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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第2章 
21/63

第21話 次元の違い ep152 憂鬱の攻略

ゴリラゲイ雨なので投稿します

数回ララに食べられえそうになりつつ、俺たちはダンジョンを進んだ。

ケルベロスはもちろん、とてつもなく大きいスライムや、巨人やら何やらが出てきたが、リュージとララ二人で蹴散らしていった。

ちなみに二人の戦闘方法は殴る蹴るといった武器を使用しない格闘スタイル。

一撃一撃の威力が半端じゃない。

一殴りで化け物達が壁に叩きつけられ、一蹴りで化け物がバラバラになる。

跳躍力もすごくて空中戦もお手の物。

なにこいつら、スーパー何とか人かな。

ちなみに戦闘が始まると俺はタマと一緒に隅に隠れて終わるのを待っている。

悔しいが、戦力に数えられていない。

毎回雑談しながら時間をつぶしていた。

今もそうしている。


「そういえばマサトは何かスキルを持ってるニャ?」

「スキル?ああ・・・そういえば。」


俺はステータスウィンドウを開く。

スキル画面にするとタマが覗き込んできた。


「ニャ?【ランダム】ってのが二つあるニャ、これは何ニャ?」

「これは神様が何の力もなしにスキルを奪ってくるのは無理だからって用意してくれたスキルでな。これを使うと新たにスキルが貰えるんだ。・・・何が出るかはわからないんだけど。」

「へぇ〜面白そうニャ。使ってみてニャ。」

「それもそうだな、よし。」


俺はランダムのスキルを2回使用した。

獲得したスキルは・・・

『狙撃手 飛び道具の命中率が上がる 常時発動』

『受け身 ダメージを受ける際、受け身を取りダメージを軽減する 自動発動』

なんだこのパッとしないスキルは・・・いや【超強化】は地味そうで結構強かったしこのスキルたちも意外と


「弱いニャ。」

「え?」

「弱すぎるニャ。」

「ま、まだわからんだろ。」

「じゃあ」と、言いながらタマはカバンをまさぐり何かを取り出した。

「ミーの銃貸してあげるから向こうにある、石を打ってみるニャ。」


タマが指さす先を見る。確かに岩の上にいい感じに石が乗っかっている。

10mくらいか。

俺は借りた銃を構えて・・・ってなんだこの銃、デザインが近代すぎるだろ。

いろんな角度から見てみるが、マジで近代的だ。

あれがない、ロシアンルーレットでぐるぐる回すところが。アレってなんて名前だっけ。


「おっ、マサトはお目が高いニャ。それはご主人が教えてくれた見た目になってるニャ。」

「ああ〜道理で。」

「見た目だけじゃなく内部構造も結構凝ってるんだニャ。ミーの腕にかかればこのくらいは余裕ニャ。」


作ったのはこの子だとしても、原案はリュージからか。まあ当たり前か。

こんなん異世界じゃ作れないだろうしな普通。

・・・それはちょっと異世界に失礼か。


「でもこういう銃って結構当たりやすく作られてるって聞いたから【狙撃手】なくても当たるんじゃねぇかな・・・」


俺は銃を両手で持ち、照準を合わせ引き金を引く。

バァン!

