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異世界にて。 ~n回目の未来改正~  作者: 鬱野誠
第一章 白の悪魔編
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第一章3  ~再会の予感。~

―――「俺よりも先に来たやつがいるって本当なのか!」


衝撃の事実を知ったアキラはアザレアに問いかける。


「うむ。誠じゃぞ。妾には嘘は通じぬし、妾自身も嘘はつかん。丁度暇をしていたのでな、通したのじゃ。」


初対面であるが故、まだ疑う余地はあるものの、アキラにはアザレアが嘘をついているようには感じなかった。


「ってことは…早くも俺の目的が達成できるかもしれねぇってことか…」


アザレアの言葉を聞くアキラの心には明るい兆しが見えていた。


「あのさ、その俺より先に来たっていう女の子はお前とどんなことを話したんだ?」


ミサト…かもしれない少女をミサトだと確信付けるためにより詳しい情報を求めようとするアキラ。


「む…?なぜお主そんなに執拗にその女のことを知りたがる。ストーカーは関心せぬな…」


「ストーカーとか言うなよっ!ってかストーカーもこの世界の標準語なの!?」

嫌な言葉ばっかり通用しちゃうんだなと嘆息する。


「いやさ、俺が元の世界で殺される前に先に殺されてた女の子がいたのよ。それがさっき言ってた先に来たっていう子かもしれないな~と思ってさ。その子は…ミサトは…俺の…お、幼馴染なんだよっ!お互い死んじまったわけだし、俺が飛ばされたこの世界にあいつも来てるんじゃないかって…」


事の経緯、少女を探している理由を説明すると、


「なるほど。よくわかったぞアキラよ。その熱意は本物のようじゃな。妾にはひしひしと伝わってきたぞ。うむ、悪質なストーカーではなさそうじゃから教えてやるとするかの。」


「お、おう。」


熱意が伝わったらしく嬉しいのだが、どこかしっくりこないアキラ。そして、アザレアが口を開くのを待つ。


「その女はな、白の悪魔のことを調べるために大図書館へ向かったぞ。」


「………っ」


その言葉を聞いて、隣で息を呑むユーリア。しかしアキラは、


「白の悪魔…?初めて聞くな…なんなんだそいつは?」


初めて聞くその言葉に首をひねる。


「むぅ…お主、妾に説明を求めるのか…そのあたりの詳しいことは妾は知らん。一階の大図書館に行くがよい。おそらくお主らの目的の人物が根掘り葉掘り話してくれるじゃろう。あやつは正直言って気持ち悪いくらいの研究家じゃからのう…知らないことなど無いと思われるぞ。」


気持ち悪いとか、なかなか酷いなこの姫さん。等と思いつつ、


「よしっ分かった!もともと大図書館に用事があったんだもんな。行こうぜユーリア!あ、世話んなったなアザレア!」


「うむ。よいよい。お主とは初対面じゃったが気に入ったぞ。お主といると退屈せぬ。また近いうちに顔を見せるがよい。」


「おう!サンキュー!」


「む?さんきゅーとはなんじゃ?」


「ストーカーが通じて、サンキューは通じねぇのかよ!!」


まったく世知辛い世の中だと思ったアキラ。そして、


「それと、ユーリア。お主も…頑張るのじゃぞ。」


「はい…ありがとうございます。」


二人の間に、なにか気になるような雰囲気があったが口を挟むような野暮な真似をアキラはしなかった。


―――そして二人は玉座の間を離れ、大図書館への道のりを無言で歩いていた。と、


「なぁ、ユーリア。」


「ん、なに?」


「なんか悪かったな。お前にまだなんも話してなかった。俺にはミサトっていう幼馴染がいたんだ…まぁ殺されたんだけど…」


「え?いやいや!そんなの気にしないでよ!死んじゃってこっちに来たとか、確かにびっくりする内容だったけど、そんなの先に聞いちゃってたら私、びっくりしすぎてなにも言えなくなっちゃってたかもしれない!それに、そのミサトさんが生きてる可能性はかなり高いっていうのがわかったじゃん!」


「そうだな…ありがとう。」


聞いてはにかむユーリア。一見いつも通りのユーリアだが、アキラにはどこか落ち着きがないように見えた。その理由もその内分かるのだろうかと思いつつ足を進めるアキラ。その隣を歩くユーリア。そして、


