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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第3章 
32/63

第32話 原因

なんとかなったので投稿します。

俺は動かなくなったドラゴンに触れていた。


「・・・【回収アブゾーブ】。」


俺の手が光る。

この感じは、スキルを奪えたみたいだ。

得たスキルは【邪竜の覇気】。

スキル画面に表示された邪竜という文字に悲しみに似た何かを感じた。


「本当にお前が邪竜だったのかよ・・・。」


俺はそのスキルの詳細を見た。

《邪竜の覇気 自分を中心に半径1キロ圏内の生物から体力、魔力を吸収する 任意発動 s4Δ9ka》 

見覚えのある文字化け、神のスキルだった。

俺が回収する【竜王】とは別にあったのか。

いや、それよりも、この効果は・・・


「これを使えばお前、動けたんじゃないのか?」


語りかけるが、返事はない。

・・・ドラゴンが今までのどこかで、このスキルを使っていたら、俺に必ず影響があるはずだ。

でも、体力や魔力がやたらと減るなんてことは、今の今までなかった。

もしかしたら、効果が薄いだけなのかもしれない。

・・・試すか。

俺はドラゴンを倒し、雄たけびを上げ続けるあの竜を見た。


「あの高さならまだ、1キロ圏内だよな。」


俺は【邪竜の覇気】を発動した。

任意発動とは、使おうと思えば発動するらしい。

現に今、なかったはずの魔力が回復し始めている。

空にいた竜王は、明らかにもがき苦しみだしていた。

空中で暴れまわり、その後力尽きたのか、空から力なく落ちた。

木々で見えないので【浮遊】を使い、近づいた。

竜は、地面や自分の体を掻きむしったりしていたが、そのうち動かなくなった。


「こんな力があって、なんで・・・いや、こんな力だったから、使わなかったのか。」


いとも簡単に命を奪う力。

こんな力だったから、俺がいるときに使えなかったのか。

俺のせいだ・・・。






俺はあの後スキルの【竜王】を回収した瞬間、いつもの白い部屋に戻っていた。


「・・・お疲れさまでした。」


神が声をかけてくる。


「なにがだよ。俺は何もしていない。」


顔が上げられない。


「俺がいたせいであいつは・・・。」

「なぜ、そう思うのですか?」

「知ってたんだろ。あいつの力、周囲の生物をみんな巻き込むんだ。俺がいたから、あいつはその力を使えなかった。俺がいなければ、使えていた。使っていれば、あいつは死ぬことはなかったのに。」

「それは違います。」


そう言って、神は俺に何かを見せてくる。

映像か?ステータスウィンドウのような画面に映像が映っている。

そこにはドラゴンがいた。


「これはあなたとドラゴンさんが出会う数百年前の映像です。」


映像が動き出す。

ドラゴンが洞窟のような狭いところで寝ていると、騎士の大群が攻めてきて、魔法ではない普通の槍を放った。

人間の力だからなのか、数本しか刺さっていない。

攻撃されたドラゴンは、吠えることはなく、騎士たちを睨んだ後、何もせず飛び立っていった。


「ドラゴンさんはこれまでにも何度か同種の竜や、人間に襲われましたが、一切スキルを使っていませんでした。」

「は・・・?じゃあなんで人間たちはあいつを追い回すんだよ。」

「理由は二つ。一つは王国の『鑑定士』という、他者のスキルを見れる者がその【邪竜の覇気】というスキルを見てしまったこと。そして、もう一つは彼が寝床に選んでいた場所がすべて、生物の少ない、むしろいない場所を選んでしまっていたこと。」

「・・・。」

「後者については私の予想ですが、彼が彼自身のスキルの犠牲者を生まないために、あえてそういう場所を選んでいたんだと思われます。ですが、皮肉にも人間たちが彼の周りに生物がいないことを、彼の仕業だと思い込んでしまった。」

