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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第4章 
36/63

第36話 裸織虚構 code.526 崩壊の足音

Wi-Fiが死ぬという地獄から投稿です。

「絶っっっっっっっっ対に殺す!!!!!」

「マジで事故なんだって!」


俺はあの後飛んできた拳をぎりぎりで躱し走って浴場を出たが、あっちがまだ追いかけてきたので【浮遊】を使って全力で逃げている。なおパンツはギリギリ確保した。

ところで、ギャグマンガの住人になりたい。

だってこういうエロハプニングが起きたら、パンチされてたんこぶなどを作られるが、次のシーンでは完全に回復できるからだ。

今からなれないかなぁ。


「待てって言ってんでしょう・・・・が!!!!!!」


爆音が俺の真横で響いた。

俺の全力の【浮遊】についてきやがったこの女。挙句の果てに拳で壁粉砕って、どうなってんだマジで。

全然距離が離せない。

中央階段から2階へ侵入するが彼女も壁を蹴ってショートカットしてきた。

人間じゃねぇ。

その時、横から衝撃を受けた。脇腹のあたりが火がついたように熱い。

彼女が追い付いて回し蹴りをしてきていた。

俺はそのままの勢いで窓を突き破り庭に投げ出される。

痛みをこらえつつ起き上がると彼女も庭に着地したところだった。

脇腹が鈍い痛みを響かせている。

てか夜の庭園に立つ半裸の男と半裸の女って絵面やばいだろ。


「マジで勘弁してくれ。事故なんだって。」

「許さない。シャドウ様にもワルキューレ全員にも見せたことないのに・・・。」


親の仇のような眼で睨んでくる。

これ絶対逃げられないやつだ・・・。


「ちょっと冷静にぃっ?!」


冷静になれと言いかけた瞬間、彼女の姿が消えたかと思うともう目の前にいて拳を突き出してきていた。

頭を下げてぎりぎりで避ける。風切音が頭上で響いていた。

拳で風切音は相当な威力なんじゃ・・・。


「殺す気・・・?」

「そう言ってるでしょ?」


笑いもせず淡々と告げてくる。

目がそういうことに慣れてる人の眼だ。多分。

とかなんとか考えている時に眼前に足が見えた。

モロに額に蹴りを食らった。

視界が明滅する。

俺はそのまま後方に転がっていった。

頭吹っ飛んだかと思った。首が痛すぎる。額も。

彼女が走ってくる。

くそ、あっちが本気ならこっちだってやることやってやるよ。

【後払い】と心の中で唱える。少し体が軽くなった気がした。多分発動できてる。

そして視界の端っこに青い棒が出てきた。

徐々に短くなっていっているってことはこれタイマーみたいなもんか。

彼女の拳が来るが、さっきより遅い。いや遅く見える。

俺はその拳を避けると、彼女の手首をつかんだ。

これ、【超強化】より動けるぞ。


「離せ変態!」

「自分が半裸のくせによく言えたな!」


直後ものすごい力で引っ張られた。彼女が俺の手を掴んでいたのだ。

そのまま宙に投げ飛ばされる。そして空中の俺を目掛け彼女が跳んでくる。

それを【浮遊】の旋回で回避するが、彼女は俺の真横で体をひねり、かかと落としを食らわせてきた。

両腕でカバーするが勢いは殺せず地面に激突しそうになるが【浮遊】を全力で使ってギリギリで止まる。腕にダメージはない、ダメージも後払いらしい。


彼女は着地すると同時にこちらに向かってきて、拳と蹴りを組み合わせた連撃を打ってくる。

なんとかいなしたり避けたりするが、何発かもろに食らっている。これは5分後危ないかもしれない。

無理やり相手の腕を掴むが、反対側の拳が飛んできたのでそっちは掌で受け止め握り締める。

彼女は離れようとするが、俺は踏ん張って耐える。

もうタイマーがちょっとしかない・・・。さっきの連撃の時間が結構長かったのか。

マジでピンチだ。風呂覗いたから死ぬは屈辱すぎる。

その時だった。


「なんの騒ぎだ。」

「シャドウ様?!」


シャドウが噴水の上に降り立ち、こちらを見下ろしていた。

なんでそこなんだよ。いやまあ・・・立ちたくなるのはわかるけど。


「この男が私の風呂を覗いたんです!」

「は?!嘘だ!誤解だ!俺が入ってたらこいつが入ってきたんだ!これについてはホントだ!」

「二人とも冷静になれ。とりあえず離れろ。」

「し、しかし。」

「食事中話してただろう。彼は身体能力は一般人程度だって。お前の暗殺術なんか使ったらただじゃすまなくなる。」

「いやこの男結構戦え」

「とりあえず離れろ。三度目はない。」


向こうの力が抜けるのがわかったので、俺も力を抜いてすぐさま後ろに飛び距離をとる。


「それで、どういうことなんだ。」

「こ、こいつが後から入ってきて、『私しか見えないようになる霧を出してるからそのうちに出なさい』って言われて出ようとしてたんです。」

「でもこの男霧の中で視界が確保できてた!多分全部見えてたんです。足元の石鹸は避けるし、最初だって出口が見えてたから一直線に向かおうとして・・・。ていうかそのあと、私の裸を見た!」

