第22話 焦燥感 ep153 蹂躙
ゼロワンがゼロツーでアークワンだったので投稿します
宴会の後ぐっすり寝た俺は翌朝、朝食後に着ていた服を久々に洗うことにした。
洗濯は村の外れの川でやることにした。
「なぁタマ。」
俺は目の前にあるモノを見ながらタマを呼ぶ。
「何ニャ?」
タマも『それ』をじーっと見ている。
「それってさ・・・名前、『洗濯機』だったりするか。」
「おお~、よく知ってるニャ。」
小型の洗濯機だった。
人間の膝までくらいしかないサイズの。
どっから出した。
「これは最初ご主人に言われたとおりに作ろうとしたけど、もっと魔力とか使えば効率よく小型化できそうだったから良い感じに改良した『タマ式洗濯機』ニャ。」
服を洗濯したいんだけど、なんかいいのある?って聞いたら出してきたのがこれだよ。
俺は洗濯板とか、魔物から作った洗剤みたいなのが出てくると思ってたのに。
異世界情緒がなさすぎるだろ、こいつの発明品。
主にリュージが教えたんだろうか。
再現から改良までできちゃうとか凄えよ。
うーん・・・でも便利すぎるのはよくない。やっぱり情緒が・・・え?うっそこいつ脱水までできるのか、すげぇ。
そんな洗濯をしている時だった。
村のほうが騒がしくなっていた。
急いで村に戻ってみると、中心部の広場に何かがいた。
ドラゴン?ちょっとした民家ぐらいのサイズの赤いドラゴン。
白玉みたいな牙と爪を持っていた。手入れがされてるように見える。
いやドラゴンじゃないなあれはワイバーンか。
前足がないし。
にしてもかっけぇ・・・。
その体には鞍がついていた。
頭にも乗馬の馬がつけているようなのをつけていて、さらに胸には盾と剣が交差したような模様というか、マークがついていた。
「ニャ・・・あいつニャ・・・。」
タマが珍しく嫌そうな顔をしている。
その視線の先には、背中に先ほどの模様がついたマントをつけた男がいた。
男がこちらに気づき近づいてくる。
「タマじゃないか、久しぶり。」
「気安く呼ぶニャ、ミーはまだあんたのことを許してないニャ。」
毛を逆立て威嚇するタマ。
なんだ?敵か?
男はこちらを見てくる。金髪で青い目をした、さわやかそうな青年という印象を受ける。
というのは顔だけで、恰好は騎士そのものだ。
「君は・・・その・・・?」
「なんですか?」
「どうして服を着ていないんだい?」
そうだ俺半裸だった。
「お、お気になさらず。」
「そ、そうか、君はタマの知り合いかい?おっとその前に、自己紹介をしておこう。」
騎士さんは俺に向き直って胸に拳を当てる。
騎士の挨拶ポーズかな。
「俺はニーグ王国、王国騎士団長、カストル・ラインズです。タマの知り合いならカストルと呼んでもらっても全然かまわない。」
俺も自己紹介をすると、握手を求められたので握手する。
団長って一番偉い人じゃないか。
「マサト、そいつは信用しない方がいいニャ。」
「はは、相変わらず嫌われてるようだ。」
タマは相変わらず威嚇しているが、カストルはなんてことないという風に笑っている。
何したんだこの人。
「何の騒ぎだ・・・。」
後ろからリュージが来た。ララも一緒にいる。
「やあ、リュージ。」
「・・・カストル・ラインズ。」
リュージはカストルを見るなり若干嫌そうな顔をする。
ララも後ろに隠れ・・・どこ行った?
