第4話 王子と魔女
お昼ご飯がおいしかったので投稿します
「ステータスオープン」
「・・・ふむ。これはこれは、お兄さん面白いスキルを持ってるね。」
部屋に連れ込まれた俺は強制的にステータスウィンドウを開かされた。
体どころか発言までも操られてしまっている。
女は俺のステータスウィンドウを勝手に見てきた。
「この【超強化】は大して珍しくないよね。だけど見てよ、こっちのスキル。【交換】だ。私の記憶が正しければ、これはかの魔王軍の幹部の一人が使っていたスキルのはずだ。あいつ弱かったけど。でもどうしてこの人がこんなスキルを・・・興味深いな。」
「レヴィ、人のスキルだ。好奇心をそそられているところ悪いけど、好き勝手に見るものじゃないよ。」
「えぇ~もっと見たいのに。特にこれ!【回収】!スキルを奪うスキルなんて見たことないよ。」
レヴィと呼ばれているこの女は俺のステータス画面を嘗め回すかのように見ている。
俺を操っているのはこの女で間違いない。
身長は180くらいか。
にしても・・・紫色のロングドレスというのだろうか、彼女のこの格好は。
胸元を大胆にオープンしているものだから、ステータス画面をその・・・前かがみになって見ているものだからその胸が・・・。
しかも、その下でちらちら見えるするりと伸びた美脚が・・・。
はっ?!思考さえも操られている?!くそっ、全然反抗できない!これは仕方ない!視線がそういうところに行ってしまうのは操られているから仕方のないことなんだ!!!きっとそうだ!!!
一通りステータスを見た彼女はこちらを見て語りかけてきた。
「お兄さん、あなたはどういった目的でこの国に来たの?」
「俺は鈴木雄矢の持つ【無限】のスキルを回収するためにここに来ました。」
口が勝手に動いた。
また無理やり発言させられた。クソッ、横にそいつがいるのに。
終わった。俺完全に終わった。
「まさか・・・あれを奪うつもりなんだ。それはなんで?自分のため?」
「いいえ、神様に頼まれたためです。」
「神様?!アハハハ、嘘でしょ?!アハハハハすっごい!」
ホントのことなのに大笑いされた。
なんだこの女。
変なこと言ったみたいじゃないか。
・・・まあ十分変だけど。
「ハァー、フフッ。おもしろ、まぁでも私の洗脳魔法で嘘はつけないから本当なのかな。だとしたら、すごく都合がいいね。ね、グレン?」
「あぁ、ここは神様とやらを信じてみよう。」
なんだって?
今、俺を追っかけてきたやつのこと、今なんて呼んだ?
グレン?
鈴木じゃないのか?
いや誰??
「そろそろ解放してあげるよ、お兄さん。逃げないで話を聞いてくれるとすごく嬉しい。」
「ぐ・・・はぁ!」
俺は急に力が抜けて床に崩れ落ちた。
本当に開放してくれたらしい。
「はぁ、先に聞かせてくれ。あんた、鈴木雄矢じゃないのか?」
グレンと呼ばれていた男に尋ねた。
こいつが鈴木なら逃げる必要がなかったことになるからだ。
でも何のためにこんなことをするのか。聞かなきゃ気が済まない。
「僕のことを彼だと思っていたのか。道理で必死に走っていたわけだよ。ごめんね。レヴィ、解いてくれ。」
「あぁ、そっちの魔法も解かないとだね。はい。」
女が指を振る。
すると、男の顔が急にぼやけていき、次第に髪は赤くなっていき、瞳はきれいな黄色に変わった。
「別人じゃねぇか・・・」
「さっきまで僕が使ってたのは、他人から見られるとその人から見て最も自然な人間の風貌に見えるようになるという、そういう魔法なんだ。ここが君の故郷だったなら、自然に映っていたんだろうね。でも君にとっての普通の見た目の人間はこちらでは珍しかったらしい。」
男が手を差し伸べてくる。
「改めて、自己紹介をしよう。僕はグレン・ファング。この国の前王スカーレッド・ファングの息子だ。」
「お、俺は渡将斗。えっと・・・別の世界から来ました?」
異世界での自己紹介ってこれで合っているんだろうか。
というか前王の息子って要は王子様なんじゃないか?
「はーい、私はレヴィ。元王国最強の魔法使いでーす。」
「よ、よろしく。」
とりあえず握手をする。
なんなんだこの状況は。
俺さっきまで敵だと思ってたんだけど、何でこんなフレンドリーな雰囲気になってんだよ。
「君の目的は、あの男のスキルを奪うことだったよね?」
「ああ、はい。」
「急で悪いが、僕たちと協力しないか。」
「・・・えぇ?」
そりゃまた急だな。
俺まだ全然信用してないんですけど。
「私たちちょうどあいつを倒そうと考えてたの。目的はほぼ一致しているしいいと思わない?」
「でも俺たち会ったばかりだし。」
さっきまで好き勝手されたし。は飲み込んでおいた。
「あいつを相手にするのに使える手段は全部使いたいの。ただでさえ協力者がいなくて私たち二人だけだったから一人増えるだけでも力強い。」
「ああ、それに君のさっきの身のこなしなら十分戦力になる。」
そういいながらグレンが頭を下げた。
「このとおりだ。」
「ち、ちょっと待ってくれ。そりゃ戦うことになったら、俺も一人よりかは協力者がいたら心強い。けど、まだ状況が全然つかめてないし、というかこっちの世界来たばっかだし、戦闘経験とか皆無だし…。」
後ろからこっそり近づいてササッと奪って済まそうとしていたくらいだし。
「だったら・・・」
彼女はそのまま近くの椅子に座った。
「状況、わかるように全部説明するよ。私たちのこと。あいつに出会ってからの話、全部を。」
そうして彼女は話し始めた。