第1話
「颯太ー」
自分の事を呼ぶ声がする、どこからだろう
「そうたーーー大丈夫か?」
「・・・え?空?」
後ろから友達が声をかけてきた
「そうだよ大丈夫か颯太?ボーとしていたけど?」
心配そうな顔が俺をのぞき込んでくる
「ああ、大丈夫、久しぶりだな」
「久しぶり、もう大丈夫なのか?」
「・・・いや、気持ち的にはまだ」
桜はもう散ってしまったが周りを歩く生徒はみな新しいクラスにウキウキしていた
だが俺は新学期が始まったばかりの学校を数週間休んでいた
冬休み中に彼女は死んだ、飛び降り自殺だったらしい
雪が降る寒い日に葬式が執り行われた
彼女の部屋からは遺書も見つかった
俺は幼馴染として色々事情を訊かれたが最近あまり話していなかったため、役に立てたかは分からない
その後何日か体調を崩して新学期早々の学校を休んでしまっていた
事前に友達から教えてもらっていた新しい教室に入る
教室につくと彼女の話で持ち切りだった
「新学期に入ってからクラスメイトも教師もこの話ばかりだよ」
空がけだるそうにここ数日間の事を話してくれた
クラスの何人かも警察からは事情を訊かれたらしいがみんな決まって
「あの子が自殺なんて考えられない」
と答えたらしい
実際に自殺したことに現実味がなかった
数日間、俺と同じで体調不良で休んでいるだけのような感覚
「そういえば柳刃がなんだかお前を探していたぞ」
「柳刃が?なんで俺なんかを?」
「さぁ、お前が休んでいる間に何回かこのクラスにも顔を見せていたぞ」
柳刃は隣のクラスの人気者だ
顔が良くてかなりモテているらしい、女の話題が男子の間でも話題になるくらいに
そして俺にとっては少し特別な意味のある人物だ
「あの人気者が俺に何の用だよ?」
そんな会話をしていると
「おい、麻木が登校してきたって本当か?」
「お、噂をすれば柳刃だぞ、行ってこい」
空に背中を押されて廊下側の扉前に躍り出る
「お前が麻木か」
こいつ、学校中のかわいいと評判の女子の名前と顔はは全員覚えていると噂のくせに同級生の男子の名前と顔は一致しないんだな
「そうだけど、用って何?」
不機嫌な事この上ない声で聞き返す
「あいつの事で聞きたいことがある、ちょっとこい」
相手もなかなか機嫌が悪いらしいな
「分かったけど手短にな」
「俺だってお前と長話なんてしたくないよ」
売り言葉に買い言葉だった
「大翔くんが男子と話してる」
「どんな話ししてるんだろうね」
「ねぇ、少し機嫌悪くない?」
「そんなところもかっこいいー」
クラスメイトの女子の話し声が出ていく教室の中から聞こえた
こんな奴のどこが良いのか
柳刃に連れてこられたのは人気のない人気のない教室だった
「こんなところに呼び出して何の用だよ?
告白なら受け付けないぞ」
「なにバカな事言ってんだよ、男子に興味があるわけないだろ」
心底嫌そうな顔をされた
「お前に話したかったのは卯月杏奈の話だよ」
あぁ、やっぱりか
卯月杏奈、俺の夏休み中に自殺してしまった幼馴染で柳刃の彼女
「杏奈の話し?それなら彼氏のお前の方が詳しいだろう」
「やっぱりお前かっ!!」
さっきまでの嫌味な感じではなく明らかに怒りを表した顔をして柳刃は俺に襲い掛かった
「っ!何なんだよ!」
「お前なんで俺があいつと付き合っていることを知っているんだよ!」
「・・・・は?」
胸倉を摑まれながら質問された