第27話 盾 ep158 信頼
国語力がないけど投稿します。
「にしても昨日はどうなることかと思ったよ。」
俺たちは宿屋で朝食を食べていた。
昨日のことがあってか、気まずい雰囲気が流れていたので頑張って会話を切り出してみた。
「・・・そうだな。」
リュージが答えてくれた。
ありがとう。
俺みたいな人間は無視されると辛いんだ。
良かった。
「そ、そういえば、昨日のあれは何なのニャ?どこにそんな脚力があったのニャ?」
タマが聞いてくるが、多分昨日の俺が飛んでいたことだろう。
「ああ、あれは魔法だよ。」
「何言ってるニャ。ミーは真剣に聞いてるニャ。」
「いやマジで魔法なんだって。浮遊って言うんだけど・・・ちょっと待て、この世界は魔法がない・・・?」
「ない。」
「嘘だろ?」
俺が魔法が使えると思ったのは、あのデカブツの斧から魔力を感じたからだ。
あの斧は明らかに刃がボロボロなのに、切断面が研いだばかりの包丁かと思うほどきれいすぎた。
そして俺の真横をかすめたときに魔力を感じた。
魔力があるなら、前の世界で学んだ方法を活かせば、浮遊ぐらいは使えるんじゃないかと思った。
魔法は成功して、空中で軌道を変えたり、魔人の目の前でうまいこと体の向きを変えたりすることができた。
まあ魔力量が少なくて悲嘆の魔人の目の前で飛べなくなって危なかったが。
俺は彼らにそういうことを簡単に説明した。
「魔力を感じた、か。この世界という言い方は合ってるか知らないが、ここでは魔力を肉体や武器を強化するのには使う。俺もそうやって強化している。」
「もしかして右腕のあれか。」
「ああ。」
リュージの右腕の力を使ったとき、何かが彼の右腕に集まっているのが見えたが、もしかしたらあれも魔力かと思っていた。
やっぱりそうなんだな。
「じゃあ俺もうまくやればあんなパンチができるのかもしれないのか。」
「いや無理だな。」
「なんでよ?俺は魔力の流れを操るセンスがあるって、王国最強魔法使いのお墨付きをもらってんだぜ。」
「誰だそいつは。まあいい、俺のあれは憤怒の力によるものだ。自分の魔力を全消費して、俺の攻撃力を極限まで高める。」
「全消費ってすごいな、でも、竜と戦った時二回使ってなかったか?」
「俺の足に強欲の力があった。蹴れば相手の魔力をすべて奪える。だから奪った魔力で二回目を発動した。」
「・・・俺お前の敵じゃなくてよかったよ・・・。」
最強だろこいつ。
まじで戦って勝てるビジョンが見えない。
「まあもう使えないがな。」
「魔人の力は消えたんだよな。消えないはずなのに。」
「ああ、本来は近くの人間に取り憑いてしまうはずだが、あの場にいた全員が何ともなかったからな。」
「もしかしたら、教会の近くに誰かがいたりして。」
「問題ない。その力を悪用するなら、俺が止める。」
リュージがそう言うと頼もしいな。
「てかリュージこそ、どうして盾のスキルが使えたんだよ。」
「・・・後でステータスウィンドウを見て分かったが、【盾】というスキルが手に入っていた。」
「盾ってそりゃまたシンプルな。」
「中身もシンプルだ。『己を盾とし、強化する。』。常時『強制』発動らしい。だから、あの本を使われていてもあの攻撃を耐えられたわけだ。」
「奇跡だな・・・って、ちょっと待てお前。後で確認したって、じゃあ、あの瞬間お前はどういうつもりだったんだよ。あの覚悟した感じは何?」
「腹を貫かれてでもタマを守ろうとしていただけだ。」
「・・・お前覚悟決まりすぎだろ。」
「何度も死にかけてるんだ。あれくらいなんてことない。このバカ猫もわかってたらしいしな。」
「え?ああ、うんわかってたニャ。当たり前ニャ。」
「ほんとか・・・?」
「・・・ミー、は正直言うとちょっと心配だったけどニャ。・・・でも信じろって言われてたから、信じてたニャ。」
「タマ・・・。」
タマとリュージが見つめあう。
え、なに、キスする展開?