見回すと俺の後ろにいた。
ヤバイ・・・いや落ち着け俺、朝食は食べたはずだ・・・。
「何しに来た・・・。」
「憂鬱の魔窟が閉じられたと聞いてね。そんなことができるのは君しかいないと思って飛んできたんだよ。」
「・・・世間話はいい。目的を言え。」
「君の力を借りたくてね。」
「断る。」
即答だった。カストルさんめっちゃ嫌われてんじゃん。
「そうか・・・今回行くところは誘拐した人々が集められて『何か』をされているという場所で、連中を全員捕まえようと思ったが私一人では手が足りなくてね。そうか、困ったな。」
「・・・お前のそういうところが嫌いだって言ったはずだ。」
「よく言われるよ。」
リュージは大きくため息をつくと、元来た道を帰っていく。
「どこに行くんだい?」
「ちっ、準備するから当分待ってろ・・・。」
『何か』ってもしかしたら奴隷関係かもしれない。
この村を救うくらいだから、まあリュージは受けるだろうな。
にしてもあの言い方といい、今の言い方といい、性格悪いわ。
タマが嫌ってんのはそこか。
俺たち4人はワイバーンの持つ籠に乗り、カストルはワイバーンの上に乗り飛び立った。
小さいころ乗った気球を思い出す。
カストルが上からこちらを覗き込んでくる。
「いやーはるばる来たかいがあったね。」
「「「・・・。」」」
誰か返事してやれよ・・・。
「はは・・・大変だったんですね。」
「そうなんだよマサト。実は―」
そのあとよく知らん国とよく知らん国が戦ってて大変なことと、団長が普段どんな仕事をしてて大変なのかとか、実は今休暇中だとか話された。あと世間話。
その間3人は何も言わない。
つらい、こっちの世界の国の名前とか食べ物とか言われてもわからん。
俺がこの世界の人間じゃないって、この人に言っていいのか悪いのかがわからないし、話すタイミングも見失ってる状態で話が進んでいく。
「ベルトスにつけるならマミルダとハスベンどっちが好きだい?」という謎の質問をされてよくわからんから適当に答えたせいで、俺はマミルダ好きという設定になった。
助けてくれ。地獄か?
ちなみにこの状態で1時間くらい経った。
その間3人はマジで何も言わなかった。
俺たちは目的の場所に近づきすぎると連中にばれてしまうという理由で、ある程度距離のあるところでワイバーンを降りた。
降りるときタマに「ミーはハスベン一択ニャ。」と言われた。
知らんが?
「今回誘拐をしているとされる連中は『黒の尖兵』と名乗る組織だ。もうなんとなくわかっていると思うけど連中は捉えた人々に奴隷の烙印を付け、契約書を発行し、商人に売りつけている。」
背筋がぞくっとした。
話を聞いたからじゃない、なんか空気が変わった。
3人を見て分かった。
彼らがひどく怒っているからだった。表情から読み取れる。
特にリュージからは殺気も感じる。
「連中は古城を根城にしていて、おそらくだがその地下にさらわれた人々がいる。ただ、連中の人数結構が多くてね。30人くらいはいるんじゃないかという情報がある。」
「・・・問題ない。」
リュージはこぶしを握り締め言い放つ。
「一人残らずぶっ殺す。」
「・・・できれば生け捕りでお願いしたいんだけど・・・。」
俺たちは古城近くに着いた。
林の間から観察する。
酷く荒れていて、とてもじゃないが人間が住んでいるとは思えない。
ツタが絡まっていて相当な年月放置されていたと見える。
こっそり状況をうかがう俺たちにカストルさんが小声で話しかけてきた。
「作戦はどうする?」
「カストルが正面から、ララが後ろから、俺が中庭で敵を叩く。」
めちゃめちゃカストルさん危ないじゃん。
いやリュージも危ないし。
「いいよ。そうしよう。」
いいのかよ。
「でもそうだな、その場合鎧が邪魔だね。」
そう言って鎧を脱ぎだす。
普通の異世界一般人と変わらない見た目になった。
逆だろ。鎧必要だろ。
「ミーたちはどうするニャ。」
「ここで待ってろ。」
「はいニャ・・・。」
俺とタマはまた見守るだけか。
まあ戦闘能力ないから仕方ないか。
「タマ、あれを寄こせ。」
了解ニャと言ってタマがリュージに何かを渡す。
あれ?なんか見覚えのあるフォルムだな?
なんだっけあれ。
「これで合図を出すから、そしたら二人も行動を開始しろ。」
3人が出発して数分経った。合図ってなんだ。
すると大音量で何かのメロディーが流れだした。
なんだこれ知ってる?!知ってるぞこのメロディー。
この電子音!