両肩にすごい衝撃が来る。

銃はちゃんと握っていたのにすっぽ抜けそうになっていた。


「痛っってぇ・・・。当たったか?」

「全然だめニャ。」


痛む肩をさすりながら見ると、俺が狙った石の数十センチ下に穴が開いている。


「はぁ?全然ダメじゃん!」

「そりゃそーにゃ。というかこういうのはそもそもスキルなんかなくても練習すれば当たるニャ。」


タマは俺から銃を奪い取ると片手で、しかも俺みたいにちゃんと狙うなんてこともせずに撃った。

なんと石は見事撃ち抜かれ吹っ飛んでいった。


「・・・ゴミスキルじゃん。」

「ゴミスキルニャ。ついでに受け身も練習すればできるからゴミスキルニャ。」

「嘘だろ・・・。」


膝から崩れ落ちる。

数万課金したのにいいキャラが出なかったときみたいだ。

え、マジでこの世界どう過ごすのよ俺。

そんなことをしていると、今回の戦闘も難なく終わったらしく、2人が戻ってきた。

俺の数百倍くらいある蛇の魔物がところどころ拳で吹き飛ばされて見るも無残な姿になっている。

マジで次元が違うんだよな・・・。

ララはそれを吸収して帰ってくる。


「おなかいっぱい・・・おんぶー・・・。」


うーんお兄さん頑張りたいけどクッソ怖いぃ。

背中から吸い込まれる姿を想像してしまう。

え、怖・・・。


「おぶってやれ。ララは満腹になると寝る。」

「い、いいけど、ちなみに後ろから食われたりしないよな?」

「起きるまでは食わん。さっさとしろ。行くぞ。」


恐る恐るおぶってあげた。

意外と軽いんだな。あの大蛇食べたのに。

少し経つとスースー寝息を立てて寝始めた。

吸い込まれなければかわいいんだよなぁ。





数時間移動したところで問題が発生した。


「マサトー、体力なさすぎニャ。」

「ゼェー・・・ハァー・・・幼女担いでるだけなのに・・・ハァ、こんなにきついなんて思わなかった・・・。」


俺は元一般人。人一人担いで、足場が不自由なこの岩だらけの洞窟を歩くのは酷だ。

スポーツやってたわけでもないし・・・。

【超強化】ァ・・・。戻ってきてくれ。

リュージがこちらを見ていた。睨まれてる?

あ、すいません頑張ります。弱音吐いてすいません。

俺は悲鳴をあげる足腰に無理言わせてついて行った。

そんな数分後。


「・・・今日はこの辺で休むか。」


リュージは安全そうな場所に着くなり、懐中時計らしきものを見ながらそう言った。


「えぇ~もうちょっと行けばボス部屋ニャ。」

「俺が疲れてんだ。さっさとテント出せ。」


「ニャー・・・」とこぼしているあたり若干不服そうだが、言われた通りにタマがテントの準備をし始めた。

このテントの質感といい形といい、俺の世界にあったやつそのものだな。


「見覚えあるんだけど、これもタマにリュージが教えたのか?」

「ああ、こいつはいろんな物を作ることに長けてる。しっかり注文通りの品を作れるから便利なやつだ。」

「ミーはいつでもご主人の子供を作れ」

「うるせぇ、さっさとそっち持て。」


タマとリュージがテントを張っている間、俺は待つ。

ララは相変わらず寝息を立てて寝ている。うーん天使。

ロリコンになりかけているとテントが完成した。



数十分後俺は魔物の肉を眺めていた。

こっちの世界では初めての食事だ。

焼いたのにまだ紫色をしている肉だ。元の世界だとこの色腐っているやつの色なんですけど。

しかし、俺の腹の虫は正直だった。

仕方ないので意を決して齧り付いた。

ふむ。

筋張っていて、血なまぐさくて、噛み切れなくて・・・。

食えん。


「慣れんだろうが、食っておけ、そういうモノしか食えない時だってある。」

「・・・おぉうぇ・・・りょ、りょうかい・・・。」


リュージは平気そうな顔して食べていく。顎の筋肉どうなってんだ。なんでそのスピードで噛み切れる。

横から視線を感じるので見ると、タマが俺の手元の肉を見ている。


「食うかい?」

「ニャ?!いいの?!いただきますニャー!」


次から次へと食べていく、あっという間に俺の分がなくなった。

リュージがため息をつく。

食えって言われたばかりだから、怒られるか?

