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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第4章 
40/63

第40話 違和感

眠いですが投稿します

「・・・?」

「どうしたの将斗。」

「いや・・・。」


変な感じが、一瞬だけした。

一瞬だけ。

今は、ここまで何なく来れたことへの達成感と仲間がいることでの安堵感が俺を包んでいる。

回収アブゾーブ】を使う瞬間だったからつい気を張りすぎてたか・・・?


「大丈夫、私がついてるから。」

「あ、ああ。悪い。」


ミストもそう

言ってくれている。シャドウも後ろで見ているし大丈夫だろう。

大丈夫・・・。

じゃない・・・いや、待て・・・。


「なんでお前がいる・・・?」


俺はミストに問いかけた。

だって彼女はここにいないはずだから。

彼女は逃走時のサポート役だから。

彼女は俺の質問に首を傾げた。


「何言ってんの?ここに来る前、あんたと仲直りして、私からシャドウ様にメンバーの変更をお願いしたじゃない。」

「そう・・・だっけ?」


そんな気がする。

全然違和感を感じない。全く問題ない。

多分そんな感じだったんだろう。思い出せないけど。

まあ、大丈夫か。


「さ、早く。勇者が起きちゃうわ。」

「それもそうだな・・・。」


作戦はここまでうまく行っている。肝心の俺がここでヘマを犯すわけにはいかない。

寝ている勇者に触れようとする。

あとはスキルを回収するだけ。

それだけなのに、あと少しというぎりぎりのところで変な感じ・・・違和感が顔を覗かせる。


「将斗、早くして。どうしたの。あんたらしくもない。」

「ごめん、だけどなんか変な感じが・・・。」


ミストが怒っている。シャドウも顔をしかめている。

早くしないと。でもなぜか、動けない。

俺は違和感を気にしすぎなんだ。大丈夫だ俺。二人がいるんだから何とかなる。


「ほら早く。兵士たちが来るかもしれないから。」

「将斗、何してる。急げ。」


シャドウも後ろから声をかけてきた。

振り返って分かったが、シャドウの出した黒い煙のようなものはまだ漂っているが、徐々に薄くなっている。急がないとダメだよな。

ミストも「しっかりして」と言ってきてる。

急がないと。急いで・・・・・・?


「・・・あれ・・・?」


急げよ俺。ほら、こいつらがこんなに急かしてきてるんだぞ。ほら早く。

・・・何で、なんで俺は


「安心してんだ・・・?」


こんなに急かされているのに焦るといった感情が出てこない。

それどころか、ありえないくらいに安心して、安堵して、達成感に包まれていて、心地がいい。

その心地よさがひどく気持ち悪く思えた。


「やばい・・・なんか変だ。」

「なにがよ。」

「将斗、安心しろ。俺がついてるから何とかなる。」


シャドウが優しく肩に触れる。大丈夫だ。大丈夫なはずなんだ。

俺は大丈夫と言い聞かせるように、思い込ませるように自分の頭を叩く。

しっかりしてくれよ頼むから。

しかしそんな行動をとっても、点滅するかのように消えては浮かんでくる違和感が俺の思考の邪魔をする。

ダメだ・・・。違和感を消さないと。

どうにかして消さないと。

そんな俺を二人は心配そうに見つめてくる。


「二人とも、悪い・・・。変な感じがずっとするんだ。なんでかわからないんだけど。」

「こんな時に、なんでよ。しっかりして。」

「待てミスト。だったら何とかしてやった方が早い。将斗、何が気になってる?」


俺の顔を見上げて起こるミスト。心配そうにこちらを見るシャドウ。

二人は普通だ。いつも通りだ。だからこいつらは問題ない。

よく考えろ・・・気になっているのは何か・・・。

とりあえず今までのことを振り返れ・・・。

その時、気づいた。

この部屋に来るまでの記憶がない。

さっきの話に出てきた、ミストとの和解や作戦メンバーの変更の状況も覚えていない。

彼女はまるで、その場は俺がいたから当然知ってるはず、みたいな言い方をしていたのに。

おかしい。絶対おかしい。

・・・おかしいのに、やっぱり俺は安心している。なんてことないみたいな風に。

問題ない、と考えるのをやめそうになる。

駄目だ。だからこそここで考えるのをやめたら絶対駄目な気がするんだ。違和感の正体はこれだ。

なんだよこれは。思い出すことを防ごうとしてるのか。

てことは、逆に重要な何かがこの忘れられた記憶の中にある・・・?


