第1世代(1)
「おい、待ってくれよ」
「ウルセェバカ兄貴、兄ならしゃんとしろ」
ここは風船花の群生地。
ボムボムと音を鳴らしながら歩く2人。
彼らは双子。
金髪のカンムリと銀髪のティアラ。17歳の2人。
兄と妹である。
「なぁー、兄だとかいうけどさ、何分か前に世に出ただけじゃんかぁ」
「そんなん誰でもいうけどさ、あんたはほんっとに軟弱。うるさい、気が散る」
2人は「ある場所」を目指し、ボムボムと歩く。
この不思議なお花畑を。
カンムリが、風船同士をこすりつけ、きゅぅ、と鳴らす。
ティアラが振り返り、カンムリの脳天にゲンコツをくれた。
「ごめんなふぁい……」
「ふんっ」
2人の歩みはなかなか進まない。
レンガの多い、とある大きな街、……の、となり町ハブルの広場。
ガヤガヤと人が集まる。
「フォォウ!」
ふたりの男。
小さな方が跳躍し体を捻る。
腕から肩、腰、脚へ。捻りは伝わり、大男の顎を華麗に一蹴し倒した男。
その名はモアレ。23歳。身長は人間では普通の175cm程度。
「すげぇなぁ、町のデカい奴らはみんな「断片」を使ってるのに」
モアレは黒く長い髪をポニーテールにして、パンパンと手を打った。
「はいはい、もう良いでしょ、俺は早く帰りたいの。なんでこんな無益な事するのさ」
理由は1つ。
彼がイケメンすぎることだ。
町の男達はモアレを倒して、ただモテたいだけなのだ。
モアレはため息をついて呟いた。
「なんつぅか、友達欲しいんだよねぇ……」
とぼとぼと家に帰り、またため息をついた。
「はぁー、もう誰もいないんだよねぇ……」
ドカッと揺り椅子に座る。
静かな部屋に、ギィ、と音がした。
「また違う……」
大きな街、ムームゥへと続く道のど真ん中。今しがた掘りだした物体をギュッと丸めて捨てる。ここいらによく出るモンスターだ。
断片をたんまり詰めたリュックを背負った白猫の着ぐるみの……。
「こんなにこんなに集めてもーーーあぁ、なんで無いの!」
彼女の名前はクー。年齢はヒミツ。
存在は確認されているのだが、なかなかに珍しい断片を探している。
そのついでに見つかったのを売りさばいては、また次の地へ向かう。
着ぐるみが暑いので、少しずつ北へ……。
しかし彼女の目は諦めの色を見せない。
あの、断片を見つけるまで。
「絶対ある!」
1時間か歩いたところで木陰を見つけ、どてっと座る。
「重いし暑い……誰か……水……」
背中のリュックに水の断片がある事など覚えてはいない。