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23.第3師団の副師団長


ロード視点




「師団長!! お待ち下さいッ 新兵の訓練にわざわざ貴方様が出られる必要はありません!!」


何かとひっついて回る煩わしい部下の言葉を無視して足早に訓練場へと進む。

ここん所毎日執務室で書類と向き合ってたんだ。たまには身体を動かさねぇと鈍っちまうだろうが。と歩みを進めていると、活気のある声と刃を交える音が聞こえてきた。




「そこぉ!! 遅れているぞ!!! もっときびきび走らんか!!!!」

「止まるな!! もっと踏み込め!」


訓練場独特の緊張感と激の飛び交う中に足を踏み入れれば、「し、師団長!?」と俺に気付いた奴が声を上げる。その声に皆が動きを止めて一斉に注目しやがった。


「師団長に敬礼!!」


幹部の号令にその場に居た全員が背筋を伸ばし敬礼する。慣例であるとはいえ、堅っ苦しさに辟易した。


「俺の事ぁ気にすんな」


訓練に戻れと腕を上げ、手をヒラヒラと適当に振れば、困惑したように、しかし姿勢は崩さない。

まぁそう教えられてるんだから仕方ねぇか。

こういう時アナシスタの奴が居てくれりゃあ、もう少し場が和むんだがな……と副官の不在にため息が漏れた。


ざっとまわりを見渡せば、石のように固まっている集団を発見する。見覚えのない顔に、あれが新兵かとそいつらの近くに足を運ぶ。

俺が近付いて来た事に、ますます身体を硬くするガキ共に苦笑しながら声を掛けた。


「よぉ。テメェらが新人か?」

「ハッ そうであります!!」


新兵を率いる部隊長が代わりに答える。それも騎士団ならではのルールだ。

昔はもっと気楽に話せていたが、最近はどうも壁を感じると眉間にシワが寄る。

他の師団は貴族ばかりだから仕方ねぇにしても、第3師団(ウチ)は庶民出身が8割を占めている。だからそこまで堅っ苦しい事はなかったはずだが……。


「師団長!! やっと追い付きましたっ」


ゼェ、ハァ、と息を切らしながらやって来たのは、先程から口煩く言ってきていた部下だ。


「ん? お前達、何をグズグズしている! 師団長をご休憩できる場所へ案内しないか!!」


その部下は突然周りに叱責すると、望んでもねぇ事を指示し始めたのだ。


確かこいつは部隊長に昇進したばかりの男だったか。子爵家の次男とか言ってた気がすんな。

最近やたらとひっついて回っていたからうぜぇとは思っていたが、なんでこいつが仕切ってんだ?


男の大声に新人は困惑しながらも上司の指示を仰ぐ。他の部隊長は訝しげに、しかし男が腐っても貴族という事もありその指示通りに動き始める。



成る程、最近の堅っ苦しさはコイツが原因か━━━……




◇◇◇




「それで、その部下を無視してこっちに来たのかい?」


自身の執務机の前に座って、呆れた目を向けてくるカルロを軽く睨む。


「仕方ねぇだろ。訓練に参加したくてもそいつが邪魔するし、休憩なんていらねぇのに茶の準備までしようとすんだぜ」

「それは仕方ないだろう。君は師団長でさらにつがいは精霊様だと知れ渡っているからねぇ。実際は神王様の御息女だけれど……」


レンメイの言うことを真に受けたカルロは、未だにミヤビを神王の娘だと思っている。精霊や神だと思っているよりは近いが、実際ミヤビは神王自身だ。

ここまでバレてんなら話しても良いとは思うが、面倒なのでそのままにしている。


「少し前まではこんな事もなかったんだよっ なんつーか、もっと部下ともコミュニケーションがとれてたしよぉ」

「それはアナシスタが……君の元副官殿が上手くやってくれてたからだろう。彼は貴族だったけれど、庶民にも分け隔てなく接する事ができたし、貴族だったからこそ貴族派の騎士とも上手くやっていたからね」

「今は頼みのアナシスタも居ねぇから、貴族派の騎士が幅をきかせるようになったって事か」


そうだね。と肯定し、持っていた羽ペンをスタンドにたてると静かに息を吐き、カルロは言った。


「早い所、副師団長を決める事をおすすめするよ」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




アナシスタ・ベルノ・レブーク : 第3師団の副師団長。ロードの親友トーイ・ヒューバート・レブークの息子で、ロードに憧れて騎士になった人物。現在は冒険者。


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