第60話 神威の人たち
怖くなるくらいアクセス増加したんだけど何?バグ?投稿します
「今日も筋肉痛だわ・・・。」
「ハッ。ほんと貧弱だなぁてめぇは。」
「・・・ついでに頬も痛いわ。誰かさんのせいでな!」
「性格わりぃな、謝っただろ?いつまで根に持ってんだてめぇは。」
「はぁ?」
武に誤解され殴られたあの日から3日経った。
俺の今の稽古の内容は午前に走り込みや、木刀での素振りをして、午後は腕立てなどのいわゆる筋トレをし、その後夕方まで自由時間になる。日が経つにつれちょっとだけ動けるようにはなってきた。まだまだだが。
今は自由時間で、武と共に街の三つある大通りのうちの真ん中、神威通りに来ていた。
目的はお団子を食べることだ。
武が殴ったお詫びとして連れてきてくれた。
ついた店は大河ドラマとかよく見る赤い布が敷いてある椅子が店先に置かれていて、いかにも団子屋って感じの風貌だ。
「ほれ、お待ちどうさん。」
主人であるおばあちゃんが団子とお茶をお盆にのせて持ってきた。
串付きのオーソドックスな団子だ。しかも三色。
「ったく待ちすぎて爺さんになっちまうところだったぞ。」
「はっ、まだまだ小僧の癖によく言うわ!」
「誰が小僧だ。ったく・・・。ほら食え。ここは団子と茶だけは良いんだぜ。」
「団子と茶以外もいいと言いな!」
おばあちゃんと武が言い合っている。仲がよさそうだ。
俺はそんな仲睦まじい光景をおかずに団子を頬張った。
「おお、うめぇ。」
「だろぉ?ほんとに団子と茶だけは良いんだよ!」
武は笑顔で自信満々にそう言ってきた。
そのまま団子を手に取るが、体の大きさのせいか団子が小さく見える。
実はこう見えて武は俺と同い年だということが判明している。だから敬語じゃない。
未だに信じられん。信じられんが意外と話が合う。
スムーズに友達になってしまった。
最近コミュ力上がってきたのかもな俺。
そんなことを考え、俺はお茶を飲み、一息ついた。
道に向いて座っているので通りが見渡せる。
人々が歩いていくが、髷を結った人もいるし、かんざしを刺した着物の女性もいる。腰に刀を下げた人も歩いてきた。
ぱっと見は江戸だ。
この道、店が多くメインの通りのようだが混雑しているようには見えない。むしろ空いてような気がした。
というか・・・
「なんか、若いの少なくないか?」
道行く人はなんか、おじさんって感じの人が多い。
子供すら見えない。
「ああ。」武はそう言うとお茶を飲んだ。
「・・・っはぁ。神威は昔、刀術の町って言われて有名だった。そのおかげで若いのがどんどん入ってきて、いろんな流派に入ったり、新しく作ったりと盛んだった。だがな・・・。」
武はそう言うと団子を口に頬張り左の方を見た。
この町は道が田んぼの田の字になっていて団子屋は中心の十字路に南側にある。
武が見ているのはその十字路にある広場だった。
なにやら賑わっている。
「見ろよあれを。」
そう言われ見てみると青い甚平を来た男と、白い道着姿の男がお互い木刀で戦っていた。
青い甚平の男が押しているように見える。
「あの青いの、『大海流』の『銀』って言うんだが―」
その時、道着姿の男が雄たけびを上げながら、銀に突っ込んだ。
銀がにやりと笑うのが見えた。
「『大海流』!『白鯨返し』!」
銀がそう言い放つと、彼の木刀が道着姿の男を下から打ち上げ空高くぶっ飛ばした。
すると、甚平の男はそのまま上に挙げた木刀をまるでテニスのサーブでも打つかのように構えた。
落下してくる道着の男に狙いを定めていた。
「ハッハァ!『海豚撃ち』ぃ!」
そう言った瞬間、高速で振り下ろされた木刀は道着の男を捉え、弾き飛ばした。
「いやサーブじゃん。」
ボールのように撃たれ、向かいにあった店に突っ込んだ道着の男は、立ち上がることがなく、勝負の終わりを確信させられた。
銀は両手を上げ高らかに笑っていた。
