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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第2章 
23/63

第23話 彼の正義 ep154 亀裂

蝉兄貴が車の前にいて怖くて乗れないので投稿します

「んぁ・・・・?」


眼を開ける。

寝てたのか俺は。

頭が痛む。

ここは古城の中か・・・?

個室みたいな狭い部屋に俺はいた。


「・・・大丈夫・・・?」

「ん?・・・ああなんとかな。」


横にララがいた。

珍しく心配そうな顔しながら、こちらをのぞき込んでくる。

俺は上半身だけ起こして元気に見えるような仕草をして安心させた。

ララはそれを見ると「んふー・・・」と言いながら乗りかかってきた。

何も言わないのでよく見てみたら、もう寝ていた。早いな。

そんなことをしていると外から言い争う声が聞こえてきた。

隣の部屋か。

とりあえずララをおぶって部屋を出る。

おぶるために結構動かしたのにまだ寝ている。


「なんであんなことをした!俺は待ってろって言ったはずだぞ!」

「ご、ごめんなさいニャ。」


部屋の前にカストルが壁によさりかかって立っていた。

彼は俺を見るなり、困った顔をして肩をすくめた。

部屋にいたのはタマとリュージで、言い争っているのは彼らだった。


「よ、よう・・・。」


部屋に入ってみると、座っているタマとその前に立っているリュージがいた。

リュージは怒っているようだった。

十中八九勝手な行動をしたことに関してだとはわかってるが。


「お前・・・。」

「悪い、勝手な行動して。待ってろって言われたのに。」

「ちっ、本当にそうだ!お前たちには戦う力がないから待ってればよかったんだ!」

「で、でも、ミーは最近全然役に立ってなかったから、力になりたかったのニャ。」


タマがそう呟く。

彼女はいつもの元気さがなくしゅんとしていた。

耳も下がっていた。


「必要ない!現にさっき、俺が爆発に気づかなかったら最悪の事態になってたんだ!勝手な行動をするな!」


リュージは怒鳴りながら続ける。


「しかも、あの銃を使ったな!俺は使うなって言ったはずだ!」

「でも、あの時はああするしか・・・」

「魔人の力は使ったものの精神を蝕む!あの銃なら使ったやつが嫉妬の感情に飲み込まれる!それに耐えられる精神力がなきゃ使っちゃダメなんだよ!」

「で、でも【怠惰の刻印】は使ってもなんともな」

「それは毎回、俺が魔人の力に耐えられなくなった時に使わせてたんだ!お前に影響が出ないくらい・・・相殺できるくらいこっちが深く飲み込まれそうになったときだけ!」


確かに怠惰の力を使うときと使わない時があったが、あれは、あまりにも感情が傾きすぎたときに使って、いわゆる中和みたいなことを行ってたのか。


「な、なんでそんな。教えてくれればよかったのに。」

「それは・・・お前が戦う必要がないから教えてなかったんだ。」


沈黙が訪れる。

「ちっ」と舌打ちをして、リュージが部屋を出ようとすた。


「反省してろ。」

「・・・んで・・・。」


タマが何か言った。

リュージは聞こえなかったのか振り返る。


「・・・何だよ?」

「なんでミーだけ仲間はずれにするニャ!」


タマがひどく怒っていた。

毛は逆立って、尻尾も太くなって。


「ララが来てからずっとそうニャ!!昔は二人で一緒に戦ってたのに!」

「・・・お前の小道具を使った戦い方じゃもう通用しない次元になってるんだよ!」

「・・・っ!それじゃ、ミーはただの荷物持ちニャ!そんなの嫌ニャ!もっとミーはご主人の役に立ちたい!一緒に戦いたい!」

「・・・黙れ。」

「・・・は?」


なんつった今。

こいつ、タマがどれだけ力になりたがってるのかわかってんのか。


