双子の能力者きょうだい
互いに向き合い、頷き合う少年と少女。
二人は生まれた時から共に過ごしている双子だった。
背格好も容姿もよく似た二人だが、決定的に違う所があった。
それは生まれ持った能力。
少女は類稀なる怪力を、少年はこの世の何よりも頑丈な身体を有している。
なぜ人間がこの様な能力を持つ様になったのか、進化の過程を考えれば簡単である。生き延びるため、強力な外敵から身を守り生存競争を勝ち抜くためである。
「ホゲーエ!」
近付いてしまえばその全容も確認できない巨大な生物、その名もヤマクジラ。
動き出すまでの期間が長く、ある地域では本物の山として存在していたという実話もある、本当に生物か怪しい所だが、この際その問題はどうでもいい。
「生き物も家も地面も関係なく、全部飲み込むだなんて、どんだけ意地汚いのよ」
「うん、悪食だ」
少女と少年は、人類の繁栄を誇る大都市のビル群が、または道路に敷かれた戦車や砲台の防衛ラインが巨大な山によって土塊に変わっていくのを目の当たりにしていた。
「行くわよ!」
「うん、いつでも」
少女の掛け声に、少年はその手を握りしめる。
「吹っ飛べ化け物ーぉ!」
少女は少年の手を握り返すと、持てる限りの力でヤマクジラへと投擲した。
少年の身体は弾丸よりも速く音の壁をぶち破って、都市を飲み込むヤマクジラの巨体に衝突した。
金剛石すらも撃ち砕く少年の身体は、ヤマクジラの肉体を木っ端微塵に粉砕した。
「うん、擦り傷なし」
少年は着地した場所で自身の無事を確かめる。いつも通り、擦り傷の一つもなかった。
「早くマントー!!」
光速で走りこんでくる少女の絶叫が音の壁に飲まれる。毎度出撃を命じられる双子であるが、弟に新たな衣を届けるのが、姉が自分に課した最重要の任務である。