2011年6月26日殺人許可証
※ルパン見てて思いついたからスーツ?
殺人許可証。
警察などの優秀な者を集めた特殊部隊の中でも、エリートだけが手にすることのできる資格。
つまり、それを持っているのはエリート中のエリート。
国内屈指の実力者。
なのだが。
どうして俺は、次から次に後始末のように瀕死の敵にとどめを刺す、なんてことをしてるのだろう。
手駒の傭兵軍団、敵を殺さず片づけていく。
最後に、許可証を持つ男が一人でとどめを刺してゆく。
ゆえに、男のあだ名は殺戮マシーン。一日に数十人を殺す男。
本人は不本意。
また、殺さずに敵を仕留めていくのは困難。難しい。
時には自分の命を危険にさらすことも。
しかし、正規要因でないため、正当防衛適用以外は殺人罪に問われる。
そんな面倒を起こしたくないので、殺さないようにする。
実は生け捕りが得意な殺人部隊な話。
主人公 許可証持ちの男
その他 重火器を扱う女の子傭兵
傭兵の大男
先陣きってく男の子 素手
そのほか大勢。
「うわっ、殺戮マシンだ。」
「ゲッ!」
「目、合わせるな。」
蜘蛛の子散らすように、長い廊下があわただしくなり、そして静かになった。
残されたのは黒っぽいスーツを着た男、ただ一人。
「そんな、逃げなくてもいいだろうに。」
出てくるのは苦笑い。
流れている噂は知っている。一日に何人も殺しているとか、目を合わすと殺されるとか。
「するかよ。」
はぁ~。ため息がもれる。
全てが嘘とは言わないが、罪人でもない人間を目が合っただけで殺すようなことはしない。
相手は少数民族で、国際的に保護しなければならないことになっている。
そのため、今回は敵を全員生きたまま捕まえなければならないという不利な条件。
「この難しい事件をどこに受けてもらおうか。」
悩む長官。
「うちが引き受けますよ。」
名乗り出たのはくたびれたスーツを着た男で、殺戮マシンと呼ばれている。
「しかし、君には向いていない……いや、生かして捕らえるのだぞ?」
戸惑う長官に男は苦笑い。
「うちはもともと、そっちのが得意なんですよ。」
捕えておくために何人か貸してほしい。
そう言うと男は会議室を出て行った。
※(敵を戦えない状態にするのはできるが、その後運んだり、閉じ込めておく人数が足りない)
「またその服で来たんですか。」
傭兵の一人が呆れたような口調で言う。
その他の全員が種類の差はあれ、戦闘服を着ているのに、一応リーダーである男は着古したスーツを着崩している状態。
「いーだろ。どんな格好でも。ちゃんと洗ってんだから。これはお守り替わりなの。ジンクス、ジンクス。」
こちらもまた、いい飽きた様子で返事をする。
きれいなスーツをきちんと着こなしているならまだわかる。
なぜわざわざ着古してよれたスーツをわざわざ着崩すのか、理解不能だ。
少女目線。
目の前から敵が向かってくる。
力に差はない。拮抗している。
その中で、相手は命を奪いに来て、こちらは殺してはいけない。
「ちょーっとめんどくさいよね。」
危機的な状況で少女は笑っていた。
体に似合わないサイズのマシンガンを肩に乗せるように担ぎなおす。
相手が左右に体を振りながら近づいてくる。
動きが速くて狙いを定めるのが難しい。やみくもに撃っても避けられてしまう。
近付けさせないように威嚇するのが精一杯だった。
(当てていいなら楽なのに。)
したくもない事が頭に流れ込んできたので、ふうと息を吐いて考えを投げ捨てる。
「あたしらしくやるか。」
引き金を引くのをやめ、一瞬のために集中する。
その隙を見逃すはずもなく敵が一気に距離を縮める。
相手の間合いに入った。
ピリッとした緊張が全身に走る。
仕留めたと思った相手は勝利を確信し、にやりと笑う。
しかし、そこであたしはにこりと笑う。
マシンガンの放つ弾は一秒間に15発。
あたしに必要なのは2発でいい。
武器を沈める一発と相手を沈める一発と。
それにはわずかに0.13秒。
ナイフをはじかれ肩を撃ち抜かれた敵はその場に倒れる。
起き上がる前に額に銃口を向け、相手が動き出す前に重心で殴り倒して気絶させた。
「はぁー、いっちょあがり。」
深い息を吐き、マシンガンをくるりと回して背中にしょい込む。
首のあたりにちくりと違和感を感じて手を当てる。
左の首筋からわずかの血。
「あー、しょっく。切れてるぅ。」
口を尖らせた少女は、愚痴を吐くと、耳につけた通信機に手を当てた。
「リーダー、一人倒したよー。ほめてー。」
自分の命を危険にさらして、相手の命を奪わない。簡単なことではない。
アハハハハハハ……。アハハハハハ……。
敵のアジトの中に不気味な笑い声がこだまする。