「お前は黙ってついてくればいいんだよ!何もするな!!お前は何もせずにいろ!!」


そう言って部屋を出ていくリュージ。

俺は彼を追いかけた。

部屋からタマの泣く声が聞こえてきた。


「お前っ!ちょっと待てよ!リュージ!」


肩を掴み引き留めようとする。

だが、その手を払われる。


「部外者が何の用だ。」

「タマに謝れよ!あいつがどんだけお前のことを」

「黙ってろ!この世界に来たばっかの何も知らない人間が、口を出してくるな!」

「あいつはお前の力になりたがってる!そりゃあやり方がちょっと良くなかったかもしれないけど。今回だって」

「知るか。着いてくるな。」

「おい!待てって!」


服を掴もうとするが、かわされる。

彼のこちらを見る目は酷く冷たいものだった。


「言っておくが、スキルはやらん。」

「は?違っ、そんなつもりじゃ。」

「信じられるか。俺はまだお前を信用していない。」

「・・・っ?!」


胸のあたりが痛くなった。

信用されていない、か。

前の世界では無条件に信じられていたせいで感覚がマヒしてたが、俺はまだ出会って3日目、普通だったら信用されるはずもないか。

分かっていても直接言われるのは結構くるものがある。

リュージは古城の奥に歩いて行った。

ララはこんな時でも寝ていた。




軽い昼飯を食べていると、王国の騎士たち数名がワイバーンと共に古城に来た。

カストルさんが何らかの方法で連絡を取って呼んだらしい。

さらわれた人々の保護に来たようだ。

王国騎士たちは人々を俺たちが乗ってきたような籠に入れ。飛び立っていった。

なぜかカストルさんだけ残っていた。


「カストルさんは帰らないんですか?」

「ああ、まだ彼に相談したいことがあってね。」


さわやかスマイルを見せてくる。


「でも今の状態じゃできそうにないか・・・。」

「そうですね・・・。」


あれからリュージは奥から出てこない。

タマもまだ布団をかぶって丸くなったままだ。


「・・・暇つぶしに、話さないか?」

「え゛っ・・・!」


またか!?俺はまた謎の食べ物について聞かれるじゃないか。

返答に困る。


「ハハ・・・そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。それに世間話というよりかは昔話だ。」

「昔話?」

「そう、彼と僕の話だ。気にはなるだろう?」



俺とカストルさんは場所を変え、古城の中庭にある花壇だった所の端に座った。

ちなみにララは服を握り締めていて離れなかったのでそのままにしている。

カストルさんが話し出した。


「僕と彼は昔敵対してたんだ。僕は昔、奴隷は犯罪者がなるものだと思っていて、女王を殺し、主人を殺し逃げた彼が自由に生きていることが許せなかった。おっと、女王殺しは冤罪だと、後で分かったけどね。」


カストルは空を見上げ続けた。


「彼と初めて面と向かって話したのは、僕が3人目の魔人と戦い、深手を負って倒れている時だった。その時の傷まだあるけど見るかい?」

「いっいいえ、大丈夫です。」

「そうか・・・。続けるね。彼の風貌は最初聞いていた姿と違っていた。髪は白くなっていて、義足になっていた。ちなみにその時はまだ右手も目も普通だったよ。―」


彼は僕を安全な場所に移動させると魔人と戦い始めた。

戦っている魔人は憤怒の魔人。

常に怒っていて、強烈な拳を、目にもとまらぬ速さで放ってくる。

筋肉が盛り上がっていて、剣が通らないほど堅かった。

彼はそいつに何度も吹き飛ばされながらも立ち上がり、向かっていった。

その時気づいたんだけど、彼は盾専用のスキルを重ねがけして使っていた。何度も。本来そんなことはできないはずなんだけど。でもそれ以上に不思議なことに彼は盾なんか持ってはいなかった。

