第15話 返済期限がギリギリで 357 障害
短めですが投稿します
俺たちは大きなけが以外の応急処置をし、クリスに案内され、回収された俺たちの荷物がある部屋に来ていた。
黒剣ゼロもそこにあった。
「ああ~よかったここにあったのね。」
レヴィが一升瓶にほおずりする。
そしてまたラッパ飲みをし始めた。
あんたマジか。
「プハァー。それにしてもクリス【治癒】使えたんだね。」
「記憶が戻ってから練習したんだ。まだ慣れてなくて使える回数に限りがあるがな。」
かすり傷や切り傷は応急処置をし、俺の肩の傷のような酷いけがだけを直してもらった。
おかげで助かった。
「そういえば、お前たちに話しておくことがある。ルナの話だ。王城に忍び込んで彼女に接触し話を聞いた。」
「え?よくばれなかったわね。」
「【隠密】スキルがあるからな。」
「『攻撃するまでは人から認識されなくなる』スキルだっけ。」
「ああ。それはいいとして、ルナは人質として婚約者のふりをしているそうだ。」
「あいつそんなことまで。」
あいついよいよだな。ここまでくると。
「いやお前が思っているよりもひどいぞ。」
「どういうこと?」
レヴィが聞き返した。
「あの王は国民全員に洗脳魔法をかけている。つまりいつでも命を奪える状態にある。だからルナは自分の身をささげることで国民の命を守っている。ただし逆に彼女が反抗的な態度をとれば国民全員の命が危ない。」
人質の人質してるってことか?
いや違うか人質が人質・・・?
よくわからんが、人の命でとんでもない天秤の掛け方をしてることはわかった。
「ただし国民の命を奪う奪わないはルナの行動にかかっているだけで、お前たちのような者が王の命を狙っても国民の命は奪わないと約束しているそうだ。だからお前たちが何をやってもいいらしい。」
「どゆこと?」
意味が分からない。
人質ってそういうときにこそ使うもんだろ。
「王は酷くルナのことを気に入っている。だからなのか、その約束だけは破らないようにしているらしい。」
「じゃあある程度追い詰めるとこまでなら、国民のことは安心しててもいいかもね。」
「ルナが嘘をつくとは思えない。だから僕もそれを信じて戦うよ。」
「えぇ・・・?」
大丈夫なのか・・・?
「でもあいつ最終的にはその手段使ってくると思うから、その前に私が洗脳魔法をどうにかするわ!」
「任せたぞレヴィ。できるんだろうな?」
「誰に言ってんの?王国最強の魔法使いよ!」
でかい胸を思い切り叩くレヴィ。
ここまで自信満々だと、ちょっと頼もしい。
「ちなみに・・・私は戦えない。」
クリスは申し訳なさそうに言った。
「どうして・・・?」
「私はルナを守ろうと思う。なんとなくあの子に重ねてしまっていてな。放ってはおけない。」
「そっか・・・。じゃあ、クリスにはルナを守っててもらおうか。ルナを盾にされても困るし。」
「わかった。」
その後クリスはルナのもとへ向かっていった。
俺たちは見つからないよう動き、玉座の間に来ていた。
正確には玉座の間だった場所に来ていた。
「ひっでぇなこれ。」
四方を囲む壁は吹き飛び、辺り一面瓦礫が散らかっている。
当然王はいない。
天井も吹き飛んでいて夜空が見える。
魔力暴発の影響なのか?結構物理的に作用してんじゃねぇか。
もしかしたら、そこらへんもレヴィが何とかしてくれたのかもしれない。
「ここ最上階だったんだな。」
「ああ、もし一個下の階とかだったら僕たちは今頃生き埋めになっていたね。」
「え、こわ・・・。」
外を見るととても明るい城下町が見えた。
「きれいだな。」
「ああ、だが本当ならここまで国民の歓声が聞こえてくるはずだった。あれは形だけの祭り、誰も祝ってなんかいないのさ。」
「っていうかあいつどこよ。せっかく上ってきてあげたのに。」
ここじゃないとしたらどこに行くんだろうか。
俺はこの町について詳しくないから、探すとなると二人に任せるしかないけど。
「もしかしたらあれか・・・?」
玉座の間の前の吹き抜けから下を見ると、人だかりができているのが見える。
その人々の前にいるのは、多分あの男だった。
「上から奇襲かけようかしら。」
「いや待て、何か始めるつもりだ。」
魔法を打とうとするレヴィをグレンが制止する。
彼の言う通り、王が用意されていた壇上に上がっていくのが見えた。
俺は一呼吸着くと王国の鍛冶師たちに作らせたマイクに向かってしゃべる。
「あーあー。完璧だな。さすがだなぁこの国の鍛冶師はよぉ。」
注文通りの仕事に惚れ惚れする。
町中に配備したスピーカーもばっちりつながってる。
向こうまでちゃんと届いてるみてぇだな。
ここまでの技術があるなら7~8人殺したのはもったいなかったか。
「えー今日は盛大なお祭りを開いてくれて感謝する。俺がついに王に就任する時が来た。しかも」
俺はルナのほうを指さす。
「ルナ・フィールとの婚約が交わされる日でもある。これは記念すべき日だ。」
国民たちは静かだった。
俺は王だぞ?