「ちっ、また勝ちやがった。」
「何の戦いだったんだ?」
「あいつら『大海流』は他の流派にああやってひたすら試合を申し込んで、勝った場合その流派を傘下に入れ大きくなろうとしてんだ。」
「嫌なら試合を受けなきゃいいだろ。」
「あいつらやり方が汚ねぇんだよ。勝負を受けないなら受けないで嫌がらせをしてくる。奉行所に捕まらねぇギリギリのやつを延々と。」
「うわ・・・。」
一番面倒なタイプの集団じゃん・・・。
「それで試合を受けて負けたら今度は毎月月謝とか言って金を要求してくる。その上、『大海流』以外の刀術は禁止してくる。しかも簡単に辞められねぇ。そんなんだから、この町から若いのがどんどん出て行っちまった。まあ他にも理由はあるんだがな。・・・つーかよ。」
そう言って武は俺の後ろの席に座っている人物を見た。
「奉行所はそろそろなんかしてくんねーのかよ?なぁ!」
「・・・ん?」
俺の後ろの人物が振り返った。
小さい丸眼鏡をかけ、クセッ毛なのかくるくるした髪を生やした男だった。
団子を頬張って驚いたような顔をしている。
「ん?じゃねぇよ。九兵衛。てめぇ役人だろうが。一応よ。」
「『大海流』の話スか?無理無理。あいつら全然ボロ出しませんもん。」
九兵衛と呼ばれた人物は結構軽い喋り方をしていた。
「誰この人?」
「こいつはこの団子屋の隣の・・・それだ、そこにある小奉行所って書いた建物あるだろ。」
確かに団子屋の隣に小奉行所と書かれた看板がついた、小さい小屋みたいなのがあった。
扉がなく、どこか交番みたいな印象を受けた。
「そこで駐在してるクソサボり役人だ。」
「なっ、誰がサボり役人ッスか!」
ガタっと音を立てて立ち上がった九兵衛は口いっぱいに団子を頬張って怒った。
「あ?じゃあ何か?今休憩中か?」
「いや、全然ちがいまスけど。」
しれっとした顔で団子を頬張っている。
「ドサボり役人じゃん。」
「酷っ!こっちの人初対面なのに酷いッス!そう言う人にはこうッス。」
そう言って九兵衛は俺たちの間に置いてあった団子を食った。
最後の一本を。
「は?何してんのこの役人。」
「やっちまうか。将斗。」
「残念スね!僕役人なんで危害加えられたら一発で捕まえられるんスよ。ヘヘッ。」
「「は?」」
九兵衛はニヤニヤしながらすごいスピードで最後の団子を食い尽くした。
なんだこいつ。
「ムカつくだろ。こいつ。」
「ああ。最高に。」
すると奥からおばあちゃんが出てきた。
「確かに役人には手を出しちゃいけないねぇ。」
「ババァまでそういうこと言いやがんじゃねぇよ。」
「誰がババァだよ。・・・でも確か、その規則は人様の私有地ではその限りじゃないはずだねぇ。」
「あ・・・。」
九兵衛が青くなった。
「武よろしく。」
「おうよ。」
武が指をぽきぽき鳴らしてる。
俺はお茶を飲んで見守った。
「いや違くてでスね・・・。」
「薄給の役人にこんな仕打ちあんまりッス。」
空になったがま口財布をひっくり返して九兵衛は泣いていた。
かわいそうに。誰がそんなことを・・・団子うっま。
「うぅ・・・そういや、さっきの話してたことなんスけど。」
「『大海流』の話か?」
団子を三本一気食いしながら武が聞いた。
贅沢だな。俺も二本同時に食ってるけど。
「若いのがいなくなったって話ッスよ。他の理由を言わないのはかわいそうじゃないッスか。」
「他の理由・・・?」
「辻斬り病の話ッスよ。」
なんだそれ。良くないワードが二つ並んでんな。
「何なんですかそれ。」
「辻斬り病ってのは数年前からこの町で流行りだした病気っす。これにかかった人は夜急に家を飛び出して、目に入った人に斬りかかるんス。発症したらもう正気は完全に失っちまって、正直知り合いからは出てほしくないッスね。」
「うわぁ・・・。」
ってもしかして俺が聖さんに助けてもらった時のあの化け物って・・・。それなんじゃないか?
