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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第4章 
48/63

第48話 崩れゆく戦況

4章まじで長いなと思いにふけつつ投稿します

広場で『影』対勇者と六騎士の戦いが始まる少し前のこと。


「栞さん!次はどこに行こうか?」

「どこへでも」

「本屋か!いい本屋を知っているんだ。古本屋なんだけど、普通じゃ見れない珍しい本がいっぱい揃っていて・・・。」

「フフッ・・・。」


フリスはシャドウと歩いていた。

シャドウが異常な状態であることをフリスはわかっていた。

しかし、打開策を練ろうとする気がおきなかった。

彼女の愛するシャドウが、自分のことを、彼が一番愛している佐藤栞に見えていたからだった。

話こそ通じないものの、彼は自分へ愛をささげてくれる。

決して自分へと注がれない愛が今自分に向いているのだから。

彼女とシャドウは町中を歩き続けた。

はたから見ればデートをするカップルそのものであった。

周りの人々がおかしな行動をしているが、フリスは見て見ぬふりをした。

この状況を変えたくなかったのだ。

たとえ自分のことを見えていなくても、このままでいいと。偽りでもこの愛を受け取れればいいと。

それほどまでに彼のことを愛していた。


「もうこんな時間だ。栞さん。今日は楽しかった。」

「私もです。」

「まだ遊び足りないだなんて、栞さんからそんな言葉を効けるとは思わなかった。光栄だな。」


シャドウの中で展開されている会話をフリスは読めず、彼女は歯痒い思いをした。

自分では彼が求める答えを言えない、そう言われているような気がしたからだった。


「栞さん。」


シャドウがフリスを見つめる。

ただまっすぐに。


「あなたのことが好きでした。俺と付き合ってください。」


彼が発した言葉は愛の告白だった。

決して自分には与えられないその言葉を言われフリスは歓喜し、同時に自分はこの状況でしかこれを与えられないという事実に悔しく思った。

しかし、彼女は拳を握り締めた。

このままシャドウが目を覚まさなくてもいい。

自分のことをあの女性と見間違えたままでもいい。

彼女の答えは一つだった。

彼が求めているであろう答えもそれであると信じて。


「はい、喜んで。」


フリスはそう返した。


「本当に・・・?やった・・・やった!」


シャドウは歓喜していた。

自分に告白をし、了承され喜ぶ愛する人の姿にフリスは罪悪感を得ながらも喜んだ。

そして、完全に自分のものとなった彼を抱きしめようとフリスは両手を広げて彼に近づいた。

彼女の腕が彼を包み込もうとしたその時だった。


「違うな・・・。」

「えっ・・・。」


シャドウが急に喜ぶのをやめ、そう言った。

フリスは固まってしまった。


「栞さんが俺の告白を受け入れるわけがない。これは・・・夢だな。」


彼はそう言うと、頭を振ったりしてその場で暴れ始めた。


「覚めろ、覚めろ、覚めろ!」


フリスは必死に目を覚まそうとする彼に、やめてほしいと願った。

どうか覚めないでと。

その願いは届かなかった。

そしてゆっくりと顔を上げフリスを見た。


「フリスじゃないか。俺は今どうなっていた?」

「・・・いい夢を見ているようでしたよ。」






フリスは目を開けた。

目の前には六騎士の一人、キーラが倒れていた。

フリスの持つスキルは【爆弾魔ボマー】。

これは自身の周囲で爆発を起こすことができるスキル。

その威力は使用者の努力次第で成長していく。

シャドウにどこまでもついていこうと努力し続けた彼女の爆発は六騎士を退けるほどの威力になっていた。

しかし、あたらなければ意味がなかった。

そこで彼女は覚悟を決め、キーラが近づいてきた瞬間、自身の超至近距離の場所で大爆発を起こした。要は自爆した。

そのせいでこの瞬間まで気絶していたのだった。


「くっ・・・火傷がひどい。まともに動けないですね。」


彼女の服はボロボロになり、仮面はどこかへ行ってしまっていた。

立ち上がろうとするが、まともに立つことは叶わず、壁伝いに地面へずり落ちた。


「しかし、騎士を倒せたのは奇跡でした・・・。」


彼女は目を閉じ呟く。


「彼がシャドウ様のところに飛んで行ったようでしたし・・・これで、大丈夫な・・・はず。」



彼女は将斗が空に飛んでいき、どこかを目指して急降下するのが見えた。

その場所付近で、闇魔法で見られる黒い煙が上がっているのが見えていたため、シャドウの場所に行ったんだろうと彼女はそう思った。

佐藤栞のスキルを将斗が封じることで、シャドウがこの戦況で最強になる。

そうなれば後は彼に任せればすべて解決するから問題ないと思い安心していた。

その安心感からか、彼女は疲労を取ろうと一旦眠ることにした。

しかし、ふと目を開けた。


「・・・は?」


彼女の眼には空を飛んでいる将斗が見えた。

都中央辺りから都の北西へ。

まだ都の中央から戦闘音が聞こえているのにもかかわらず。

彼女は将斗が向かった方向には霧が発生していたのも見ていた。

同時に、『将斗がミストのことを好き』だという噂をレルルから聞いたことを思い出した。

冗談だと思っていたものが彼女の中で確信に変わった。


「この状況で好きな人を優先させた・・・?シャドウ様を助けることが最適解なのに・・・?まだシャドウ様は、勇者と戦っている・・・?相性が悪いのに・・・?」