そう思っていると彼が何かを投げてきた。

受け取ると、それは革製の小さい袋だった。

開けてみると中には干し肉が入っていた。

いい匂いがする。


「味付けはちゃんとされてる。そっちのがまだ口に合うだろ。」

「いいのか?」

「ああ。体力なくされて倒れられても荷物になるだけだ。いらんなら返せ。」


はー何こいつ、超優しい。

やっぱ根は良いやつじゃないか。


「ありがとうな。」


そう言って干し肉に手を伸ばした俺の手を何かがつかむ。


「おなかすいた・・・。」

「あっ・・・。」





翌朝、洞窟なので朝なのかはわからないが起こされ、ダンジョン攻略が再開された。

寝袋にくるまって寝れる状態にはなっていたが、ララに食われると思ってまともに寝れなかった。

ちなみに今ララは俺の裾を掴んで歩いている。

かわいいんだけど怖いんだよ・・・。


「あのさ、ララはなんで俺のこと食べようとするのかな。」


聞いてみた。

知らない人が聞いたらこれ通報されかねん案件だ。

ララはこちらを見上げると言った。


「おいしいから・・・。」


おいしそうではなくおいしいであるところにだいぶ恐怖を感じる。


「ちなみにどんな―」そう聞いた瞬間、ララが砂埃を上げ消えた。

進行方向を見ると、ものすごくでかい、虫の・・・ハチ・・・いやカマキリの鎌もあるな。

名前はわからないがとりあえずハチカマキリと命名しよう。

ララがもうすでにハチカマキリの真上にいた。

高速回転、からのかかと落とし。

ハチカマキリは地面に衝突し爆散した。

変な緑色の液体が飛んでくる。

呆然としてると服を引っ張られる。

もう横にララが立っていた。


「おなかすいた・・・。」

「いぃ今のやつ食べればよかったんじゃ・・・。」

「あれはおいしくない・・・。」

「タマ!ヤバイ!俺また食われる!」

「ニャー!なんですぐそうなるニャ!ララー!離れるニャー!」

「ハァ・・・。」





そんなこんなで魔物を倒しつつ歩いていくと大きな扉の前に来た。

植物みたいなうねった装飾がされている。


「でっけぇ扉。」

「・・・ボス部屋・・・。」


ララがいつになく真剣な表情になっている。

いつも眠そうなのに。

リュージもさっきまでの魔物たちの時とは違う気迫を放っている。


「これって扉開けた瞬間にレーザーとか撃たれたりしないよな。」

「さあな。打たれたら避けろ。」


んな無茶な。


「ちなみに、ボス部屋って言ってたけど、どのくらい強いのがいるんだ?」

「あ?そうだな、今まで会った魔物たち全員でかかっても倒せないくらいだろうな。」


それって無茶苦茶強いんじゃないか?

そんなことを考えているとリュージが扉を手で触れる。

俺の心の準備は終わっていませんが?

