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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第4章 
54/63

第54話 俺の答えは

執筆中にパソコンがフリーズしたんですけど、電源長押ししても消えないフリーズで充電切れるまで放置する羽目になりましたけど治ったんで投稿します。

「聞こえなかったんでしょ。何回でも言うわ。あんたが好き。あんたが好きあんたが好き。どう?聞こえなかった?」


あたかも余裕そうにそう言った彼女の顔は、熱でもあるのかってくらいに真っ赤だった。

そこまでなりながら言ったのか。

こっちまで赤くなってしまう。

耳のあたりが熱い。


「・・・なんでそんな・・・。」


なんて言えばいいのかわからない。


「なんでだろ。わかんない。」

「わかんないってお前。」

「だってこんな気持ち初めてだし・・・。」


そう言うと彼女は塀に腰かけた。

下を向いて足を揺らしている。

俺は動けずにいた。


「ありえないだろ・・・だってそんな・・・。」

「ありえない・・・?どうして?」


彼女が俺の顔を見上げた。

当然目が合った。

すぐさま俺は目をそらしてしまった。


「だって別に俺・・・かっこよくないし、何もしてないし、他人と喋るの苦手だし、いいとこなんてないだろ。お前が俺を好きになる理由なんてこれっぽっちも、ないだろ。」


口から出たのはそんな言葉だ。

自分を卑下する言葉。

なんでこんなことを言っているんだろうか。

俺は何がしたいんだ。


「ふーん・・・。」


俺の言葉を聞いた彼女は顔を前に戻して地面を見ていた。

そして彼女は「確かに・・・。」と、そう呟いた。

だけどそこで終わらなかった。


「確かに第一印象は普通というか中の下くらいだったわ。体とか対して鍛えてもなさそうで、現れた場所は、魔王の城だったから怪しすぎるし、理由も変だったし。」

「下て・・・。」

「その後、屋敷で裸を見られた。最悪よ。男なんかに見せたことなんてなかったのに。」

「・・・ごめん。」

「次の日なんか祭りがあるのに動けなくなってるし、やたらなんか失礼なことを言うし。暴れるし。その次の日なんか、距離取ってくるし。」

「悪い・・・。」

「北原と戦ったときなんて、シャドウ様じゃなくて私のとこにきちゃったし。それは・・・嬉しかったけど。」

「・・・。」

「でも優位になったと思ったらすぐ煽りだすし。イチかバチかの作戦任せてくるし。戦闘も私の補助ありきだったし。ずっとスキルの負担後回しにして心配させてくるし。結局全部終わったと思ったら倒れて私に運ばせるし・・・。」

「・・・。」


悪いところばかり挙げられた。

どうして彼女が俺のことを好きなのかがより一層わからない。

彼女は身体をそらして空を見上げた。


「探したらたくさんあるわね。良くないところ。」

「だったら」

「でもそんなことどうでもよくなっちゃうくらい、あんたが好きなの。」

「っ・・・。」


そんな俺に彼女は話続けた。


「わからない・・・。なんでそうなる。俺はなんにも。」

「そうね・・・。パレードの時、私が見たかったことに気づいて飛んでくれたでしょ。あれすごく嬉しかった。ポーション飲みすぎて苦しそうになってまで頑張ってくれたよね?」

