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素材  作者: 味噌煮だったモノ
第1章 
16/63

第16話 信じてくれ 358 暴虐

蝉がうるさいので投稿します

「うおおおおおおおお!」


俺はユウヤ目掛けて黒剣を振りかざした。

だが、ユウヤが火球ファイアを放ってくる。

サイズが大きすぎて回避できる気がしない。

黒剣で斬ると火は消えた。だが、後方へ吹き飛ばされた。

黒剣ゼロ―魔法を霧散させることはできても、やっぱり勢いは殺せないらしい。

まあ、火球の熱が消えるだけマシか。

俺は【浮遊】を操って体勢を立て直した。


「ああ?・・・ハハハそういうことかよ!」


そう言いながらあいつが今打った火球とほぼ同じサイズのものを連発してくる。

勢いが消せてないのがばれたか。

飛んでくる火球の数が多くなって一個一個消しててもキリがないと判断した俺は【浮遊フロート】で王の周りを旋回しつつ、火球を斬らずに避ける。

そして視界の端にグレンをとらえる。


「【交換チェンジ】!」


俺は持っていたゼロをグレンの持つ剣と入れ替えた。

まだ火球が飛んでくる。

でもいいぞ。あいつは俺を狙い続けてる。

王が俺にかまっている今のうちに行ってくれ。

グレンがユウヤとの距離をどんどん縮めていく。


「はあああああっ!」

「何っ?!」


ユウヤの反応が遅い。

いける!

グレンの剣がユウヤの体に当たるか当たらないかという瞬間、何かが砕け散った音がした。

ガラスが砕け散った時のような音だった。


「ぐっ・・・てめぇ。なんでまた、てめぇがそれを!持ってやがる!どうなってやがんだァ!!!」


再度ユウヤが火球を放つ。

グレンはそれを何とか斬るがやっぱり吹き飛ばされてしまう。

なんだだたんださっきの音。それになんで斬られてないんだ?


