新入試験
「ここが魔導学園か……」
僕はため息まじりにそう呟く。
なんたって、こんな所に来るつもりはなかった。
いきなり、僕の所に届いた手紙。確か、魔界でも珍しい『シノトリ』が届けに来た。その時、僕は色々な場所を転々としていたのに何故、場所がわかったのだろう。まぁ、貰っても行こうとは思わなかったが……あいつが五月蠅いから……
その手紙には『魔導学園に来ませんか?』と一言書かれていた手紙と地図があった。
「ホントに何で僕がこんな所に」
イライラし髪を手でくしゃくしゃにする。
すると、声をかけられた。
「どうしたの?」
僕はその声に気付き、声のする方を見る。
声をかけてきたのは金髪でツインテールの女の子だった。
背は僕よりは高め、まぁ、僕より背が低い奴なんてそうそう居ないが……
「い、いや別に」
「そう?なんか、イライラしてる様に見えたけど?」
「別に普通だよ」
「それなら良いけど……君も新入生?」
「そうだけど……」
あんまり、他の奴と話したくないんだけどな……
あいつは寝てるな……くそっ、こういう時は起きとけよ!
『もうすぐ、新入試験が始まります。新入生の皆さんは指定された場所に向かってください』
アナウンスが流れ、新入生達は動き出す。
もちろん俺も、そして、さっき会った女の子も
「あ、そうだ私の名前は三神貴方は?」
「僕はアオト」
「そっか、よろしくね!アオト!」
三神はニコッと笑って、手を伸ばす。
俺は一瞬、その笑顔に見惚れてしまった。
そして、俺も三神に向かって手を伸ばす。
「じゃあ、行こっか!」
「……う、うん。行こう」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
見果たす限り、モンスター。
『ブラック・スライム』それがモンスターの名前だ。
「にしても……」
新入生の数が減ってる。多分、死んだんだろう……
ブラック・スライムは比較的厄介なモンスターだ。その理由は2つある。
核を潰さないと、どんどん分裂して数が増える。そして、ブラック・スライムのもう1つの厄介なところはモンスターの中でもかなり、狂暴な方に入る。
……まぁ、何故、『スライム』の突然変異がそこまで狂暴なのかは知らないが……
「助けて!!」
「殺される!だっ……」
「たずっけ………で…」
聞こえてくる、叫び声。まぁ、僕の知った事じゃ無いが……
にしても、何時まで続くんだこれ……もう、開始してから結構たったぞ?
……三神、死んでないよな。
そんな風に考えていると、不意に目の前に青髪の男が現れた。
「大丈夫か皆!今、助ける!」
と言って、青髪は死にかけている新入生達の方に行った。
なんだあれ、ヒーローのつもりかよ……
死ぬなら勝手にしてくれ。
「ありがとう、ありがとう!」
「礼なんて良い!早く逃げろ!」
あれ?結構、あっという間に2人助けたな。
……まぁ、あと1人はこのままだと死ぬな。
「たすげでっ!はやぐ」
泣きながら言う。
だけど、もう助からないだろう……体が黒ずんできている。アレはブラック・スライムに攻撃された時に出る症状で、あの症状が出るとあのままだと死ぬ。
………ったく、仕方ねぇな
「おい、青髪!どけ!」
「え?俺?」
青髪はキョトンとした様子でこっちを向く。
僕は青髪を強引にその場から離れさせ、持っていた鎌を取り出す。
「えっ、ちょっ、いきなり、なんだよ!」
「アイツを助けたいなら、ちょっと黙れ……」
僕は取り出した鎌をブラック・スライムに向けてこう言う。
「鎌よ、僕を呪え!」
その瞬間、周りに現れる黒い影。いや、影というより『闇』だろう。
その闇はドンドン広がっていく。
俺はその鎌で、ブラック・スライムに斬りかかる。
「死ね!」
「ピギャャッッ!!」
ブラック・スライムはそんな鳴き声を出しながら、ドンドン消えていった。
「あ、ありがどうございます!」
助かったというのに、今もなお半なき状態の新入生。
容姿は緑髪で目が見えなく、身長は俺より少し高め。
黒と白のボーダー、囚人服のようなものを着ている。
「あっ、ぼ、僕ジャクっていいます」