「一体何なんだ・・・。」

「シャドウ様からも言うべきです。これ以上は時間が無駄だと。・・・早くしないと。」

「将斗、そろそろ俺も限界に近い、急ぐことはできないのか?」


クソ・・・もう少しで掴めそうなのに・・・。

記憶の抜けた部分を素直に教えてもらうか?

でも、時間がないからそんなことしてくれる気がしない。

どうする・・・。

俺は拳を額に当てて、必死に考える。

考えようとしたその時だった。


目の前のベッドの上に佐藤栞がいなかった。


慌てて身構えたが佐藤栞は先ほどと同じ姿勢で眠っていた。


「何だ今の・・・。」

「どうしたの将斗。さっきからおかしいわよ。」


おかしいのは自覚してる。

今の異変に気付いておきながら、まだ心が焦ってない。絶対におかしい。

だが安心感は増していき、おかしいと思い続けないと、忘れてしまいそうになる。忘れるな、絶対におかしいんだ。絶対に。

思い出せさっきの現象を、何がトリガーだ。何が・・・。

手か・・・?額にあてた手。直前の俺の行動はあれしかない。

そう思い、俺はもう一度額に手を当てる。

佐藤栞は消えなかった。


「ダメか・・・。」


これはトリガーではない。

じゃあ一体何があの不可解な現象を起こした。

駄目だ。何も浮かんでこない・・・。

そう思い手を下げる瞬間、再度佐藤栞が消えた。


「っ?!」


俺はその瞬間体の動きを止める。

何がトリガーだ、一体何が。

・・・そして気づいた。

自分の腕が目の前にある、いや、瞳の前にあることに。


「【心眼】・・・?」


俺の引いたスキルの一つ【心眼】。

いわば視界を遮るものが全部透明になって、ちゃんと見えるようになるスキル。

手で目を覆っても向こう側が見えるものなのだ。

俺は両目を瞑った。

【心眼】は瞼すら遮蔽物と認識し、その向こう側の風景を見せてくれた。


そこは、月明かりが差し込んだ宿屋の俺の部屋だった。さっきまだ佐藤栞が寝ていたベッドの位置に俺のベッドが置いてある。

さっきまで石造りの城の中だったのに、木でできた部屋になっている。

そしてさっきまで、シャドウとミストが立っていた辺りには誰もいなかった。

いなかったが


「将斗何してんの?!」

「しっかりしろ、どうした、目をやられたか?」

「・・・は?」


二人の声がする。そこには誰もいないのに。

瞼を開くと、薄暗い城の中、心配そうにこちらを見つめてくる二人が現れる。

しかし、目を瞑れば再び二人は消える。

【心眼】のスキルが間違っているとは思えない。

かといって二人の声が偽物だとは思えない。


「わからねぇ・・・。」


何もわからない。何が偽物で何が本物なのか。

二人はこの状況がわかってないから、次から次へとこちらを急かす言葉を言ってくる。

謎の安心感も相まって考えるのをやめたくなってくる。

駄目だ。やめるな。必死に考えろ。


そのうち俺は二人の声がうるさく感じて耳をふさいだ。

視界には何もなく月明かりだけが差し込む俺の部屋。耳をふさいでいるから音が聞こえない。

リラックスできる空間になった。

そして俺必死に考えた。


数分経ったが何も浮かぶことはなかった。

俺の知らないスキルの存在、あの男エクストラの介入、要素が多すぎて俺では判断できない。

こういうのに詳しいのはこっちの世界で生きてたシャドウしかいない。

そう思い。目と耳を解放した。

しかし、視界は変わらず俺の部屋を映し、夜の静寂が部屋を包んでいた。

さっきまで聞こえていたはずの二人の声ももうどこにもない。


「あの二人が偽物だった・・・?」


そういうことになる。

いや本当にそうか?

