伺っていましたが……」


レンメイは俺を見据え、眦を決する。



「貴方のつがいは何者ですか」



一言一句漏らさず聞いてやると言わんばかりの表情に目をそらしたくなる。

コイツは友人だが、国を司る役職に就いているのも確かだ。そうなるとどうしても損得で物事を考えてしまう傾向にある。

だからこそミヤビの事は話せねぇ。


「何者もなにも、俺のつがいだ。それ以上でも以下でもねぇよ」


いつものように淡々と答えれば、レンメイの目がつり上がっていく。


「私は貴方と言葉遊びをしているわけではありません。きちんと答えてください」


今までのことを考えると、貴方のつがいはただの精霊ではありえない。神だと考えるのが適当かとは思いますが、それにしては人間に接する事が多いのも事実です。さらに不可解なのは、神獣様をまるでペットのように連れていること。

そして神王様が顕現されたあの時、貴方が神王様の手をとったことに神々は何も仰らなかった。


このことから推測すると、ミヤビ殿は神王様に近しい御方ではないのか。



ミヤビが神王本人だとは思いもしないだろうレンメイは、実に良い線まで推測しているようで、当たらずとも遠からずな予想に舌打ちがもれた。




「……やはり、そうなのですね」


何も答えてねぇのに自己解釈で納得したコイツは、独り言のように呟く。



「やはりミヤビ殿は……神王様のご息女様」





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ミヤビ視点



「へ……っぷし!」


現在ルーベンスさんの家で優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいたのだが、スコーンを食べている最中にくしゃみが出てしまい、とっさに口を塞いだ私の手のひらは、残骸で大変な事になっている。


「あらぁ~大変。お手拭きを持ってきてちょうだい」


ルーベンスさんの奥さんの中でも古参でおっとりしている魔族のアイネさんが、侍女に言い付け世話をやいてくれる。


侍女が持ってきてくれたお手拭きで手をふきつつ鼻をすすると、ティッシュ代わりのハンカチまで差し出してくれた。

勿論、こんな繊細な刺繍の入ったハンカチで鼻はかめないと首を振って断ったが。

誰か噂でもしているのだろうか。


「お風邪でしょうか?」


心配気にうかがってくるアイネさんに苦笑いがもれる。


「いえ、多分誰か噂してるんだと思います」

「噂、ですか??」

「きっとトモコかロード辺りが噂してるのかな」

「まぁっ 愛されておりますのね~」


朗らかに微笑むアイネさんにヘラリと笑って返し、双子達を交互に世話する奥さん達を見遣る。


ここは随分と穏やかに時間が流れていくな、と微笑ましくなる。


「皆さんが居てくれるので、子育ても楽しく感じます」

「ミヤビ様にそう思っていただけるだけで光栄ですわ~!! 私ワタクシ共が居るかいがあるというものです」


双子達が泣いて雷を出していた時は一切外に出られなかったが、最近はこうして双子を安心して任せられる上、お茶に付き合ってくれるお姉様方がいるのでとても気晴らしになっている。


勿論深淵の森ウチはウチで珍獣達もトモコ達も手伝ってくれるので楽をさせてもらっている。

しかし、そろそろ自分のお店や冒険者ギルドにも顔を出したいとも思っているのだ。


「子供達もそろそろ友人達にお目見えしたいなぁと思ってるんですよね」

「そうですね。外出させるのもそろそろ頃合いかと思いますわ~」



アイネさんに双子の外出にお墨付きをもらった翌日、久々に王宮に顔を出した私は、珍しくレンメイさんに絡まれたのである。




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人物紹介



ガブリエル・ハイソン・ジャスパー公爵:

ミヤビのうっかりから魔石の存在を知り、魔石の研究をしているガタイの良い紳士なおじいちゃん。同時に魔法の研究もしている。昔はルマンドの悪魔と呼ばれていた。



(ルーベンスさんの奥様方の一部)


カーラ: 猫獣人。一見キツそうな美女だが、世話好きで優しい。


サラ: 竜人。スーパーモデルのようなスタイルの美女


チコリ: ドワーフ族。ドワーフの中では背が高くモテなかった。可愛い系美人。


アイネ: 魔族。ルーベンスの奥様方の中でも古参の一人。おっとり美人。


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