男よりは高いが女よりも低い、ハスキーボイスな笑い声。
しかしそれは、狂気を感じる笑い声。
時にはあちらから。時にはこちらから。定まらない方向から聞こえるその声は恐怖を誘う。
そして、一人、また一人、と兵士たちが倒されていく。
声だけが聞こえてくる。
あちらから、こちらから。
アハハ……。アハハハハ……。
素手で乗り込んでゆく特攻隊長。(ただし、リーダーは素手で一人で乗り込むことを認めてません。)
戦闘モードになって次々敵を倒す彼を周りの者は狂人と呼ぶ。
本人は完全否定している。
「走り出すと楽しくて笑いが止まらなくなるんだ。」
大柄な男が、こぶしで敵を殴り倒し、固定させたロケット砲を撃ち放つ。
「リーダー、こっちはあらかた片付いたぜ。」
スーツ姿の男に報告する。
「何でだろう。お前見ると安心するよ、おれは。」
男はため息交じりにつぶやいた。
遠くの方からはアハハハ……と子供の笑い声が、また別方向からは容赦ない連速射マシンガンの音。
ズィシシシシシシン。
※なんか、苦労してるんだね、リーダー。
「リーダー、西通路3人。アハハハ……」
「リーダー、北通路5人ね。」ズィジジジジン
イヤホンから聞こえてくる音。
「了解。」
短い返事で答え足を向ける。
部下の後始末、というか、敵の息を止めるのが俺の仕事。
許可証があるとは言え、俺にだって良心はあるし、人道って言葉は知ってる。
目の前で瀕死の状態で倒れている男たちにとどめを刺す。
苦しそうに息を繰り返す、このままほっといてもそう長い時間は持たないだろう。
だから、彼らに楽な死を。
それが俺にできることだと割り切っている。
「リーダー、広間に15人だ。頼む。」
今度は野太い声。
「了解。」
再び短い応答をして今度は広間へと足を向ける。
戦闘のけたたましい音があちらこちらから響いてくる。
味方の中で許可証を持っているのは俺一人。
「リーダー。」
また入る音に「了解。」また答え、俺は走る。
(のは面倒だから歩く。)
※リーダー歩いちゃうんだ。
着古したスーツのよれよれの男。
黒髪黒目、黒っぽい服。ネクタイはしてない。
髪は目にかかるくらい、ちょっと長め? 下ろすと邪魔そう。
<名前は? よれよれ?>
男:泣いていい?
<だめ>たぶん泣かない。っていうか泣きそうにない感じ。
年は20代半ばから後半?
<どうしてスーツはそんなによれよれなの?>
男:毎日着てるからかな? これでも元は高級だったんだぞ。
あと、ちゃんと何着か持ってるから着替えてるよ。
<買い換えないの?>
男:高いじゃん。
<……かせいでるのに>
男:もらいものなの。大事なの。お守り替わり。ジンクス、ジンクス。
<……穴あきそうですよね。ひじとか。>
男:あー……直す? かな。
<戦闘とか、銃撃とかあるのにそれで大丈夫?>
男:ちゃんと防弾チョッキ着てるよー。大丈夫。危ないのは最近部下がやるから。
俺は安全圏であんまりやることないんだよね。
<どうやって殺人許可証もらったの?>
男:後で調べて。
<わかった。>
<名前は?>
男:……。今かっこいいの考え中なの。ジェームズ・ボンドみたいな。
<見た限り純日本人ぽいですが。>
男:島国太郎で。
<いいんですか?>
男:やだ。
<……。島国さん、周りからずいぶん嫌われてるみたいですね。蜘蛛の子散らすみたいに逃げられて。>
男:……。いやみか!いいんだ、部下には信頼されてるからな。
<島 国太郎さん。年上の部下もいるようですが、本当に確執はないんですか?>
男:おい、名前変わってるぞ。俺が拾い集めたから大丈夫なんだよ。
<島島さん、ずいぶん変な人集めましたね。笑う狂人とか、火器娘とか。>
男:……。意味が分からん。変なの集めたつもりはないんだがな。
きっと俺しか拾い手がなかったんだろうな。可哀そうな奴らだ。
<その変人をまとめてるんですから島国さんはさぞ変人ぶりがすごいんでしょうね。>
男:……放棄だ。この仕事放棄。帰るぞお前ら。
???:はーーい。
<うあ~。名前だけでもぅ>
男:じゃ、島国男。
少年:僕、シーマ。
少女:火器ムスーメ。
大男:だいじんなんてどーだ。ガハハ。
長官:大海長一郎です。よろしく。
<ううう~、まじめにぃー。>
男:うーん、真島国明。マシマ・クニアキ。まともだろう。偽名ぽくない。
<まあいいか。><やっぱ島国太郎さんにしよ>
少年:シグマにする。チーターもいいけどなぁ。シーマもいいと思うんだけど。
<じゃあ、呼びやすいシーマで。>
少年:ハーイ。
少女:あたしは、カキでーす。花樹?なんでもいーっか。
<えー柿さんよろしく>
<大男さんは大きい人でダイジンさんでいいや>