騎士兄
騎士兄12→24
王女妹4→16
王子11→23
従兄→18
従妹→14
前王女38
現王55
二人で暮らす兄と妹。
兄は重度のシスコンで、それこそ度を越しているのではと周りの意見。
そんな妹が、クラスメイトと惹かれ合い、反対する兄についには駆け落ちしてしまう。
そこから始まるシリアス(真実)。
妹が出て行くことに気付きながら、知らぬふりで見送った兄。
いや、彼は実の兄ではなかった。妹の国から与えられた護衛兼、監視役だった。
妹と呼んでいる彼女は、別世界の王女であり、兄と名乗っていた彼はその国の騎士であり、彼女の本当の兄の友人だった。
元の世界で命の危機にあった王女は、たった数人の護衛を連れてこの世界へやってきた。その時彼女はわずか4才で起こった事はほとんど覚えていない。
異世界に来るにあたっては、元の世界でかなりもめた。それでも命を優先するにはこの方法が1番と決定された。
問題のまず一つ、以前異世界に出かけた王女(彼女の叔母にあたる)はその世界の青年と恋に落ち、行方をくらまし、元の世界へは還って来なかった。
その2、護衛については信用のおけるものであり、かつ腕が立つものでなければならない。
その3、第一王子は残るのでそのための護衛ははずせないということ。
そして護衛として上がった候補は、王子の推薦もあり、以前の王女失踪時の護衛をしていた騎士の息子になった。
どんな問題があろうとも、王女の命には変えられず、元の世界では王女異世界転移の決行に踏み切った。
12年間、騎士は王女の兄として暮らしながら、王女を守り育ててきた。
長い戦いが終わり、元の世界にも平和が訪れ、王女の帰還の日程を決められる程にまで、元の世界は安全になっていた。
ところが、その王女は駆け落ちしてしまった。
兄は、いや騎士は、国から処罰されることを覚悟していた。
騎士の父は、前回の失敗により貴族の位を剥奪され平民として暮らしている。
幼かった騎士は、祖父の養子になることで貴族の地位を保たれた。
しかし、王女は失踪してしまった。騎士は二代続いての失態だ。
処刑は免れないだろう。
「王子(友人)に悪いことしたな」
騎士の口から出て来る後悔はそれだけ。
妹は、王女は幸せそうだった。
彼女と暮らせた十数年は大切な記憶だ。最後に祝ってやれなかったのだけは申し訳ないが。
「死ぬおつもりですか?」
共に元の世界から来た護衛の一人が、去っていく妹と、知らぬふりをして見送る兄を見比べて言う。
護衛の方が、やりきれぬ悔しそうな顔をしている。
「あの子が幸せなら、それがいいんだよ」
命を終える前に、家を片付けなければと騎士兄は家の中へと足を向ける。
王女帰還の日がせまっていた。
「間に合ったわね」
「ああ」
謎の少女と青年の声が騎士の耳に届いた。
「驚いた、王女様出て行っちゃったのね。でもこれで都合がいいわ。私が王女の代わりになる」
突如現れた美しい少女が、騎士に向かって淑女の礼を取る。
「私は、あなた達の世界から来た元王女の娘。国も生活も、家臣の命も全部捨てた馬鹿な女の後始末を、20年もかけてしまいましたが、私達兄妹がさせていただきます」
気品にあふれた佇まい、丁寧な言葉、魅力に溢れる瞳に、妹と呼んだ王女とよく似た容姿の娘。
その真っ直ぐに見据える視線からは、すでに全ての覚悟が感じ取れた。
「向こうへ戻ったら、もうこちらの国にはこられませんよ。生涯を捨てるつもりですか? それによく似たあなたでも、王女との2つの歳の差はごまかしづらい」
娘は緩やかに笑う。
「兄に習って国政の在り方は知っているわ。どこぞの王子のところに行って……うふふふ、国を乗っ取ってやるわ。今から楽しみ。歳だって、好き嫌いが多くて成長が遅いってことにすればたいした問題じゃないわ」
「……」
コロコロと笑う、あまりにとっぴな娘の発想に、ついていけない騎士は口を開けて固まってしまう。
でも、笑みの後に送られた少女の視線は本気と、覚悟を含んでいた。
その時、車から降りて現れた青年がいた。この少女の兄だった。
騎士は青年の姿を見るなり、自然とひざまづいていた。
現国王の若かりしころ、また幼き頃を共にした友人である王子によく似た姿をしている見目のいい男。
「馬鹿なことに、子供の頃に母の話を真に受けて、俺は帝王学などというものを身につけてしまった。まぁ、仕事の役にはたっているから文句を言う理由はないがな」
「ご自身で学んだのでしょう、ご立派なことです。勤勉な様子は御祖父様にそっくりです」
ひざまずいたまま、騎士は思ったことを口に出していた。
それから1週間が経った。その日は王女が元の国に帰る日となっていた。
この一週間、周囲の人間に不審に思われないように、騎士と兄妹達は帰還の準備を進めていた。
その頃、家の様子が心配になり、こっそりと様子を見に来た王女と恋人。そこで、まるきり知らない王女とよく似た娘を妹と呼び、今までと同じように生活している騎士の姿を見てしまったのだ。
二人はショックを受けた。妹として暮らしてきた少女と、その妹を奪うため、兄とバトルを繰り返してきた恋人は、目の前に存在する事実が信じられなかった。
裏切りにあった絶望と屈辱、そして何より怒りのあまりに恋人は騎士兄へと殴り掛かった。
「何故ここへ戻って来た!?」
その存在に驚き、王女と恋人を非難する騎士。
「見ぃつけたぁ」
その混乱の最中に、不気味な声が辺りに響いた。
現れたのは元の世界の国の敵。向こうの世界で、何かが起こっているのは間違いなかった。
王女と恋人をかばいながら、不審な者と戦う騎士はじりじりと押され始めていた。
「兄様、戦闘部隊を」
娘の要請に兄が直ちに私物の警備隊を向かわせる。
平和な街で起こる血を流す喧騒に周囲は騒がしくなっていく。
茫然とする王女に、ここで真実を話してしまうと、王女は国に帰らなければいけなくなる。
だから騎士は、嘘をついた。
どんな嘘をつくのか考えきれませんでした。