タマなんかもう目つぶってるし。
ララの眼をふさいでおこう。
「二度とこんな真似すんなよバカ猫。」
「いたたたたたたた。痛いニャ。千切れるニャ。」
リュージはタマの頬をつねっていた。
タマは反撃しようとするが届かない。
仲睦まじい光景に安心する。
「将斗。ついでに言っておく。・・・助かった。」
「え、ああ、おぉう。」
唐突に礼を言うなよ。
照れるぞ。
変な返事になったじゃないか。
「お前が無茶してくれなかったら、俺はあいつに勝てなかった。」
「・・・おう。」
どうしよう、すごい感謝されている。
もう言っちゃっていいんじゃないか。
スキルくださいって。
このままじゃ俺明日消えちゃうんだけど。
いやでもここで言うのはいやらしいか?
ああ~・・・・・。
俺が悩んでいると、リュージはそれを察したような顔で手を出してくる。
いやこれはただの握手だろ。都合よく考えすぎだ。
俺はその手を握る。
「どういたしまして。」
握手を終えて俺は手を離そうとするが。離れない。
こいつ握力強くね!?全然離れないんだけど?!
「いででででなになになに?」
「ハァ・・・やるよ。俺のスキル。さっさと取れ。」
「は?だ、だってそんな。」
「俺の許可が出るまで奪わないって言ってただろ。なら許可は出した。いらんのか?」
「いるけど・・・。いいのか。」
「いいって言ってる。今しかやらん。」
「でも俺そんなに大したことやってないしな・・・。」
「早く!とれ!お前が逃げなかったおかげでこっちが助かったんだ。これはそれに対する俺の誠意だ!」
「あのご主人がここまで言ってるニャ。もういいんじゃないかニャ?」
「・・・だったら、貰うぞ。【回収】。」
ステータスウィンドウを開くと【神盾】が手に入っていた。
「明日、文字通り本当に消えるとか、そういう重要なことは早く言え。」
「はあああ?なんで知ってる?!」
「ごめんニャ。」
「タマあああああ。」
「言ったら俺に気を遣わせると思ってたらしいが、いらん気づかいだ。」
「ご主人がマサトが寝てるとき、スキルをやることにしたって言うから、伝えただけニャ。だから最初からあげるつもりだったのニャ。」
「リュージ・・・お前やっぱりいいやつじゃねぇかよ。」
「そうニャ。ご主人は良いやつニャ。しかもちょろいニャ。昨日の今日でこんなに変わっちゃくらいちょろくて」
「バカ猫、いい加減にしとけよ。」
リュージがタマの頭をわしづかみにしていた。
後のことは言うまでもない。
俺が明日帰るため、旅するものあれだからと4人で街を歩いていた。
途中でカストルさんに会ったが、教会の悪事が暴けたので教会の持っていた権利を取り上げることができたそうだ。
「僕も一緒していいかな」と言われたが、3人が拒否したため。苦笑いしながら帰っていった。
まだ嫌われてるんだなあの人。強く生きてくれ。
歩いているとララが裾を引っ張ってきた。
「どうしたララ?」
「・・・ありがとう・・・。」
「!、どういたしまして。」
朝から妙に黙ってたのはこれを言うためだったのか・・・?
可愛すぎる。
にしても【回収】でララを回収できたのは奇跡だった。我ながら褒め称えたい。
そんなことを考えている時だった。
ドンッ!と俺たちの前に何かが降ってきた。
リュージがタマをかばうように構える。ララも降ってきたものを見つめている。
・・・なんかこの感じ知ってんな。
「いたたた、あ、お疲れ様です~。」
「神様・・・?どうしたんですか?」
神様だった。
あれ、期限は明日までだろ?