どっかで聞いたような。この耳に残るリズム。
あっ!『スーパーのあれ』だ。顔のついてる謎の機械が、延々と謎のメロディーを流し続けるやつ!
・・・っだから、異世界情緒がなさすぎるだろ!なんで作らせた!
謎のメロディーは中庭から鳴っていた。
「なんだこのふざけた音楽は。」
あらゆる方向から黒の尖兵メンバーが中庭を見る。
黒いコートに身を包んだ謎の男がいた。
「誰だ貴様!」
黒の尖兵の一人が問う。
男―白峰竜次は眼帯を外しながらこう言った。
「お前らに教える必要はない。」
直後眼帯を付けていた方の眼、右目が赤く光る。
すると竜次を見ていた黒の尖兵全員が狂ったように窓から身を乗り出し、彼に襲い掛かった。
彼はさらに左目を輝かせる。
彼に襲い掛かった黒の尖兵たちは、気絶したり、泡を吹いて倒れたり、動けなくなったりした。
彼の両目に宿る力は『色欲』そして『傲慢』。
右目は『視界に入ったものを自身に引き寄せる』スキル【色欲の魔眼】。
左目は『視界に入ったものを委縮させ、使用者の力によっては気絶、さらには絶命させる。』スキル【傲慢の義眼】。
圧倒的な戦力を見せつけで戦闘を行わずに彼は中庭を制圧した。
正面ではカストルが戦っている。
笑顔で近づいてくるカストルに黒の尖兵たちが矢を放ってくるがどれも華麗にかわされ、剣で切り落されていく。
カストルが無駄のない洗練された動きでどんどん距離を詰め、大地を蹴った。
瞬間、彼は屋上に降り立ち、矢を放つ者たちを一人残らず斬っていった。
裏からはララが侵入していた。彼女を見つけた黒の尖兵たちが襲い掛かるが、彼女の眼が光った瞬間、苦しみもがきだした。
【暴食の眼光】、『視界に入ったものを極限の飢餓状態に陥らせるスキル。』を使っていた。
もがく尖兵達を尻目にララは歩いていく。
退屈だったようで大きな欠伸をしていた。
黒の尖兵たちは次々に数を減らしていった。
勝負どころではなく、これは一方的な蹂躙に近かった。
3人で十分だった。
「なんかドンパチ始まったな。」
「そうニャ~・・・」
俺とタマは座って待っていた。
彼女は何かを考えているようだった。
なんか重要なことなのか腕を組んでのどを唸らせる。
そっとしておくか。
そう思ったとき、彼女が立ち上がった。
「助けに行くニャ!」
「何を?」
「誘拐された人たちをニャ。」
「無理だろ、てかそれは、あいつらがやってくれるだろ?」
「それじゃだめニャ!」
そう言って彼女はリュックから次から次へといろんな小道具を取り出す。
爆弾のようなものやナイフ?のようなものまでいろいろあった。
「これは?」
「あげるニャ。」
「なんで?」
「戦うからニャ。」
「だから戦ってんのはあいつらで、俺たちは待ってればいいだけだろ?」
「も~違うニャ!」
彼女はそう言うと俺の眼をじっと見る。
「このままスキル返してもらえなかったら、消えちゃうんでしょ?」
「まあそうだけど。」
「なんて言うかミーは、そういう理不尽な状況にある人を見過ごせないのニャ。」
ああ、彼女は俺のことを心配してくれてるのか。
ここで人質を救出して、リュージにいいところを見せてスキルを貰おうっていう作戦なのかな。
「だから、ここで戦闘経験を積んで少しでもリュージに勝てるように頑張るニャ!」