イラつくなぁ。
「歓声くらい上げたらどうだ?」
しかし聞こえてこないのか返事すらしない。
・・・ああ、そうだったこいつらには催眠魔法をかけてるんだった。
魔力を操作してっと・・・
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
「おめでとー」「おめでとー王様」「おめでとー」「おめでとー王様」「おめでとー」
「いやーみんなありがとう」
いーい気分だ。
こんなに大勢の人が俺の思うがまま。
最高の人生だ。
最初から勇者ごっこなんかせずにこうしてればよかったんだ。
なんたってここは俺の世界。
好きに生きていいって言われてきたんだからその通りにさせてもらってる。
「おめでとー」「おめでとー王様」「おめでとー」「おめでとー王様」「おめでとー」
「もう黙れ。」
この洗脳魔法大勢操るのに向いてねぇんだよなぁ、もっと魔王の時みたいに精密に操作ができればもっと国らしくなるんだが。
まあそれはいいか。
いったん洗脳魔法を解いてっと。
「あー、お前たち国民の中には俺に対して敵意があるものがいるよな?昨日なんて10人も殺しちまったよ。」
「なっ、話が違うじゃないですか!」
ルナがキレていた。
「ああーごめんあまりにもしつこいからな。つい、もうしないもうしないよルナ。許してくれよ、な?」
ルナにばれちまったか。
ま、もう結婚するんだし多少は許してくれるだろ。
それより、
「そろそろ俺がどれだけすごい王かを見せてやろうかと思ってな。刮目してろ。」
俺は浮遊を使い王国上空に飛び立った。
そして下を見る。
高えなぁ、スカイツリーの高さくらいはあるか?
さて、持ってきたマイクに魔力を流し込んでっと
これでつながるはずだ、つながらなかったら不良品だったってことで罰を与えればいいだけだしな。
「あー見えるかお前ら。いくぞ、これが俺の力だ。」
そうして俺は空に向かって手を伸ばす。
その手から火球を放つ。
空は良い。好きな規模で魔法をぶち込める。ありったけの魔力を込めた魔法を。
俺は次々と空に打ち込んでいく。
俺の放った火球はその勢いではるか上空に到達し、やがて重力よって落下してくる。
「これが俺の魔法。【隕石】だ。」
次々に落下してくる巨大な火球が王国周辺に着弾する。
国民たちの悲鳴が聞こえる。
轟音。爆発。地響き。
そのすべては俺が作り出してる!
最高だ!俺は今最高に生きてる!
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
笑いが止まらなかった。
もう誰も俺を止められない。
俺がこの世界の主人公なんだ。
ようやく願いがかなった。
最強の力、権力、何も言わず付き従う嫁、俺のことを慕う国民。
憧れてたそのすべてがようやく手に入った。
その時だった。
『あーあー聞こえる皆さん?もしもーし。』
レヴィの声だ。
スピーカーから?