「ああ!クソどもが・・・っ!」


ユウヤはそう言うと首元から何かを取り出し、引きちぎり投げ捨てた。

あのネックレスはたしか、防御魔法が発動し続けるネックレスか。

捕まった時本物を取られてたみたいだな。

だけどどうやら壊れたらしい。

さっきの音はあれが壊れた音だったか。

てことはもう防御魔法が使えない。

なら、こっちの普通の剣でも攻撃手段になりうるはずだ。

だが問題は、一切近づけないことだ。

あいつはぎりぎりのとこで接近に気づいて、魔法を放ってくる。

俺とグレンどちらかが危ない時に黒剣を入れ替えたりして防げるようにしてるが、ダメージ自体はなくとも結局吹き飛ばされてしまうから、距離が開く。

だから決め手に欠ける。

なら同時に近づけば、と思ったが、


「【ウィンド】!」


暴風が巻き起こる。

俺とグレンは2人とも吹き飛ばされてしまう。

風は魔法として判定されてないのか知らないが、これは黒剣では消せないらしい。

あいつ、浮遊を使いながらだと、火球しか使えないものかと思ってたが違った。

詠唱しないで使えるのが火球であって、詠唱すればほかの魔法も使えるってことなのかもしれない。


「どうすりゃいい・・・。」

『もしもーし。聞こえる?』


レヴィの声がした。


『レヴィか?ああ、聞こえるが・・・?』


そしてグレンの声もした。

今思ったが、2人の声がなんだか頭に直接響いてくる感じがした。


「なんかグレンの声がすんだけど。」

『君の声も聞こえるな。』


レヴィはたしか街の中心にいるはずだし、グレンとの距離は離れているからおかしい。


『さっきのスピーカー?魔力に音を乗せて届けてたみたいだから、真似してみたけどうまくいったのね。』

『便利だな、これで意思疎通がとれる。』

「真似してみたでできるとか天才かよ。」

『すごいでしょ。』


めっちゃ良い。

かなり役に立つ。

なんでもありかよ王国最強魔法使いさんは。


『状況はどう?』

『この剣で魔法は消せても勢いが消せない。近づいても吹き飛ばされるし、彼が動き回る分こっちも動かなきゃいけない。こっちが一方的に消耗させられるだけだ。』

『決め手に欠けてるわね。こっちは洗脳魔法が全然解けない。何かきっかけがあればなんとかできるかもしれないけど。』


空中戦を繰り広げながらレヴィの話を聞き続ける。

会話に集中すると火球に当たりそうになるし、火球に気をつけてると会話を聞き逃すから難しい。

グレンこんなのよくできるな。


『あの薬飲ませてみたけどダメだった。あの薬は洗脳魔法をかからないようにするだけで、解くものじゃなかった。』

『でもクリスや彼の洗脳はあの時解けたじゃないか。』

『多分だけど、あの時瓶を割ったことをきっかけに洗脳が解けたの。』

「じゃあレヴィは何で解けたんだ。一足先に解けてたらしいけど。」

『さあ、気合?』


根性論かい。

ダメだ、状況が進展しない。

ここの戦闘も洗脳魔法のほうも。

こっちに関しては近づく方法さえ掴めればいいだけなのに・・・。なんか無いのか?

その時だった。


『将斗!危ない!』


考え事をしていたせいで、あの男の攻撃に反応が遅れた。

グレンが視界に入ってきてくれたおかげですんでのところで、こっちの剣をゼロに入れ替えることができた。

その剣で火球を斬る。

だが、勢いで下方向に吹き飛ばされた。

慌てて、魔法で体勢を立て直して振りむくと、上の方でグレンが魔法を打たれていた。

まずい黒剣を返さないと


「【交換チェンジ】!」


入れ替えてグレンに剣を返す。

その時だった。

ユウヤがこっちを見ていた。


「なんだよ・・・。」


どこか不気味でそう呟いた。

奴はニィと不敵な笑みを浮かべ始めた。

気色悪い、笑うなら笑うで普通に笑ってくれ。

視界の端ではグレンが魔法を切っている。


「グレン、どうする?このままじゃ。」

『ああ、最初の接近は彼が油断していたからできたことだからっ・・・な・・・。』

「大丈夫か?!」


一瞬声が途切れかけた。


『大丈夫、・・・厄介だな。やはり魔法の威力が強すぎる。』

「それなんだよな・・・。待てよ、威力が強くても連発ができないのなら・・・」

『なんだ?』

「あいつが魔法を使った瞬間、浮遊フロートでできる最高速度で一気に間合いを詰めれば、それこそ次の魔法を出す前に。」

『・・・無茶だがやってみる価値はある。』


レヴィの通信魔法?でうまく連携を取りつつ、【交換チェンジ】で剣を入れ替え魔法を消しながら二人で間合いを詰めていく。

距離は5~6メートルまで近づいた。

さっきの暴風を打たれないように慎重に距離を保つ。

相変わらず火球を打ち続けている。

これなら・・・


『あと5発撃たれたらやるぞ。準備はいいかい?』

「上等。」

『5、4、3、2・・・1。』


魔力の流れを意識し、体を一気に押し出すイメージで!


『今だっ!』


一気に距離を詰める、グレンが視界に入るように、どちらかが魔法をもし打たれても大丈夫なように!

持っている剣を構え

同時に


「ハハッ!バカがよ!」


ユウヤが手を上に挙げた。

関係ない突っ込め!

だがその瞬間、視界が一瞬で真っ白になった。




なんだ何が起きた?!

どうなって・・・この感じ落ちてる?!

風が体に強く吹き付けてくる。

何が何だかわからない。

目が開けられない。痛い。




『まずい二人とも!見えてる!?あんたたち今落ちてるわよ!』

「クソ、見えねぇ!なんだ、一体何が!?」

『至近距離で【光球ライト】を使われたのよ!無茶苦茶ね。お昼かってくらい明るくなったわ。あんた達目とか大丈夫なの?!』

『将斗!【浮遊フロート】を使うんだ!早く体勢を立て直せ!』

「わかんねぇ、どっちが上だクソっ、マジでわかんねぇ!」


落ちる俺の脳裏に浮かぶのは、昔テレビで見た機動隊が使うような閃光弾。

何が強いかわかんなかったけどこういうことかよ。

視界を奪われるって相当ヤバイ。なんもわかんねぇ!

あいつまさかさっき笑ってたのは、俺が【交換チェンジ】を使う時に対象を見てないといけないことにに気づいたからか?!最悪だクソ!