そっちかー。
「いや無理だろ。」
「やる前から諦めちゃだめニャ!」
「諦める以前の問題だろうがよ!次元が違うんだよ俺とあいつじゃ!」
「一応やってみるニャ!ほらミーのアイテム色々あげるから頑張るニャ!」
そう言って干し肉の入ってた袋にこれでもかと詰め込んでくる。
「待て待て待てって、なんだよ。どうしたんだよ急に。」
「う~・・・。」
さっきまでぴんと張ってた尻尾が垂れ下がる、耳もぺたんとなっている。
「ミーはご主人に最近、何もしてあげれてないのニャ。」
泣いてるのか、肩が震えている。
「5人目の魔人を倒した時から徐々に、ミーは戦闘中離れてろと言われるようになったニャ。」
確かに彼女が戦ってるのは見たことがない。
「どんなことが起きても全部ご主人とララが解決しちゃうから・・・ミーだけ何もしてないのニャ。」
「・・・。」
「だからせめて誰かの役に立つようなことをしてあげたいのニャ。だから、マサトが消えないようにするお手伝いをしたいのニャ。」
3人のうち自分だけ何もしていない。
疎外感のようなものを感じるのだろうか。
まるで焦っているかのように見えた。
でもわからなくもない。置いて行かれるのは辛い。
誰だってそうだ。
いつもうるさいくらいに元気だから、周りも気づけなかったのかもしれない。
だったら俺がせめて、少しでもその気持ちを和らげてあげられるのなら少しくらいは良いか。
「わかった、行くよ。ただし、危なかったら超ダッシュで逃げるからな。」
「いいの?!やったニャ!その意気ニャ!」
そうして俺たちはこっそり古城に忍び込んだ。
外では戦っている音が聞こえる。聞こえてくる叫び声はどれも聞いたことがないので多分黒の尖兵達の声だろう。
「てかこの城の地下ってどうやって行くんだ?」
「今解析中ニャ。」
タマが謎の機械を操作している。
モニターのようなものに徐々に線が引かれていく。
「何してんだ?」
「微弱な魔力を発信して跳ね返ってきた魔力の時間から壁や床の距離を計測してその位置関係を画面上に映し出すのニャ。」
「??」
よくわかんないけど、要は自動マップ生成機か。ハイテクすぎだろ、元の世界にもないわ。
この子だけ何百年も先に生きてないか。
すると尻尾がピーンと張り出す
「見つけたニャ!ここの角を曲がって、左の部屋にある階段から地下に降りれるニャ。」
「すげえな。それじゃあ、と
っとと行くか。」
「待つニャ、先に戦闘になったときのためにミーのアイテムをいくつか渡して置くニャ。」
ほう。どんなハイテク武器が出てくるやら。
ドローンに銃付けたやつとか楽でいいんだけどな。
「まずこれニャ。音爆弾ニャ、ピンを外して数秒後に爆音を響かせるニャ。」
「ふむ。」
「次にこれニャ、閃光弾と手りゅう弾。これもピンを外して数秒後に爆発するニャ。」
「・・ふむ。」
「次にこのタマ特製ナイフニャ。この持ち手のボタンを押すと剣先が飛ぶニャ。」
「・・・ふむ。」
「最後にまきびしニャ。これを撒いておくと踏んだ敵に刺さるニャ。」
「・・・・。」
「どうしたニャ?」
「いやなんか・・・。今までのに比べて地味だなって。」
ローテクノロジーのオンパレードじゃん。
どうしたさっきの自動マッピングとか、最初のウソ発見器とか、洗濯機とか!