すると勝手に扉が開いていった。


「っ!避けろ!」

「えっ?!ぐはっ?!」


腹を蹴り飛ばされた、痛すぎる。

そんな俺のいた場所をレーザーが地面をえぐりながら通過していった。

え、もしかしたら死んでたんじゃないか俺・・・。

というかそれよりもこのままじゃ壁に当たる。

しかし壁に激突しそうになった瞬間、体が勝手に動き、壁に両足を付け蹴り飛ばし、地面に転がりながら着地した。

なんだ今の。体操選手かよ。何も意識してなかったのに。

そうか、今のが【受け身】の力か。多分。

リュージとララは反対側に避けていて、タマはこっちにいた。


「タマ!そいつ連れて入ってこい。」

「了解ニャ!」


そう言うとリュージとララは先に部屋に入っていった。

俺はタマに連れられ部屋に入ると、扉が閉まった。

部屋の中は真っ暗だった。

ところが壁にあるろうそくが一斉に灯り、部屋全体が照らされる。

コンサートホールくらい、いやそれ以上の大きさの部屋だった。

そして俺たちの向かい側には見上げるほど巨大な黒いトカゲがいた。

赤き目を持ち、鋭くとがった鱗に覆われた肉体を持っており、2足歩行ができるのか2本の後ろ脚で立っていた。

いやこれもう・・・


「竜じゃん・・・。」


異世界ならではの生物の登場にテンションがあがりかけるが、それを抑え俺とタマは物陰に隠れた。

リュージとララは逃げずに竜と睨み合っていた。

お互いまだ動かない。

数秒後、先に動いたの竜だった。竜は腰を落とし、なにやら溜め込むような動作をし始めた。

すると、その胸が膨らみ、徐々にそのふくらみは首にも達した。

そして、竜が口を開けた瞬間、轟音と共に、先程の比ではない極太の光線が放たれた。

少し離れた場所にいる俺たちにもその熱が伝わってくる。

あれがいわゆるブレスってやつか。


「すげぇな、ユウヤぐらいはあるぞアレ!」

「誰ニャ!」

「てかあいつらは?!」

「あそこニャ!」


タマが指さした先、ブレスの真上に二人は飛び上がっていた。

次に動いたのはララだった。

彼女は姿勢を変えると空中を蹴った。

猛スピードで竜に突っ込んでいく。

そして空中で体制を変え竜に飛び蹴りをかまそうとするが、竜はそれに気づき両腕でガードする。

当たった瞬間、重いものがぶつかり合うような音と振動が起き、さらにあの巨体が一瞬沈み込んだ。

どうやら相当な威力だったらしい。

リュージの方を見ると、彼は下に降りて何かを呟き続けているのが見えた。

その時、竜がうなり声と共にララをはねのけた。

そして爪で彼女を切り裂こうと腕を振る。

ララはすんでのところで空中を蹴り回避する。

竜はあの巨体でありながら、恐ろしい速さでララを切り裂こうと両腕を振り続ける。

見るからに鋭い爪が空を裂き、その音はこちらまで聞こえてくる。

ララは回避できない時は、迫りくる竜の腕を蹴り飛ばして対処するが、避けるばかりで、近づけないようだった。

その時、竜がブレスを放った。今の攻防の間に溜めていたのか。

ララを巻き込みながらそのままブレスは壁に激突した。


「ララ?!」

「マサト待つニャ!今行っても何もできないニャ!」


咄嗟に体が動いたがタマに止められた。

視線を戻すとララは壁に叩きつけられていた。

服がボロボロになっている、多少けがをしているようだった。

しかし、まだ動けるようでララが顔を上げた。

その時、竜が一瞬で距離を詰め彼女に拳を叩きつけた。

今度こそまずい。

だが竜の腕が震えだす、そして徐々に下がっていく。隙間から見えたが、ララが押し返していたらしい。

だが竜はその腕を引き抜くと反対の腕で殴った。そしてまた反対の腕で殴り、次々と拳をララに浴びせる。

壁には拳が撃ち込まれるたびに大きな亀裂が走る。


「いや、やばいだろ!リュージは何やってんだ!おい!」

「だから大丈夫ニャ!二人を信じるニャ!」


その時竜の動きが止まった。かのように思えたその時、竜がのどを掻きむしり始めた、うなり声をあげ、呼吸も荒くなっていく。

ララを見ると血だらけではあるものの、まだ力が残っているのか壁にしがみついていた。

その目が真っ赤に光っているのが見えた。

竜はララを見ると今度はその大顎でかみつきに行った。

ララは避けることはしなかった。できなかったのかもしれない。

しかし彼女は食べられるわけでもなく、両手両足で何とか口を閉じられないように踏ん張っていた。

そして彼女は一気に上あごを持ち上げ、閉じられる前に飛び出ると、鼻先に裏拳を叩き込んだ後、壁を蹴って思い切り飛び蹴りを顔に浴びせた。

早すぎてよくわからなかったが、多分そんなことが行われていた。

竜は体勢を崩し床に倒れこむ。相変わらずうなり続けのどを掻きむしっている。


「いい感じニャ。あれはララの暴食の力ニャ。」

「もしかして、あの光ってる眼のことか?」

「そうニャ。あれで睨まれるとすごい飢えと渇きに襲われる錯覚を覚えるのニャ。多分。」


多分とは言っているが実際あの竜は苦しんでいるし、きっとそうなんだろう。

ララのほうを見るとふらふらしている。

嫌な予感がして走り出す。


「ちょっ?!何してるニャ。」


予感通りララが落下した。

思い切り走る。この距離ならさすがの俺でも間に合う!

勢いをつけ瓦礫を踏み抜き、ジャンプしてララを抱きかかえる。

落ちる先には瓦礫ばかりだがスキル【受け身】のおかげでなんとか転がり勢いを殺した。


「ララ!大丈夫か?!」

「・・・。」


返事はないが息はしてる。

眠ってるのか。

安心した、その時だった。

竜が立ち上がりこちらを見ていた。

さっきまで苦しんでいた姿がどこにもない。

ララが気を失ったから効果が切れたのか?!