「しかも普段刀を持ってないはずの人でもどこからか刀を手に入れてしまうから誰でもなっちまうんス。、感染源も不明で手を焼いてるッス。」
「そんなのが出る町にはいられねえからと、より若いのは出ていって、残ったのは流派に誇りを持ってる刀士か移動できねぇ年食った奴らばっかだ。」
「対策として、刀士さんには金を払って夜に見回りをお願いしてるんスけど・・・これ以上少なくなると困るんスよねぇ。」
「まァ、期待の新人の将斗がいるから大丈夫だろ。ハハッ。」
「バカにしてんだろ。無理だわ。」
すると九兵衛が俺の方を見ていた。
観察するように。
「・・・何ですか?」
「ん?いやぁ、最近物騒だから、身元が不明の男性なんてものを見ると役人の血が騒ぐんすよね。」
「騒ぐほど、流れてねぇだろ、役人の血。」
「酷っ?!」
武が目を閉じて川柳を詠み、それを聞いた九兵衛はうなだれた。
その後彼は顔を上げると俺の方をまっすぐ見た。
「まあ、とにかく、変な騒ぎを起こしたりしないで下さいよ?」
「は、はい。」
さっきまでとは違い真剣だから背筋を正して返事をした。
やっぱ俺って普通に怪しいからな。
服装はシャツから着流しの着物にしたから変じゃないと思うんだけどな・・・。
いや服装関係ないか。
すると九兵衛はにこりと笑ってこう言った。
「僕の仕事が増えるんで。」
うーんクソ役人。
団子を食った後、解散した俺は桜花流の屋敷に戻って玄関の扉を開けた。
奥から小走りで聖さんが来た。
「将斗さん・・・大変。」
先生は大変じゃありません。
「なんですか?」
「回覧板というものが・・・来てしまいました。」
玄関に回覧板と書かれた板が二枚重なったものが置いてあった。
開くと中に紙が入っていた。
夜の見回り番の順番が記されていた。さっきの辻斬り病の話のやつか。
いや待て、この時代紙は貴重じゃないのか?
発展具合が全然わからんなこの世界。
「何枚かあるんで多分この紙は貰っていいとして・・・。次どうするか知ってますか?」
「わからないんです・・・。」
「ですよね・・・。」
板の裏を見ると『道場通りを一周したら小奉行所へ』と書かれていた。
「一周か。これ誰に渡されました?」
「隣の・・・『天剣流』のおじい様から・・・。」
「じゃあ隣でいいか。俺が行ってきます。」
「わぁ、ありがとうございます。」
嬉しそうなのは良いが、これも本来あなたが知ってるべきなんだって。
俺は隣の『狼牙流』の門の前にいた。
「・・・名前が怖いんだよな。」
『狼』の『牙』なんてもう・・・もしかして下手なことしたら食いちぎられるんじゃないか。
うわこわ・・・。帰ろうかな。
しかし回覧板を止めた家は村八分にされたりされなかったりと聞くからな。
三食寝床付きの恩を返さねば。
「ごめんくださーい!」
俺は門を叩いた。
・・・。返事がない。
「ごめんくださーーい!」
・・・。やはり返事がない。
まさかの留守か?
