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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第4章 
42/63

第42話 夢見る街 code.536 覚醒

投稿するのも、悪く、ないだろう(???

バキッと木が割れる音がした。

俺が気づいた時にはもう目の前にランドがいた。一蹴りでここまで飛んできたのだ。

彼女の振り上げた拳が今まさに降ろされるところだった。

反応する暇もなかった。目を瞑るが【心眼】の力で見えてしまい、迫る危険から目をそらすことができなかった。

そして拳は俺の顔面に炸裂し


ゴォォォォォォン


重い音がした。金属が叩かれたときみたいな音だ。

俺は理解できなかった。

黒い棒が目の前に現れ、床に突き刺さっていた。それがランドの拳を止めていたのだ。

そして、その横に女性が立っていた。


「いや~大変そうだね皆さん。」

「レルルさん?!」


そこに立っていた女性は緑の髪に緑の眼鏡、他でもないレルルさんだった。


「上でこっそり話を聞いていたらこれだもん。ここはみんなのお姉さんが出てくるしかないでしょ~。」

「これ邪魔っ!!」

「おっとっと~、ねぇ落ち着いてよランド~。」


ランドが暴れだす。目にもとまらぬ拳や蹴りの連撃。しかしレルルさんは床に突き刺していた棒を持ち直すと、狭い部屋の中で器用に振り回し攻撃をいなしていく。


「はぁ~あ、ランドの攻撃激しすぎ。面倒だな~、・・・というわけで一旦吹っ飛んでてねっ!!」

「がっ?!」


レルルさんは棒をバットのように振り回し、ランドの腹部に思いっきり叩き込んだ。

重い一撃を受けたランドはその勢いで壁を破壊しながら2階から落ちていった。


「ふぃ~・・・。ていうかフレちゃんさ~私が宿屋にいたこと知ってたでしょ。なんで先に来てくれなかったの?お姉さん悲しいよ。」

「裏切り者のことなど知ったことか。」

「ちぇ~私反省してるのに。将斗クン、フレちゃん私のことこの前から嫌いみたいなんだけどどうしたらいいと思う。」

「いや俺に言われても・・・。」


俺に言われても困るが、しいて言うなら裏切ってたとは思えないその態度では・・・?

