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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第2章 
19/63

第19話 126番目の世界

今外がアツいので投稿します

2日連続で気絶に近い形で眠っていたことを伝えると、なんもないこの白い空間でベッドだけ出されて「じゃあ休憩してていいですよ」と言われた。

気合で寝ようとするが無理だった。眩しいんだ周りが。

俺の周りは相変わらず白一色。

・・・てか、神どこ行った?

一人にされたが、この部屋スマホもないし、やることもないから放置されるときつい。

スマホ中毒からの脱却にはいい薬になりそうだが。

あ、宇宙飛行士が閉鎖空間に耐えられるかのテストで使う部屋ってこんな感じなのかな。


「神様ー?もしもーし?」


呼びかけるが返事はない。

起き上がって、辺りを調べるが壁も床も白いだけで何もない。

触ってみたが傷一つない。

手で伝ってぐるっと一周して部屋の広さを調べてみたが8畳くらいだった。俺の部屋よりは広めだな。

調べてて気づいたが、出入りができそうなドアなどはない。

神はどっから・・・


「ただいま~。」

「ドアそこ?!」


ベッドの真横の壁から、ひょこっと神様が出てきた。


「やっぱり起きてたんですね。ひとまず【無限インフィニティ】の件お疲れさまでした。」


やっぱり・・・?いや、気にしないでおこう。


「ほんとですよ。どんだけ頑張ったことか。死にかけたんですからね?」

「それはさぞ・・・ん゛ん゛っ!あれは大変そうでしたね。」

「・・・?」


なんで言い直した?

『それはさぞ』?

それはさぞ大変でしたねって言おうとしたのか?

それってもしかして・・・。


「神様、俺がどう戦ってたか見てたか?」

「へぁぇっ?!そ、それは当然。」

「じゃあ俺が全身火だるまになりながら光線放ってたところも見てたわけだな?」

「あ、騙そうったって無駄ですよ?神はちゃんと見てるんですから!」

「全然見てねぇじゃねぇか!!!」

「えぇ!ほんとだったんですか?!」


こいつ人に無理難題押し付けておいてほったらかしにしてたのか。

嘘だろ?ちょっとくらい確認とかしてくれよ。


「誰のために無理難題をこなしてきてやったと思ってるんですか・・・。」

「それが私も忙しくて・・・でもスキルは無事返せたので本当に感謝してますよ。ありがとうございます。」


神はそう言って頭を下げた。


「ど、どういたしまして。」


神に頭を下げさせるって俺罰当たりなことしてないか。

頭下げられたとき一瞬悪寒がしたんだけど・・・大丈夫だよな。死なないよな?

そんな時、一つの疑問が浮かんできた。次の世界に行く前に聞いてもいいだろう。


「ところで・・・あのスキルを放置してたら、世界はどうなってたんですか?」

「え?そうですね・・・。」そう言って神は少し考え込んだ。


「最終的には崩壊するんですがその前に、自浄作用として世界が何らかの働きをします。不安定と判断されてしまう形で。だから今回のケースで例えるなら・・・【無限インフィニティ】に対して世界がバランスを取ろうとするので、あの魔力を打ち消すような力が生まれたりしますね。」

