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5.子育ての第一歩とルマンド王国一大プロジェクト


「可愛いですわ~!!」

「本当に!! 赤ちゃんなんて久しぶりに抱っこしたわ!!」

「ウフフ。双子ちゃんだなんて珍しい」

「私にも抱っこさせてくださいませ~」


女性が3人集まると姦しいとはよくいうが、美女が沢山集まると眩しいのだな、と目をしょぼしょぼさせる。


イギリスのモンタキュート・ハウスのようなばかデカい宮殿の、だだっ広い居間に通され、あれよあれよという間に美女達に囲まれた私と揉みくちゃにされる双子。


現在私は、母親修行をしてこいとヴェリウスに家を追い出され、王都にあるルーベンスさんのお宅へお邪魔しているのである。




「旦那様ってば、ミヤビ様が御出産される時は(ワタクシ)共にもお声掛け下さいと申し上げていたはずですのに……」


初めての御出産で不安を感じてらしたのではないですか? とお茶を手づからいれてくれるルーベンスさんの奥さん……の内の一人。


「あはは……確かにウチには出産経験のある者はいませんから、結局ルーベンスさんに頼ってしまいました。何かスミマセン」

「そのように遠慮なさらなくても。ミヤビ様に頼っていただけて旦那様も光栄ですわ! 勿論私共にも、いつでも頼ってくださいませ!」


ルーベンスさんの奥さん達は前に浮き島に招待した事があり、そこからちょくちょく交流がある。

彼女らは、この世界では小さく見た目も子供のような私やトモコを気に入って構い倒してくるのだ。(※女性の平均身長は175センチで、180センチの女性もざらに居る)

揃いも揃って皆小さいもの好きらしい。


彼女らは私が神王である事は知らないが、神である事は知っているようで、扱いは小さい子供のそれであるが、丁寧な口調で接してくれるのだ。

多分ルーベンスさんが言い聞かせているのだろう。


それにしても、10人(?)居る奥さんを、泥沼化させる事なく仲良く共存させるルーベンスさんの手腕は称賛に値する。

女性を見る目があるのだろう。

皆様々な種族ではあるが、性格は一様に穏やかで優しく、それでいて芯のしっかりした女性なのだ。


そんな彼女達に私は今日、弟子入りするのである。


何故そんな話になったかというと、事の発端は地球の育児書に記載されていた一文であった。


“育児ノイローゼ”。

育児中におけるストレスやプレッシャーなどをため込むことで、精神的に不安定な状態に陥り、うつ状態や睡眠障害などを引き起こす症状のこと。ホルモンバランスの崩れや、子育てに対する自信喪失などが原因とされる。


これを目にしたヴェリウスは慌てて珍獣達やロードと話し合い、育児経験があって信頼できる者を私の相談相手にしようと画策したのである。

しかし、さすがに深淵の森や天空神殿に来てもらう事は出来ない(神々が嫉妬で何をやらかすかわからない)ので、こうして最低でも週に1度は訪ねることとなったわけだ。


「こんなに小さなミヤビ様が御出産だなんて……っ お身体にさぞ負担があったことでしょう! ご無事で良かったです」


私の両手を握り込み、瞳を潤ませながら話すのはルーベンスの奥さんの中でも一番感情豊かな猫獣人のカーラさんだ。

見た目は気位の高いペルシャ猫のようなきつめの美人さんだが、涙脆く、優しい人である。ギャップ萌えとはこの人の為にある言葉だろう。

そう、彼女こそがフォルプローム国の出身であり、あのクソマズイお茶の存在をルーベンスさんに知らせていた奥さんである。


「本当に。しかも双子ですもの。(ワタクシ)共がお側でお支え出来ればよかったのですけれど……」


そう語るのは手づからお茶をいれてくれた女性で、名前をサラさんという。こちらは竜人の女性で、183センチと長身のスーパーモデルのようなスタイルの美人だ。竜人も獣人も例の事件で印象がイマイチだったが、彼女らのおかげで私の中の獣、竜人の印象は180度変わった。


「ありがとうこざいます。でもこれから色々ご迷惑をお掛けしてしまうと思うので、宜しくお願いします」


恐縮しながらお礼を伝えれば、カーラさん、サラさんだけでなく、双子を可愛がっていた奥さん達も瞳を輝かせ、「いつでもいらしてくださいませ!! 畏れながら、ミヤビ様は私達の娘。双子ちゃんは孫だと思っております。遠慮はなしですわ!!」と口を揃えて言ってくれた。

異世界で美人ママが沢山出来たな……と、つい遠い目をしてしまったのだ。



私が美人ママさん達とキャッキャウフフと盛り上がっていた頃、ルーベンスさんが国を上げた一大プロジェクトの準備に入っていたなど、全く知らないまま。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ルーベンス視点



神獣様からミヤビ殿の育児について相談された折、交換条件として上下水道という画期的な技術方法と、出産時の手助けの褒美として魔石をいただける事になった。


そして現在、畏れ多くも我らの神である魔神様と、トモコ殿に連れられて、深淵の森にある“下水処理場”と“浄水場”という施設を見学させていただいているのだ。


この施設は画期的であった。

まさに神々の叡智が詰まった聖地。



ルマンド王国の王都は、どの国よりも発展した場所だと自負していた。


水だとてわざわざ川まで行かなくとも、街の至る所に井戸を設置しており、貴族に至っては屋敷の中に井戸があるのだ。

しかし深淵の森の村では、浄化された水が部屋の中の“水道”という所から“蛇口”を捻れば出てくる画期的なものであり、もしそれがルマンド王国に広まれば、爆発的に市井の生活は向上するであろう。


そして、下水処理場!!

トイレという場所で下の処理をし、汚水をこの施設で浄化して川へ流すとは……さらに浄化後に残った汚物は乾燥、除菌して肥料にするなどと。


なんという素晴らしい技術!!


「これらを“魔石”の力を利用して行っているとは……」

「そうだ。“魔石”の研究はすでにお前達の国に居る研究者が始めている」


呆然と施設を眺めていると、魔神様が耳を疑うような事を仰った。


「な、なんですと!? すでに我が国で“魔石”の研究が!?」

「なんだ? 知らなかったのか?」

「そのような報告は受けておりませんが……」


私としたことが動揺してしまった。

しかし、その後のトモコ殿の思いもよらぬ言葉で、さらに動揺が増す。


「少し前に、でっかい魔石がルマンドの研究所にあるって聞いたからお邪魔したら、そこのおじいちゃんと仲良くなってね~。気付いたら魔石について語り合ってたんだ~」


一体何をやっているのだ!?


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