まあ本人全く気付いてないみたいだし、愛想笑いしてごまかしておこう。


「レルル姉。どうやって夢から覚めた?その様子だと上で話を聞いていたんだろう?」


ウルさんがレルルさんに尋ねた。


「人聞きの悪い。まあ聞いてたけど。この槍で穴開けたら余裕で聞けたよ。」


彼女は持っていた棒をくるくると振り回し、先端近くを握った後、先端にキスした。

棒じゃなくて槍だったみたいだ。

よく見るとその槍は先端が尖っているだけで、刃がついているモノではなく完全に刺すことのみに特化している。

その先端を中心に螺旋を描くように、少し下から二本の針が伸びている。先には返しがついていて刺さったらひとたまりもなさそうだ。


「そういうことは聞いてない。どうやって夢から覚めたんだ。」

「それはほら、あるはずのない現実を見ちゃったからね。すぐ気づいて覚めたんだよ。」


にっと口だけ笑って見せてくる。

眼鏡が光を反射していて、目元が見えない。

すると隣にいたフレさんが「フッ」と少し笑った。


「そう簡単に覚めるはずがない。感情まで支配されている中、違和感に気づいて抵抗するなど不可能だ。」

「それができたんだよね。」


キッとフレさんがレルルさんを睨む。睨まれた彼女も笑ってはいるものの、雰囲気が変わった。

一触触発という雰囲気だ。


「また何か企んでいるんじゃないのか?」

「まさか、本当のことを言っただけだよ。私が見たのは一番望んだものの夢で、もう叶わないと諦めた夢だからさ。違和感は感じるよ。」


睨み合ったままの沈黙が続く。

些細なケンカとかそういう雰囲気じゃないから俺は何も言えない。

その沈黙を破ったのはウルさんだった。


「盛り上がっている所悪いが、来るぞ。」

「わかっている。」

「はぁ、タフだなぁあの子。」


俺以外の3人が見た方向は先ほどランドが落ちて行った壁に空いた穴。

そこに手が掛けられていた。


「うぅううぅうぅうう・・・・・。」


唸り声が聞こえる。

壁を伝って登って来たのか。


「対策とかその他もろもろは逃げながら考えようか。」

「他のワルキューレたちはどうする。」

「私たち以外はこの宿にいないから、逃げながら探そっか。」


ウルさんがそれに頷く。

フレさんは返事をしていないが、俺を抱きかかえたってことは同意はしているってことだな。

というかウルさんはともかくこの二人がいながら逃げる選択肢を取らせるランドって一体どれだけ強いんだ・・・。

怖くなってランドの方を見ると、もう上半身が入ってきてる。


「行くぞ。」


フレさんの掛け声とともに3人は走り出した。

窓の方に。


「【暴風ストリーム】。」


ウルさんが手を前に突き出しそう言った瞬間、風の塊のようなものが発射され、壁に直撃し一気に吹き飛ばした。

3人はそこから飛び出した。

2階からの落下は【浮遊】を使っていない分、少し体がこわばった。

3人とも軽やかに着地し、すぐ走り出した。引きこもり魔女のイメージがあるウルさんも難なく着地していた。ワルキューレの精鋭と呼ばれているだけあるな。速度も【超強化】の頃の俺より早い。