「着いたよアキラ!」


扉の前でそう言われて、上を見ると、確かに「アザレア大図書館」と書かれた表札のようなものが目に入った。


「おお…こりゃまたでっけぇ扉…まるで門みてぇだな。」


今しがた城の前で見た門のような大きさの扉を見ながらそう感想をこぼす。


「この大図書館に大賢者がいるってことで間違いないんだよな?」


「うん。私もまだ会ったことは無いんだけど、この大図書館で半分以上の人生を送ってるっていうのは聞いたことある。」


「おいおい、そりゃあまたすげぇもんだな…」


引きこもりみたいなもんかと一人納得しながら、扉を開けるアキラ。


「おおーっ、なんだこりゃあっ…!」


「わーっ、す、すごいっ…!!」


そこはもはや図書館の域をとっくに超えていた。広さはゆうに基本値を超えているだろう。こんなにも大きな図書館を内蔵しているこの城はどれだけの広大な土地を持っているのだろうとアキラを考えさせた。

二人同時に似たような感動に浸っていると、


「ふむ、この我が大図書館に人が訪れるなど幾月ぶりかな?」


後ろから声が聞こえた。


「うわっびっくりしたぁ!おっさん…?」


驚くアキラは、その見たままの風貌を口につく。


「ちょっ、ちょっとアキラ!たぶんこの人が大賢者様だよ!口を謹んで!」


「いやいーや、いいのだよお嬢さん。私はいかにもおっさんだからね。まぁ一応名前はあるのだがね。何と呼んでくれても構わないよ。我が名はヴォルフ・ド・アーレ。ヴォルフと呼ばれるのが多いかな?いや、最近では大賢者などと呼ばれることが一番多いかな?賢者だなんて恐れ多いがね…」


「お初にお目にかかります。ユーリアと申します。普段は主に負傷者、病気の方々の為、治療等に精を出しています。以後お見知りおきください。」


「いやいーや、そんなにかしこまらないでいいのだよ。私はアザレアさんと同じくフレンドリー主義だからね。もっと気さくに接してくれたまえ。そこの君もね。おっさんと呼んでくれても全然構わないよ。」


「フレンドリー主義ってなに…ってか、この国本当に緩いな…いや、心の広い人が集まってると言った方が妥当か…?」


伸びた白い髭に、比較的派手な紫色のローブに身を包む老人はまさに賢者と呼ぶにふさわしい有様だった。そして温厚な性格。素晴らしく模範的なおじいちゃんだとアキラは思った。と、


「さて、君たちが知りたいのはミサトくんの消息だったかな?白の悪魔のことかな?」


言いながら、そこにあった椅子に腰かけるヴォルフ。


「え、なんでそのことを知ってるんだ…!しかもミサトの名前まで…?」


まだ会って間もない老人が自分たちの目的を知っているのに驚きを隠せないアキラ。ユーリアも驚いている様子だった。


「いやいーや、この大図書館には様々な情報が自然と入ってくるようになっているからね。君たちの上での

会話ももちろん一部始終聞こえていたよ。アキラくん、ユーリアくん。私は気持ち悪くないし、なんでも知っているわけでは無いのだよ。アザレアくんは私を買いかぶりすぎだね。」


「いやいや、それプライバシーとか…いやもうなにも言うまい。」


またツッコミたくなったアキラは寸でのところでとどまる。異世界なら何でもありなのだと思い始めているアキラがそこにはいた。


「で、分かってんなら話は早い。ミサトはここに来たんだよな?あとその白の悪魔っていうのについて教えてくれ。」


簡潔に要件を述べるアキラ。それに対して、


「うむ。ミサトくんはここに来た。ミサトくんだというのは間違いないよ。自らをミサトと名乗っていたからね。姫乃ミサトと言っていたかな?」


それを聞いて心底ほっとするアキラ。


「そうか…やっぱり生きてたか…ミサト…」


「そのミサトくんは白の悪魔について私に聞いてきたよ。彼女自身は白の悪魔という異名については知らなかったそうだがね。銀髪の長髪で赤い瞳の女に殺されたと私に言ってきたのだよ。そして目が覚めたら、この世界にいたと。まさにアキラくんと同じ境遇だね。彼女はヤツを殺せば元の世界に戻れるのかと私に聞いてきた。かなり怒っているように見えたね。君と離れ離れにされてしまったのが許せなかったのかな?私は確かにヤツを殺せば元の世界には戻れると言ったよ。しかし、悪魔には二つの殺し方があることも教えた。」