今どのくらいの高さだ?

【超強化】でも落下の衝撃に耐えられるのか?!

ヤバイ。

ホントにヤバイ!


「うおおおおおおおおおおっ!大丈夫か!!」

「なんだ?!もしかしてグレンか?!」


何者かに身体を抱きかかえられていた。


「ああ僕だ、もう数秒で地面にぶつかるとこだったよ。」

「ありがとう。」


ゆっくり目を開ける。

まだ目は痛いが、失明はしてないみたいだ。


『グレンあんた、あんなに加速して・・・そんなに魔力使ったら。』

「今の状況ではしょうがなかった。」

「・・・悪い。」


浮遊フロート】での急加速などの移動は割と魔力を使うから、グレンの魔力は俺を助けるのに相当消費されたかもしれない。

そもそもまずこの戦い方は長期戦に向いてない。

劣勢すぎる。

ユウヤを見ようと上を見る。

最悪の光景だった―。


「あいつマジかよ・・・。」

「最悪だね。」


隕石が降り注いできていた。


『んっんっんっ・・・』

「え?なんか飲んでる・・・?あんたこの状況でまだ酒飲んでんのか?!」

「酒?もしかしてあれのこと酒だと思ってたのかい?」

「え?」

『失礼ね。魔力回復するポーションよ!私くらいになると大量に飲んでかないと自然に回復した魔力量じゃ足りないのよ!』


ポーションってあれか?ゲームでよくある飲むと色々回復するやつ。この世界にもあったのか。

なんだ魔力回復してたのか・・・紛らわしい。

一升瓶あんな飲み方してたら酒だと思うだろうが!


『ハァ、あいつ国民巻き込むつもりね・・・ある程度なら魔法障壁で防げるけど。全部は無理よ』

「僕もやろう。」


そう言ってグレンが黒剣を握り締めた。

でも上から落ちてくる隕石は相当な量だ。

これは俺も【交換チェンジ】とかでサポートしたりと頑張らないといけないな。


「じゃあ俺も手伝うぞ。」

「いや、君は彼のところに行ってくれ。」

「ちょっと待て、無理だろ。その剣ないんだぞ。」

「魔法を打たれても避け続けるだけでいい。攻撃する必要はない。今もあいつは隕石を作り続けてる。とにかくその供給を断つ必要があるだろ?」


確かに、こっちがいくら消してもあっちはいくらでも攻撃できるからな・・・。

それだと、さっきまでの空中戦みたいに進展しない戦いになる。


「なるほどな・・・。わかった。」


避け続けるだけだ。

あいつの周りをぐるぐる回ってれば問題ないはず。

まだうまく【浮遊フロート】を操作できてないけど。


「任せたぞ。」

「ああ!」


力ずよく答える。

余計な心配させたら困らせちゃうしな。


俺は落ちてくる隕石をうまく避けながらユウヤに近づいていく。

下ではグレンとレヴィが次から次へと隕石を消しているのが見えた。


ユウヤの飛んでいる高さに到達した。

やはりここは高い。草原の向こうまで見渡せる高さだ。

もし、ここで魔力が尽きたりしたらと思うと・・・。

いや今はそんなこと考えるな。


「ああ?雑魚い方が何しに来たんだ?どうだったさっきのはよ?」


ユウヤは俺に気づいて話しかけてきたが、こいつは隕石を作るのをやめてないようだ。


「どうもありがとう。おかげでまだ目が痛いんだが?」

「お前はあの入れ替えるスキルを打つとき絶対にあの王子のほうを見てただろ。入れ替えるものをお前が見てなきゃ発動できない、なら目つぶしは最良の選択だろ?どうだ俺の推理は、アハハハハ。」