走っている時後ろから叫び声が聞こえた。見ると宿屋に空いた穴からこちらを見ているランドがいた。彼女も飛び出して追いかけてきた。


「あの!これどこに向かってるんですか?!」

「とりあえずランドを撒く。あれの相手はできない!」


フレさんはそう言っている。

だが、距離が離せていない。同じくらいの速度だからか。

方向転換も何回かしているが、ランドはそれに食いついてくる。

夜道で視界も悪いのに、ここまで執念深くついてこられると恐怖でしかない。

そんな時一つ気づいた。


「なんか静か過ぎないですか?」

「確かにね~。これはもしかすると、夢を見させられていたのは私たちだけじゃないのかもねっと・・・。」

「え、レルルさん?!」


レルルさんが立ち止まって後ろを向いた。

フレさんもウルさんも足を止める。


「さすがに逃げるの無理そうだから、ここはお姉さんに任せて先に行って。」

「そうさせてもらう。」


フレさんはそういうとそのまま先へ行こうとする。


「ちょっ?!ランドは結構強いからやばいんじゃなかったんですか?」

「だからこそだ。3人でぶつかって全滅するのと、1人がぶつかって2人が逃げ切るのならどちらが良いかわかるだろう。」


返答できない。

3人でぶつかればと思っていた。俺も少しは加勢しようと思っていた。

だが、3人でぶつかっても全滅すると彼女が言った。

だったら2人が生き残る道を探したほうがいいのかもしれない。

だけど、それは一人を犠牲にするってことで・・・。


「大丈夫だよ、将斗クン。シャドウ様見つけて目を覚まさせたらあとは余裕なの。あの人がいれば何とかなるからね。いつもそうだったし。」

「そういうことだ、行くぞ。」


フレさんが走り出した。


「後は頼んだよ~。」


レルルさんが手を振っている。

後ろからランドが迫ってきていた。

俺はそれを見ていることしかできなかった。



レルルさんが見えなくなってから数分経った。

途中何とか歩けるようになった俺は降ろしてもらった。

だがまだ油断はできないので走ることになり、俺は【浮遊】を使って二人についていく。

走っていると、街の中心部に近づいてきたからだろうか、人がいた。

だけど、街灯がついていない。祭り用に設置したであろう明かりも灯っていない。

一人、電柱に抱き着いている男がいた。


「あぁ・・・ようやく会えた。探してたんだよ。あれから、もう何年も・・・。」


涙を流し男はそう言っている。

他にも道端に置いてある木箱に


「次はどこ行こっか。今日はママが何でも好きなもの買ってあげるからね。」


そう語りかける女性がいた。

そんな風に、そこらじゅうの人々がそれぞれ奇怪な行動をしている。

全員おかしくなってしまったかのようだ。


「これは一体・・・。」

「おそらく、夢を見させられていたのは私たちだけではなかったようだ。」


ウルさんがそう言う。

つまり『影』をピンポイントで狙った犯行ではなく、この都全体の人間に夢を見せているという可能性があるということだろう。

なんでこんなことを。

先へ進んでいくとより人が多くなったが、その分奇妙な光景を見せられることになった。

正直・・・きつい。精神的に。


「酷いっすね・・・。」

「気分が悪い。こんなものさっさと終わらせるべきだ。」

「ああ、だが具体的な解決策がない。ワルキューレもこの辺りにはいないようだしな。どうしたものか。」

「上から探すのはどうだろう?君ならできるだろう?」

「は、はい。」


俺は頼まれ上空に飛ぶ。広場全体が見渡せるくらいの高さに来た。

しかし、異世界に慣れていないからなのか、全然人の見分けがつかない。金髪なんか全部フリスさんに見える。

一旦降りるか、と思った。

しかし街のいたるところに変な白線が引いてあるのが見えた。

高度を上げ確認すると、それらは石や粉で街の人々が書いているらしい。

しかし、それがいろんな場所で行われていた。なんだろう。

俺はウルさんの近くに降りて聞いてみた。


「ウルさん、人探しは無理だったんですが変なものが見えたので、ちょっと来てくれますか?」


そう言い手を差し伸べると、なぜかウルさんの目が輝いていた。


「いいのかい?!まさかこんな状況で未知の魔法を体験できるとは思わなかったよ!ああ、待ってくれ、何か書くもの書くもの・・・。」


そう言い彼女はバッグの中をあさりだす。紙くずやら何やらが次々と落ちてくる。カバンの中身を掃除しない人らしい。



準備ができた彼女を空へ案内すると、最初こそ喜んでいたり騒いでいたりしたのに、次第にその表情を強張らせていった。


「なんか変な線を引いているんですよね。」

「ああ・・・いや、まさか・・・。」


彼女がバッグを探り始めた。

そして、青ざめた表情でこちらを見る。


「あのゴミがない。」

「あのゴミ・・・?」

「魔王が召喚できるというアレだよ。」

「ああ、アレか・・・。でもなんで今・・・え、まさか。」

「そのまさかだ。この模様どう見てもあのスクロールに書いてあったものと同じモノだ。」


確信を持っているようで、はっきりと彼女はそう言い切った。

だけどあの時、彼女はあれについてゴミだと言ったはずなのに


「まさか?!だってあれは不可能だって言ってたじゃないですか。」

「ああ、スクロールの魔方陣をこの都くらいの大きさで描き、多くの人間を生贄にささげることで召喚された魔王が喜ぶと書いてあった。どうやら解釈が違ったらしい。」

「解釈が・・・?」

「喜んでいるのは生贄の方だ。喜んでいる多くの人間を贄にささげることで魔王が召喚できるんだ。」

「それって今そこら中にいる人々は儀式の生贄になりうる存在ってことになるじゃないですか。」

「それが狙いだろう。しかし本当に儀式を行うなんて・・・だってあれは・・・。」


ウルさんがそのまま考え込み始めたので下に降りた。

しかし、魔王が出るという話は本当なのだろうか。

あの時の話では理論的に無理という感じだったが・・・。

俺の足元にもよく見ると線が引いてあった。

線の先を見ると、ふらふらとした足つきで進む男性が長い石を引きずっていてそれが線になっていた。

多分あの男を操って指定の線を描かせているんだろう。

いやそれよりもこの線、魔力が出ている。


「ウルさんこの線・・・。魔力が・・・。」

「ああ、もしかしたら儀式は成功するかもしれない。」

「そんな・・・。」

「信じられないだろうが、魔方陣を形成する線に魔力が流れているならそれはもう魔法陣としての機能を発揮していることになる。理論上は無理だったはずなのに・・・成功しているなんて・・・。」


それってつまり、ここにいる人全員が犠牲になって、未だ見たことのない化け物が誕生するってことだろ。

そんなの止める以外にない。止めなきゃこの人たちが危ない。


「だったら止めないと!」

「どこへ行くつもりだ、犯人の目星はあるのか?」


フレさんに止められた。だけどこんなところで引き下がれるかよ。


「ないけど、勇者がいるだろ。佐藤栞だ。あいつのスキルならこんな夢も無効化できるはずだろ。あいつに頼み込んで」

「無理だ、城には六騎士がいる。彼らが我らを敵とみるような夢を見ていたらどうする。お前程度なら消し炭になるぞ。」

「潜入作戦のルートを使えば・・・。」

「無理だよ。諦めとけ。」


後ろから声がした。

振り返ると屋根の上に立つ男がいた。

あいつは・・・!


