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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第4章 
34/63

第34話 ファーストコンタクト 

投稿しまーーーーーーーーーーーーーす

気づくと俺は薄暗い城の中にいた。

床や壁、いたるところが何らかの強い衝撃を受けて破壊されていた。

そして俺の前に数段の階段があり、その向こうに4人の男女がいた。

女が3人、男が1人。

一番前の女がこちらに剣を構えていて、後ろに女2人と男1人が立っている。


「何者ですか!あなたは!」


剣を構えた女がそう叫んでくる。

神様が『魔王を倒した勇者の近くに送る』って言ってたから、こいつらが勇者御一行ってことか。

一番前の女が佐藤栞。

多分後ろにいるのが北原良平。

頑張れ俺、ファーストコンタクトに失敗したら終わりだ。

どうする・・・、軽い感じでいったらなんか怪しいだろうし、かといって礼儀正しい感じでいったらそれはそれで狡猾な敵キャラみたいな感じがするし。

普通に言うか・・・?


「こんにちは。」

「・・・っ。」


あっ、剣をまた構えられた。

絶対間違えた。

唐突な挨拶は普通に怖いか。

どうしよ。


「いやあの違くて・・・。」

「・・・。」


やばいやばい、マジで印象が悪くなってってる。


「えっと、魔王討伐お疲れさまでした・・・。」

「・・・。」

「その、神様からのお遣いで来ました。・・・あ、会ったことありますよね?」

「神様・・・?」

「知らないんですか?転生する前に会ってたんですよね?」

「知ってますが・・・。一体何の用ですか?」


彼女は構えを解いてくれない。

ある程度の距離は取っているけど、刃物を向けられるのは普通に怖いんですけど。


「え~、あなたの持つスキル【神光】は、魔王がいなくなった今この世界にあり続けてはならない代物でして、回収に参りました。」

「この力が世界にあり続けたらどうなるんですか。」

「世界のバランスが悪くなって世界が崩壊するらしく・・・。」


そんなことを言ってたような言ってないような。

崩壊とは言ってないか。まあ、少しくらい脚色しても問題ないだろ。


「崩壊ですって・・・?」


彼女は驚いている。

その後、剣を下げた。

崩壊という言葉でうまくいったか?


「それが本当なら・・・。」


お、これはいけたか!


「ちょっと待った。」


後ろにいた男、北原が止めに入った。

いや止めないでくれ。

いい流れだったじゃないか。


「そんな重要なことなのになぜ神自身が来ない?俺たちは既に一回顔を合わせている。おかしいとは思わないか。」

「確かに・・・。」「確かにな・・・。」


俺と彼女と意見が一致したな。これが【調律】の力か。・・・違うか。

実際なんでこの重要なシーンを、俺に任せちゃうのかがわからない。

多分だけど転生者に毎回追い返されるから、俺に任せた方が手っ取り早いとか思ってそうだな。

それのせいで今結構ピンチなんですけど。


「神様の遣いを騙るなんて許されないことをしたね。」

「いやほんとに神の遣いなんだって。」

「じゃあなぜ神が来ない言ってみろ!」

「それは俺が聞きたいです。」

「やはり嘘だったようだな。栞、騙されるなよ。」

「うん・・・。」


北原が剣を構えてきたと思いきや、佐藤栞も再び剣を構えた。

いやマズすぎる。


「せ、世界がヤバくなるのは本当なんだって。いいのかよ。」

「脅しか、そんなものは効かないぞ。」


焦って脅しみたいな感じになっちゃった。

どうすんだマジで。


「君が誰なのかは、後で聞かせてもらう!やるぞ栞!」

「え・・・ええ。」


こちらに向かって走ってくる。

後ろにいる片方の女も持ってる杖を向けてきた。

どうする?応戦するか。

俺は腰につけているタマのナイフを握ろうとする。

しかし、やめた。そもそもかなわない。それに敵に回したら暗躍系主人公がすっ飛んでくるらしいし。

微動だにしなければ無抵抗だと思ってやめてくれるだろ。多分・・・。

まだ向かってくるけど。

・・・なんかスローに見えてきたな。

あれもしかしてこの感じ俺、死ぬ?

やっぱ応戦するか?やるしかねぇか?

考えあぐねていた、その時だった。


目の前で爆発が起きた。

閃光と共に轟音、そして衝撃波が迫ってくる。

さすがに巻き込まれると思ったが目の前に何者かが立っていて、事なきを得た。

女、だな。多分。背中しか見えないけど、体のラインがすごい出る・・・いわゆるライダースーツみたいなのを着ている。

煙が晴れると、向こうの二人は爆発に対して地面に剣を刺して耐えていたようだった。


「君は、『影』の・・・爆弾魔フリス。」

「勇者様が私の名前を覚えていらっしゃるとは、光栄です。」


北原は『影』と言った。あの暗躍組織のことだよな。

このタイミングでなぜ来た。あとちょっとで死ぬところだったかもしれないからすごい助かったけど。

『影』の人がこのタイミングで来るって俺の印象大丈夫・・・?

もし表向きにこの組織はあまりいい印象を持たれてなかったりしたら。


「世界中で暴れまわる犯罪集団が何の用だ!」


あ、やばい!よく思われてない!