「あーはいはい、誰でもわかるようなこと、自慢げに言ってんじゃねぇよ。」

「ああ?」


こいつが煽りに弱いのはなんとなくわかる。

とことん煽ってこっちに集中させればいい。

俺はちょっとだけこいつより高いところで浮く。


「あれ?王様?どうしたんだ?俺のほうが高く飛んでるみたいなんだが?あっ俺の方が魔法上手だったりー?」

「ちっ!見え見えなんだよ!そんなんで俺が」

「舌打ちしてんじゃーん!!効いてる効いてる!」

「効いてねぇ!」


効いてるだろ。

だけどダメだ、全然こっちに魔法を打ってこない。

だけどむやみに突っ込んで反撃食らったら終わりだしな・・・。

考えろ考えろ。


あいつはやたらスキルを奪われるのに恐怖していたような気がする。

例えば玉座の間での魔力暴発。

自分が魔法を使えなくなるのに何であんなことをした?焦ってやったって感じがしなくもない。

要は全力で俺を消すために魔法を打とうとして、つい魔力を注ぎすぎてああなったはず。

でもこっちが近づかなきゃスキルを奪えないことを知ってるから、ここで「スキル奪いますよ」とか言って脅しても効果ないだろうな。

違うんだ。もっと俺を消したくなるようなことを言わなきゃだめだ。

もっと考えろ。

さっきの人殺し宣言と隕石でのパフォーマンス。

あとレヴィから聞いた洗脳魔法使って歓声上げさせてたこと。

あれの後大笑いしていた。

仮定だけど、あいつが好きなのは好き勝手すること?あの力を使って・・・。

いや、だったら最初からやってるだろ。

じゃあなんで昔少しだけ勇者のふりをしてた。

・・・そういやあの話の中でたしか『あいつが召喚時に喜んでいた』って言ってたよな。

魔王討伐の旅の話を受けたときも笑ってたって言ってたな。

途中で仲間だけでなく自分を洗脳して魔王討伐をやり直したのはどういうことだ。

勇者になりたかったとか・・・?

・・・いや待てよ、こいつは俺と同じ日本人。

もし異世界転生の話を知ってるとしたら・・・?

そしてそれに憧れていた人間だとしたらどうだ。

召喚時喜んでいた話は辻褄が合う。

・・・。

ああ・・・一個思いついたけど、イチかバチかだな。

クソ・・・これ以上考え込んで時間かけすぎるとグレンたちが大変になるだけだ。

半分賭けだけど言うしかない。



「お前さ、この世界の主人公って誰だか知ってるか?」


もしあいつが、自分が主人公であるという『異世界転生的なそういう物語』の中にいると思っていたらどうだ。

いや半分無茶苦茶だけど。


「ああ?俺に決まってんだろ!」


ビンゴだ。


「なんでだ?なんでお前なんだよ。」

「俺が転生したからに決まってんだろ!そういうもんだろうが!」


そういうもん。か。

もしかしなくても、こいつは異世界転生モノを知ってるよな。

当たりだろ。じゃなきゃ、そういうもんなんて言葉出てくるわけないからな。

こいつは自分が転生したから、自分のことを主人公だと思ってる。

主人公だから何やってもいいと思ってる・・・のか?

待て一旦整理しろ。召喚時に喜んでたのは憧れてたからで正解。

いや、他のことも全部それに起因するんだ。

勇者をやってたのは主人公っぽいからで、やりなおしたのはもう一度主人公に戻るためで、今色々好き勝手して大笑いしてたのも主人公っぽいから。

いや無茶苦茶だな。

でも、周りを自分主導の物語のために用意されたモブ程度にしか思ってないなら・・・あいつの残虐性の証明になる・・・と思う。


「・・・ああ、だからそんな好き勝手やってたんだな。ごめんな勘違いさせて。」


俺は多少演技を入れた言い方で言った。

こいつが最も嫌がるだろうセリフは―。


「お前は主人公じゃない。なんなら主人公に倒される敵役だ。」

「あ・・・?何言って。」

「俺が主人公なんだよ。だからスキルを返してくれねぇと、俺の物語が始まんないんだ。」

「何言ってんだ・・・?ちげぇ!俺が主人公だ!現に」

「いやいや、神から直接言われたんだって、だからスキルを奪うし、お前が好き勝手やってるタイミングで来たんだよ。ほら俺主人公っぽいだろ?ほんとごめんなぁ。」

「そ、そんなことあるわけが!」

「アレだよアレ。日本人の転生者対日本人の魔王ってなかなか熱い展開だろ。お前はそのために用意された悪役なんだよ。」


大嘘だけどどうだ?


