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101.行く場所がない!?



さて、ショコラという可愛い護衛を連れてこれからどこへ行こうか。自分の服屋にはトモコから出禁をくらっている。

時刻はまだ8時30分。ルーベンスさんの所へはおやつの時間に寄れば良いので時間はたっぷりある。


最近は子供達を浮島の幼稚園に預ける為に、朝早くから活動するようになったので時間が有り余っているのだ。

ポーションや薬類は習慣化して毎日創っているので今日くらいはお休みする事にしたが、よく考えたら服屋も出勤できないのにポーション創りまでお休みしたら何もする事がない。

とはいえ、ショコラにポーション創りをお休みすると言ってしまった手前、やっぱり創るとは言えない。しかし今更やる事が何もないなどと、久々の護衛任務にやる気を出しているショコラに言う事もまたできないのだ。


「主様~、今日はどちらに行くのですか~?」


曇りのない眼で私を見てくる少女から目をそらす。


本当、どうしよう。


「はっ そうだ!! 珍獣村に行こう」

「長達の所ですか~?」

「そう。村の様子を見ようかなぁって」

「主様のお顔を見る事ができたら皆喜びます~」


うん。珍獣達の私の扱いが推しのアイドルだもんね……。


「じゃあ行こうか」

「はい!!」


一見のんびり平和的に見える珍獣村は、最先端の技術を駆使したハイテク村で、トモコとジュリアス君の実験場といっても過言ではない。


村の図書館なんて、浮島のキャッシュレス腕輪をかざすと本が借りられるようになっている。勿論お金はかからない。

この間図書館に行ったら、私が寄付した雑誌やマンガがチェーンに繋がれていた。ジュリアス君の魔導書やトモコの地球の技術集等のヤバい本ではなく、私のファッション雑誌やマンガがチェインドライブラリーと化していたのだ。珍獣達の貴重な本の基準がちょっと理解できないでいる今日この頃。


「主様見てください~。あの木に成ってる果物、とっても美味しそうです~」


村の様子に視線を巡らせていれば、ショコラが果樹園に植えてある木を指差し同意を求めてくる。が、戸惑う事しかできない。何故なら果樹園は500メートル先にあり、私には無数にある中のどの木でどんな果物なのか分からないからだ。ドラゴンの視力と一緒にしないでもらいたい。


「あっ 隣の木の果物も美味しそうですね~」


ショコラ君よ。私の目には果樹園があるなぁ位にしか見えないんだけど。


「神王様よ!!」

「神王様だ!!」

「きゃー!! 神王様ぁ~!!!!」


農作業に精を出す珍獣達がこちらに気付いて騒ぎ始めた。すぐ隣に住んでいるというのに、なぜ顔を出すとこうも喜べるのだろうか。

あれか、私がここに来たら黄色い声を上げるよう命令されているのか。


「神王様がお顔を見せて下さるとは、この上ない喜びですなぁ」


村長が優しい笑みをたたえて現れる。普段はこの村でのんびり農作業やらをしている村長だが、天空神殿に居る時は有能な執事長として働いてくれている。礼儀作法や執事の仕事も完璧にこなすおじいちゃんなのだ。


「長~、主様は村の視察中です~。何か変わった事や困った事はありませんか~?」

「なんとっ 我々の事を気にして下さるとは幸甚の至りでございます」


瞳を潤ませて喜ぶ村長と、彼と同じような反応を示す珍獣達の愛が重い。有り難いんだけどね。


「有り難いことに神王様のおかげで過不足なく暮らしておりますゆえ、特段困った事はございません。変わった事といえば、最近ルマンド王国の港町で“ベレッティ”という変わった海産物を手に入れまして、調理してみますとなかなか美味でしてなぁ。ロード様に献上させていただこうかと考えていた所でございます」

「へぇ。“ベレッティ”かぁ。聞いた事ないけど、どんな魚ですか?」

「いえ、魚とは少し異なるようでして、殻に包まれた不思議な生き物なのです。よろしければ実物をご覧になられますか?」

「見たいです!!」


美味しい海産物!! 楽しみ~!!


調理の仕方が残念なだけで、実はこの世界の鳥も川魚も野菜も、地球の高級食材と比べて遜色ない程美味しいんだよね。


そういえばこの世界の海の幸って食べた事なかったなぁ。この辺海無いし。


「ではこちらへ出しますので少し離れていて下さい。活きが良いので跳ねたりするやもしれません」


え? 生きてるの?


村長は無限収納インベントリから“ベレッティ”とかいう海産物を取り出した。


……いつの間にか珍獣達は魔法も簡単に使えるようになってるんだよなぁ。


「これが“ベレッティ”です」


目の前に現れたそれは、全長1メートル以上ある大きな海老だった。


「でっか……ッ」


私の言葉に反応したのか、海老が尻尾を動かしビチッと跳ねて思わず仰け反る。するとショコラが素早く前に出て海老を縦に一刀両断してしまったのだ。


「なんで!?」

「虫ごときが主様を驚かせた罰です~」


いや虫じゃなくて海老なんだけどぉ!? って違う! 驚かせただけで一刀両断っておかしいよね!?


「ショコラや、神王様は殺生沙汰は好まれないのだから、せめて見えない所でおやり」


そういう事じゃないからね!?


「このベレッティは我々の昼食にでもしますかな」


え、私も食べたい! エビフライにしてほしい。タルタルソースでガブッといきたいよ!! あ、想像したらよだれ出てきた。


「村長、ベレッティってまだあるんですか?」

「ございますが、お渡しした方がよろしいですかな」

「!! もらっても良いの?」

「勿論です。調理はいかが致しましょうか?」

「あ、調理はロードにしてもらうから、海老……ベレッティだけもらってもいいですか?」

「かしこまりました」


言うやいなや、村長は大量の生きた巨大海老を無限収納から取り出した。ビチビチ跳ねる海老が重なりあい、小山を築いている。


「い、今はこんなには必要ないかなぁ……。2、3匹もらいますね。ロードから美味しい調理法聞いてくるから、そしたら皆で美味しく調理して食べましょう」

「神王様!! なんとお優しい!!」

「神王様ステキ!!」

「え!? 神王様とお食事できるのですか!?」

「嘘!! 神王様とお食事をご一緒できるなんて!! もう死んでも良いわ!!」


一緒にご飯食べるだけで死ぬだと!?


「エビ……じゃなかった。ベレッティ、有り難うございました! じゃあロードにレシピ聞いてくるので、楽しみに待っててくださいねっ」


皆が騒ぎ始めたので、ちょっと怖くなり急いで海老を自分の無限収納に入れてロードの所へ移動したのだ。勿論ショコラを連れて。




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