「それは・・・。」

「私がエクストラに襲われてた時、怒ってくれたでしょ?いつものあんたらしくなくて・・・ああ、そんなに怒ってくれるんだって思った。そこからなのかな好きになったの。」


彼女はまたこちらを見ているように見える。

俺はまだ彼女の顔を見れそうにない。


「だからあんたが刺されたときすごく辛かった。その後生きてたってわかったときはすごく嬉しかった。」


彼女は立ち上がり、俺の前に立った。


「今日だって、あんたと出かけるのすごく嬉しかった。ずっと。一日中。」


彼女は身体を前に倒して俺の顔を覗き込んできた。


「そのくらい、私は将斗のことが好き。」


彼女はその後一呼吸置いてから、俺に訊ねた。




「将斗はどうなの?」




その言葉を聞いた瞬間胸が締め付けられる感覚がした。

すごく苦しい。


「俺は・・・。」


・・・俺の答えは


「お前の気持ちには応えられない。」


彼女の気持ちから逃げることだった。







「「「「「はあああああああああああああああああ?????!!!!!」」」」」





突如後ろからそんな叫びがして振り返った。

振り返るとすごい形相をしたフリスさんが歩いてきていた。

その後ろでワルキューレ4人が、フリスさんを止めようとしているのか引っ張っているのが見えた。


「駄目だって、ダメだってフリス!ここで出ていくのは絶対マズいって、わ、私思うなー。」

「離しなさいあなた達。この男はここで殺すべきよ!」


4人の健闘虚しくフリスさんはどんどん近づいてくる。

殺気がすごい。

俺の心の中で危険信号が鳴り響いている。


「それについては同意するが。まだ二人でいるんだぞ。一人になったところを狙うべきだ。」


フレさんがそう言いつながら、フリスさんを引っ張っている。

俺を殺す方向では一致してるのか・・・。

しかしやはり歩みは止まらない。

これあれだな、やばいな。


「やばいミスト。俺殺されるかもしれん。」

「そうね。」


顔を戻した俺の前にいたのは指をぽきぽき鳴らしているミストだった。

風呂事件の時と同じくらい怒った顔をしている。


「え、あの。ミストさん?」


ミストが既に拳を構えている。

【後払い】を使おうか迷うが、しかしその直後何かが俺の隣に降ってきた。

この感じは覚えがある。

もしかしなくてもそれは神様だった。





数秒前。


「「はあああああああああああ???」」


白い部屋で神様と男が驚きのあまり叫んでいた。


「ここまでくるとバカが極まってんな。バカの部下もバカになっちまうのか?!」

「ちょっ、どさくさに紛れて私のことバカ扱いしましたね?!」

「てめぇ何とかしてこい。これ以上バカやるんなら殺せ!」

「だっ駄目ですよ。私神様だから殺しなんて・・・っておっ、押さないでください、あっ、落ちる。落ちちゃう!!!あっ?!」


男に蹴りとばされた神様が白い部屋から姿を消した。






「あっ神様だ。」


佐藤栞は物陰から将斗たちを見ていた。


「ほんとだな・・・って、栞さん。こういう覗きってのはやっぱり良くないと思うんだが。」

「私誰かさんが直球過ぎたせいなのか、ああいった恋の駆け引きとか気になるんです。」

「えぇ・・・。」


困惑するシャドウだったが彼も彼で少し気になっていたので見に来ているのだった。


「許せ将斗・・・。」






「なんで神様がここに。いや迎えに来たのか。そ、そうだすごく良いタイミングなんで今すぐ帰り」

「帰らせませんよ?」

「なんで?!」


神様はすごく怒っている顔をしている。

わかりやすく頬を膨らませていた。


「将斗さんが全部終わったら迎えに来いと言ったんですよ?だからちゃんと」

「あの、すいません。」


神様の話を遮ったのはミストだった。


「神様だか何だか知りませんが、邪魔しないでもらえますか。姉さんたちも。」


そう言ってミストが神様と俺の後ろを睨みつけた。

神様は完全に委縮して黙ってしまった。

後ろの人たちも歩みを止めている。


「私はね、将斗。あなたの気持ちを聞かせてって言ってるだけなの。わかる?」

「だから俺は応えられないって」


ミストは怒っていた。


「応える応えないじゃなくて。あんたが、わたしをどう思ってるかを知りたいの!」

「それは・・・。」

「私のこと好きでしょ!見ればわかるわ!いっつもちらちら私のこと見て、気づかないとでも思った?!」

「んなっ?!」


嘘だろ。気づかれてたのか。


「だっ、だったら別に」

「あんたの口から聞きたいの!『私のこと好きだ』って!言ってほしいだけなの!」

「な・・・言って何になるんだよ。」


俺はそう言った。


「ここで俺の気持ちを言って、それでどうなるんだよ。だって俺はこの世界にはいられないんだぞ。だよな神様?」

「ソウデス。」


なんで片言なんだよ。


「ほらな。だから」

「だから何?もしかして私に気持ち伝えたら『彼女が待ち続けることになって、彼女を苦しめることになる』とか考えてるわけ?」

「そうだよ。」

「何それかっこ悪。童貞が考えそうなことだわ!」

「は?」


は?


