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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第1章 
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第5話 0 転生の前日

こしあんより粒あん派だったので投稿します

魔王の1000年の眠りからの復活。

それは世界崩壊の始まりのようだった。

世界の半分を支配していたファング王国も抵抗を見せたが、徐々に領地を奪われていった。


「国王様!同盟関係を結ぶ予定だったクラウス王国が魔王軍に攻め入られ、詳細はつかめておりませんが・・・・事実上崩壊したとのことです。」

「まさか隣国のクラウス王国までもが・・・。ちょうどあの地方には軍を配備していたはず、回せるところから兵を回して増強を図るべきか・・・。」

「ですがどの軍も長期に及ぶ戦闘によって精神的にも肉体的にも疲弊が見え始めており、ここから新たに兵を回すとなると・・・。」

「国王!ダグラ平野での、魔王軍との大規模戦闘において、あのカントル国への増援要請が受理され・・・。」


王の間では、魔王軍との戦争に関する報告がひっきりなしに続いていた。


「やはり、我々の力だけでは・・・。」


報告への対応を終え一段落ついた王はこめかみを押さえていた。

進展しない魔王軍との戦いに精神的に疲弊しきっていたのだ。

しかし、疲弊しているのは自分だけではないと自分を奮い立たせ座りなおす。

そこに一人の青年が入ってきた。


「父上。」

「おお!戻ってきたか。無事で良かった。」


王の息子、グレン王子は魔王軍の不穏な動きが噂されていた地方の調査に向かっていた。

息子の無事を喜ぶ王とは反対にグレンの顔は暗かった。


「父上、魔王軍は予想通り軍を固めておりました。その数は前回の侵攻と比べ、倍以上はあるかと。」

「・・・そう、か。ご苦労だった。」


王は一回ため息をついた後、そばにいた従者達へこう伝えた。


「すまないが外してくれるか、グレンと話がある。」




従者たちが退室し、王とグレン王子は部屋に二人きりになるが、先ほどの報告や芳しくない戦況もあってか重い雰囲気になってしまい、お互いに話を切り出せずにいた。


「父さん、何か用があるんじゃないですか?」

「・・・ああ、悪い。いかんな、いざ伝えるとなると息子に対してでも緊張してしまう。」

「何でも言って下さい。僕は父さんの力になりたいんです。」

「ありがとうグレン。・・・ならば、話そう。」


そう言いながら王は近くのテーブルから一枚の巻物を取り出す。

少々古びていてところどころ朽ちたのか欠けていた。


「これが何か知っているか。」

「存じ上げません。それは一体?やけに古びた巻物ですが。」

「この巻物には勇者降臨の儀について記されている。この儀式についてはお前も聞いたことがあるだろう。」

「勇者降臨の儀?幼いころによく聞かせてくれた、お伽話に出てくるあの儀式のことですか。」

「そうだ。」

「まさか、その儀式を行うとでも?父さん、どこの誰にそそのかされたかは知りませんが馬鹿なことはやめたほうがいい。そんなものできるはずがない。」

「あのお伽話は実話だ。そして、この巻物は我ら王家に代々伝えられたもの。」

「そんな、信じられない。」

「この巻物は解読すると最初にこう記されていた。『魔王の封印は1000年後に破かれる。その時再び勇者の力が必要となるどろう。初代王として後世のためにこれを残す。』とな。」


グレン王子はいまだに信じられないというような表情をしている。

勇者降臨の儀はお伽話で聞き、存在を知った。だからこそ信じられなかった。

お伽話は所詮お伽話。現実ではありえない。

グレン王子が考え込んでいた時、王の手から巻物が消えていた。

グレンの後ろから巻物を読みながら女性が歩いてくる。


「グレンくーん。とりあえずやってみない?眉唾物だし。」

「レヴィ、いくら王国最強とうたわれる君でも無断で王の間に入るのはいかがなものだろうか。しかも魔法まで使って。ここはあなたの新作魔法を試すところではないんですよ。」

「あれ?驚かすつもりで出てきたんだけど、おかしいな。」


魔法使いレヴィ。ファング王国において最強の魔法使いと言われている存在。

実力は折り紙付きな上、魔法の探求に力を注いでおり、本来五属性しかない魔法とはまた別に防御魔法など属性の存在しない魔法を作り出すなど、偉業が多く残している。

ただし礼儀というものが一切なく、グレンはそんな彼女を嫌っていた。


「グレン、許してやれ。今回は彼女の力も借りようと思っているんだ。」

「は?!正気ですか?!彼女は王命で招集をかけたとき『戦争嫌いだから行きません』とふざけたことを言って力を貸してくれなかったじゃないですか。」

「いや~、戦争はめんどいから嫌いなんだけど、勇者降臨の儀なんて気になって気になってしょうがないじゃない?」

「ハァ・・・父上、彼女は面白半分で協力してるだけです。兵士たちが必死になって戦っているのに、こんなことを・・・まさか、彼女にそそのかされたんじゃないですよね?」


グレン王子はレヴィを睨みながらそう言う。

彼女はそんな視線を何ともないと言った風にウインクして返す。

一層王子の睨みがきつくなった。


「いや、勇者降臨の儀へから彼女の協力まですべて私の考えで行っている。」

「そんな・・・」

「グレン、よく聞け。この戦いは、人類ができる限りのことすべてをやらなければ勝てないと私は考えている。」


王は玉座から立ち上がり、拳を握り締める。


「俺は王として国民の生活を、明日を、命を守る義務がある。そのうえで使えるものはすべて使う。それが俺の王道だ。だから、この儀式は必ず行う。」

「父上・・・。」


グレン王子を見つめる王の瞳は一点の曇りもないまっすぐな瞳をしていた。

王子はそんな王を羨望のまなざしで見つめ返していた。


「なに、とてつもない化け物が現れたとしても俺が飼いならしてコキ使って見せるぐらいの気概は見せてやるさ。」

「わかり・・・ました。」

「ありがとう。」


その後グレン王子は一回考え込み、


「ならばレヴィ。」


そういうとレヴィのほうを向き、


「なあに?」

「失敗は許さない。父上の顔に泥を塗らせるわけにはいかない。やるからには必ず成功させてください。仮にも王国最強の魔法使いならば。」

「王国最強はみんなが勝手に言ってるだけでしょ。」

「ハッ!もしかして自信がないのですか?あきれた。」


グレン王子がわかりやすいジェスチャーを混ぜながら笑う。


「は?・・・アハハッまさか?」


そんな王子に対してレヴィは大げさに胸を張りつつ不遜に笑った。


「勇者なんて生ぬるい、それこそこんなくだらない戦い一瞬で終わらせるくらいの化け物出してやるわよ。」

「できれば勇者でいいんですが、それはそれは。期待しています。」


レヴィとグレン王子は笑いあう。

その目は全く笑っておらず、互いを睨みあっていた。

多分仲悪いんだと思います

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