信じられないが彼はその身を盾として戦っていた。

だけど、魔人の攻撃の速度が速く、スキルを唱える暇がなくなっていった。

ダメージおいどんどん劣勢になっていく。

彼が僕のほうに吹き飛ばされたとき、彼が立っているのが不思議だった。

いたるところから血が流れ、右腕は折れているようだった。

だから俺は、犯罪者である彼がそこまでするのがわからなくて聞いた。

「どうしてそんなになってまで戦うのか」ってね。

「魔人のやることが気に入らないからだ。」って言った。

憤怒の魔人はその支配していた地域の人間から食料を貢げさせていて、足りない場合は人を一人さらって、彼の力を試す練習台にされていた。

それを気に入らないって言ったんだ。

嘘のようには思えなかった。

そして彼は死に物狂いで魔人と殴り合い、勝った。

その時分かったんだけど、タマが憤怒の魔人にさらわれていて地下室に隠されていた。

彼は彼女を助け出すと即座に帰ろうとしたから、王国軍が来るから治療をしてやるって言ったんだ。

でも彼はいらないって言って帰っていた。

なんで彼がそこまでするのか、理解できなかった。

俺は帰ってから彼について調べると、彼の女王殺しの判決に矛盾があることに気づいた。

奴隷にするしないの判決はある教会が行っているから、冤罪なんて起こるわけがないと信じていた。

その後、他の彼が活躍した事件の報告書を見て気づいたんだけど、彼は理不尽にさらされる人々を救っていた。

僕には彼が、彼と同じ思いをしてほしくないという思いで動いてるかのように見えた。

真の正義を彼から感じた。


「―だから俺は少し彼に憧れていてね。彼のように、人を救う仕事を主にするようになった。今までは国のために戦っていただけだったからね。特に奴隷に対しては考えを改めるようになった。」

「あいつがあなたを変えたんですね。」

「ああ。彼は本当は優しい人だと思うんだ。だからそんな彼をあんな境遇に追い込んでしまったことが少し悔しいよ。まあ、あそこまで追い込まれ、力をつけたからこそ救われた命もあるんだけど。」


カストルさんは嫌われてるけど、リュージのことをよく見ているようだった。


「・・・ん?ならなんでカストルさんはあんなに嫌われてるんですか?」

「それは昔奴隷を囮に彼をおびき出したりしたからだね。」

「えぇ・・・。」


最低じゃん・・・。

嫌われるわそれは。


「まあでも最近は会話をしてくれるようになったし、彼も許してくれるようになったのかもしれない。」

「ははは・・・・。」


いまいち掴めないなこの人は。


「おい、カストル・ラインズ。いつまでいるつもりだ。」


リュージがやってきた。

機嫌が直っている・・・わけないよな。

俺を一瞥すると何も言わずカストルさんと話し始めた。


「カストルでいいと前から言っているのに、そう言ってくれないんだ。君からも何か」

「用がないなら帰れ。」

「ごめんよ。用はある、少し君に相談したいことがあってね。」

「・・・手短に話せ。」


リュージが前に立つ。


「カディナル教会のことなんだけど。」

「あれがどうした。」


カディナル教会ってなんだ?

疑問符を思い浮かべる俺に気づいたのか、カストルさんが説明してくれた。


カディナル教会

奴隷の判決を下す権利を持っていて、烙印も契約書もそこで発行している。

奴隷がスキルを使えなくなるのはその教会の牧師アキナスという人の力によるものだという。


「最近奴隷に烙印を押す道具も契約書も、今日のような小悪党どもが持っていることが多い。本来出回ってしまうものではないのに。」


そのセットがあれば奴隷ができてしまうらしいので簡単だそうだ。

確かにそんなものが出回っていていいはずがない。


「教会側がそれを売っているんじゃないかという噂があってね。ほかにもよくない噂を聞く。」

「それがなんだというんだ。」

「君たちにそれの調査をお願いしたくてね。」

「・・・お前がやればいいだろう。王国騎士団長様。」

「教会にお世話になった上の人たちがそれを許さないんだ。だから僕は動けない、どうだい?」

「それをなんで俺たちに頼む。」

「君なら断らないだろう?」


リュージはカストルさんを睨むがカストルさんは続ける。


「もし協会が黒なら捕まえ、奴隷の判決の権利を奪える。国が判決を行えるようになれば、教会では限界があった調査力を余裕で上回るから、これ以上誰かさんのような冤罪がなくなると思うんだが。」

「・・・・。」

「どうだい?」

「・・・・。」

「沈黙は了解ということでいいかな。」


Noとは言わせない言い方だな。

何だろう。カストルさんは良い人かと思っていたが。リュージのことをいいように利用しているようにみえる。

もしかして今までもこんなことをしているから嫌われてるんじゃないのか・・・?




俺たちがワイバーンに乗って王国へ移動する間、一言も会話がなかった。

王国に着いたのは夜で、すでに用意されていた宿に入り、夕飯の後、就寝した。

タマはその間ずっと何も言わなかった。

カストルさん昔は奴隷を囮にリュージを呼び出したりしたんで、将斗の想像を超えて嫌われてます。

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