「あれ?それって・・・黒剣ゼロのことですか?あと魔力障壁。」

「なんですかそれ?」

「レヴィが作った魔力を打ち消せる剣と魔法ですよ。」


黒剣ゼロ―魔法を霧散させる剣。

魔法障壁―魔法を霧散させるバリアの様な魔法。

どちらも魔法を消してくれる優れもので、正直あれがなかったら詰んでいた気がする。


「なるほど・・・もしかしたら結構進んでたのかもしれませんね。」

「【無限インフィニティ】による世界の不安定さ進行が、ですかね?」

「ええ、あなたを送り込んで正解でしたね。ちょうどいいタイミングでした。」


たしかにちょうどいいタイミングだった。

襲撃直前だったから、魔法を教えてもらえたし、スキルの使い方もわかった。

少しでも遅れていたらどうなってたことか。単騎で突入・・・しても速攻衛兵に捕まってた可能性もありそうだな・・・。


「・・・あ、もしかしたらグレンの魔力回復も不安定さによるものだったんですかね。でも打ち消す力じゃないような・・・?」

「グレン・・・ああ王家の力のことなら私わかりますよ。」


エッヘンとばかりに胸を張る。

やめろ、胸を張るポーズ好きなんだ俺は。

いいところが強調されて・・・レヴィよりは小さいんだな・・・。いかんいかん。


「・・・それで、どんな力なんですか。」

「王になると、自分を信頼してくれる国民から魔力を貰えるスキルがあるんです。【王】っていうスキルなんですけど。あの家系にしか現れないスキルです。あの家系はその力のために人を信じるということを欠かしません。良く子供に教えている言葉が『人から信じるためにはまず自分が人を信じられるようになれ』なんですって。いい家系ですよね。」


だからあいつは無条件に俺を信じたのか・・・。


「まあ【無限インフィニティ】には及ばないし、大したことないですね。」

「なんで比べた!?」




「さて次の世界に、そろそろ行ってもらいましょうか。」

「わかりました・・・。」

「あれあんまり乗り気ではない?」


神様がのぞき込んでくる。

よく見るとかわいい顔してるんだよな。


「でしたら消えていただいて。」


は?