「んだそれ・・・」


気に食わない。

そんな解釈をした人間たちが憎くてしょうがない。

だけど一番気に食わないのは・・・。

俺は事実を淡々と語り続ける神を睨みつけた。


「一番の原因はあいつに【邪竜の覇気】なんていう神のスキルを与えた、あんたじゃないのか?」

「・・・違います。」

「違わねぇよ!あのスキルには、神のスキル特有の文字化けがあったんだ!あんたの管轄してる世界だろ?あんた以外に誰がスキルを作って与えられるんだよ!!」


声が荒くなった。

まだ神様が悪いって決まったわけじゃないことはわかってる。

わかっていたが、止められなかった。


「そこは合っています。確かにスキルを与えたのは私です。違うのは、原因の方です。」

「自分は悪くないですって言うつもりかよ。あんたがあんなスキルを渡さ・・・なければ・・・。」


そこまで言いかけてやめた。

神が、悲しそうな顔をしていた。

意味が分からない。

なんでこいつが、悲しそうにしている。


「少し落ち着いて話しましょうか。」


テーブルには紅茶の注がれたカップがあった。

神に促されそれを飲むと、少し落ち着いたような気がした。

力が抜ける感覚がする。

何か入ってる可能性を考えたが、熱くなりすぎた自分を反省するにはちょうどいい。


「落ち着きましたか?」

「・・・多少は。」

「では、私の話をさせてもらいます。」


そう言って神はまっすぐこちらを見つめると、話し始めた。


「私は今まで、自分の管轄するいくつかの世界を同時に細かく観測することができないため、大まかな情報を取り入れることで、それぞれの世界の動きを把握してきました。」

「大まかな情報?」

「はい。例えると、『魔王が世界の半分を侵略した。』という具合です。」

「だいぶ大まかですね。」

「お恥ずかしながら・・・。ですが見ようと思えば一つの世界くらいは細かく見ることができます。ですから、前回と今回の世界はあなたの要望通り、全てあなたの行動を見させていただきました。」


だから、前回はちょうどいいタイミングで迎えに来れたのか。


「ここで一度ドラゴンさんの話に変わります。ドラゴンさんが生まれた理由についてです。」

「あいつの生まれた理由?」

「彼の生まれた理由というより、役割と言った方がいいでしょうか。それは、『邪竜として世界を脅かすこと』。そして私はそれにふさわしいようにあの力を与えた。」

「それがわからない。あいつのどこが世界を脅かす邪竜なんだよ・・・。」

「私は逆になぜ邪竜として動いていないのかが不思議でした。世界を脅かす存在として、そういう存在として生まれるように手を加えたはずなのに。」

「よくわからない。何のためにそんなことを?」

「『邪竜によって脅かされた世界』の動きを観測する必要があったからです。それを行う理由は私より上の神の命令だから、としか言いようがないですが・・・。まとめると、ドラゴンさんは、私によって邪竜となるように生み出され、邪竜としての力を与えられ、邪竜としての働きをしているはずでした。」


「ですが・・・。」そう言って神が少し沈黙する。


「彼とあなたとのやり取りを見ていて、数時間後、彼が邪竜だとわかりました。だからこそ違和感がありました。世界を脅かすような存在なのに、どこか優しすぎると。私が今まであの世界から得た情報には、『邪竜が騎士団と交戦した。』『邪竜が滅んだ王国の城を住処にした。』などがありました。極めつけは『邪竜によって世界が恐怖している。』と。」


さっきの話を思い出した。

状況証拠だけで邪竜と決めつけられた話を。


「・・・まさかあんたはそれを、その言葉通りに受け取っていた・・・?」

「・・・はい。そして私は世界の均衡が崩れていると思い、転生者を送り込んだ。ですが今回、この世界の過去を見ました。それが先程見せた映像です。彼は生まれた時から一度もあの力を使わず、他者との関わりを断っていた。彼は最初から、優しい存在だったのです。しかし、ある時私の浅はかな思い込みで、彼にとっての天敵を送り込んでしまった。だから原因の一つは、私が世界を・・・いえ彼をちゃんと見ていなかったということです。」

「・・・・。」


何も言えなかった。


「ですが今回、一番の原因は、転生した竜に接触した者にあります。」


そう言って神は、あの黒い竜と語っている謎の人物の映像を見せてきた。

暗いところで話しているのか、顔がよく見えない。


「誰ですかこいつ。」

「この者と話した後、竜王と呼びますが、竜王はその力を周囲に振りかざすようになった。この日から突然。それまで、平穏に暮らしていたのにもかかわらず、です。」

「それのせいで、ドラゴンが襲われるようになった・・・?」

「はい、縄張り意識を強く持つようになり、目に映ったものはすべて破壊するようになりました。ドラゴンさんも例外なく。しかも、さっき言ったようにその破壊行動を邪竜の仕業だとあの世界の人々はそう思っていた。そのせいでドラゴンさんはさらに追われる身となったのです。」

「・・・本当なんですか?それ。」

「はい。これだけは本当です。さらに、この男が何を話していたのかを聞こうとしたところ、聞こえなかったんです。」

「どういうことですか?」

「私の管理している世界の過去の風景を見るときには、ちゃんとその場に流れているどんな音も拾うことができるはずなんです。それができなくなっていた。私の力を防ぐことのできる力を、彼が持っている。ということです。憶測ですが。」


謎の男か。

なんでこんな真似をしたんだ。


「だから私はできる限りの力をもって調べました。そしてわかったことがあります。彼は、あなたが今まで行った世界にも現れているということに。」

「え・・・?」

「なぜそんなことができるかはわかりません。しかし、最初の世界で、雄矢さんと接触しています。」


こちらです、と映像を見せられる。

確かにこれはユウヤだ。

そしてその向かいに立っている男が確かに、何かを語りかけている。しかしそれも聞こえない。

いや待て、この男・・・?