「お前っ・・・・!」

「久しぶり・・・でもないか。昨日ぶり、だな。」


エクストラだった。

相変わらず不敵に笑みを浮かべている。

フレさんが既に戦闘態勢をとっていた。


「お前がエクストラか。この騒ぎ、お前の仕業か?」

「俺ぇ?いやいや、俺はただチャンスをあげただけだぜ。なぁ?勇者様よ!」


背後から何者かが近づいてきていた。

見るとそれは横一列に並んだ7人の男女。


「六騎士・・・それに勇者・・・。」


ウルさんがそう呟く。

あれが六騎士・・・?よく見ると全員虚ろな目をしている。うなだれるように下を見ている。

彼らが数メートル先で止まると後ろからもう一人男が出てきた。

北原良平だった。


「よう、神の遣い。俺が見せた夢はどうだったよ。」

「北原・・・。なんで・・・まさか、お前がやってたのか。」


感情の支配。確かにこいつならできなくもないとは思っていたが、まさかこいつが・・・。


「そうだよ。にしてもまさか目覚めちまうとはな。困るんだよ、他の人が夢から覚めやすくなっちゃうだろ。安心して寝ていれば知らぬ間に消えるだけだったのに。」

「なんだそれ、なんでこんなことをする。お前勇者なんだろ。だったら」

「だったらなんだ。俺の在り方は俺が決める。俺が世界を正しい方向へ導く。そのための儀式だ。」


なんとなくだが狂っているように見えた。

あいつと同じ目をしているからだ。そう、鈴木雄矢のような。


「呆れたな。勇者と呼ばれた男がここまでの者だったとは。」


ウルさんがそう言う。


「ハッ、勝手に呆れてろ。お前たちはここで消えるだけだしな。やれ。」


北原が手を挙げた瞬間、前にいた7人が各々の武器を持ち近づいてきた。

操られているのか。また洗脳魔法かよ。


「ッ?!将斗逃げろ。こいつらは本当に相手にしてはいけない!」


フレさんが俺の前に出てそう言った。

しかし、一瞬で彼女の目の前に現れた小柄な男にナイフを振り下ろされた。

彼女は間一髪それをナイフで弾いた。


「ぐっ・・・。」

「まだ遅い・・・まだ遅い・・・。」


小柄な男は何かを言っている。

小柄な男は空中で回転すると、手に持ったナイフを蹴り落とした。

フレさんは暗器使いと言われるだけあって、ナイフを落とされてもすぐにどこからか刃物を取り出す。

そしてそれを小柄な男の喉元に突き刺そうとするが


「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「ちっ。」


大男が走ってきて大斧を振り下ろしてきた。

彼女はそれを避けようとジャンプした。


「届かない・・・。まだ・・・。」


その隙を狙い小柄な男がフレさんを横に蹴り飛ばした。

彼女は建物に激突した。

ウルさんが近くまで来たその二人に狙いを定め魔法を放とうとするが、突然向こうから雷が走ってきた。

俺は咄嗟にウルさんを引っ張り、【浮遊】で斜め後ろに急加速し回避した。


「『女雷帝』か・・・。無理だ。この数は二人じゃ勝てない。」

「逃げますか?」

「それも無理だ。勇者もいる。『音速』もいる。我々だけでは・・・。」

「マジかよ。だったら」

「っ?!避けろ!」


ウルさんが叫ぶ。彼女の視線の先には、弓を引く女がいた。

そして放とうと手を離したのが見えた。

その瞬間全身の毛が逆立つような悪寒を覚えた。周りが一気にスローになる感覚。

得体の知れない恐怖が俺を包み込んだ。

俺は咄嗟に【浮遊】の推進力を上半身にだけかけて体をそらした。

その瞬間俺の頭があった場所を何かが駆け抜けていった。

見えなかった。おそらくは矢なのだろう。判断が遅れていたら今頃俺の頭は吹き飛んでいた。


「っはぁ!弓の早さじゃ・・・ねぇだろ・・・。」


体を戻して呼吸を整える。

確かに、あんなのがいる中逃げるのは不可能に近い。

そんな時、俺の横から佐藤栞が走って近づいてきていた。