ヤバい。


「助かった。礼を言う!」


その言葉を述べたのはリュージだった。

彼は飛び上がって竜の真上にいた。

「【憤怒の腕ラースハンド】!」


そう言うとあの時のように何かが彼の右腕に集まっていき。赤く輝きだす。

そしてその拳を竜の頭上から叩きつけようとした。

だが竜はその拳に拳で応戦した。

その衝突はすさまじく分厚い空気の波がこちらまで伝わってきた。

竜の立つ地面が沈み込むが竜は咆哮を上げながらリュージを吹き飛ばした。

リュージは飛ばされて天井に到達しそうになった。

彼はは空中で回転し天井に足をかける。

飛び出して壁に着地すると走りだした。

ものすごい速度で円状になっている壁を回転し出した。刹那、その速度に物を言わせ一瞬で間合いを詰め、飛び蹴りを竜の顔面にかました。

蹴った方の足、右足の義足が輝くのが見えた。

そのままリュージは顔を踏み台にし、高く飛びあがり壁に再び着地する。


「【憤怒の右腕ラースハンド】!!!」


もう一度叫ぶと光り続けていた腕がさらに光りだす。

彼は壁を蹴り竜に接近する。

そして拳を引き、溜め込んだ。

竜はそんな彼をまた拳で応対する。

そしてリュージが右腕で、真正面からその拳を殴った。

さっきと違い全く接戦することもなく、竜の拳が吹き飛ばされ顔面を直撃し竜を転倒させる。

そしてその無防備になった胸部に落下の勢いを乗せたリュージの拳が炸裂した。

ケルベロスの時とは比にならない衝撃が起こり、部屋の地面が割れその亀裂は壁にまで達した。

竜は二度と起き上がることはなかった。


「ん・・・。」

「・・!ララ!大丈夫か。」


ララが起き上がった。


「おなかすいた・・・。」

「あ、あそこにあるから我慢してくれるか?」


俺が竜を指さすとララは目を輝かせ一目散に飛んで行った。

そして竜に触れるとものすごい速度で吸収した。


「まんぞくー・・・おんぶー・・・。」


戻ってきたララは血だらけだったが傷は全部塞がっているようだった。

良かった・・・。

俺はララをおぶって寝たのを確認するとリュージに話しかけた。


「最初からああしてれば、ララもこんなにはならなかったんじゃないのか?」

「ハァ・・・いろいろ準備がいるんだよ。それに準備をしてあっても足らなかったしな。」

「それはどういう―」

「ご主じーん!」


タマが飛び込んできた。

リュージはそれをすんでのところでかわした。


「なんで避けるニャ!最初のパンチが失敗したから、心配で心配で。」

「暑苦しいからだ!さっさと出るぞ。」

「出るって扉開いてないけど・・・?」

「あれだ。」


リュージが指さした先には光る魔法陣があった。


「あれは―」

「あれってもしかして『入り口に戻るやつ』じゃね!?ダンジョンあるあるの『入り口に戻るやつ』じゃん!すげぇ。」

「ハァ・・・聞けっての。」


リュージは魔方陣に近づいて観察する俺を押して魔方陣に入れさせ、タマを引きづってくると中に入った。

その瞬間魔法陣が輝き。

気づくと森の中にいた。

まだ太陽は真上にあるから昼っぽい

後ろにはほら穴があった。


「すげぇ瞬間移動だ・・・。」

「さっさと行くぞ。」


リュージは歩いて行ってしまう。

そこ道じゃ無くない?!