「さあ?私は王の命に従い行動しているだけ。」

「『影』の王、『シャドウ』か・・・。」

「ええ、王の命により、この者は保護させていただきます。」


フリスという女は俺の方を向くと、ひょいと俺を抱え上げた。

片手で。

なんて力だ。


「待て、そいつには話が!」

「あら?私と戦うというのですか?力は劣っているとはいえ、今のあなた達には少しこたえるのではないでしょうか?」

「・・・ちっ、魔王戦で消耗している今、『影』と戦うことになるのは避けるべきか。」

「良平、今回は見逃そう・・・。」

「賢明なご判断です。」


そういうとフリスは俺を抱えたまま跳躍した。

そして、後ろにあったステンドグラスのほうを向くと、その瞬間背後で爆発が起こり、その勢いで彼女は俺ごとステンドグラスを突き破った。

俺たちは空中に投げ出される形になった。

外はきれいな月が昇っていて、既に夜だった。

俺がさっきまでいた部屋は結構高いところにあったらしく、下を見ると、落ちたら簡単に即死する高さなのが分かった。

しかし、彼女は何もせず自由落下を続ける。

何してんだこの女。ヤバイ全然拘束が解けない。

ちょっと待って死ぬんですけど?!

まさか爆弾魔さん地面ぎりぎりで爆発を起こして衝撃を緩和する気か?

できそうだけど、俺はわざわざリスクを背負う人間じゃない。

俺は魔力流れを操り【浮遊】を発動させた。


「あら?浮いてる?」

「勘弁してくれ。会ったばかりの人間と心中とかシャレにならないんで。」


彼女は驚いているようだった。手足をパタパタさせて何かを探っている。

顔を上げて今気づいたけど顔面偏差値高すぎないかこの子。モデルか?


「何ですか?そんなに見つめて。」

「へぁ?いやなんでもないです。」

「ああ、私に見とれていたんですね。」

「自分で言うのか・・・。」

「でも、諦めてください。私の心はいつでもシャドウ様ただ一人のもの・・・。今回も完璧に命令をこなしていますし、今日こそご褒美を・・・。グフフ。」

「あっ・・・。」


なるほど。見てたのバレたから一時はどうなることかと思った。

でも今、涎垂らして恍惚とした表情をしている。

ダメな人っぽいなぁ。


「はっ・・・。いけないいけない。ところでこの浮いてる現象はあなたが起こしていますよね?」

「よくお分かりで。」

「少し急いでいますので解除してもらえませんか?」

「あの、先にどうやって着地するのか聞いても?」

「着地の直前に」

「あ、もう大丈夫でーす。」


できるだけ早くそれでいて安全な速度で地上に近づいていると、彼女が下の方に指を差した。

その方向には、馬車があった。人が一人外に出て待機している。

あそこに行けってことだな。

俺はその馬車に近づいていき着地した。

馬車の近くにいたのはフリスさんと同じくこちらも女性で、同じライダースーツを着ている。

十中八九『影』の人だな。

フリスは待っていた女性に近づいて行った。


「フレ、ミストは?」

「彼女なら今、中でシャドウ様の治療にあたっています。」

「わかりました。こちらの任務果たしたので馬車を出してください。」

「はい、承知しました。」


そう言うとフレと言われていた人が馬車前方に行った。

俺は「こちらへ」と言われ、馬車に乗せられた。

馬車の中は結構広く、中央で寝てる男、その近くに座る女、それに俺とフリスさんが乗ってもまだ余裕があるくらいだった。

中央で寝ている男は全身のいたるところに包帯が巻いてあり、少し赤くなっているところがあり痛々しい。

だがこの男、痛々しいのは見た目だけじゃないと俺は思っている。

こいつが多分・・・。


「俺を攫うよう命令したのはあんただろ?シャドウ・・・さん?」

「王はまだ治療中ですのでお静かに。」

「いい、ミスト。」

「はっ。」


シャドウ・・・さんは上半身だけ起き上がって、ミストさんを宥めた。

黒髪でこの顔、日本人だから間違いない。井川だな。


「急に攫ってしまって悪かったな。」

「いや、助かりました。」

「なに、いいってことだ。ギリギリまで話を聞いていたんだが、君が襲われかねなかったからああするしかなかった。俺が行ってもよかったが見ての通りこの体でな。おっとそんなことより・・・」


さっきまでにこやかに接してくれていた彼の表情が冷たいものに変わる。

こちらを探るような眼だ。


「さっきの話は本当なのか?」

「さっきの話って言うのは・・・?」

「世界の崩壊の話だ。神からその原因となるスキルの回収を命じられたこともだ。」

「両方本当です。」

「信じるに値するものがないのがな・・・。まあ日本人であることだけは間違いないな、その恰好は。」


恰好で判断するあたり、この世界もそんなに衣服が充実してないのか?

まあ、さっきの勇者御一行もボロボロの布切れを身に着けてたしなぁ。

とはいってもここにライダースーツ着てる女が3人もいるけどなぁ。


「まあいい、後のことは屋敷で話そう。俺はケガもあるから休むことにする。」

「あ、ちなみにあんたの名前井川だよな?」

「・・・・。ほう、俺の真名まで知ってるとは、これは帰ってからが楽しみだ。」


真名てきょうび・・・・。

その発言の後、彼は眠りについた。

他の二人は何も話さないので、俺も黙っておく。


にしてもきつい。神から話を聞いていた時からずっときつかった。

『影』。王。シャドウ。真名。・・・・この中学生時代の思い出があふれかえってきて胸やけっぽいのを起こし続けるこの地獄はなんだ・・・マジでやめてくれ。

この世界にあと4日間もいるのか。きつそう・・・。


正味俺が一番ダメージを受けている。

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