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Mカップの誘惑

作者: 彩暉ヒイロ

「もう、楽になりなって。君の全身を魅惑の眼差しとフェロモンで蝕み、快楽中枢を刺激しているのだから」


 閉ざされた空間。

 その隙間から見え隠れする妖艶な姿。

 計算しつくされたフォルムは、俺の理想を具現化していた。

 象徴とも呼べるボリュームのある物体が、容赦なく網膜に突き刺さる。

 素材を生かした装いは、欲望を刺激する成分として抜群の効果だ。


「ほらほら、負けちゃいなよ! 欲しくてたまらないんだろう?」

「くそ、今すぐしゃぶりつきたい!」


 口に広がる弾力と舌を伝う滑らかさは、脊髄に稲妻を走らせることだろう。

 そのうえ、細くしなやかなラインの感触もたまらないに違いない。


 ――だが、負けられない戦いがそこにはある。


「こんなところでへばってたまるかーーー!」


 最高の未来のためには――あの瞬間までは、ここで我慢しなきゃいけないんだ。

 しかし、その勢いがすぐに虚勢であることを自覚させられる。


「ぐぬぬ」


 狂わすようなフェロモンの香りに鼻腔が刺激される。

 全身の毛が逆立ち、興奮に垂涎が止まらない。


「まずい! 身体が勝手に!」


 快楽の波に溺れ、手を伸ばしかけたそのとき――

 

 

 ――――現実に切り替わる――――


 

 容器の蓋を剥がし、箸で麺を掴み取る。

 そのまま口元まで持っていき、すぼめた口で一気にすすり込む。

 ズルズル、咀嚼咀嚼……ゴクン。

 工程には一瞬の淀みもなかった。


「うまい!」


 俺の体内時計に狂いはない。ジャスト三分だ。

 カップ麺はこれでなくちゃ。


 

 



 



 



 


 

 

 

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