白い髭を撫でながらそう教えるヴォルフ。


「二つの殺し方?」


そう問うアキラ。


「うむ。まずは悪魔のなんたるかについてから話す必要があるかな?この世界での悪魔というものは元々は純粋な善の生き物なのだよ。その善の生き物に悪のマナを流し込むことによって我々生き物は悪に目覚める。そうすると、自らの意思とは関係なしに殺戮などの悪事を働くようになるのだよ。」


「なるほど…ってことはその白の悪魔っていうのも元々は俺らみたいな普通な善の生き物ってわけか?」


「うむ。そうなのだよ。白い悪魔も元は心優しきエルフだった。」


「………」


エルフ?銀髪で長髪のエルフ?思うところがあったアキラは隣にいるユーリアに目を向ける。すると今まで閉じていた口を開くユーリア。


「アキラ。その白の悪魔っていうのはね…」


話し始めたユーリアと視線を交わらせるアキラ。そして、


「ユーラシア。私のお姉ちゃんなの。―――」


ユーリアの衝撃の告白に声を詰まらせ、なんと声をかけていいものか迷っていると、


「ごめんね…アキラ…私のお姉ちゃんがアキラとミサトさんに危害を加えたんだよね…ごめんね…」


言いながら涙ぐむユーリアを見て、


「…ユーリアは悪くねぇだろ…それに…」


アキラは恨んでいた。自分とミサトを殺し、告白の機会とアキラの決意をも奪った張本人を。しかし、


「ユーリアの姉貴も悪くねぇよ。」


ユーリアが潤んだ瞳でこちらを見上げる。


「なにが悪いってその悪のマナ?っていうもんを流し込んだヤツが悪いに決まってんだろ。」


そう、彼女の姉はただの被害者に過ぎなかったのだと。アキラは確信した。故に、本当の悪の存在に恨みの気持ちが沸いた。


「で、誰なんだ?おっさん。」


そう問いかけるアキラ。すると、


「うーむ...誰かしら悪の手引きが存在するのは確かなのだが、まだはっきりと判明していないのだよ。」


「そう...なのか...大賢者でもわかんねぇなら...ユーリアの姉ちゃんに直接聞き出すしか方法はねえんだな。」


そう心に決めるアキラ。そして、


「そこでだ。まずは先程の悪魔の二つの殺し方というものを教えてあげようじゃないか。一つ目はまぁ簡単といえば簡単だ。相手の息の根を止めるまで戦う。これはもう相手を救うことは不可能だ。」


「お、おう。俺にはその方法しか思いつかないな。」


「そして、二つ目、これは少し難易度が上がるが悪魔化を解き元の善の生き物に戻すことが出来る。」


「なに!?そんなことが可能なのか!?」


驚くアキラ。


「うむ。悪魔と化した者は自らの身体が弱ると悪のマナが集結し結晶となる。そして、なぜだか体外に出てくるのだ。その悪のマナにだな、私が研究に研究を重ねて開発した超聖水をかけることにより悪のマナは浄化され、100パーセントの確率で元に戻る。」


「それは…もう後者の方法で間違いないな…!」


「ふふふ、ミサトくんも後者を選んだよ。やはり君たちは通ずるものがあるようだね。」


それを聞いて、ミサトの優しさを垣間見たアキラ。


「そんなの助けられるやつは助けるに決まってんだろ。それは俺もミサトも同じ考えだってことだ。で、その当のミサトはどこへ向かったんだ?」


「最後に白の悪魔の目撃情報があったゲルヘイムの森へ向かったはずだよ。もっとも私が教えたのだけれどね。」


「ゲルヘイムの森ね。とりあえずは一人で戦うのは危険だ。俺も行ってミサトを連れ戻してくるよ。地図かなんかあるか?」


「うむ。懸命な判断だね。これを持っていきたまえ。」


言って、地名と現在地が描かれた地図を手渡すヴォルフ。


「なにからなにまでわりぃなおっさん!とりあえず行ってくる!すぐ戻るよ!」


そう言うと、

「ま、待ってアキラ!私も連れていって!」


今まで黙っていたユーリアが口を開きアキラに乞う。


しかし、


「だーめだっ。ユーリアはここでしっかり休んでいてくれ。ミサトを連れて帰って来たら、またみんなで作戦会議を開こう。あと修行もしっかりした方がいいな。特に俺。」


ユーリアの願いを拒否し、歩き出すアキラに、

「アキラ…ちゃんと戻ってきてね…!」


ユーリアは言った。そして、


「心配ご無用!安全第一がモットーの俺だ!危険な橋は渡らねぇよ!」


そう言い残し、再び歩き出した。


自分が恋した少女に再会するために。―――

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