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1.ルーベンスさんの受難から始まる物語

お待たせ致しました。ズボラライフ続編です!!


あの時のアレはどうなった? あの人のその後は? 等々気になる事がこの続編で書けたらと思います。

出産後の神王様一家のその後、お楽しみ下さい。



「「おぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」」




元気な産声とともに誕生し、分裂したわが子に呆然としている最中。私の旦那と友人たちは喜び涙し、そして宴会を開いていた。


珍獣村の広場ではフェスティバル会場かといわんばかりの賑わいで、屋台まで出ているという様子を、珍獣3人娘と双子しかいない部屋で聞かされたのだ。




「このスペアリブめちゃくちゃおいしいよ!」


と肉汁とソースを口の周りにべったべたにひっつけたトモコが、スペアリブにかぶりつきながら報告してくれる。

未だ絶対安静である妊婦の病室(?)に来て報告することではない。なぜ私にもスペアリブを持ってきてくれなかったのか。


「だってみーちゃん出産したばかりだし」

「出産したからこそ栄養が必要だと思うのは私だけかな?」

「出産したばかりの時は、脂っこいものや辛い物、糖分は控えたほうが良いんだよ~」

「と言いながら、その脂っこいものを目の前で頬張るの、止めてもらって良いデスカ」


テキトーな事を言いながらさんざん美味しそうに頬張った挙句、今度はスイーツもらってくる! と宣言し出て行ったトモコに殺意が芽生えた。


助産師としても腕を磨いた珍獣3人娘は、今は双子(といっても良いのか定かでないが)のお世話と私のお世話をしてくれている。


「3人も楽しんできたら良いのに」と話はしているが、今の神王様と御子様のお世話ができるのは私ワタクシ共の特権です! と頑なに譲らずフェスティバルに参加するつもりはないようだ。

旦那ロードですら、私を放って広場で騒いでいるというのに、なんという献身! ヴェリーちゃん、給料アップしてあげて!!


そうそう。今回迷惑をかけてしまったルーベンスさんだが、広場で珍獣たちに英雄のように扱われているらしい。本人が戸惑っている様子が目に浮かぶようだが、ルーベンスさんがいなければ大変なことになっていただろうし、彼には本当に感謝しかない。なので甘んじて珍獣達の接待を受けてほしい。


「さすがは神王様が御尊父様と慕う御方ですわ~」などと3人娘も感心していたが、気を付けろ。ルーベンスさんに食われるぞ!!

あの人放っておくとどんどん女性をタラしていくからなぁ。



それにしても、創造主である自分が出産など不思議な感覚だ。隣のベッドで眠っている我が子の顔を眺めると愛しさが込み上げてくるが、これが母性というものだろうか。

創造主が出産など前代未聞だし、他の創造主がこの事に興味を持つのは間違いないだろう。


広場で珍獣達に歓待されているであろうルーベンスさんと、お酒をがぶ飲みしているであろう旦那(ロード)の事を考え、そっと息を吐いたのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ルーベンス視点