「あれはお前が見せてきたんだろうが!」

「はぁ?!そもそもあんたが!」

「冷静にって言ったろ。・・・じゃあ今回は今まで男が俺一人しかいないことで風呂のことを気にしてなかった俺が悪いってことにして仲直りしてくれ。」

「「ええ!?」」


シャドウが頭を下げていた。


「そんな!シャドウ様のせいにはできません!」

「いや、それは俺も申し訳ないって。」


まだ彼は頭を下げている。

喧嘩を終わらせるために自分が罪を着るとかかっこよすぎるだろ。

・・・まあ、俺もちょっと悪いとこあるかもしれないし、素直に謝るか・・・。


「あのさ・・・。」

「は?話しかけないでよ。死になさい。」

「はぁ?!シャドウさんがせっかく喧嘩終わらせようとしてくれたのにお前・・・。」


前言撤回。そっちがその気ならこっちだって考えがある。


「・・・ていうか、お前、あの霧の中では自分しか周りが見えないんだったよな?」

「それが何よ。」

「あんとき俺の方は見ないようにするからって言ってたくせに石鹸のこととか、出口のこととか、まるでちゃんとこっちを見てたみたいだったけど、どういうことなんだ?」

「バッ・・・!!??」


急に顔を赤くして下を向く。

そして小刻みに肩を震わせている。

ほーん。なるほどなるほど。図星かぁ。


「ははーん。その反応間違いないってことだなぁ?」

「将斗、お前・・・。」


シャドウが呆れた顔してこっちを見ている。

いや、わかるよ。大人げないって。でも俺の尊厳が危うくズタボロにされるところだったのにこんなとこで引き下がれるかよ。


「シャドウさん。本当にごめん。だけど、もう少しで真実にたどり着けるんだぞ。覗きをした犯人は本当は俺ではなく彼女だったって言う証明を」

「ううううう・・・・・。」


彼女が涙目になってこっちを睨んでくる。

やば・・・何してんだ俺。泣かすのはダメだろ。


「危ないだろうからって気を使ってたのに・・・。」

「え、あ、いや違うんだごめん。その、あれだよ。」

「・・・す。」

「え?」

「殺す。」


そう言うと彼女は地面をえぐるぐらいの勢いでこっちに駆け出してきた。

シャドウはこめかみを押さえてため息をついている。

え、救う気なし?いや俺も悪いけど。

あの女がシャドウの横を通り過ぎ俺の目の前まで来た。

やばい。死ぬ。

目をつぶろうとしたその時だった。


全身に謎の衝撃が走った。

息もできないくらいの衝撃。

いや、そもそも衝撃じゃない。全身に同時に走ったあれは・・・痛み。だと思う。

まあ、痛みなのか本当は定かではない。

なぜなら俺の意識はそこで途切れたからだ。




「ん?・・・あれ?」


俺は寝ていたらしい。

日が差し込んできている。ここは、メイドに案内された俺の部屋か。

にしても【心眼】でも寝起きの視界は確保できないらしい。若干ぼやけている。

俺はとりあえず起き上がろうとするが


「あ゛っ!?・・・いっつ・・・。」


体全体が悲鳴を上げている。なんだこれ。重すぎる。全然動けない。

岩でも乗せられたみたいだ。

その時、横から声が聞こえた。


「はぁ・・・何してんの?」

「え・・・うわっ。」

「うわとは何よ。うわとは。」


ミストがいた。

昨日のことが一瞬で脳裏をよぎる。

戦闘態勢を取ろうとするがまたも痛みで動けず、ベッドでもがくことしかできない。


「お、お前、気絶してる間じゃなくて、わざわざ寝起きを襲いに来たのかよ・・・。」