「ああ。ああああ、あああああああああああ違う!違う!違う!違う!違う!俺が!俺が主人公なんだああああああああ!!!!!!」


手から放たれていた爆炎が

ついに俺に向かって放たれた。

全力で避ける、だが次から次へとまた飛んでくる。

完璧だった。

なんでそんなに主人公にこだわってんのかは知らないけど、引き付けられた。


「二人とも、うまくいったぞ。」

『聞いてたけど、何?主人公って、なんの話?』

「説明はあと。でっ?!」


俺の横を火球が掠めていく。

あぶねぇ。火傷するだろうが。

にしても火球が多すぎる。

しかも隕石も避けなきゃいけない。

集中しないと本当にまずい。


『やばっ、ちょっとグレン!大丈夫?!』

「どうした?!」

『ごめん、魔力がもう少ない。飛んでいられない。』


何とか下を見るとグレンが飛行能力を失っていた。

屋根を伝って走っている。


「さっき俺を助けたせいかっ!」

『気にしないでくれ!屋根伝いに走って斬り続ければいい!』

『斬り続ければってあんた・・・』


ユウヤを引き付けている以上、俺は下のフォローに向かえない。

レヴィには洗脳魔法の解除と魔法障壁の展開を任せている。

クリスには万が一のためにルナのフォローに回ってもらっている。

誰もグレンの助けに行けない。

彼が走り回るのが見える。

休むことなく走り続け、次々に火球を切っているから、通信魔法越しに苦しそうな声が聞こえる。

ここから【交換チェンジ】を使っても、意味ない。

飛べないあいつを空に移動させたら悲惨なことになってしまうからだ。

その時、グレンが隕石を切って、その反動で吹き飛ばされ民家に突っ込むのが見えた。

しかし、すぐ立ち上がり、次の隕石を消しに走っていた。


「グレンそんな戦い方してたらお前」

『大丈夫だ!国民は一人残らず救う!これが王としての務めだ。父のように偉大な王になるために!必要なことなんだ!』

『バカ!死ぬわよグレン?!あああ、もう!もっと障壁を広くできれば・・・!』


隕石はまだまだ降り注いでくる。

100以上は確実にある。

見上げると世界の終わりのような光景だ。

ユウヤを引きつけて供給は断ったが、まだ空にたくさん蓄えられてんのか。

俺だっていずれ魔力切れで浮遊が切れるってのにこれじゃダメだ。

考えろ、グレンが必死になって戦ってんだから、俺も必死になってなんかしろ!

何のためにいるんだ渡将斗!

くそ・・・なんか・・・なんかがあれば。


打ち漏らした隕石が国の端に衝突したのが見えた。

直後に轟音が鳴り響く。

『クソっ!クソおおおおおおお!!!』

グレンの叫びが聞こえる。


「クソ野郎!やめろ!お前、国民まで巻き込むことねぇだろ!」

「うるせぇ!うるせぇ!うるせぇ!」


こいつ本気で殺しに来てて聞く耳を持たない。

怒りで我を忘れてるようにも見える。

というか早く国民の洗脳を解かないと、こいつ全員に自害させるとかやりかねないんじゃ・・・・。


「レヴィ、洗脳は?解けたのか?!」

『今考えてる!きっかけ、何かきっかけが欲しいの!今みたいな隕石の衝撃程度じゃダメだった。何か。何かがあれば私が無理矢理意識を引っ張り戻せるのに!』


きっかけ。きっかけ・・・?

考えている間も火球がどんどん打ち込まれてくる。

気を抜くな。ここじゃ死ねない。


「消えろ!消えろ消えろ消えろ!俺が強いんだ。俺が主人公なんだ!俺が王なんだ!」


王だと?

流石にその発言は聞き逃せなかった。


「ざけんな、誰が王だって?!お前がか?!ありえねえ!グレンこそ王に相応しいよ!」

「あんな力のねえカスが俺より」


ふざけんな。


「カスだと?!誰かのために必死こいて駆け回ってるあいつがか?!お前という前例がいながらも、誰かを信じられる強い心を持ってるあいつがか?!いい加減にしとけよ!あいつが王だ!」


ボロボロになりながらも走り回るあいつの姿を見て、かっこいいと思った。

協力してる自分が誇らしいと思った。

そんなこと思わせてくるのは王そのものだろ。

その真逆の存在であるお前が王なんかを名乗るんじゃねぇ。


「国民はそうは思ってねえみたいだけどなぁ?!」

「洗脳してるだけだろうが変態野郎が!見てろよ!本物の王が国民を取り戻す様を!」


国民を救うためのきっかけは王が用意すればいい!