じゃあなんで今くるんだ。
とりあえず近づいて起き上がるのを手伝う。
「ふぅ、さて、もうスキルは回収したんですよね。」
「なんでそのことを。」
「あたりまえじゃないですか、今回はちゃんと最初から最後まで見ていましたから。」
前回の反省を生かしたのか。
いやちょっと待て、だとしたら。
「まさかもう帰れと?」
「だってもういる意味ないですよね?」
「いやいやいやいや、期間いっぱいまで居させてくれないんですか?!」
「今はスキルの返済期限を延ばしてもらって限界の期限が7日間だったので、誠意を見せるために早めに返したいというか・・・。」
自分勝手が過ぎる。
俺が必死こいて手に入れたのに、そんなさらっと帰るなんて・・・。
「俺だけ期間いっぱいまで残るって言うのは・・・。」
「ダメですよ。基本的にあなたがいることもあまりよくはないことなので。」
「おい、そいつは何だ。」
リュージが問いかけてくる。
そりゃ目の前に降ってきたやつとか警戒するわ。
「神様だよ。」
「こいつが・・・?」
リュージの眼が鋭くなっていく。
神を睨みつけている。
そうか、リュージをこの世界に飛ばしたのは、ほかでもなく神様だから・・・・。
「リュ、リュージその・・・。この人はその・・・・。」
「・・・ハァ、いやもういい。俺はこっちで生きるって決めた。そいつにあたる意味がない。それに。」
リュージは神様の前に立ち言い放った。
「俺は、神を信じていない。」
神は一瞬泣きそうな顔になったがすぐに立ち上がり。
「ふ、ふーん、まあ?私は心が広いのでなんてことありませんけど?」
「めちゃめちゃ効いてるじゃないですか。」
膝震えてるし。
「さあ、帰りますよ。」
「マジで急すぎるんですけど、俺のこっちで芽生えた友情とか考えてくれないんですか。」
「帰りますよー?」
「えぇ?」
なんかもう強制的に連れて帰る雰囲気だ。
4人で街を回りたかったんだけどな。
「というわけで、その、急だけど、帰らないといけないみたいだ。」
「そんニャ!急すぎるニャ!送別会とかしてないニャ!嫌ニャ~!」
タマが泣いている。
戦ってる間とかよく喋ってたから一番関わりがあったんだよな。
おい、もらい泣きしそうだからやめてくれ。
「・・・やだ・・・。」
ララがしがみ付いてくる。
「ララ・・・。」
寂しいのかそうか。
最後に一撫ででもしてやるか。
「ララ、また会お・・・ん?ララさん・・・?ちょっと待って!ここぞとばかりに吸い込まないで!」
「やだー。」
「ララやめるニャ!やっぱりおいしくないと思うニャ。」
「半分入ってる!半分入ってる!やばいマジで!おいおいおい!!!やばい!っておい神様?!なんで見てるだけなんだあんた!」
最後だというのにいつものドタバタを繰り広げることとなった。
今回はやたら粘ってきてなかなか離れず数分かけてやっと離れてくれた。
ララは今タマに抱え上げている。
「やー・・・。」
「やたら懐いてくれたな。嬉しいけど、いつもこうなのか?」
「いやララは人に懐いたことはない。しかも俺たちが食べられかけてたのは最初だけで、最近ではもうしないものだと思っていた。お前が来てからだな。」
「そうなのか、ララごめんな。俺もう行かなくちゃいけないんだ。」
「やー・・・・食べるの・・・。」
「・・・これやっぱり俺が飯としてしか見られてないんじゃ。」
「かもな。」
「かもなって・・・。」
喜んでいいのか、恐怖するべきなのか・・・。
「というか、俺のことおいしかったって言ってたけど、ララは俺の何を食べたんだ?」
「・・・わからない・・・でもおいしかったのは・・・覚えてる。」
「これ俺やっぱりどっか食べられてるよね。」
「知らん。」
気づいてないうちの足の指一本とか消えてんじゃないかな。
「いいのか、神様とやらが待ってるんだろ。」
「ん、ああ。確かにな・・・。」
いけない、言葉が出てこないな・・・。
リュージになんて言おう。
ありがとうかな。
「俺は何も言わんぞ。」
「ご主人~最後くらいなんか言った方がいいと思うニャ。」
「うるせぇ。」
頭でぐりぐりするタマをリュージが押さえつける。
「なんかいろいろ迷惑かけたな。」
「ああ、本当だ。だが、まあ、そのなんだ。お前がいなければ駄目だったってこともある。だから・・・許してやる。」
「・・・ありがとうな。」
「何ニャ今の!雑すぎるニャ、もうちょっと素直になるべきニャ!」
「お前は本当にいい加減にしておけよ。」
リュージはいつものように叱っているが、少し笑ってるような気がした。
「・・・それじゃあ行くわ。ありがとう。」
「ああ。」
「元気でニャ。また来るニャー。」
「・・・バイバイ。」
将斗と神はその後消えていった。
126番目の世界は救われた。
「まあ、上出来っちゃ上出来だったなぁ。こっちはこっちでほしいものが手に入ったしよ。」
将斗たちを遠くから眺めていた男はそう呟く。
男は手を伸ばしリュージたちに狙いを定める。
「ん~・・・できれば全部欲しかったが・・・まあいい、暴食は勘弁してやるか。」
そう言って男は横に手を翳す。
その手の先から黒い靄が発生した。
男はその中に入って行き、消えた。
ララは食ったものを出し入れ可能なので、その力を手にした将斗から出てきても問題はなく、リュージにやられた時もそうやって出てきました。
将斗が知ろうとしないので書かれない話。