彼女の剣が下から斜め上に切り上げられてくる。

ナイフを取り出し、防ごうとするが、弾き飛ばされた。

何だこの力。リーチの違いがあったにしろ、桁が違いすぎる。

そのまま彼女は剣をこちらに向け、突き刺してきた。

その剣が俺の胸に突き刺さる刹那、轟音と共に爆炎が佐藤栞の足元で炸裂し、彼女を吹き飛ばした。

しかし彼女は空中で体勢を立て直し着地した。

俺は思い出していた。今の爆発は覚えがあったから。


「フリス姉!」

「ごめん、待たせたわね。」


ウルさんが叫んだ方向、フリスさんが屋根の上からこちらを見下ろしていた。

ミストも隣にいた。

最高のタイミングだった。

だが、小柄な男と大男が構わず迫ってくる。


「【闇魔法】!【黒風の奔流(ヴェント・ニーロ・トレンテ】!!!」


上からそう言う声が聞こえた。

その瞬間視界を覆うほどの黒い霧のようなものが暴風と共に現れ、2人を飲み込み吹き飛ばした。


「どうだ、この登場。最高にかっこいいと思うんだが。」

「俺にかっこよく見せてどうすんだよ。佐藤栞の前だけにしてくれ。」


俺の目の前に着地した男。真っ黒のコートを着て謎の仮面をつけたそいつは紛れもなくシャドウだった。

正直ちょっとかっこいい登場だった。


「今まで何してた。遅いぞ。」

「悪い、さっきまで佐藤栞とデートする夢を見ていた。アレはさすがに夢だとわかっていても無理だ。」

「お前な・・・。」

「だが最後、俺の告白を受け入れたのは解釈違いだった。残念だったな北原!」

「井川・・・!」


北原がシャドウを見て怒りをあらわにしている。

拳は震え、彼をずっと睨みつけていた。

よほど恨みをもっているんだろう。


「てかこれ最悪のパターンじゃねぇか?大丈夫か?」

「まさか、最高のパターンだ。」


シャドウは胸を張って言う。そして指を鳴らした。

それが合図だったのかワルキューレたちが俺とシャドウの両側に整列していく。

その時後ろの建物が破壊される音がした。


「お待たせ~!いや~案外なんとかなるもんだね。」


レルルさんがランドをおぶって立っていた。

ランドは寝ているのだろうか、目を瞑っている。

そんな安らかな寝顔とは対比的に、レルルさんはいたるところから血を流していて、正直立っているだけでも大変そうだった。

それでも彼女は歩いて俺の隣に立った。

気づくとワルキューレ達は全員既にライダースーツの様なものを着て、あの仮面をつけていた。


「勇者に六騎士、謎の男は、いないか。」


シャドウがそう言ったので、エクストラがいた方を見ると確かにどこかに消えていた。

いつの間に消えたんだ。


「戦力は若干不利だが、そのくらいがちょうどいい。」

「ハハッ、俺のこの騎士たちに勝てるとでも思ってんのか?チンピラ集団がよ!」


北原が笑う。


「勝つさ。勝って、佐藤栞を救い出し、人々も救い出す。」

「させるかよ、てめぇら殺して、魔王を呼び出す。栞は俺が好き勝手に使わせてもらう。おとなしくもう一回死ね。」

「彼女が生きてる限り俺は何度でも蘇る。俺は彼女が好きだからな。」

「よくそんなこと堂々と言えるよな・・・。」


つい突っ込みを入れてしまう。

こんな時でもこいつが堂々としてるおかげで緊張がほぐれたからだろうか。


「言えるさ。今の俺に恥じる部分なんか一つもない。」

「・・・やっぱ凄いわお前。」

「知ってる。さらに言うなら『好きな人を助け出そうとしている』このシチュエーションは遅れてきた分、彼女のヒーローとして申し分ないレベルにいると思う。」


そう言うと彼はコートを手でバッとたなびかせる。


「今の俺は最高にかっこいい。」

夢見せるやべぇスキルについてはそのうち明かされるそうです

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