彼女は無理やり立ち上がって、躓きながらも走り出した。

疲れなどなかったかのように。


「ふざけてるわ!あの男!今度会ったら爆死させる!」






壁が破壊される音が都の北東で響いた。


「ぐああっ・・・。もう無理・・・。」

「貴様は・・・。」


壁を破壊し出てきたのはレルルだった。

その目の前で立っているのはフレだった。

フレが『騎士王』と戦っている場所へ、レルルが飛ばされてきたのだった。


「おっフレちゃん。いや~ひどい有様だね。」


レルルは周りを見てそう言った。

壁や地面に夥しいほどの武器が突き刺さっている。

全てフレの武器だった。


「ところで私『音速』と戦ってるんだけど、交代しない?フレちゃんああいう強すぎる敵と戦うの得意でしょ?」

「・・・。」


フレは何も言わず、レルルを見つめた。


「・・・?フレちゃん?」

「・・・【暗殺】。」


フレがそう言った瞬間、彼女の体が消え始めた。


「え・・・フレちゃん?ちょっと待ってよ。」

「私はまだ貴様のことを許していない。裏切者め。」


そう言ってフレの姿が完全に消え去った。

同時に、レルルの前方から『騎士王』が歩いてくる。

さらに後ろからさっきまで戦っていた『音速』が近づいてきた。


「・・・。」


レルルは唾を飲み込んだ。

瞬間、『音速』が彼女の横に現れる。

超高速の一撃が彼女に叩き込まれる。

彼女はそれを槍で防ぐが吹き飛ばされる。それを追うかのように『騎士王』が走ってきて追撃を見舞った。

彼女はそれも防御するが、壁に叩きつけられた。


「がっは・・・はっ?!」


壁から崩れ落ち、呼吸を整えようとするが、『音速』が近づいてきたのを察知し、飛び退く。

しかし


「嘘っ?!」


ギィン!


レルルが飛び退いて着地しようとした場所にナイフが飛んできたのだった。

彼女はそれを槍で突いて弾き飛ばした。

レルルにはそのナイフには見覚えがあった。

フレのナイフだった。


「勘弁してよ・・・。」


彼女が顔を上げると、大量の武器が降り注いできていた。






「ぐはぁっ・・・ぁっ・・・。」

「もう終わりかぁ?」

「はああああっ!」

「そのパターンはもう飽きたんだよなぁっ!」

「ぐっぅ・・・!」


ミストはエクストラと交戦していた。

彼女は彼に全く歯が立たなかった。

どの方向から攻撃しても避けられ、確実に刃が届いたと思ってもいつの間にか背後を回られ攻撃されていた。

彼女はもう動けないくらいにダメージを追っていた。


「そろそろ終わりにするか・・・?」

「ぐぅっ・・・かはっ・・・。」


倒れたミストの首にエクストラが足をかけた。

少しずつ力が入れられ、彼女はうめき声を上げる。

振り解くことは叶わず、次第に薄れていく彼女の視界に何かが映った。



「足どけろ!!!!!」



その声がした後、エクストラが吹き飛んだ。

エクストラは起き上がり「あーあー汚ねぇ」と呟きながら、砂埃を払った。


「・・・あぁ?おいおい兄弟じゃねぇか!なんでお前がここにいるんだよ。」

「てめぇと兄弟になった覚えはねぇ。」


ミストの前に立っていたのは将斗だった。


「ゲホッ・・・将斗・・・?なんで・・・?シャドウ様は?」


この局面で将斗がシャドウを最優先に助けなければならないことは明白だった。

ミストはこの状況がわからなかった。


「もしかしてもう、勇者を倒して・・・。」

「倒してない。スキルは奪えてない。」

「・・・え、なんで?じゃあなんでここに。」

「助けに来た。」

「え?」

「お前が危ないって聞いたから助けに来た!それだけだ!」


将斗はそう言い放った。

その顔が若干赤くなっているのをミストが気付くことはなかった。


「バカ!何考えてんの!シャドウ様がいなきゃ・・・この戦いは・・・。」

「ヒュー!熱いねぇ!世界とか他人はほっといて自分の愛する人のために行動するなんてな!さすが人間。エゴの塊過ぎて尊敬するよ!」

「・・・。」


将斗はエクストラを睨みつけていた。

彼は完全に激怒していた。


「ハハハハハッ。最高だ。そんなに大事かぁ?その女がよ。伊達に裸を見せあってねぇなぁ?」

「・・・。」

「おっと言い忘れてたな。俺は他人の記憶が読めるんだよ。お前が今まで何してたとか全部わかるんだぜ?ふむふむ・・・あ~あ~お熱いねぇ、二人でデートだなんてよ。」

「・・・。」


将斗は何も言わなかった。


「どうした?何とか言ったらどうだ?」

「・・・。」

「・・・はっ、つまらねぇ。俺は忙しいからそろそろ行かせてもらうぜ。」

「待てよ。」

「ん?なんだぁ?」


笑いながらエクストラが将斗に振り返った。


「なんでミストを狙った。」

「あ?理由なんかねぇよ。誰でもよかったんだ。見てるだけは暇だしな。」

「そうか。」


「それと、なんで北原に接触した。」

「楽しめると思ってな。」

「この人々が消えて行っている状況はどうだ。」

「最高のエンターテイメントだったよ。人々が喜びながら消えてく風景は芸術に匹敵するレベルだったな。」


将斗の体が少し浮いた。

その手にはナイフが握りしめられている。


「・・・5分だけ付き合え。お前だけは心の底から許せそうにない。」


その言葉を聞いたエクストラは心底嬉しそうに笑った。


「いいねぇ、そうでなくちゃつまらねぇよ!」

もう5章のネタができ始めてるのに!

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