「こいつは!」


つい立ち上がった。


「気づきましたか?」

「宿屋で会った男だ・・・。」


リュージがいる世界で、タマが失踪した日の朝、俺の隣に座ってきた男だ。


「そうです。そして彼はあなただけでなく、タマさんと接触していた。」


タマと話している男の映像を見せられた。


「そして、彼と話したユウヤさんと、タマさんには共通点がありました。彼とユウヤさんが話したのは、エリスさんを殺す直前。タマさんと話したのは1日目の夜。その後それぞれ、おかしくなっているんです。タマさんは症状が軽いようでしたが。」

「ユウヤはともかくとして。タマ、あいつがやたら人の役に立とうとしだしたことって。」


タマは確かに何か役に立とうと必死になっていた。

とても必死に。

まさかあれがこいつのせいだったなんて・・・。


「私の力に対抗できる力を持ちつつ、自由に世界を渡る謎の存在。・・・彼によって最初の世界はユウヤさんによって支配され、2つ目の世界では魔人の力が一人の魔人に集結した。そして、今回の世界ではおそらく、転生者である竜が最悪あの後暴れて世界を滅ぼしていたでしょう。」

「目的は世界の崩壊・・・?」

「それはわかりません。しかし、彼がそれらを引き起こしたのは事実。つまり今回の原因は彼にある。彼が竜王をあんな存在に変えた。そしてドラゴンさんがその被害にあってしまった。」


背筋がぞくりとした。

もしかしたらあの朝、俺もおかしくなっていたのかもしれない。

何のために、俺に接触してきたんだ。


「彼を止めなければなりません・・・と言ってもまだ消息がつかめていないのですが・・・。協力お願いできますか?」

「・・・今更断らないし、そいつのせいでドラゴンが死ぬことになったって言うんなら、俺がそいつを止めます。」

「ありがとうございます・・・。」

「それと、神様のせいにしてすいませんでした・・・。」

「いいえ、一部は私が悪いのですから・・・。あと最後に一つ。」

「なんですか。」

「あなたは何もしていないと言いましたが違います。あなたのおかげで3つの世界が救われている。あなたはよくやっていますよ。」


神は優しい目をしていた。






その後、神は部屋を出ていき、帰ってきた。

【竜王】のスキルを返しに行ったんだろう。


「そういえば、【邪竜の覇気】はどうするんですか?」

「それは世界へ返します。神のスキルですが、それありきであの世界は均衡を保っているので。」

「返すって具体的にはどういうことなんですか?ドラゴンの体にとか?」


「いいえ」と言いながら神様は席についた。

「スキルというのは肉体に宿ったものだと思ってください。死んだ後、完全に肉体が滅びたときはじめてスキルはそこを離れます。具体的に言うと難しいので簡単に言いますが空気中を漂っていると思ってください。その後、今あるモノ、人、または新しく生まれたモノ、人に宿ります。誰にどう宿るのかは世界が勝手に決めます。」


「ちなみに、」と神は続ける。


「あなたのスキル、ランダムで得られるスキルは、その空気中を漂っているスキルから選ばれたものだと思ってください。」

「魔王幹部が持ってたっていう【交換チェンジ】が俺のもとに来たのはそれなんですね・・・。」

「はい。では、【邪竜の覇気】を返しましょうか。」

「あの・・・。」


俺はおそるおそる聞く。


「このスキルを持っていくってのは。」

「ダメです。一応神のスキルでもあるので。」


やっぱりか。

一応形見みたいなものなんだけどな・・・。

そう思っていると神はこう言った。


「それはドラゴンさんの形見のようなものですものね・・・。ですから代わりを用意しています。」

「え?」


代わり?準備がよすぎるだろ。


「こちらです。」


そう言って差し出されたのは、緑色の鱗が中央にある首飾りだった。


「まさかこの鱗・・・。」

「はい、ドラゴンさんのです。保存状態は神様が保証します!」


そう言ってガッツポーズを見せてくる。

もしかして元気づけようとしてくれてるのか?

いつになっても、読めない神だなこの神は。


「ありがとうございます。大切にします。」

「喜んでもらえて何よりです。」


そう言って神は俺の後ろに回り肩を揉み始める。

・・・?なんで?


「あの・・・話もいい感じに締まったところで・・・。」

「まさか・・・?」

「次の世界についてなんですけど・・・。」

「あんた鬼か・・・。」


3章終わりました

早いなぁ

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