聞いてもいないのに自己紹介をしだした。僕は適当に「あ、そう」とあしらい、その場を去ろうとする。
「あっ、ちょっと待って下さい。あなたの名前は?それとそちらの青髪の人も」
「……僕はアオト」
「俺は愁だ」
「アオトさんに愁さん。よろしくお願いします!」
そうジャクが言うと、何の合図も無く放送が流れた。
『これにて、新入試験を終わります。新入生の皆さんはクラス発表があります。直ちに体育館に集まって下さい』
また、始まりと同じように新入生達がぞろぞろと歩き出す。体育館を目指して……
三神、大丈夫かな……
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あ、アオト!」
「三神?」
三神は僕に気付くとすぐに、話しかけて来た。
……良かった。僕はホッとした。あれだけ、死人が出てるんだ。もしかしたら___なんて事も……
「ん?アオトの彼女か?」
そんな風に喋っていると、いきなり、愁がそんな事を俺にだけ聞こえるくらいの声で言った。
「なっ!?そんなわけ無いだろ!?」
「結構、仲良さそうじゃんか!」
「……さっきから、何話してるの?」
三神は僕と愁にそう話しかけてくる。
俺と愁は「別に」と返した。
すると、三神は
「アオトのお友達?」
と愁の事を指さす。
「いや、違っ「俺は愁!アオトの友達にさっきなった。アンタは?」
僕が違うと言おうとすると愁はセリフを被せてきた。
その様子を見て、三神はクスッと笑って、愁の質問に答えた。
「私は三神、吸血鬼よ。あれ?そう言えば、アオトって種族は何なの?」
「……僕は死神だよ」
「俺は吸血鬼です!」
「ぼっ、僕はジャクです……悪魔です」
いきなり、会話に混じってきたジャクに驚くが、後で聞くとこいつの能力は自分の姿を見えなくするという能力らしい。
「ジャク、よろしくね!」
「は、はい」
ジャクはオドオドした様子で、三神に返事をする。
「というか、結構な数減ってるな……」
辺りを見まわすと、最初に見た時より新入生の数がかなり減っている。
まさか、たかが新入試験で死ぬとは思ってなかっただろうな……
そう考えていると、体育館のステージの上に綺麗な女性が現れた。
その女性がどうやら学園長らしい。
「えー、新入生の皆さんようこそ!」
学園長は明るめのテンションでそう言う。
しかし、誰も返事はしない。そりゃそうだ、さっきの試験でかなりの体力を使った。目の前で、仲間を殺されるのを見ていたりしていたら尚更だ。
その態度が気に食わないのか学園長は、何度も何度も繰り返して挨拶をする。
それでも、誰も返事を返さない。
「ハァ~……皆さんテンション低いですねぇ~」
「……そりゃそうだろ」
ボソッと誰かが、そんな風に言った。
それに気付いた学園長はその声を出した生徒に指を指した。
「そこの君、そんな事言えるなら返事をしなさいよ。じゃあ、そういう事で1回死んでください」
「なっ!?何言って!」
「は~い、五月蠅い~」
学園長がそう言うと、突然、モンスターが現れた。
「アレは……」
「屍だな……」
「なっ!?グールって言ったら!」
「………ブラック・スライムと同じ、A級モンスターだ」
「あのままじゃ、あ、あの人」
「死ぬ……な」
そのグールは、ドンドンさっきの新入生の方に向っている。
……でも、変だ。グールが1人を狙うなんて……
「ヒィッ!!」
グールを恐れ、新入生はその場から離れる。
その周りに居た新入生も逃げようとする。
すると、学園長が言う。
「あ、他の皆さんは襲われませんので、ご安心を~」
しかし、そんな言葉他の新入生が信じるわけが無かった。
全員がその場から逃げ惑う。
しかし、愁は
「助けに行く……」
そう言って、グールに襲われかけている新入生の方に向かう。
「おい、馬鹿!」
「愁さん!」
「……行っちゃった」
ホントにお人好しすぎたろ……
仕方ねぇ……
「行ってくる………」
「えっ、ちょっ、アオトさん!」
「ジャク、私達も行くわよ」
「三神さんまで……」
その様子を見ながら学園長は
「助けに行きますか~、とんだお人好しですねぇ……そんな生徒達は要りませんねぇ~」
「グール、アイツらも殺しなさい」




