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ルリハとナミホ 2  作者: カワラヒワ
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リンゴジュース

 ぼくは立ち上がり、鳥に変身した。

 ここから向うの島へ一直線に飛んでいけば、小学校まではすぐだ。でも、バイクだと橋を渡らないといけないので随分遠回りになる。

 ナミホだってへびになって泳いでいけばすぐなのに、バイクに乗せてもらうのが好き、気持ちいいからなんて。


 ふーん。そうですか、そうですか。

 ナミホがへびじゃなく鳥だったらよかったのに。

 ナミホがぼくと一緒に空を飛べたら、バイクなんかよりずっと楽しくて気持ちいいのに。とぼくは思う。


 ぼくが小学校に着いた時、バイクはまだ着いていなかった。

 窓から中を覗くと何人かの人達がうろうろしているのが見えた。

 芸術家なんて、大した人達じゃないんだ。自分の好きなことだけしてわがままに生きてるんだ、きっと。


 バイクの音がした。

 二人がやっと着いて、学校に入っていく。

 ナミホの楽しそうな笑顔。

 それを見てぼくはまた寂しくなる。


 部屋に入ってすぐ、あいつが飲み物の缶らしき物をナミホに手渡す。ナミホがまた笑う。

 何を貰ったのかな? 多分ジュースだろうな。

 なんのジュースかな。もしかしてリンゴジュースかな。

 いいなあ。

 ぼくの喉がごくりと鳴った。


 ぼくは缶に口をつけるナミホを見ていた。

 ナミホが缶をテーブルに置くと、ぼくは急につまらなくなって、羽ばたいた。

 あのジュース、まだ、残っているのかな。そんなことを考えながら僕は空を飛んだ。

 

 夕方、いつもと同じ時刻。

 ナミホはバイクで送られて帰って来た。

 バイクが行ってしまうのを見届けると、ナミホは海に向かって歩き出した。

 木に止まってそれを見ていたぼくは、慌てて人間に変身する。


「ナミホ! おかえり!」

 大きな声で叫んで、ぼくはナミホに駆け寄る。

 ナミホは少し微笑んで、

「ただいま」

 と言った。


 ちょっと疲れた感じだけど、機嫌は悪くなさそうだ。

「ど、どうだった?」

 ぼくは何か話さなきゃと思い、そう言った。

「どうって?」

 ナミホは立ち止まった。

「あの、ああ、モデルのことだよ。どうだった?」

「べつに、どうってことないわ。じっとしているだけだもの。でも、あの人あたしのことかわいいって言ってくれるの」

 頬を赤らめて、嬉しそうにわらうナミホに、ぼくはちょっとムッとする。


 ぼくはそんなことより、聞きたいことがある。

「それから?」

 ぼくは言った。

「それだけよ」

 ナミホは歩き出した。ぼくもナミホについて歩く。

 朝、小学校に行ってから、ずっと気になることがあるんだ。

 ぼくはナミホの前に立って、ナミホが歩くのを止めた。


「何?」

「小学校でね、あいつから缶の飲み物貰っただろう。あれの中身なんだったの?」

「見てたの?」

 ぼくがうなずくと、ナミホはちょっといやそうな顔をした。

 でも、すぐに

「ジュースよ。リンゴジュース。いつもくれるの。昨日は、ミカンジュースだったわ。」

 と、答えてくれた。


「へー」

 ぼくが一番好きなジュースだ。でも、ミカンジュースもいいなあ、ぼくは思った。

「おいしかった?」

 また、ぼくの喉がごくんと鳴った。

「すごくおいしかったわ。冷たくて甘くて、夢みたいな味」

 夢みたいな味・・・。

 ぼくは、もう随分と飲んでいないリンゴジュースの味を思い出していた。

 そう、あれは夢みたいにおいしかった。


「疲れているの。もう、行っていい?」

 ナミホがため息まじりに言う。

「ああ、うん」

 ぼくはナミホに道をあけた。

 水の中に入って行くナミホ。

 その、後ろ姿を見ながら、ぼくはリンゴジュースのことを考えていた。

 

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