その時もう一つとなりの門が開き中から白衣みたいな白い着物を羽織った男性が出てきた。腰に刀を刺しているから刀士だろう。
彼はこちらに近づいてきた。
片眼鏡をしていた。そして首には白い蛇がいた。
えぇ・・・なんで蛇。
「どうかしました?」
彼は俺にそう問いかけてきた。
「いえ、その回覧板を届けようと・・・。」
「回覧板?君は・・・どこの流派の人かな?」
彼は俺を上下に見るとそう言った。
近所だし名乗っとくか。
「俺、渡将斗って言います。桜花流に最近入りました。」
「え!桜花流に新入り?!すごいなぁ・・・いいなぁ。」
彼はのけ反ってこめかみを押さえていた。
すぐに元に戻ると彼は手を差し出してきた。
「俺は『蛇邪流』の灰。よろしく。」
「よ、よろしく。」
握手をする俺の視線は彼の首元に集中していた。
あの白い蛇だ。
いやこれ喋るやつ。絶対喋るやつ。
彼は俺の視線に気づくとその蛇に手を回した。
「ああ、これ。これはね・・・。」
絶対喋るやつだって。こういうさわやかイケメンが首に巻いてる蛇はたいてい喋る。俺調べ。
「おもちゃの蛇だよ。」
「喋れよ・・・。」
「お、いいところに気づいてるね。なんとここを押すと」
まさかの付喪神タイプ?!
期待した俺の目の前で彼は蛇の頭を押した。
シューと空気の抜ける音がした。
「どう?蛇っぽいだろう?」
「そっちか・・・。」
俺はその後『蛇邪流』の屋敷に招待された。
というのも『狼牙流』はもう活動してないため、人がいない。だから回覧はそこを飛ばして『蛇邪流』に届くことに『とっくの昔から』なっていたそうだ。
聖さん・・・。せめてその辺は知っててください。
門をくぐると庭でたくさんの、いろんな歳の子供たちが遊んでいた。
保育園みたいだな。
「俺はさっき流派を名乗ったけど、もう道場らしいことは何もやってないんだ。」
「なんか理由が?」
そう聞くと、灰さんは悲しそうな顔をしながら振り返った。
「人が全然来なかったんだよ・・・。」
「あ、ああ・・・。」
「『じゃじゃ』という名前が悪かったんだろうけど、名前を変えるのにもお金がいるからね・・・。せめて何とか人が来ないかとこうやって蛇を肩に乗っけたりしてみたんだけど・・・。ダメだった。」
うわぁ泣いてる。
聞かなきゃよかった。悪いことしたわ。
「だから道場は諦めて、子供を預かることにしたんだ。勉強を教えたりしてるんだけど・・・。道場が一番盛り上がってた時の数倍の収入になっちゃって・・・ハハ、俺刀士向いてないんだなって思ってるよ・・・。」
「ハ、ハハ。」
フォローできねぇ。
神様、こういうときなんて言えばいいんですか?
その時、『蛇邪流』の門が大きな音を立てて開かれた。
「おらぁ!将斗!いるか!」
武がいた
「え、武?どうした?」
「てめぇが連れ込まれたってお嬢から聞いてよ。助けに来たぜ。」
武がズンズンと入ってきた。
遊んでいたと子供たちはその姿を見るなり怖がって屋敷に入って行った。
「子供たちが怖がっているのだが、どういうつもりかな?」
「てめぇこそ、将斗連れ込んで何するつもりだ?あ?!」
何だこれ睨みあってんぞ。
こ、これが一触即発の雰囲気。
そんなこと考えてる場合じゃない。
二人が腰の刀に手をかけ始めてる。
誤解を解かないと。
「ちょっと待って、俺は別に。」
「君は黙っていてくれないか!」「お前は黙ってろ!」
「えぇ・・・。」
聞く耳持ってねぇ・・・。
やばいな、どんどん刀が抜かれていく。
知り合い二人の血とか見たくないんだけど・・・。
でも止まんないだろうし・・・。
「行くぜ。」
「ほう。来たまえ。」
「二人とも!」
俺は持っていた木刀を二人の間に差し込んだ。
「木刀でやってくれ。」
仲裁を諦めた選択肢だった。
本当に木刀でやることになってしまったのだが、灰さんが木刀を準備してる間に武の誤解が解けてしまった。
もう戦う理由はないな。
「さて、やるかァ!」
「え、なんで?」
武が木刀を抜いて肩を回していた。
一方灰さんも木刀を持っていた。
「俺もまだまだ刀士の端くれ。手合わせせずにはいられないね。それに・・・。」
灰さんの後ろから子供たちが見守っていた。
口々に「先生頑張れー」などと言っている。
「子供たちにかっこ悪いところは見せられないからね。」
「へっ、言うじゃねぇか。」
「え、何、やる感じなの?なんで?」
「そりゃァお前、刀士が刀持って向かい合ってんだ。やるしかねぇだろ。」
「刀を握る理由がどこにあったんだよ今。」
「まあいいじゃないか、たまにはこういうのも悪くない。」
「えぇ・・・。」
刀士二人の気持ちがわからん。
「じゃあ将斗クン。審判よろしく。」
「は、はぁ。」
俺審判かよ。
にらみ合ってるけど・・・なんて言うんだ。
なんか正式な言葉あんのかな?