「はぁ?!童貞関係ないだろ!」

「関っ係あるわよ!!女性経験少なそうなやつが考えそうなことだわ!」

「じゃあ何が良いんだよ!どうするのが正解なんだよ!」

「さっき言ったじゃない。あんたの気持ちを私に教えなさいってそう言ってんの!それだけでいいのよ!その後とかなんてもうどうでもいいわ!私はあんたの気持ちが知りたいの!両思いだってわかったらすごく嬉しいの!」

「っ・・・あああ!もうわかったよ俺は!・・・っ!」


言葉が詰まった。

勢いで言おうとした。

のに、出てこない。ひねり出せ。


「俺も・・・!」


出てこない。

気づいた。俺は彼女のことを考えて言えなかったんじゃない。

それらしい理由を付けていただけだ。

言えない本当の理由は、俺に勇気がなかっただけだ。

じゃなきゃこんな状況で言えないわけない。

言うんだ。




「俺も、お前が好きだ!」




静かになった。

ミストは下を向いていた。

耳が真っ赤だ。

夕日のせいじゃないことくらいわかる。

ミストが顔を上げた。

目が少し潤んで口角が上がっていてそれで


「嬉しいっ!」


急にミストが抱き着いてきた。


「ちょっ待っ?!」


強く抱きしめられている。

いい香りがする。

女子臭とでも言うのか・・・いや俺キモっ何考えてんだ。

抱きつき返すべきなのかわからず俺の両腕が迷子になっていた。

どうすればいい?やばいこの後どうすればいいですか?!




2分くらい経っただろうか。

ミストは抱き着いたままだった。


「これからどうするの?」

「神様が俺を連れ帰って・・・また次の世界に行くんだろうな。」

「私も連れてって、っていったらどうする?」

「神様、どうなんすか?」

「それは・・・。」


横にいた神様は腕を組んで少し悩んだ後「残念ながら・・・。」と言った。


「・・・無理っぽい。」

「そう・・・。」


下からすすり泣く声が聞こえた。

俺はどうすればいいかわからず辺りを見回した。

いや佐藤栞なんで来てるんだ。あれで隠れてるつもりなのか?

見えてんぞ。ってシャドウもいるじゃねぇか。


「私待ってるから。」

「・・・。」

「とは言わないわ。」

「え?」

「あんたたまに優しいところあるから、絶対戻ってこようとするでしょ。無理させられないわ。」

「・・・いつか、戻ってくるよ。」

「いやそう簡単には来させられないって言うか。」


神様が横槍を入れてくる。


「とか言ってるけど、戻ってくるよ。」

「いいの?そんなこと言っちゃって。待っちゃうよ?」

「う・・・。」


その宣言に少し辛くなった。


「ふふっ、気にしないで。私は別に苦じゃないから。」

「でもな・・・。」

「大丈夫。・・・それよりその前に別の世界で将斗が死んじゃったりしないでよ?」

「善処します。」

「そこは嘘でも死なないとか言ってほしいかも。」

「シャドウなら言えるだろうけどな。俺はなぁ・・・。」

「ふふっ・・・そうね。」


するとミストが手を離して後ろに下がった。

そして神様の方を向いた。


「もういいよ、神様さん。」

「そうですか、わかりました。」


そう言って神様が俺の肩に手を乗せた。

そうか、もう帰るのか。

数日しかいなかったけど、こんなに帰りたくなくなるもんなのか。

すると神様が小声で耳打ちしてきた。


「ここでキスしてみたらどうですか?」

「俺にはそんな勇気ないの分かってんでしょうが。」


小声でそう言いながら、シッシッと神様を手で払う。


「もー。はい、それではよろし・・・ってなにこれ?!何も見えない?!怖い!」

「え?」


神様が慌てだした。

そしてそれと同時に俺は前を見た。

ミストが俺の目と鼻の先まで近寄ってきていたのだ。






「・・・・。」

「ふぅ、最後のは一体・・・。って将斗さんすごく赤くなってますけど?」

「ちょっと黙ってもらっていいすか・・・。」


俺は口元を抑えていた。

動けん。

驚きすぎて。


「にしてもアツアツな関係でしたね。それで、どうするんですか?」

「どうするって何が?」

「いや、あの子とミストさんどっちを選ぶのかなって。」

「あの子って?」

「ララちゃん。」

「俺のことロリコンだと思ってんのかお前。」

「うるせぇなぁ。」

「え?」


声のした方へ振り向くと白い部屋に知らない男がいた。

和服を着て、俺のベッドに腰かけていた。


「ただでさえ狭い部屋でうんざりしてんのに喚き散らすんじゃねぇよ。」

「誰?!この人。」

「あぁ?!」


男の眉が吊り上がった。

怒らせた・・・?え、怖・・・。

男は俺に近づいてきた。

よく見ると手に筆を持っていた。


「すいませんでした!」


とりあえず先に謝っておいた。


「あ?許さねぇよ。この俺を人だと?なめてんのか?」

「な、なめてはないっていうか」

「人じゃねぇ、神だ!」

「えぇっ?!ごめんなさい!」


神だったか・・・。

謎の男の正体とは?て感じで5章へGO

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