なんでだ。あいつらは独房にぶち込んだはずだろうが。
クソ兵士どもが、ちゃんと見張っとけって言ったろ。
「どこだレヴィ、俺のスピーカーを勝手に使いやがって。」
『スピーカー?何それ・・・え?・・・うん・・・ああ、そゆこと、この音出してるやつのことね。便利ー。』
「おいてめぇいい加減に・・・あ?」
マイクが反応しない。
『残念でしたー。これ魔力で動いてる以上、私のほうがうまく使えるのよね。』
「んなもんすぐに取り返してやる。」
ありったけの魔力を込める、するとマイクが爆発した。
クソが、使えねぇ。
『あれ?壊した?だっさいわね王様とあろうものが。』
「クソ女が!」
どっから喋ってやがる。
この高さじゃわからねぇ。
降りるか。
『ねぇ!あんたさ。同時に二つの魔法使えるようになったのね。すごかったわ今の隕石』
だからなんだクソ。
今すぐ見つけて黙らせてやる。
『と、思ったけど、あれ火球よね。なにがこれが俺の魔法だ、よ。腹抱えて笑いそうだわ。』
殺す。
誰が、手を回した。
あいつらの脱獄を手伝ったやつも殺す。
『にしてもさっきの連発は本気なのかしら?昨日戦った時より連射速度が明らかに落ちてるけど?』
耳障りな女だ。
誰か黙らせろ。
『だから、こう思うのよね、あんたに浮遊を使わせたまま戦えば、多少あんたとの差は縮まるかなって。』
なんだと?
俺との差が縮まる?
ありえねぇ。
連射速度は確かに落ちてる。
だが火力は上げられる、てめえらとの差は一ミリも縮まってねぇんだよ!
調子に乗りやがって
『だから降りてこなくていいわよ。それじゃ二人ともよろしく~。』
下に、飛んで来る人間がいる。
二人だ。
クソ王子と、よくわからねぇ転生者だ。
そのまま俺の高さまできて止まった。
俺の後ろと前で止まりやがった。
挟み撃ちなら勝てるつもりか?そんな傷で?
ところどころ包帯なんて巻いてまあ。
「好き勝手してくれるね、元勇者。」
「雑魚共が、あのまま寝てれば無残に死ぬこともなかっただろうによ。」
「残念だが俺は明日までにお前を倒さないとまずいから、寝てる暇なんてないんだわ。」
「え?なんだいそれは。」
「あれ言ってなかったっけ。まあここで倒せば問題ないだろ。」
「それもそうだね。」
倒すだと?
俺を?
なめてんのかこいつら。
何もねぇ弱者が寄ってたかっていい加減うぜぇ。
特にあの転生者。俺のスキルを奪うだと。
ふざけてやがる。
絶対に渡さねぇ。
俺はこの力でここまで来た。
これは俺のだ。
「いい加減消えろよゴミ共が!」
火球を放つ。
だがかき消された。
またあの剣か。
イラつく、イラつくイラつくイラつくイラつく!
「断る。僕は君から国を、国民を、そしてルナを必ず取り返す。」
うるせぇ、だったらあの剣を持ってない転生者だ。
さっきより威力を増した火球をお見舞いした。
避けられるはずがない。これで終わりだ。
馬鹿なやつだ。
二回目の人生を楽しめずに死ぬなんてな。
「ハハハッ!あっけねぇなぁ!」
「なにがあっけねぇって?」
あいつの声が聞こえた途端、魔法がかき消された。
またか!またあの剣だ。
2本もあんのか?!
いや違う、さっきまであいつが持っていた剣と違う!
王子の方を振り向く。
王子が今持ってる剣、さっきまであの転生者が持ってた剣だ。間違いねぇ。
いつの間にか入れ替えやがった、どうなってやがる?!
「さっさと観念してスキルをくれりゃあ、楽なんだがな。」
「誰が!誰がてめぇなんかに渡すか!」
火球を転生者のほうに連発する。
すんでのところで避けやがる。
小蝿にたかられてる気分だ。イラつく。
イラつくが、落ち着け、あいつには近づかれちゃいけねぇ。
近づかなけりゃスキルを奪うことができないってわかってんだぞ、こっちはよ!
あいつが近づいてくる。
「いい加減にしとけよ。知らねぇだろうか言っとくが」
あいつが指を差してきた。
説教でもする気か?うぜぇ。
塵一つ残さずに消し炭に変えてやるよ。
それでこの祭りも終わりだ!
だが予想に反して、あいつの次の言葉は俺が思ってもいないものだった。
「そのスキルは返済期限が来てんだよ。だから、返してもらうからな!」
浮遊は神経使うのでその中で無詠唱で火球つかうのって結構大変です byユウヤ
私は余裕 byレヴィ