「おおおお?!やります、やりますよ!」


急に真顔になって怖いことを言い出すなよ。

怖すぎて即正座して頭を下げた。

抜けてるドジっ子女神のイメージがあるのにこういうところを見せられると、この神の性格全然わからないな。

やると聞いた女神は、「それなら良かったです。」と見るからに表情がぱあっと明るくなった。



神様は話しやすいようにと椅子と机を出してくれた。

両方真っ白だ。

そろそろ白以外のもの出してくれないかな。

俺と神様は向かい合って座った。


「では、次に行ってもらう世界の説明をします。」

「よろしくお願いします。」

「次の世界は126番目の世界・・・これは前も説明しましたがただの識別番号なので気にしないでください・・・・」



126番目の世界。

その世界は7大罪と呼ばれる魔人がいた。

それぞれがそれぞれの支配する大陸で好き放題暴れていた。

あまりにも魔人が強いため、神は転生者を送り込み世界の安定を図ろうと思った。

しかし、魔人は7人もいる。とても一人じゃ対応しきれないので何十人も一気に送ってしまおうと考えた。

そこで、修学旅行中に事故を起こし無くなってしまったとある高校の1クラス、30人全員を送ることにした。


「え?ちょっと待ってください・・・!」

「どうかされましたか?」

「つまり俺は今から30個のスキル回収を・・・」

「ああ違います。29人に適当なスキルを与えて、1人に借り物のスキルを与えたんです。多少余裕があったので・・・。」

「そういう力の使い方してるから、力がすっからかんになるんじゃないですか?」

「はい!続けますよー!」


話そらしやがった。


30人は、また神が上手いこと、ニーグ国の城の勇者召喚の儀式に合わせ召喚された。

召喚された30人は勇者と呼ばれることとなり、王国で訓練の後、魔人討伐に行ってもらうということが伝えられる。

次の日の朝。30人はどんなスキルを持っているかの検査が行われた。

神のスキルを与えられたのは白峰竜次シラミネリュウジという男子だった。

当然その検査で白峰もその神のスキル【神盾ゴッド・シールド】を持っていることを知られる。

王国の者たちが、見たこともないそのスキルがどんなものか見せてくれと、彼に頼んだ。

彼はスキル名を言うが発動しない。

外れスキルだと言われ、クラスメイトからも白い目で見られることとなった。


その数日後、その国の女王が殺害される事件が起こる。

犯人探しが始まり、白峰が犯人じゃないかと疑われた。

女王が死んだとき白峰だけ訓練に参加していなかったのだ。

だが白峰はその日、謎の眠気に襲われ部屋で眠り続けていただけだった。

しかし誰にも信じてもらえず彼は捕まった。


その後彼は奴隷の烙印を顔に押された。

奴隷の烙印があると奴隷契約書ってのがある限り、スキルが発動できなくなり、力も制限され主人の言いなりになるしかなかった。


さらに不幸は続き彼は、最低な主人の元働くこととなる。

飯はまともに与えられず、風呂にも入れてもらえず、暴力を振るわれ、最悪な環境が彼を苦しめた。

ある日主人が魔物討伐に出るため連れていかれた。

ところが思いがけず強力な魔物に出会い、彼は主人に盾になれと命じられる。

彼は盾として攻撃を受け気絶する。

数十分後、彼が気が付くと主人が食べられていた。

彼は必死に逃げた。

逃げた先は崖だった。

彼は己の運命と不運、無力さを呪い、崖から飛び降りた。

そのあと彼は知る。

彼が落ちたのはあの魔人たちが生まれたダンジョン『伏魔殿パンデモニウム』。

彼はそこの最下層に落ちた。

奇跡的に一命をとりとめていた。

しかし、規格外の強さを持つ魔物と対峙することになってしまう。

一縷の望みに掛け彼は【神盾ゴッド・シールド】を発動する。

発動はできた。しかし、効果がわからなかった。

彼は魔物から攻撃を受けてしまう。

物陰に身を隠し何かないかとステータスウィンドウ開く。

すると彼は先ほどの攻撃で新しくスキルを手に入れていたことを知る。

手に入れていたのは【強化盾パワーシールド】。

さらに彼はそこでウィンドウを押せば、スキルの詳細を知ることができることを知る。

神盾ゴッド・シールド 盾を装備しているときあらゆる制限を解除するスキル 詠唱時発動 s1sΓ2o6l》

強化盾パワー・シールド 盾を少し強化するスキル 詠唱時発動 効果時間10分 重ねがけ不可』

盾なんかないと彼は絶望した。

しかしさっき【神盾】が発動していたことを思い出す。

彼の主人が彼を盾になれと言ったためその時から彼は盾として扱われ、スキルの発動条件を満たしていた。

そして彼はそこから這い上がっていき、超人的な力を手に入れ、6人の魔人を倒した後、7人目が最初の国の女王であったことを知り、いろいろあって復活した彼女を殺害。

晴れて世界は平和になった。


「以上です。」

「いや最期の駆け込み方なんなんですか。」

「細かく説明していたら、ここからもうほんとに長くって。基本的に彼関連の出来事だいたい後味悪い話ばかりですし。いいかなって思いまして・・・」

「いいかなって・・・、ハァ、ほかの29人はどうなったんですか?」

「復活する女王の生贄にされました。」

「えぇ・・・。っていうかまた目茶苦茶強いやつじゃないですか!今度はちゃんとしたスキルくださいよ!」

「ごめんなさい、今回も【ランダム】2つサービスしときますので・・・。」

「多分それはサービスとは言わないんですよ神様・・・。」


盾を無条件にぶっ壊すスキルとかが欲しい!

ばれずに近づけるスキルが欲しい!

離れててもスキルを回収できるスキルが欲しい!

福利厚生がなってねぇよ・・・。

やり切れず俺は机に突っ伏した。


「今回の期限はなんと1週間!長くなりまし」

「短いよ!」


机を叩きながら立ち上がる。

なんで?といったような顔をされた。

こっちがなんでだよ!


