第33話 61番目の世界
アイデア同士が衝突して展開が決まりにくかったですが行けそうなので投稿します
61番目の世界。
そこは・・・
「話し始めやがった・・・。」
「どうしました?」
「いやもう、いいです・・・。」
・・・ここでいろいろ言っても、活動できる時間が減るだけだしな。
神はもう一度仕切り直して話し始めた。
61番目の世界。
グレンたちと同じように魔王に脅かされていた世界らしい。
そこでいつも通り神が転生者を送りこもうとする。
ちょうどよく不運にもトラックに轢かれた人間がいたらしいので、その人間を呼び出したところ、死ぬ予定ではなかったはずなのに巻き込まれて轢かれた人間がもう2人来てしまったらしい。
そこで神は気まぐれで3人にスキルを与え送り出そうとしたが、神のスキルを三人に与えるのもなと思い、予定通り死んだ子に神のスキルを与え、残り二人には適当なスキルを与えて61番目の世界へ送り出した。
神のスキルを与えられた人の名前は、佐藤栞。
死んだときは女子高生だったらしい。
【神光】という、受けたけが等の高速回復 毒などといった状態異常の無効化、魔物への特攻を得られるスキルを持っている。
残り二人は北原良平、井川航、
二人は佐藤栞の友人らしい。
北原良平は、【調律】という周囲の人間の気持ちを共有させるスキルを持っている。
井川航は、【闇魔法】という闇の魔法が使えるようになるスキルを持っている。
ちなみに井川航だけは、異世界モノをよく読んでいたそうで、この展開に歓喜し、【闇魔法】なんていかにもなスキルについては、井川から言い出してきたものらしい。
かっこいいからという理由でものすごい熱意でお願いしてきたものだから、神は断りきれずあげたそうだ。
その後、3人は異世界に、鈴木雄矢と同じように召喚された。
勇者として3人で活動をしていくが、井川は途中で魔物から襲われた佐藤栞を庇い死んだ。
・・・ことになった。井川は表向きには死んだことにし、井川は裏で活動するようになっていた。
裏で暗躍するという、その理念に共感した仲間を集めて秘密組織『影』を作った
佐藤栞は神のスキルをもってあらゆる偉業を成して勇者として名を挙げていく。
北原も彼女についていき、同じように称賛されていった。
しかし、その裏では井川が先回りして彼女が動きやすくしていたのだった。
それを続けて3年、彼女は魔王を倒した。
まあそれも井川がいろいろやったおかげで、できたことらしい。
「暗躍系主人公がいるやん・・・。」
「ですね。まあ、表向きには彼女たち二人が賞賛されているだけだから、私には理解できませんが。」
「男の子ってのは理解されない努力をしていることにかっこよさを覚えるんですよ。」
「・・・はっ?!もしかしてこんなにも無茶な私のお願いを聞いてくれるのは、そんな自分がかっこいいからという理由で・・・?」
「違っ?!ちがいますよ!?そんなことあるわけないない。」
ないない。ちょっと世界救ってる自分かっこいいなとか思ったことないない。ないよ。
それに、あいつを救えなかったしな・・・。
「・・・まあ、消えるのが怖いからってことにしておきますね。」
「それはそれでちょっとダサいからやめてもらいたいんですけど。」
まあ、それもあるにはあるんだけど。
「ちなみに、勇者のお二人は努力家で正義感も強く、かなり頑張って旅をしていたものですから戦う力はちゃんとありまして、魔王討伐は全部が全部井川さんのおかげというわけでもありません。」
「あれ・・・それ三人とも強いってことだよな。」
いやな感じがすんな。
「はい、神のスキルを奪うために佐藤栞と戦うことになれば、一緒に行動している北原良平はおろか、彼女を裏でサポートし続ける井川も必ず来ます。つまり3人と戦うことになるのは必須。」
「無理なのが確定してるじゃないですか。」
「いえ、スキルを返してくれない場合ならそうなりますね。」
「ん?ちょっとよくわからないんですけど。」
「言ってませんでしたが今回は変則的に行きます。」
「変則的というと?」
「彼らに、スキルを返してほしいことを今から言いに行くんです。」
いや全然わからんが。
「えーっと・・・。それはいつもと同じでは?」
「まだ彼らは魔王を倒したばかりで、まだ私も会いに行ってないんです。たいてい倒したちょっと後に私が行ってスキルを返していただくようお願いしています。」
「今回はその役割も俺がやると?」
「その通りです。もしかしたら、素直に返してくれるかもしれません。」
「そうだったら願ったりかなったりですけど、もし向こうが嫌だって言って全力で排除してきたら・・・。」
「それが3人と戦うパターンになりますね。」
「期限は・・・?」
「5日間。5日目までにスキルを手に入れていれば大丈夫です。」
期限はまあ短くもなく、長くもなくって感じだが、今回は最初のやり取り次第で変わってくるな。
素直に返してくれるのか、くれないのか。
問題はそこだ。
「どうですか?行ってくださいますか?」
「行く以外に選択肢ないじゃないですか・・・。」
「じゃあさっそく・・・。」
「あ、ちょっと待ってください。一つお願いが。」
「ん?いいですけど、スキルを選ぶだとか、力を持った武器を持たせるなどはできませんよ?」
先手を打たれた・・・。
なんでだよ、もっと福利厚生に力注いでくれよ。労働者だろこっちは。
それらがダメならもう特にないなぁ。
「じゃあ、服を新調してください。」
そんぐらいしかないな。
ちなみに俺の服は戻ってくるたびに最初に着てた服が新品同然の状態で着させられている。
燃え尽きたり、そもそも洗濯した後置き忘れてきたりしていたのだが、どういう原理なんだよこれ。
まあそれはいいとしても、そろそろ同じ服ってものなんか飽きてくる。
「ああ、それなら大丈夫ですよ?じゃあ、別のものに変えますね。」
そういって神が指を振る。
すると俺がさっきまで着ていた服が別のものに入れ替わっていった。
・・・これ。
「これ・・・俺の部屋にあったやつですよね。」
「はい、あなたがよくセットで着まわしているシャツとズボンのBセットです。」
俺はファッションセンスというものがないので、店のマネキンが着ていたセットを買いそれを着る。組み合わせがわからないのでセットをばらすことはない。
A~Gくらいまでのセットが用意してあり、さっきまで着ていたのがAセット、そしていまきているのがBセットだ。
ボタン付きのシャツという点ではAセットと何も変わらない。しいて言えば色しか変わってない。
「異世界の変な服よりはましかと思いますよ?それに普段着ていたものですし。」
「まぁ・・・変なのより幾分かはマシですけど・・・。」
なんか腑に落ちないな。
「それではほかに何かありますか?」
「いや大丈夫です。行けます。」
ここで行かないって言っても仕方ないことは十分わかっているしな。
それに、もしかしたら速攻で終わるかもしれないし。
そうなったら次のスキル回収の期間を延ばせる。いいことじゃないか。
頼むからそうなってくれ。
「今から送るのは勇者たちのいる魔王城。魔王を倒したばかりの彼らの近くに送ります。」
「場が整ってるから神の使いって言っても問題なさそうだな・・・。」
「その辺りは任せます。」
強敵を倒した直後に現れる神の使い・・・このパターンで行けるか?
「それでは、行ってらっしゃい。」
暗躍系主人公っているよね。いない?・・・いるよな。(不安