「レヴィ!」

『大声出さなくても聞こえるわよ!何?!』

「グレンの声をスピーカーに乗せろ!」

『僕の声を?!ぐっ、どうして!』

『ああ、そういうこと。待ってて。』

「グレン、国民の心を奪い返せ!王子の演説なら効くだろ!」

『僕の演説で?』

『王子様なんだからそういうの得意でしょ。隕石なら任せなさい。温存してた魔力全部出し切ってでも防ぐ!』

「やってやれグレン。お前ならできる気がする。王になる男であるお前なら!」

『・・・わかった。やろう!』


グレンが王国の中央の広場に立った。

俺は火球を避けながらそれを見守る。


『みんな聞いてくれ!僕の名はグレン・ファング。前王スカーレッドの息子だ!』


始まった。

グレンの声がスピーカーに乗っている。

レヴィが上手く繋げてくれたらしい。


『今この国は危機に瀕している!見ろあの光景を!』


人々は上を見上げる。


『あの隕石は今すべてこの国に降り注いでいる!あれが落ち続ければこの国は崩壊する!だが、僕たちがそんなことにさせない!絶対にだ!この国にあれを降らせているのは誰だ!あの男だ!今お前たちが使えている王だ!お前たちはあの男の下で生き続けるつもりなのか!?それでいいのか?!』


人々は黙ったままだ。


『違うというなら目を覚ませ!立ち上がれ!声を上げろ!』


響いていないのか洗脳魔法の影響か、人々はやはり何も言わない。


『俺は彼に父を、前王を殺された。だけどこの戦いは復讐のためじゃない!国を取り戻すためだ!』


レヴィが撃ち漏らしたのか広場に隕石が落ちてきた。

グレンが駆け出し、建物を踏み台にして飛びあがる。


『僕は必ず!この国を取り戻し、王になる。だから!』


そして隕石を切り裂き消し去った。


『僕を信じてくれ!!!』


グレンの叫びがこだまする。

静寂が訪れる。


『頼む・・・・。』



すると


「負けるなああああ!」「頑張ってええええ!!!」「あいつを倒せええ!!!!」「信じてるぞ!!!!」「グレン王子!!!!」「行けー!!!!」「頑張れええええ!!!!!」


国民が口々に叫ぶ。

拳を高く振り上げ。声援を送ってくれている。


その叫びは上空にも届いていた。


「何が起きてる?俺の国民に、何しやがった。」

「てめぇのじゃねぇだろ!クソ野郎!」

「ちっ・・・だったら洗脳魔法をかけなおして・・・。あ?なんだ・・・なぜ、なぜ黙らない?!」


王が焦りだす。

おそらく洗脳魔法が解けている。


『大成功。グレンのおかげで、国民の心が、なんていうか、強くなってる。あいつが何かさせようとしても私の力であいつの魔力を捻じ曲げれば、この距離なら、もう操作は効かせない!だけど・・・ちょっともう私一人じゃ隕石がきつい!!』


洗脳魔法の問題がクリアできても隕石がまだ降り続けている。


『大丈夫だ!』


グレンが隕石を次から次へと切り裂いていく。

なんと、飛んでいる。

浮遊(フロート)】を使っている!


『え?!あんた魔力なくなったんじゃ。』

『よくわからないけど、まだ飛べる。魔力がどんどん溢れてきてる!これなら守り切れる!』

『何それ、最高。奇跡的だわ。これなら打ち漏らすことはない!将斗!当分の間引き付けていて!』

「了解!」


なんだかわからないけど奇跡だ。

当分持ちこたえればグレンが来れる。

洗脳魔法も解けてる。

これなら反撃のチャンスが・・・。


油断だった。

勝てると思ってしまったから、隙が生まれた。

俺の目の前に落ちてきた隕石を止まって、回避してしまった。

横を通るなりすればよかったのに。


目の前の隕石が落ちて行ったすぐ後、業火が俺に迫ってきていた。

なんか読みづらいんでそのうち直します

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