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ルリハとナミホ 2  作者: カワラヒワ
7/13

勘当

働いてお金をかせぐ。口で言うのは簡単だけれど、実際かせぐとなるとどうしていいのかぼくにはわからない。

 コトネは色々質問をしてくるけど、答えられない。

 そうなると、おばさんにきくしかない。

 ぼくたちはおばさんの家に行くことにした。


 おばさんの家につくと、おばさんは、

「まあ、お二人さん、お似合いのカップルね」

 といってわははと笑った。

 ぼくたちはおばさんがくれた、リンゴジュースを飲みながらきっと、おばさんは知っているだろう事情を話した。


「そうねえ」

 おばさんは腕組みをして考えた。

「私がお金をあげるのは簡単なことだけど、それじゃあねえ。やっぱり働いてお金は手に入れる方がいいわね」

 おばさんが言った。

「じゃあ、歌を歌ってくれる? ルリハはよく歌を歌ってくれたでしょう。あのきれいな歌声を聞かせてくれたら、お金をあげるわ」

「それが働くってことになるの?」

 コトネが目をきらきらさせて言った。


「そうよ」

 おばさんは笑った。

「簡単ね」

 コトネは立ち上がって、手を前に組んだ。

 ルルルラララー、ルルラララー、ララルルラララー・・・・

 何てきれいな声なんだろう。ぼくはびっくりして、うっとりした。

 鳥の時の歌声もすてきだけど、人間の歌声はもっといい。


 おばさんも、ぼくと同じように、驚いて、聞きほれていた。 

 コトネが歌い終わると、おばさんは、

「すばらしい」

 と言って立ち上がり拍手した。ぼくも一緒になって手を叩いた。

 

 コトネはおばさんから結構な金額のお金をもらった。

 二人でピザを食べて、アイスクリームを食べたって、まだ、たくさん残った。

 ぼくはもう自分の島に帰りたかった。けれど、コトネはまだ、街を見て回りたいという。

 ちょっと心配だったけど、一人で大丈夫というコトネを残して、島へ帰ったのだった。

 

 朝、いつもの寝床で目を覚ますと、コトネはいなかった。

 と言うより、ぼくのまわりの仲間たち誰一羽いなかった。随分日射しが強い。ぼくは寝坊をしたみたいだ。

 あの後コトネはちゃんとこっちに帰ってきたのか気になった。

 水飲み場に行ってみると、コトネがいた。

 ぼくはコトネの隣に舞い降りた。


「よかった。コトネ。ちゃんと帰ってたんだね。ぼくコトネが帰ってきたことに、気がつかなかったよ」

 ぼくは笑って言った。

「ルリハ」

 コトネがため息をついて言った。

「どうしたの? 何かあったの?」

 ぼくは心配になってきいた。


「大したことじゃないわ。あたしさっき兄さんに勘当されたの」

 ふふふっとコトネは笑った。

「ええっ、どうして?」

「これのせいよ」


 コトネが細い足を突き出していった。真っ赤にそまった小さな爪があった。

「マニキュア?」

 ぼくはきいた。

「そうよ」

 コトネが答えた。

「昨日街を歩いていたら、女の人に呼び止められて、足に塗ってくれたの。みんな塗ってもらっていたわ。きれいでしょ」

 コトネは足を交互に出した。


「あたし、昨日遅くまで、街の見学をしすぎて暗くなったから、向う島の公園の木に泊まったの。それでさっき帰ってきたばかりよ。ここで兄さんにばったり会っちゃって、あたしの爪を見て、いきなり怒ったの。お前人間になったな、ですって! マニキュアは人間の女がするものだって兄さん言ってたわ。兄さんは人間嫌いのくせに、人間のことをよく知ってるわ。兄さんて変な鳥ね」

 はははははとコトネは笑った。


「ごめんね」

 ぼくは言った。

「ううん、あたしがしたくてしたことよ。ルリハのせいじゃないわ。ばれて、よかったの。あたし、これからは自分のしたいことを自由にするの」

 コトネはそう言って羽ばたいた。ぼくもコトネの後に続く。


「ねえ、今からおばさんのところに行かない?」

 コトネが飛びながら言った。

「おばさんに歌を聞いてもらうの。それでお金をもらってピザを食べに行きましょうよ。今日は、昨日と違うピザが食べたいわ。ね、ルリハ行きましょう」

 コトネはぼくの返事も聞かないで、すでに海の上を向うの島に向かって飛んでいる。

「コトネ~」

 ぼくはその後を追うだけだった。

 

 

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