「一週間じゃ世界を支配してた魔人を軒並み倒した奴には追いつけないんですよ、相手はレベル100みたいなもんでしょ。」

「いやどの世界も規格は統一したのでレベルなんてなくって」

「例えばの話だろうが・・・・。」


話が通じてない。

何を言ってもダメっぽい。

多分文句を言いすぎると「じゃあ消えてもらいますね」って言われかねない。

・・・諦めるか。


「じゃあ、まとめると1週間以内に【神盾ゴッド・シールド】を白峰竜次から返してもらう。それでいいですね。」

「え?行ってくれるんですか?!てっきり行ってくれないのかと思って次の候補探してましたよ。」


そう言って女神は書類の束を投げ捨てる。床に落ちるなりそれは消えていった。

次の候補って・・・じゃあ俺どうなってたんだろうな・・・。


「えっと、最後に何か質問は?」

「・・・神様は鈴木雄矢に魔王討伐後、会ったことはあるんですか?」


神はきょとんとした。


「質問を返すようですが、どうしてそのような質問を?」

「鈴木雄矢がなぜ暴虐の限りを尽くした理由を聞いたら『神様に好きに生きていいって言われた』って言ってたんだ。でもあんたはスキルを返してくれなかったって言って俺を行かせた。スキルを大事にしてたやつがスキルを奪いに来た神の言うことを信じてる。矛盾してる。だからそもそもあんたは鈴木雄矢に一番最初にしか会ってない。」

「はい、会ってませんよ?」

「なぜ?」

「・・・無限の魔力で魔法打たれたら怖いじゃないですか?」


神は表情を変えずにそう言った。

なんで、一瞬考えこんだんだ・・・?

そういう神らしくないことを言うときはもっと困った顔とかしてたろ。


「返す返さないを聞いてないのに・・・?」

「ああ、確かにそれもそうですね、聞いたら素直に返してくれたかもしれませんね。失敗でした。」


考えたくはないが、怪しい。

思わぬところで、変な引っ掛かりができてしまった。


「・・・何か?」

「いや・・・それは、まあいいです。俺が知りたいのは、今回の白峰にも会っているのかいないのか知りたくて。」

「彼には7人目の魔人討伐後に会いました。直接。そしたらなんていわれたと思います?」


彼女は急に机に突っ伏した。


「神なんて俺は信じてないって言うんですよ!うぇーん。」


泣いていた。

え、ガチ泣き?

勘弁してくれよ。ころころキャラ変えられると本当に困る。


「ていうかそれじゃ、素直に言ったらダメなやつだよな・・・。」

「はい、多分素直に言ったらダメかと。」


顔だけこっちに向けてそう言う。

泣いてないじゃないか。


さて、と言いつつ神様が椅子から立ち上がる。


「準備はよろしいですか?」

「・・・はい。」


また死ぬような思いをするかもしれないけど、やるしかない。

せっかくできた友達がいる。

またいつか会うためにもこんなところで消えていられない。

無限の力を使ってくるような奴に勝ったんだ。

きっと次も行けるはずだ。


「では、いってらっしゃい。」


視界が一瞬で移り変わる。

何か空気がジメっとしている。

薄暗い。慣れれば何とか見えそうだけどまだかかりそうだ。

目の前にはよくわからないが壁・・・?

また白い壁だ。なんか表面はざらざらしていて、いかにもここが境目ですって感じの境界がある。

下の方は赤色のなんだろう。触ってみるとぶよぶよしている。

・・・これ牙じゃね?

よく見れば三角形が噛み合ってる配列してるし。

・・・いやいやいや、俺の身長以上はあるぞこの白い・・・の・・・。

上を見上げた時、知った。俺の後ろの方や、奥の方にも同じ白い壁があって、そのどれもに緑色の丸く光る・・・眼。

眼だ。あれ絶対眼だって。


「あ。」


目が合ってしまった。

その瞬間後ろの白い壁いやもう牙だよ。牙でいいよ。確定してるよ。後ろと向こうの牙の上でも緑の眼が光る。

めっちゃ見られてんな。

ズズズッと思い物が持ち上がるような音がした。

それと共に俺の眼も暗闇に慣れてきたおかげでよく見えるようになってきた。


「・・・無理だわこれ。」


目の前にいたのは巨大な犬の頭を3つもった巨大な化け物。

いるんだな異世界にはやっぱり。


『ケルベロス』。

一目で地獄の番犬と称される理由を理解させてくる。

鋭い爪、牙、滴り落ちる涎。吊り上がりこちらを捉え怪しく光る眼光。その巨体。


神は俺を地獄に送ったのかな。

うーんドジっ子め、次会ったら殴ろ。


そんな俺に対し、奴は躊躇なく大口を開けて突っ込んできた。

現在レヴィは国立魔法学校の特別講師に任命されて講義を始めています。

第2回は誰も来ませんでした。

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