俺はこの世界のことを知らなさすぎる。だから、「この状況はこれが原因だ」という判断ができない。

もしかしたら本当に城で作戦実行中だったりして、今俺が瞬間移動させられたとかなど、あるかもしれない。

俺は頬をつねってみる。

痛みを感じる。つまり、精巧に再現された仮想現実みたいなものでない限り、これは現実のはずだ。


「・・・ほかの部屋に行ってみるか・・・。」


ここにいるだけでは情報が更新されない。

俺はドアに近づきドアノブを握る。

もしかしたら何者かが飛び出してきて襲ってくるのかもしれない。

その状況に備え、腰に下げたナイフの柄を握る。

逆手持ちじゃだめだ。ちゃんと持て。

そして俺はドアをゆっくり引いた。


ドアが完全に開け放たれたが、前には誰もいなかった。


「・・・ふぅ・・・。」


突然襲われるなどといったことはないため、一旦一安心できるが、まだ気は抜けない。

次は廊下に顔だけを出す。

右を確認、誰もいない。

左を確認した。


「・・・。」


息を殺す。誰かがいる。

何者かは廊下に立ったまま動かない。顔は向こうを向いているらしい。

窓から光が差し込んでいるが窓のないところにいて顔が見えない。


「・・・なぜ何も言わないのですか・・・?」

「・・・?」


何者かが話し出した。

俺に気づいている・・・のか?

その割にはずっと向こうを向いている。


ギィ


全身の血の気が引いた。

俺が開けていたドアが軋んで音を鳴らしたらしい。

まずい。


「なっ?!は、はい!そちらにおられましたか。」


誰かがこちらに歩いてくる。


俺はドアの後ろに隠れる。

心臓の鼓動がはっきり聞こえる。

足音が近づいてくる。

まずいまずいまずいまずい。

どうする。ナイフで応戦できるか?【後払い】を使っておくか?

俺の部屋の前で足音が止まる。


「おや、こちらから呼ばれていたはず。」


何者かが部屋に入ってきた。

一歩、また一歩と進んでくる。

俺はナイフを握り締める。しかし緊張のあまり、力が上手く入らない。空いている方の手でも握って両手でしっかりと持った。

ついに何者かがドアの横から顔を覗かせた。


「・・・フレさん・・・?」

「おや、なぜそんなところに。どうかされましたか。」


ワルキューレのフレさん。暗器使いの人だ。実際使っているところは見たことがないがそう説明を受けた。

彼女がここにいるなら作戦は実行されていない?

いや彼女が本物だとはわからないし。

とりあえず普通に話してみるか。


「いや、ちょっとここに座りたい気分で。」


今のは違うな。これじゃ変なやつに認定される。


「そうでしたか、何か崇高なお考えがあってのことなのでしょうね。」


凄い皮肉を言われ、俺は少し心が痛くなった。


「にしても、ひどい有様ですね。」


彼女は部屋を見回してそう言った。

え、俺の部屋そんなに汚い?荒れてるのベッドだけじゃん。荷物とか持ってないから何も散らかってないのに酷くね。


「ですがこいつらはもう二度とこのような真似はできないでしょう。私がいち早く気づき、一人でここまでやってみせました。いかがでしょうか?」

「え?」


???

何を言ってるんだ?