草をかき分け進んでいくので、このままじゃ置いていかれるから着いていく。

タマはリュージの横で「いやーすごかったニャ」「かっこよかったニャ」とリュージをほめたたえている。


あの戦いを見ていて思ったが、前の世界と比じゃない。スケールが。

背中のこの子は空中を蹴るし、竜はあのサイズで目にもとまらぬ連撃をするし、リュージはそれを上回ったし。

これ真っ向勝負挑んでたらどうなってたんだろう。

まあリュージに近づく前にこの子に食べられてたろうな・・・。


にしてもあれだけの強さを手に入れるって相当苦労したんだろう。

右腕も右足も失うとか、どんな戦いをしてきたのか・・・。

俺の想像が追いつくことはないんだろうな。


何とかついていき森を抜けると草原が広がっていた。

向こうのほうに村らしきものが見える。


「もしかしてあそこに行くのか?」

「そうニャ、今回の仕事はあそこの人たちに頼まれたものニャ。ご主人あの時「んな面倒なことなぜ俺がしなきゃならん」って言ってたくせにやっぱり行くとか言い出し―」

「うるせぇぞバカ猫。」


鈍い音がした。

義手での脳天チョップは相当痛いだろうな。

タマはのたうち回っている。



村に着き、リュージが村長らしき人になにか報告していた。

ダンジョン攻略の件だろう。

すると村長の近くで話を聞いていた村人たちが集まってきて、口々に礼を言っていた。

その時の彼の横顔は困っているようで、少し笑っているようにも見えた。

すると女の子が走ってきた。村の子だろうか。


「どーくつのこうりゃく、ありがとうございました。」


そう言って花をくれた。

いい子や。何もしてないけど。


「どういたしまして・・・。」


ララも起きて花を受け取る。

女の子はタマにも花を渡し、終わると走って帰っていった。

その背中に奴隷の烙印が見えた。

よく見ると村の人ほぼ全員に烙印があった。


「タマ・・・ここって。」

「うん。ここは奴隷たちが暮らす村ニャ。契約書がないから好き勝手されることはないけど、烙印がある時点で白い目で見られたりして・・・そういった町では暮らせない人たちが集まってできてるのニャ。」

「なるほどな・・・。」

「こういう村って少なくないのニャ。魔人がいたころ、怪しい人間は片っ端から奴隷にされていったから・・・。今ではそういうことがなくなってきてるけどね・・・。」

「・・・。お前・・・」

「何?」

「真剣な話する時語尾無くなるんだな。」

「ニャー!人が真剣な話してるのに・・・ニャ!」


つい話をそらしてしまった。自分から出した話題だけど。

俺はこういう理不尽な話を聞くのが苦手だ。

異世界モノを読んでるときよく出てくるが飛ばしたくなってしまうほどに。

それを生の声で聴かされるとなると・・・。


「そういえばマサト一週間後・・・6日後か、そのあとはどうするのニャ?」

「何がニャ?」

「真似しない!身元が不明な人間は適当な理由つけられて奴隷にされることがよくあるのニャ。」

「そうなのか、まあ俺には関係ないけど。」

「なんでニャ?」

「消えるって言ったろ?あれはお前たちから離れるって意味じゃなく、本当の意味で消されるってことだ。」

「ニャ・・・?」

「任務であるスキル回収ができなかった罰として消されるんだとよ。まあそれまでにもらえたらありがたいな。」

「それ・・・。リュージに言った方がいいニャ。そしたらリュージ」

「くれるだろうな。だから言わない。」

「意味わかんないニャ。絶対言った方がいいニャ。」

「なんか脅してるみたいで嫌なんだよ。だから内緒にしといてくれ。」

「ニャー。ミィは口軽いのにやめてほしいニャ・・・。」


タマは耳をぺたんとさせる。

なんか悪いことしたな。


「お前ら!今日はここで泊ってく。どうしても泊まってけってうるさいんだ。」

「素直じゃないニャーご主人。こういうご厚意は素直に受け取るのが筋ってもんニャ。」


村人の動きがあわただしくなってきた。

広場にいすやテーブルを並べてるので宴会でもしてくれるのだろうか。

ごちそうにありつけそうだ。


「マサト・・・お腹・・・」


気づいた。よく考えたらララが起きていることに。

『寝てる間は食べない』のであれば、起きたら・・・。


「まだすいてない・・・」

「紛らわしいわ!」


タマがいないから終わったと思った。

そんなこんなで宴会が行われ、ごちそうを食べさせてもらい。

2日目が終了した。


ハチカマキリさんはもっとかっこいい名前がついていますが、将斗が知ろうとしない場合一生その名前は明かされません。

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