「はぁ?そんなことしないわよ。」

「じゃあ何しに。」

「看病。」

「・・・なんて?」

「看病!」


看病?!あんだけ殺しにきといて?!まったく信じられない。

せめて防御の足しになるように布団を手繰り寄せておく。


「あの後、あんたが泡吹いてぶっ倒れてそのことでシャドウ様に叱られて大変だったんだから。」


ああ、あの後、俺はそんなことになってたのか。


「しかも、あんたの看病任されたせいで、お祭り行けないじゃない。楽しみだったのに。」


ミストはなにやら最初部屋にはなかったテーブルのほうを向き、なにやらごそごそしている。

背中越しには何も見えない。


「はいこれ。」


彼女が何かを差し出してきた。

多少身構えたが、よく見るとトーストだった。バターが塗ってある。

この世界には食パンがあるんだな。


「食っていいのか?」

「あんた以外に食べるやつはいないわよ。」

「そうか、ありがとう。」


パンをかじる。

外サクサクで中ふわふわ。あ、これバターじゃなくてこれマーガリンだわ。市販の奴よりは確実においしい。


「美味い。」

「当然でしょ。私の手作りなんだから。」

「塗ったことを果たして手作りと言うのか。」

「パンそのものが手作りよ。失礼ね。」

「ああ、ごめん。だとしたらすごいな。めちゃくちゃうまいぞ。」

「・・・そう。」


ご機嫌取りのつもりで発言したが、実際に美味しい。

でもなんで手作り・・・?

まさか、なんか入れたか。


「昨日のことは・・・その・・・私も悪かったわ。混乱して周りが見えなくなってたから・・・。ごめん。」


彼女は目線は合わせず指をもじもじさせながらそう言った。

そうか・・・謝りに来たのか。

話聞かない傍若無人な女かと思ってたけど、違ったんだな。

俺もいつまでもつまらない意地張ってる必要はないか。

そう思い、俺は頭を下げた。


「いや、昨日は俺も悪いところあったし・・・。俺の方こそごめん。」

「・・・はいスッキリした。あれだから、シャドウ様に言われて仕方なくだから。」

「えぇ・・・。」


それじゃあさっきのは全然心がこもってなかったってことじゃねえか。

俺はそう思いつつも、口には出さないようにしながら、パンを食べ終えた。

その間、黙って外を見ていた彼女は、俺が食べ終わったのを確認すると立ち上がる。


「ほら、食べたらさっさと行くわよ。」

「どこに。」

「お祭り。」

「ああ、魔王討伐の。」

「そ、珍しくワルキューレでも遊んできていいって言われたから、こんなとこで油打ってる暇無いの。でもあんたの護衛も任されてるから待ってたの。わかったら早くして。」

「はいはい。・・・あ。」


起き上がろうとした俺は気づいた。


「何してんのさっきから。」

「ごめん、全然動けない。」

「・・・はぁ。」


多分これ重度の筋肉痛だ。全身が。

なるほど、これが後払いの代償か・・・。

本来出せるはずのない身体能力を得たうえで全力で動いたんだから気絶するくらいのダメージはあるか。ようやく納得できた。



ちなみにこの後10分くらい一人で格闘していると、彼女が肩を貸したり杖を持ってきたりと奮闘してくれたため、立ち上がることができた。

優しいんだか、なんなんだか。


その後俺たちは、祭りの行われている街へ繰り出した―。

後払い、名前のダサさの割に超強化より強いです

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