言われた言葉を頭の中で繰り返すが、意味が分からない。

まず、「こいつら」と言いながら廊下を見ていたが、確か廊下にはこの人以外誰一人いなかったはず。

そして「いいかがでしょうか」ってなんだ。俺に評価してほしいってのはわかるけど、一体何の評価をすればいい。

何を言っているのかわからず、俺はまず、とりあえずナイフをしまうことにした。

しかし、ナイフは鞘に入らず、落ちてしまった。

金属音がした。


「そんな!ありがとうございます!お褒めににあずかり光栄です!」


あまりの出来事に体が震えた。

彼女が大声でこちらに礼をしていた。

何も言ってないのに。


さすがにこの状況に俺は混乱した。思考がまとまらない。

そ、そもそもまずこの人はこんなキャラじゃない気がする。

もっと静かで、凛としていて・・・あとついでに名前を呼ぶと睨んでくる人だった。

シャドウに絶対の忠誠を誓っているイメージだったが、それが今では俺に頭を下げている。


この人は俺の知っているフレさんじゃない可能性が出てきた。

その上さらに気づいたことが一つ。

俺の心がどこか喜んでいたことに気づいたのだ。

さっきのように、状況と感情が噛み合っていない。

おかしい、絶対におかしい。

だったらどうするか・・・。一旦彼女から何かを聞き出せるか、試してみるか・・・?

俺は立ち上がって、頭を下げ続けている彼女に話しかけた。


「あの・・・フレさん。」

「そ、そんな、私は当然のことをしたまでで。」

「え・・・いや、あの。」

「ま、まさかそんなことまで?!ご、ご勘弁を、私はそれほどのことはしていません。」


まだ何も言ってないのに、まるで何か、別の言葉をを聞いたような返答をする。


「会話にならねぇ・・・?」

「ひぁぁぁっ?!ま、まさか本当に、い、いえ私は嬉しいのですが・・・ほかの子たちに悪いですし・・・。」


話が通じてない。

その挙句、彼女はどこか恍惚とした表情でこちらを見てくる。


そして見つめてきた後、目を閉じた。

しかも、両腕でこちらをがっしり掴んできた。

・・・この顔・・・この姿勢・・・キス待ちでは?

少し唇を尖らせているように見えるし、こちらに顎を突き出している。

絶対キス待ちだこれ。

駄目だ何もわからない。この人は何がしたい。

さすがに、いきなりキスとか俺にはできないって・・・。

顔が熱い、こういう経験ないから耐性ないんだよ。


「いやあの、フレさん・・・あの・・・」


なんて言えばいい、この人凄いぞ、ずっと目閉じて待ってんだぞ。気の利いた一言でも言わなきゃ・・・。

その時だった。


「ん?」


フレさんが目を閉じたまま顔をしかめた。

そして、目を少しずつ開いた。

じっと俺を見つめ、周りや自分の体勢を観察している。

そして俺の顔に向き直ると

片手で俺を突き飛ばして壁にぶつけた。


「いっって・・・。」


すごい勢いでぶつけられたせいで背中回りにダメージが・・・。

すると痛がる俺の顔の真横に何かが飛んできて突き刺さった。


「・・・クナイ?」


先端がひし形みたいになっていて後ろの方に持ち手がある。明らかにクナイだと思う。


「よくもシャドウ様のふりなどしてくれたな。」

「は?何の話?!」


フレさんが俺の真ん前に歩いてきて、クナイを壁に突き刺したまま顔をのぞきこんでくる。


「とぼけるな!・・・しかしまさか私に仕掛けてくるとは。一瞬本物かと思ったが所詮はまがい物だな!」


何一つも話が見えてこない。

いや待て、一瞬本物って言ったな。それって俺がさっき見ていたあの二人みたいな感じか?

だったらこの人も巻き込まれた側・・・?


「あの、フレさん!」

「気安く名前を呼ぶな。許可した覚えはない。」


彼女がどこからか出したもう一本のクナイを振り上げる。

まずい死ぬ!





俺はそのあと必死の説得で彼女の攻撃をやめさせ、今得ている情報を共有することに何とか成功した。

フレさんはどこからともなく武器を出せます。

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