知らないんだけど。
「じゃあ・・・よ、よ-い、ドン」
その瞬間武が地面を蹴って、灰さんに接近した。
「先手必勝!『天剣流』!『雷』ィ!!」
頭上から思いっきり振り下ろされる木刀。
灰さんは軽く横にずれて避けるが、木刀は地面の砂利にぶつかるとともに四散させた。
いやむしろ爆発してるように見えた。
武は笑みを浮かべながらすぐに木刀を持ち直し、軽々と振り回しながら灰さんに迫った。
しかし灰さんは巨体から繰り出される大振りのすべてを避けて見せた。
「ああ?避けるだけかァ?!」
「君の言う通りだね。ならば・・・『蛇邪流』・・・。」
灰さんは数々の大振りを軽く避けながら、直立のまま刀術を口にし始めた。
「『蛇毒』!」
瞬間、灰さんの腕が見えなくなった。
気づくと元の位置に戻っている。
だが武の動きは変わっていない。
何をした?
「なんだァ?不発かァ?!『天剣流』!」
武が跳躍した。
あの巨体が長身の灰さんよりも高く飛んでいる。
「将斗クン。『蛇邪流』の基本を見せてあげよう。」
「え?」
そう言って灰さんは目を閉じて下を向いた。
「『土砂降り』。」
武がズンッと地面を揺らし着地した。
地面にあった砂利が宙に舞った。
それを武は思いっきり、打った。
大小さまざまな礫が目を閉じている灰さんに迫るが。
彼は無傷だった。
砂利たちはまるですり抜けたかのように彼の後ろに落ちた。
「な、一つくれぇ当たってもいいだろうがよ。」
「無駄のない動きかつ、攻撃を受けないことで消耗を抑えるのが『蛇邪流』の戦い方だからね。」
「ハッ、それでどう勝つっていうんだァ?!」
武が走って灰さんに迫った。
灰さんが目を開けた。
「もう勝ったよ。」
「あぁ?・・・あ・・・れ。」
灰さんの言葉の後、武が地面に倒れこんで灰さんの目の前まで滑っていき、止まった。
近寄ってみると完全に気を失っていた。
これ・・・。
「灰さん。」
「どうだった?『蛇邪流』入ってみたくなったかい?今なら安く」
「毒はだめでしょう。」
蛇毒って言ってたし絶対毒だわこれ。
「ち、違う!『蛇毒』とは言ったけどこれは相手の顎に高速で突きをして忘れたころに気絶させるっていう技で・・・。ほ、ほんとに違うからね。」
後ろの子供たちが「先生ずるーい」と言っていた。
「み、皆、違うんだって!」
灰さんが子供たちに駆け寄るが「にげろー」「毒が来たー」と逃げられている。
なんかいろいろ面白い人だ。
俺はそう考えつつ下の武の方を向いた。
「これ俺が持って帰んのかな。」
すると、後ろの門が開いた。
「将斗さん!」
聖さんだった。
帯の締め方を軽く覚えたおかげか、着物は珍しくずり落ちていない。
進歩している。上半身、はだけているがの局部が見えない程度に抑えられている。
3日でここまで・・・。泣けてくる。
そんな聖さんは俺の手元を見た。
手元には気絶している武がいる。
彼女は刀に手をかけた。
何する気だ?
「聖さん?ちょっとなんか誤解してる可能性が」
「推してまいります。」
「ああああ・・・。」
血気盛んすぎる。
灰さんは流派の名前を直すべき