「えぇ~、そんなこと言われてもあとはこれしかないニャ。」
【狙撃手】スキルでお試しで使った銃か。
これなら戦いになりそうだ。
銃を貰おうとすると引っ込められた。
「え?なに?」
「これは人と戦うときには貸せないニャ。」
「なんでよ?」
「これは【嫉妬の小銃】、当たると敵同士が争いだすのニャ。」
「なにそれ、超強いじゃん。」
「だからこそニャ。むやみやたらに使っちゃいけない力だってリュージから言われてるのニャ。あくまで封印してるだけだからって。」
一応魔人の力だから警戒してるのか。
それじゃあ、あんまり無理言って使わせてもらうのも悪いな。
「わかった、とりあえずこれで頑張ってみるよ。」
「悪いニャ・・・あ!もう一つ武器あったニャ。これなら使っていいニャ。」
「これは・・・っ!」
「弓ニャ。」
「もっとローテクノロジーじゃねぇか!」
階段まで来た俺は、緊張し始めていた。
よくよく考えてみると、ナイフを使うわけだから、相手を殺す可能性もあるし、その逆もあるんだよな。
少し、怖くなってきた。
「どうしたニャ。ここまで来たのニャ。それにこの騒ぎなら尖兵のやつらは多分もう出払ってるニャ。」
「そういうもんかなぁ。」
タマの言葉を頑張って信じて、おそるおそる階段を下りていく。
誰もいないようだった。
視界を確保できてるのは蝋燭が等間隔に並んでいるからだ。
奥を見るといくつか曲がるところがあり、かつどこも鉄格子になっていた。
「タマどのへんに人質がいるってわかるか?」
「この廊下をまっすぐ行って突き当りで右の部屋からたくさんの人の反応があるニャ。」
またハイテク機械か。
なんでその技術を戦闘面で発揮しないんだろう。
そう思いつつ俺たちは廊下を少しずつ進んでいった。
どこかで落ちている水の音が反響してきて不気味さを引き立たせてくる。
帰りてぇ・・・。
突き当りに着くその右側に人が10~15人くらいがいて、みな口と手足を縛られていた。
彼らは俺を見るなり、口々に何か言いだす。
「しーっ。静かにしててくれ!見つかるだろ!」
小声でそう伝えた。わかってもらえたのかみんな静かにしてくれた。
出そうと扉を開けようとするが鍵がかかっている。
「タマ、鍵がないと開けられないっぽい。」
「困ったニャ、こういうときのアイテムはないニャ。」
「いやこの鍵は古い、なら針金で行ける。」
「え?そんなことができるのニャ?」
「まあ見ておけ。」
タマから針金を貰い鍵穴に通す。
昔テレビで見たことがある、こういうカギは内部の押すべきところをちゃんと押してしまえば、回るようになるということを。
カチャカチャという音が鳴り響く。
・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
無理だわ。
かっこつけて勢いでやったけど無理。
古い鍵なら単純そうで簡単かと思ったんだけど。
「無理だったわ。」
「はぁ~?!」
そう言うと誘拐された人々が口々に何かを言い出す。
猿ぐつわをされているせいで何を言っているかわからない。
「だっだめニャ!静かにするニャ!怒るのもわかるけど・・・この馬鹿にはミーから説教しとくニャ。」
「ごめんなさい勢いでやりました!だから、もう少し静かに・・・。」
それでも人々は静かにならない。
なんだ?
なんか俺を見てるって言うより。俺の後ろ。
振り返ると大男が棍棒を振り下ろしていた。
直撃。
頭部に激痛が走る。
俺はそのまま倒れこんだ。
ぐにゃりと視界が歪む。
平衡感覚が掴めない。
その視界の中で気づいた、敵は二人いた。
二人は何か言っている。
「クソっ、こいつら上のやつの仲間か。」
「だったら話は早え、こっちの猫捕まえて人質にすればいい!」
「やめるニャ!離すニャ!」
「やめろ!」
タマが捕まっていた。まずい。
俺は手に持った何かを投げつける。すんでのところで避けられた。
ちくしょう【狙撃手】の力が本当に使えない。
「何してんだてめぇ!」
胸や腹を蹴られる。数回。
何かが込み上げてきて、吐いた。
頭部と腹部の痛みでぼやける視界では、男の手を振りほどけないタマが、なんとかもう片方の手で銃を持ったのが見えた。
そして捕まえてくる男に向かって発砲した。
命中した男は少し苦しんだ後、大男に攻撃しだした。。そのまま何か叫びながら取っ組み合いをし奥に転がっていく、そっちには俺が投げて避けられた手りゅう弾が見えた。
おそらくピンが外れておらず不発だったのだ。
その後ピンが男たちによって踏まれ、数秒後彼らを巻き込んで爆発した。
彼らの体がクッションになったのか、タマに当たる爆風は弱まったらしく、彼女は大丈夫そうだった。とりあえず一安心だった。
そのはずだった。
タマがこちらに銃を向けている。
なんで?どうして?
タマは泣きながら構えている。
何かを言っている。
よく聞こえない。
視界が暗くなっていく。
どうして俺が狙われてる?
直後轟音が鳴ったのが聞こえた。
そこで俺の意識は途切れた。
【狙撃手】は現代日本で使うと射的の軌道が多少マシになる程度です