ミヤビ殿の御子達を見た時、なんともおこがましい事だが、自分の孫が産まれた気分であった。

神王様という、本来であればお目にかかる事も畏れ多い、尊い御方だというのに。

本当の娘のような情が生まれていた事に気付いたのはいつだったろうか……。


息子達を殺したも同然の私が、このような情を持つなど許されるはずもないのだ。そもそも、国の為、いや、私の為に利用しているのだと、そう何度も自分に言い聞かせた。

しかしミヤビ殿は、あの馬鹿……天真爛漫さで私の作っていた壁を修復不可能な程粉々に破壊したのだ。

だからだろうか。畏れ多くも神王様の御子様だというのに、たかが人間の……こんなちっぽけな魔族の孫のように思ってしまうのは。



ああ……なんと愛しい━━……






「ルーテル卿、此度は誠にありがとうございました。あなた様には感謝してもしきれません……っ」


この“村”の長であるという人物が深々と頭を下げる。


見たところ、彼は神族というわけではなさそうだ。

しかし、神王様であるミヤビ殿の御側に住処を持てる者である。神々とて神王様の御側に侍るのは一部の者だけだと神獣様からご教示いただいた事がある。

恐らくこの“村”に住む者達は神王様の侍従達だろう。そしてそれらを纏めあげる人物……精霊以上の立場であるのは確かだ。下手をすると下位の神より立場は上かもしれん。


そのような方に頭を下げられるなど、常人である私には対応出来かねる事態なわけだが、こういう時に役に立たねばならん(バカ)は、視界の端で酒を浴びるように飲んでいる。

神王様のつがいであるにもかかわらず、未だルマンド王国の騎士として()る物好きは、相変わらず何の役にも立たない。


まぁ実際は出産したばかりのつがいについていたいのだろうが、この祭事に神王様のつがいが代表として出席しないわけにはいかぬと神獣様に引っ張り出され、やけ酒をあおっているのだろう。

喜びと怒りの感情を同時に持つなど器用な事だ。


「いや……頭を上げていただけますかな」

「我らの神王様をお救いいただき、さらに御子様まで助けて下さったお方です。頭を下げ感謝の気持ちを表すのは当然のこと」

「救うなどと、私はミヤ……神王様へ、御出産についてただ助言したにすぎないのだが」


そう。私がした事は救うなどとそのように大袈裟なものではない。あまりにも出産の知識が乏しいミヤビ殿に、見るに見かねての行為であり、このように頭を下げられるような身に覚えはない。


「ご謙遜を。さすがは神王様が御尊父様とお認めになられた御方。その高潔なお考え、感服いたします」


成る程。この方は神王様(ミヤビ殿)を中心に世界が構築されているのだろう。

いや、ここにいる皆がそうなのかもしれない。


周りをそっと伺い小さく息を吐く。


何故かここに居る方々から注目を集めているのだ。


「皆があなた様にお礼を言いたいのですよ」


目尻の皺を深めて微笑む村長は、「これこれお前達。そのように注目しては失礼にあたるので止めなさい」と困ったように眉を下げるが、目尻に刻まれた皺は深まる一方である。


周りに居た者達は、口々に村長に文句を投げているが、彼は穏やかに笑うばかりだった。



『ルーベンスよ』


いつの間にか私の隣に居た神獣様に声を掛けられ、膝を折る。


「はっ」

『ご苦労であった。ミヤビ様と御子様を救ってくれた事、礼を言う。お主には褒美をとらせよう』

「畏れ多い事でございます」

『うむ。神王様の御子様達が誕生した事は明日、正式に神々へと伝えられる。そうなれば、神々(あやつら)のこと……気持ちが高揚し、地上にも神々の祝福が降り注ぐ事は目に見えておる』

「は……?」


今神獣様は何と言った? “祝福”だと?


『一人一人に与えるものではないのでな……まぁ不治の病や怪我が治ったり、治らなんだり……その程度で済むはずだ。多分』

「多分……ですか」

『ゴホンッ それは置いておくとして、お主に一つ頼みがあるのだ』


神獣様はそう仰り、理知的な瞳を私に向けた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




翌日。

青く澄み渡った空に虹がかかると、光が地上へと降り注いだ。

青々と輝きだした木々達と、色とりどりに咲き乱れる花々が人々の目を楽しませ、夜は宝石のように星々が輝き、オーロラの出現や、流星群が降り注いだという。


幻のような光景はそれだけにはとどまらず、各国で不治の病が完治したり、失くした手足が再生するなどの奇跡が次々起こり、教会消滅事件から消沈していた人々は神王様から許されたのだと歓喜した。


奇跡はそれから数日間続いたという。



第2弾を気長に待っていて下さった皆様、今回は毎日更新ではなく週一更新となりますが、お付き合いしていただけると嬉しいです。

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